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番外編
15. 執事さんとおでかけ 1
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お屋敷の中を歩いていると、自分の名前が聞こえてきたので、思わず聞き耳を立てた。気分は柱の陰からこっそりのぞき見る家政婦だ。え? 例えが古すぎる? 時の流れは早いねえ。
声は玄関前から聞こえてきた。ちょうどお父さんがお城に行くところで、お見送りの執事さんと会話していたみたいだ。
「ルジェくんのためだ。費用は気にせず質の良いものをそろえてくれ」
「畏まりました。私が不在の間のことは、部下に割り振っております」
「屋敷のことは心配いらない。気をつけていってこい」
「旦那様も、お気をつけていってらっしゃいませ」
どうやら珍しく執事さんがおでかけするらしい。しかもオレのために何かを買い付けに行くようだ。部下に任せずに執事さん自ら出向くなんて、きっと重要なことなんだろう。なんだろうなあ。何か美味しいものかなあ。石けんの材料かなあ。それともスカーフの素材かなあ。気になる。
執事さんはお父さんがお城に行くのを見送ってから、お屋敷の中に戻っていったけど、多分この後出発するんだろう。
よし、オレも行こう。
ウィオに事情を説明して、リュックにおでかけグッズを詰めてもらった。どれくらいのお出かけになるのか分からないけど、あの話の感じだと、一泊はすると思うんだ。だから食事の準備はしておかないとね。いつでも出かけられるように、オレのための食料を常にたくさん用意してくれている料理長さんには感謝しかない。
ウィオに用意してもらったリュックを背負って、隠れて執事さんの行動を観察していたら、使用人にいろいろ指示を出した後、街の外に出るための馬車に乗り込んだ。きっと今から出発に違いない。気づかれないようにこっそりと、馬車の荷台に忍び込んだ。
今日はお天気もいいので、お馬さんも快調に飛ばしている。カラカラと軽そうな音を立てて順調に進む馬車の中は、外も見えないから退屈だ。でも執事さんを驚かせたいから、ここに隠れていよう。
馬車の荷台には大きな箱があるけど、中身は全部空だ。この中にたくさんの美味しいものか素敵なものを詰めて帰ってくると思うと、期待に胸が高鳴る。まだ見ぬ食べ物か素材たち、待っててね。
「ルジェ様、どうしてこちらに」
『ん、あと五分』
「ルジェ様、申し訳ございませんが、お目覚めください」
『んー、あれ? 執事さん?』
目が覚めると執事さんの腕に抱かれていた。しかも、周りを見るとどこかの野営地だ。そうだった。オレ、執事さんの馬車に忍び込んでたんだ。目的地に着いたら驚かせようと思っていたのに、隠れているうちに寝ちゃったらしい。
「なぜこちらに? 坊ちゃまはご存じなのですか? それに荷台は暑くなっていましたが、お加減はいかがですか?」
『ウィオは知ってるよ。体調は平気。雪の神獣だからって、暑さで溶けたりしないよ』
「それはようございました」
ウィオは学園の準備もあって忙しいので、最近あんまり相手にしてもらえない。だから、執事さんがいないと寂しいのだ。お風呂に入れてくれるし、なでてくれるし、悪さをしたら怒られちゃうけど、たくさん可愛がってくれるから、大好き。
ウィオはオレが帰るまでお屋敷から出ないと約束してくれたから、安心して執事さんとのお出かけを楽しもう。
『執事さんがお買い物に行くって話しているのを聞いちゃったんだ。それでついてきちゃった。何を買いに行くの?』
「野菜と果物ですよ」
『どんな果物があるの?』
「フェディアです。フェディアは、幻の果物であるレリアに似た果物で、料理長がドライフルーツを作りたいと申しております」
なんと料理長さん、干し肉と干し魚だけでなく、果物も干そうとしているのか。でも幻の果物に似たドライフルーツ、美味しそう。じゅるる。それに野菜も、オレのために料理してくれるらしい。
「ルジェ様が久しぶりにオルデキアで過ごされる秋ですので、料理長が張り切っているのですよ」
『キャン!』
料理長さん、大好き!
季節は折しも食欲の秋。これは期待が高まるね。秋の果物と言えば、梨やブドウだよね。秋の野菜は何かなあ。
執事さんに見つかっちゃってからは、御者台の御者さんと執事さんの間に座って、執事さんとおしゃべりしている。御者さんにはオレの言葉は分からないけど、執事さんの発言だけで大体の内容は分かるからか、にこにこしながら聞いてくれている。馬車は隣国マトゥオーソに向かう街道を走っているから、食い倒れツアーで通いなれた道だ。前にこんなことがあった、あんなこともあったと思い出して話しているけど、執事さんが聞き上手だから、おしゃべりが止まらない。
護衛の二人は馬に乗って馬車の前後を守っている。魔物の警戒もあるけど、帰りに荷台の荷物を狙われないように護衛がいると示すことが目的らしい。抑止力ってやつだね。
声は玄関前から聞こえてきた。ちょうどお父さんがお城に行くところで、お見送りの執事さんと会話していたみたいだ。
「ルジェくんのためだ。費用は気にせず質の良いものをそろえてくれ」
「畏まりました。私が不在の間のことは、部下に割り振っております」
「屋敷のことは心配いらない。気をつけていってこい」
「旦那様も、お気をつけていってらっしゃいませ」
どうやら珍しく執事さんがおでかけするらしい。しかもオレのために何かを買い付けに行くようだ。部下に任せずに執事さん自ら出向くなんて、きっと重要なことなんだろう。なんだろうなあ。何か美味しいものかなあ。石けんの材料かなあ。それともスカーフの素材かなあ。気になる。
執事さんはお父さんがお城に行くのを見送ってから、お屋敷の中に戻っていったけど、多分この後出発するんだろう。
よし、オレも行こう。
ウィオに事情を説明して、リュックにおでかけグッズを詰めてもらった。どれくらいのお出かけになるのか分からないけど、あの話の感じだと、一泊はすると思うんだ。だから食事の準備はしておかないとね。いつでも出かけられるように、オレのための食料を常にたくさん用意してくれている料理長さんには感謝しかない。
ウィオに用意してもらったリュックを背負って、隠れて執事さんの行動を観察していたら、使用人にいろいろ指示を出した後、街の外に出るための馬車に乗り込んだ。きっと今から出発に違いない。気づかれないようにこっそりと、馬車の荷台に忍び込んだ。
今日はお天気もいいので、お馬さんも快調に飛ばしている。カラカラと軽そうな音を立てて順調に進む馬車の中は、外も見えないから退屈だ。でも執事さんを驚かせたいから、ここに隠れていよう。
馬車の荷台には大きな箱があるけど、中身は全部空だ。この中にたくさんの美味しいものか素敵なものを詰めて帰ってくると思うと、期待に胸が高鳴る。まだ見ぬ食べ物か素材たち、待っててね。
「ルジェ様、どうしてこちらに」
『ん、あと五分』
「ルジェ様、申し訳ございませんが、お目覚めください」
『んー、あれ? 執事さん?』
目が覚めると執事さんの腕に抱かれていた。しかも、周りを見るとどこかの野営地だ。そうだった。オレ、執事さんの馬車に忍び込んでたんだ。目的地に着いたら驚かせようと思っていたのに、隠れているうちに寝ちゃったらしい。
「なぜこちらに? 坊ちゃまはご存じなのですか? それに荷台は暑くなっていましたが、お加減はいかがですか?」
『ウィオは知ってるよ。体調は平気。雪の神獣だからって、暑さで溶けたりしないよ』
「それはようございました」
ウィオは学園の準備もあって忙しいので、最近あんまり相手にしてもらえない。だから、執事さんがいないと寂しいのだ。お風呂に入れてくれるし、なでてくれるし、悪さをしたら怒られちゃうけど、たくさん可愛がってくれるから、大好き。
ウィオはオレが帰るまでお屋敷から出ないと約束してくれたから、安心して執事さんとのお出かけを楽しもう。
『執事さんがお買い物に行くって話しているのを聞いちゃったんだ。それでついてきちゃった。何を買いに行くの?』
「野菜と果物ですよ」
『どんな果物があるの?』
「フェディアです。フェディアは、幻の果物であるレリアに似た果物で、料理長がドライフルーツを作りたいと申しております」
なんと料理長さん、干し肉と干し魚だけでなく、果物も干そうとしているのか。でも幻の果物に似たドライフルーツ、美味しそう。じゅるる。それに野菜も、オレのために料理してくれるらしい。
「ルジェ様が久しぶりにオルデキアで過ごされる秋ですので、料理長が張り切っているのですよ」
『キャン!』
料理長さん、大好き!
季節は折しも食欲の秋。これは期待が高まるね。秋の果物と言えば、梨やブドウだよね。秋の野菜は何かなあ。
執事さんに見つかっちゃってからは、御者台の御者さんと執事さんの間に座って、執事さんとおしゃべりしている。御者さんにはオレの言葉は分からないけど、執事さんの発言だけで大体の内容は分かるからか、にこにこしながら聞いてくれている。馬車は隣国マトゥオーソに向かう街道を走っているから、食い倒れツアーで通いなれた道だ。前にこんなことがあった、あんなこともあったと思い出して話しているけど、執事さんが聞き上手だから、おしゃべりが止まらない。
護衛の二人は馬に乗って馬車の前後を守っている。魔物の警戒もあるけど、帰りに荷台の荷物を狙われないように護衛がいると示すことが目的らしい。抑止力ってやつだね。
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