願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

文字の大きさ
上 下
128 / 282
学園編

27. 弟から感謝の言葉

しおりを挟む
「おじ上!」
「リュカ、おはよう。よく眠れたか?」
「はい」
「義姉上、おはようございます。エウリーチェ、オリュフェス、おはよう」
「おはようございます。叔父上」

 帰ってきた翌朝、お義姉さんと子どもたちと一緒に朝ご飯だ。一番目のお兄さんは、すでにお仕事に出たらしい。
 火の子はウィオを見つけて、うれしそうな、けれどホッとした顔をした。弟くんは、そんな火の子を見て肩をポンポンとたたいている。二人の間にわだかまりが残ってなくて何よりだ。

 食卓につくと、手早く朝食が運ばれてくる。もちろんオレの分も薄味で作られた同じ料理だ。

「叔父様、薬草採取のことを教えてください。アチェーリ王国との間にある山ですよね。授業で習いました」
「不思議な植物がたくさんあった」
「姉上、どんな山なのですか?」

 お姉ちゃんがあの山のことを話して聞かせてくれたけど、授業では、不思議なところで成り立ちはよく分かっていない、と説明されたそうだ。スフラル王国のアーグワの湖のように魔物がいないなら、神の関与を一番に考えるだろうけど、あの山はとんちき動植物があるだけなので、判断が難しいんだろう。まさか神様が実験して遊んでるなんて思わないだろうし。

 みんなで和やかに、薬草採取や魚のことを話しているのを聞きながら、美味しい朝ご飯を食べる。もぐもぐ、うまうま。
 料理長さんはまだ交易都市ナーバルで魚料理の修行中だけど、お屋敷に残った料理人さんたちの食事も美味しい。
 きっと料理長さんが戻ってきたら、魚料理パーティーが開かれるんだろうなあ。今から楽しみだ。

 食事が終わると、お姉ちゃんと弟くんは学校だ。お義姉さんは、お茶会の準備があるらしい。
 それぞれがこのあとの予定に向けて準備を進める中、ウィオは火の子を話に誘った。

 落ち着いて話せるようにと、火の子の部屋に案内されたので、オレも一緒に入ってウィオの足元に丸くなる。
 お茶を置いて、使用人たちが部屋を出てから、ウィオが静かに切り出した。

「リュカ、不安をちゃんときいてやらなくて悪かった」
「おじ上はなにもわるくありません。私が……」

 火の子は暴走を思い出したのか、下を向いてしまった。

「不安なときは、不安だと言ってほしい。私はまだリュカの気持ちを分かってやれない」
「そんなことありません」
「ある人に、学園長一年目は見習いだと言われた。まだいろんなことが上手くできない。だから、リュカに助けてほしい」

 優しい顔で火の子に自分も完ぺきではないのだと話しているウィオは、初めて出会ったころに比べれば、周りの感情に敏感になった。きっとこれから学園の子どもたちと関わって、少しずつ子どもの気持ちに寄り添っていくのだろう。

「ヴィンセントがもうすぐ遠征に行く。だからその前に行って帰ってこようと急いで出発した。それを説明するべきだったな」
「そうだったんですね」
「不安だっただろう。すまない」
「……こわかったです」
「そうか」

 絞り出すような声で、「兄上がやけどしなくてよかったです」と言った火の子の頭を、ウィオがそっとなでる。

「私も子どものころ、私の兄上、リュカの父上を傷つけたことがある」
「おじ上も?」

 そんなことがあったのか。ウィオは氷属性だから、鋭い氷でけがをさせたか、凍傷になったか、どっちかだろう。
 ブラコン気味な一番目のお兄さんは、愛情を持ってなんだかんだとちょっかいをかけるけど、ウィオは二番目のお兄さんに比べてどこか一線を引いている気がしていた。それは過去のことが関係しているのかもしれない。

「それでも兄上は可愛がってくれた。いまでも仲がいいのは、見ていてわかるだろう」
「はい」
「オリュフェスに感謝を伝えなさい。私は昨日やっと伝えられた」

 きっと昨夜、初めてお兄さんたちに、あらためてちゃんと感謝の言葉を伝えたんだろう。もちろん、その前からウィオの気持ちは伝わっていただろうけどね。それでも、口に出すのは大切だ。火の子も、謝ってはいるだろうけど、ありがとうは伝えてないんじゃないかな。
 火の子がこの家に引き取られたころから、兄として火の子を守ろうと頑張っていた弟くんの存在は、きっと火の子の心を支えているはずだ。二人を見守っている、しっかりもののお姉ちゃんも。同じようにお兄さんたちに守られていたウィオだから、火の子の気持ちも分かるのだろう。

 決意を込めてうなずいた火の子の横に座って、ウィオは背中をそっとなでた。いままでよりも、火の子との距離が近いし、身体に触れている時間が長い気がする。
 何度も飛びついてなでてと言い続けたから、オレのことは気軽になでてくれるようになったけど、火の子や弟くんたちには触れようとしなかった。
 もしかしたら、ウィオが子どものころ、お兄さんになでられて安心していたのかもしれない。それを昨日の話し合いで思い出したのかも。

 ちっちゃいウィオがお兄さんたちによしよしされているところはきっと可愛いだろうなあ。と想像していたら、ウィオににらまれた。なんで!
 あとで聞いたら、よからぬことを考えている顔をしていたって言われたけど、それどんな顔?

 オレがいると、ウィオが心の内を口に出しずらいかもしれないと思い、オレは入り口の扉をカリカリして、外に控えている使用人さんに扉を開けてもらって外に出た。二人でゆっくり話すといいよ。
しおりを挟む
感想 797

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

ある平民生徒のお話

よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。 伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。 それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉宙ニ
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

姉妹の中で私だけが平凡で、親から好かれていませんでした

四季
恋愛
四姉妹の上から二番目として生まれたアルノレアは、平凡で、親から好かれていなくて……。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。