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学園編
2. 領主詣で
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「ウィオラス、学園はいいのか?」
「学科長に任せてきました」
『お兄さん、なんかごめんね』
「ルジェくんのせいじゃないよ」
どう見てもオレのせいだよね。いずれはオレの存在がうわさとして広がっていくだろうから、先手を打って、いつものオレとは似つかない姿で人前に現れた。そうすればオレは自由に動き回れると思ったのだけど、神獣の降臨という事態を軽く考えすぎていたのは否定できない。
こんな大騒動になると思ってなかったんだよ。珍しいものが見られてラッキーくらいの反応で収まると思っていたのに。
「陛下が、主要国の王族を歓迎するために、今朝早く王都にお戻りになったから、まあ何とかなるよ」
「馬車が見えないと思ったら、そういうことでしたか」
もともと開校式のためにこの国を訪れた他国の王族との外交行事が組まれていたけど、予定を変えて全員まとめてご招待にして、馬車を連ねて王都に向かったそうだ。この地に残ることを希望した人たちは、大騒動になってしまったのでここでは警備が難しいと説得したらしい。
王様の接待を断れなかったというのもあるんだろうけど、近隣の国はかつてこの国に下った神罰の詳細を知っているだろうから、しつこくした結果の神罰を恐れてているのかもしれない。王様に接待されないくらいの王族なら、お兄さんが相手にしなくてもそこまで大きな問題にはならないはずだ。
『うるさく言ってくるようなら、その国のお城を雪に埋めてくるよ』
「ルジェくん、ありがとう。でもまあ、そのうち落ち着くと思うから」
『明日の朝はこのお屋敷につながる坂道を凍らせちゃおうよ。そうすれば登ってこられないでしょう』
「ルジェ、それはこの屋敷に勤める者が困る」
『だったら王都のお城にオレが顔を出してこようか。そしたら全部あっちに押し付けられるよね』
きっと王都に移動しておけばよかったってすぐに向かうんじゃないかな。どう?
「ルジェ、何もしなくていい」
『じゃあ、ドラゴンに来てもらう? みんな見たいよね』
ふと思いついたけど、なかなかいい案じゃない? ドラゴンを見れば興味はそっちに移るはずだ。上空をくるっと飛んで戻ってもらえば、みんなまとめてタイロンに押し付けられるでしょう。
そう提案したら、ウィオに目の前まで抱き上げられた。
「何もしなくていい。分かったか? 何もしなくていい」
『キュゥ』
オレをまっすぐ見るウィオの目が怖いから、大人しくしておこう。
ウィオは険しい顔をしたまま、オレを執事さんに手渡した。心なしか執事さんがオレを抱く腕に力が入っている気がする。これは、大人しくしておかないとウィオと執事さんの両方に怒られるやつだ。ウィオはともかく、執事さんに逆らってはいけない。美味しいご飯をくれる人の言うことは絶対なのだ。
昨夜はこのお屋敷に泊まっていたお父さんたちは、火の子だけを残して、王様と一緒に今朝王都へ戻っていった。火の子は、ウィオの学園での用事が終われば一緒に戻る。執事さんは、昨日の今日なので、たくさんの人の前に出るかもしれないオレのために残ってくれている。
「それで兄上、あの訪問者たちをどうするつもりですか?」
「ルジェくんの変身を話すわけにもいかないし、会わなければそのうち諦めるんじゃないかな」
政治的な力関係で会わなければならない相手には、すでに会っていた。当然あの翼の生えた狐とオレの関係を聞かれたけど、自分も分からないととぼけたそうだ。オレに近しい人たちはみんな、あれがオレだと分かっていて、口をつぐんでいる。
そういえば、昨日お父さんには「屋敷が狭いから、小さくなっているんじゃないよね?」と確認されたけど、オレの初期形態がこのサイズなのだ。可愛がるのにちょうどいいでしょう。
もしかしてオレは無意識で可愛がってもらえるサイズを選んだのだろうか。それともオレの創造主がそうしたのかな。
まあどっちでもいいや。執事さん、そこ気持ちいいから、もうちょっとなでて。
「けれど、次の入学試験は、大変な倍率になりそうだねえ」
「今から何か考えておくべきかもしれませんね」
『留学生枠は決めておいたほうがいいんじゃない? 今年以上に来ちゃうでしょ』
「そうするか」
定員を増やそうにも、勉強するための教室が足りない。そこに国外から受験生が集まれば、この国の学びたい子どもたちがはじき出されてしまう。それは、ウィオの本意じゃない。
「目に属性の現れている子どもを通わせたいという話は、いくつかすでに来ているよ」
「優先順位は精霊の愛し子、国内、国外ですね」
「早めに定員と試験の日程、内容、それに合格基準を発表しておいたほうがいいだろう」
ウィオだけでは決められないので、校内が落ち着いたら、職員会議にかける。学園祭についても、早めに決めて発表しておくほうがいいだろう。
『学園祭でオープンキャンパスしたら?』
「おーぷん?」
『入学したらこんなことをやりますよって、実際の授業を見せるの』
「いいね。ぜひやろう。見学させろという話を断るのが大変でね。学園祭のときにまとめて対応するなら、楽でいい」
学園長であるウィオは神獣の加護をもらっているから、あまり無理は言いづらいのか、あれやこれやの要望がお兄さんへと集まる。神獣に会わせろという無茶ぶりから、授業を見学させろとか、今から子どもを特別に入学させろなんていうのもあるらしい。
申し訳ないので、お兄さんにはたくさん癒しを提供することにしよう。
オレは執事さんの腕を抜け出して、お兄さんの膝に乗ってお腹を見せる。首の下だけじゃなくて、お腹もなでていいよ。オレのふわふわの毛で癒やされて。
「学科長に任せてきました」
『お兄さん、なんかごめんね』
「ルジェくんのせいじゃないよ」
どう見てもオレのせいだよね。いずれはオレの存在がうわさとして広がっていくだろうから、先手を打って、いつものオレとは似つかない姿で人前に現れた。そうすればオレは自由に動き回れると思ったのだけど、神獣の降臨という事態を軽く考えすぎていたのは否定できない。
こんな大騒動になると思ってなかったんだよ。珍しいものが見られてラッキーくらいの反応で収まると思っていたのに。
「陛下が、主要国の王族を歓迎するために、今朝早く王都にお戻りになったから、まあ何とかなるよ」
「馬車が見えないと思ったら、そういうことでしたか」
もともと開校式のためにこの国を訪れた他国の王族との外交行事が組まれていたけど、予定を変えて全員まとめてご招待にして、馬車を連ねて王都に向かったそうだ。この地に残ることを希望した人たちは、大騒動になってしまったのでここでは警備が難しいと説得したらしい。
王様の接待を断れなかったというのもあるんだろうけど、近隣の国はかつてこの国に下った神罰の詳細を知っているだろうから、しつこくした結果の神罰を恐れてているのかもしれない。王様に接待されないくらいの王族なら、お兄さんが相手にしなくてもそこまで大きな問題にはならないはずだ。
『うるさく言ってくるようなら、その国のお城を雪に埋めてくるよ』
「ルジェくん、ありがとう。でもまあ、そのうち落ち着くと思うから」
『明日の朝はこのお屋敷につながる坂道を凍らせちゃおうよ。そうすれば登ってこられないでしょう』
「ルジェ、それはこの屋敷に勤める者が困る」
『だったら王都のお城にオレが顔を出してこようか。そしたら全部あっちに押し付けられるよね』
きっと王都に移動しておけばよかったってすぐに向かうんじゃないかな。どう?
「ルジェ、何もしなくていい」
『じゃあ、ドラゴンに来てもらう? みんな見たいよね』
ふと思いついたけど、なかなかいい案じゃない? ドラゴンを見れば興味はそっちに移るはずだ。上空をくるっと飛んで戻ってもらえば、みんなまとめてタイロンに押し付けられるでしょう。
そう提案したら、ウィオに目の前まで抱き上げられた。
「何もしなくていい。分かったか? 何もしなくていい」
『キュゥ』
オレをまっすぐ見るウィオの目が怖いから、大人しくしておこう。
ウィオは険しい顔をしたまま、オレを執事さんに手渡した。心なしか執事さんがオレを抱く腕に力が入っている気がする。これは、大人しくしておかないとウィオと執事さんの両方に怒られるやつだ。ウィオはともかく、執事さんに逆らってはいけない。美味しいご飯をくれる人の言うことは絶対なのだ。
昨夜はこのお屋敷に泊まっていたお父さんたちは、火の子だけを残して、王様と一緒に今朝王都へ戻っていった。火の子は、ウィオの学園での用事が終われば一緒に戻る。執事さんは、昨日の今日なので、たくさんの人の前に出るかもしれないオレのために残ってくれている。
「それで兄上、あの訪問者たちをどうするつもりですか?」
「ルジェくんの変身を話すわけにもいかないし、会わなければそのうち諦めるんじゃないかな」
政治的な力関係で会わなければならない相手には、すでに会っていた。当然あの翼の生えた狐とオレの関係を聞かれたけど、自分も分からないととぼけたそうだ。オレに近しい人たちはみんな、あれがオレだと分かっていて、口をつぐんでいる。
そういえば、昨日お父さんには「屋敷が狭いから、小さくなっているんじゃないよね?」と確認されたけど、オレの初期形態がこのサイズなのだ。可愛がるのにちょうどいいでしょう。
もしかしてオレは無意識で可愛がってもらえるサイズを選んだのだろうか。それともオレの創造主がそうしたのかな。
まあどっちでもいいや。執事さん、そこ気持ちいいから、もうちょっとなでて。
「けれど、次の入学試験は、大変な倍率になりそうだねえ」
「今から何か考えておくべきかもしれませんね」
『留学生枠は決めておいたほうがいいんじゃない? 今年以上に来ちゃうでしょ』
「そうするか」
定員を増やそうにも、勉強するための教室が足りない。そこに国外から受験生が集まれば、この国の学びたい子どもたちがはじき出されてしまう。それは、ウィオの本意じゃない。
「目に属性の現れている子どもを通わせたいという話は、いくつかすでに来ているよ」
「優先順位は精霊の愛し子、国内、国外ですね」
「早めに定員と試験の日程、内容、それに合格基準を発表しておいたほうがいいだろう」
ウィオだけでは決められないので、校内が落ち着いたら、職員会議にかける。学園祭についても、早めに決めて発表しておくほうがいいだろう。
『学園祭でオープンキャンパスしたら?』
「おーぷん?」
『入学したらこんなことをやりますよって、実際の授業を見せるの』
「いいね。ぜひやろう。見学させろという話を断るのが大変でね。学園祭のときにまとめて対応するなら、楽でいい」
学園長であるウィオは神獣の加護をもらっているから、あまり無理は言いづらいのか、あれやこれやの要望がお兄さんへと集まる。神獣に会わせろという無茶ぶりから、授業を見学させろとか、今から子どもを特別に入学させろなんていうのもあるらしい。
申し訳ないので、お兄さんにはたくさん癒しを提供することにしよう。
オレは執事さんの腕を抜け出して、お兄さんの膝に乗ってお腹を見せる。首の下だけじゃなくて、お腹もなでていいよ。オレのふわふわの毛で癒やされて。
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