ぼわぼわの尻尾も、半目でのにらみも、肉球でのぺしぺしも、冒険者たちにはごほうびでした♪

『ありがとう！　オレの可愛さを分かってくれて、とってもハッピー！　やっぱり、正当に評価されるとうれしいねえ。可愛いは正義！』by ルジェ

まさかの料理長さん！　ひたすら料理修行日記になりそうですが、考えてみます。
２番目のお兄さんは、ハニートラップ回避日記でしょうか……。

優秀とうわさの使役獣を見に来た人たちは、知り合いでした。
可愛くて食いしん坊で応援が上手、という冒険者たちからの評価にちょっとご立腹ですが、ルジェはオルデキアの王都ではあまり活躍していないので仕方ありませんね。
ウィオはちゃんと知っているから、機嫌を直してー。

みんなに食べものに釣られたと思われていて、ちょっと拗ねてしまいました。
でも釣られてるよね？　美味しいものはけっこう大きな部分を占めているよね？？

狸も狐も夜行性ですが、大福くんが寝ているのは、活動時間じゃないからなのか、ただ寝るのが大好きだからなのか、どっちでしょう。
不審な国外からの冒険者の目的やいかに？？

「ウィオラス、ルジェくんはシェリスには絶対に逆らわないんだな」
「子どものころのすりこみでしょう。ご飯をくれる人には逆らってはいけないと、言っていましたし」
「試着はこのままシェリスに任せよう」

「ルジェ様、今日の直しを再度確認させていただきます」
『お兄さんのためだから頑張るけど、疲れちゃったよ』
「その日はルジェ様のお好きなものをお夕食にご用意いたしますね」
『ねえ、執事さん、オレは食べもので釣られるような、安い狐じゃないよ』
「存じております。ブラッシングいたしましょうね」
『だから、そんなのでごまかされないってば』（と言いながらお腹を見せる）

「リンちゃん、そっちじゃないよ」
『ワンワン』
「そっちに行きたいの？　そっちはオルデキアだよ？」
『ワフン！』
「ルジェくんに会いに行きたいのかな？」
『キャン！』
「まだ干し肉あるからね。なくなったらにしようね」
『キューン。キュゥーン』
「わ、分かったよ。干し肉が全部なくなったら、いくから、ね」
『ワオーン！』

よくしてもらい、たくさんお土産までもらって、恐ろしくて費用については知らないフリをすることにしたジークでした。
ウィオの金銭感覚が当てにならないことにも、気づいてしまいました。

「なあ兄さん、なんでこんなに良くしてもらえるんだ？」
「リンはルジェの友だちだからな」
（だからって、使役獣のためにここまでするか？　貴族の考えることは、本当に分からないな）

執事さんの魔法のお世話術の前に、食パンくんも陥落間近？！
そうなると、飼い主さんがショックで崩れ落ちそうです。
「リンちゃん、俺じゃない人になんでそんなに簡単に懐いちゃうの！　俺が一番可愛がっているのに！！」

可愛い首輪は、念入りな色合わせと試着の上に出来上がるものなので、食パンくんたちにも頑張ってもらいましょう。
ルジェもいつも付き合って頑張っていますからね。

「リン様、ブラシをかけますね」
『ウゥー』（いやだ。ご主人、助けて）
「きれいに可愛くなれば、ジーク様がよろこびますよ。お利口にできますね？」
『キュウ』（なんだか怖いよう）
「そうですよ。リン様は、とても賢くていらっしゃいますね」
『キューン』（大人しくしていないと、怒られるかな）
「はい。寝転がりましょう。上手にできたら、美味しいご飯が待っていますよ」
『ワン！』（いい人だった！）

「ジーク様、どうぞブラッシングをしてあげてください」
「あ、はい」（このブラシも高そう）
「ゆっくり、優しく。そこは敏感ですから、なでるように」
「はあ」（こんなこと、自分の髪の毛にもしたことないのに）
「お上手ですよ。リン様、とても気持ちよさそうですね」
『ワン！』
「このブラシ、どこで売ってますか？」（リンちゃんのためなら！）

美味しいもののためなら、干し肉のためなら、お行儀よくできる、お利口なリンちゃんです♪

「首輪も、リュックも、干し肉も、全部高いんだろうなあ。でもリンちゃんのためだから、頑張ろう！」by ジーク

一番のお気に入りは干し肉、それは食パンくんもルジェも、譲れないところですね！

どちらも飼い主が大好きで、食いしん坊なので、望むことは同じ。
飼い主のそばで、美味しいものを食べること！　それが何よりの幸せ♪

空腹のまま眠られたのであれば、夢に「クリームサンド、ピンクの肉球ジャム添え」が出てきたりしましたでしょうか？

『湿度も高くなってくる時期。ゆっくり眠って、美味しいものを食べて、夏に負けない体力をつけてね♪』　by ルジェ

まさかのところで再会となりました。
リンちゃんは、ルジェの匂いに気づいて、『下ろしてー！』と暴れていました。

『今年の冬も、食パンくんは来ないのかなあ』
「アチェーリからの旅は大変だろう。会いに行くか？」
『うーん、毛刈りのときじゃないとどこにいるか分からないでしょう。だけど春は幻の果物ためにガストーへ行きたいし、まだ行ったことのない国もあるし、そこに美味しいものがあるかもしれないし、迷うねえ』
（友情よりも食べ物か……）

アチェーリのギルドで可愛がられている食パンくんは、ギルドで冒険者がもっている美味しいものは、すべて自分がもらえると持っています。ワン！
まずは異世界に行くところから始まるので、はたして20年で足りるのか？！

『鱧！　夏の味！　梅もいいけど、辛子酢味噌も味変にいいよねえ。食べたくなってきた。じゅるる』 by ルジェ

「リンちゃんは世界一可愛い。美味しいものを食べているときも、お腹を見せて寝ているときも、とにかくいつだって可愛いんだ。すごいだろう？」
「わんこ、こんなに愛されて幸せだな」
『ワン！』

「なあ、わんこは狐がどこにいるか、匂いで探せないのか？」
「そういえば。リンちゃん、できる？」
『ワン』
「じゃあ、探してみて」
『クンクン、クンクン、ワン！』
「お、さっそく見つけたのか？」
「リンちゃん、ついていくから、匂いをたどってみて」
『ワンワン』
「俺たちも追いかけよう」
「おい、わんこ、そっちであってんのか？」
「ちょっと待て、貴族街は方向が違うぞ？」
「こっちは……」
『ワン！　ワンワン！』
「あーうん。美味しい匂いがしたんだな。ギルドからかぎ分けるとは、すごいな。よしよし」
「ここは俺が買ってやろう。おやじ、串二本タレなしでたのむ」
「毎度あり」
「リンちゃん……」

ルジェがあちこちで集めてくる美味しいもののおかげで、素材もレシピも集まって、お屋敷の料理が充実しています。
たゆまぬ努力を続け、ルジェの食べたいものを作ってくれる料理長。そのご飯は食パンくんも気に入ったようです。
食べるんだと思って、普通の宿で魚料理を頼むとどうなるでしょう。食べてくれるかな？？

『オレ分身できないから、ごめんね。お気に入りのもふもふとの出会いがあるように祈ってるよ！』 by ルジェ