願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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精霊の愛し子編

39. 資金調達の方法

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 土の子のための騎士団訪問だったのに、誰よりもオレが楽しんでいたことには気づかないふりだ。
 火の子も楽しんだし、みんなにとって楽しいイベントだったんだよ。
 案の定、話を聞いて弟くんが自分も行きたかったとすねた。あれは精霊に愛されている人による精霊に愛されている人のための試合だったから、今回は我慢してね。

 土の子は、学園へ通うことを決めた。
 もう少し時間をかけて考えてもらってもよかったんだけど、あのど派手な魔法合戦を見て、自分も魔法を勉強したいと思ったそうだ。
 育った村に恩返しができるように、土魔法を農作業に役立てたいらしい。土の子がいたら開墾が楽になりそう。

 でもそうなると、入学までに読み書きや魔力操作を学んでもらわないといけない。
 王都でとなると、土の子がひとりになっちゃうしどうするのが土の子の家族にとってよりよいかと悩んでいたときに、思わぬところから解決策がもたらされた。

「お初にお目にかかります。ラウイド領を拝領しております、キュリオ・ラウイドでございます。この度は我が領の領民のためにお力添えをいただきありがとうございます」
「自治領を任されることになりましたイリファス・フォロンです。お越しいただきありがとうございます」

 土の子の住む村がある領の領主さんが、王様に言われて二番目のお兄さんを訪ねてきたのだ。国も領も、必要なら協力しますってことらしい。
 小さな領でお兄さんたちもあまり付き合いのない人だから、訪問の知らせをもらってから人となりを調べたけど、悪い評判はない人だった。王様もいろいろあった後に悪代官みたいな人を送り込んでは来ないよね。

 その領主さんが、勉強なら領主のお屋敷ですればいいと提案してくれたのだ。領主のお屋敷がある街なら王都より村に近いので、村に帰ったり村から両親が訪ねてきたりもできる。それに、もうすぐ成人のお兄さんを雇って、領主のお屋敷で一緒にいられるようにしてもいいと土の子を気遣ってくれている。

 これにはお兄さんたちも賛成した。
 もちろん領主さんには学園を卒業したら自領で働いてほしいっていう下心があるんだろうけど、土の子の家族にとって現状では最善の策だろう。
 勉強の進み具合の報告を頻繁にすることを条件に、領主さんにお願いすることが決まった。
 土の子の後見はいずれ独立する二番目のお兄さんの家だけど、学園ができるまではお兄さんが領主さんにお願いして面倒を見てもらう感じだ。
 領主さんはオレの正体は知らないみたいだったけど、学園都市計画は神のご意向で始まったものなのでくれぐれも無礼のないようにと王様に言い含められているようで、終始低姿勢だった。

 土の子の進路について一段落したので、土の子は領主さんと一緒に村へと戻っていった。次に会うのは来年だね。
 それまでに、学園の詳細をもっと詰めておかないとね。


 学園は、授業料を安くする代わりに教師と学生自身で運営資金の一部を稼いでもらうことを想定している。現在、その手段を検討中だ。
 薬学科はポーションの販売を考えているけど、魔法学科のできることでいい案が出てこない。
 学園の方針として戦闘は候補にないので、何か生活がちょっと便利になるような魔法がいいんだけど、属性も魔力量もバラバラになるだろうから、これと決めるのが難しい。

「冒険者の依頼には戦闘でないものもあるので、それを受けてもらうとかはどうでしょう」
「個別の依頼だと危険かもしれないから、学生が受けられそうなものがあればそれを参考にして、こちらから売り込むのもいいかもしれないね」
『ウィオが最初に受けた用水路掃除みたいなのは? 団体で先生が見張っていれば危険もないでしょ』
「ああ、あれか。常時出ている依頼です。ゴミを集めるのに風魔法、乾かすのに水魔法、燃やすのに火魔法が使えます」
「なるほど。そうなると入学の要件に、そういう依頼を受けてもらうと明示したほうがいいだろうね」

 そうだよなあ。魔法の勉強をしようと入学したのにドブ掃除させられるなんて聞いていない、っていう人が出そうだ。
 魔法と言えばやっぱりこの前のようなど派手な魔法合戦を夢見るよね。
 あ、ふと思ったんだけど、同じようなことを学園祭みたいな感じでできないかな?

「学園祭? いいかもしれないね。騎士祭を開催している国もあるから参考にできるね。そこで学生の魔法を見せれば卒業後の勧誘も期待できるし」
『オレが人間だったときは、学園祭で学生が作った食べ物売ったりしてたよ』
「そこでポーションを売って学園の資金にしようか」
「そうですね。少し安めに設定すれば、冒険者も買いに来るでしょう」

 二番目のお兄さんは、オレとのつながりをアピールするために外交官のような仕事でいろんな国へ派遣されていた。ウィオは冒険者として活動していた。
 その経験がここで活きてくるなんて、何がどう転がるか分からないね。

『最終手段はオレが大量にポーション作ってあげるから。そのときは瓶に可愛い狐のマークを入れてね』
「ルジェくん、それはダメだよ」

 お兄さんが学園のことは学園の人間でやるべきだって止めるからやらないけど、最終手段として頼まれたら張り切って手伝うから安心して。

「ルジェ、頼むからやめてくれ。エリクサーなど作られたら兄上が過労死する」
『そんなのうっかり作ったりしないよ、……多分』
「悪いが信用できない」

 ウィオ、ひどい!
 お兄さんも、疑わしいなあって目で見ないでよ。
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