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5章 浄化の旅編
7. 世話係
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ベイロール王国のある南へと向かって浄化の旅が再開された。まずは国内の浄化を行い、その後国境を越えてベイロールへ行く予定だ。
今回は同行者が増えている。なんと私の世話係、いわゆる侍女だ。
クインスでは私は理沙の乳母ということになっていたので、ローズと私が理沙の世話係という立場だった。
トルゴードでは私は理沙の母親としてもてなしをされる予定だったけれど、それは私が断ったので私の専属の世話係はつけられず、理沙のおまけでいろいろしてもらっている感じだ。
それが今回ベイロールに行くに当たって、私の専属の世話係が付けられた。そこには国の立場もあるだろうから受け入れたのだけど、出来れば年齢の近い人がいいという希望は出しておいた。
そこでつけられたのが、ロニアだ。ロニアは男爵家の女性で、ターシャちゃんの公爵家とは別の派閥に属している。ターシャちゃんと私たちの繋がりが強いので、バランスを取るために別の派閥からの選出らしい。宮廷ドラマだわ。
お城では少し話しただけで出発準備に追われていたので、移動中にゆっくり話をしようと同じ馬車に乗ってもらっている。
今まではターシャちゃんと3人だった馬車の車内が、今は4人だ。
ロニアによると、私の世話係になりたい人は多かったそうだ。
「やはり聖女様とお近づきになれるのは魅力的ですよね。マサコ様に気に入っていただければ、親族を聖女様に紹介することも可能になるでしょうし」
ぶっちゃけすぎだと思うのだけど、ロニアのこの裏表のなさそうなところが私は気に入っている。貴族だからもちろん裏表を使い分けてはいるんだろうけど、得体の知れない感じはしない。
お城の侍女に募集がかけられて、ロニアが選ばれた。競争率の高いポジションを勝ち取れたのは、ロニアのお母さんがベイロールの人で、ロニアがベイロールの言葉を話せるからだ。他にも話せる人はいたそうなので、それに加えて年齢と派閥、それに旅に耐えられる体力が決め手になったのだろう。
「ロニアのお子さんは何をしているの?2人いるって聞いたけど」
「どちらも官吏として王城で働いています」
「優秀なのねえ」
聞くと子どもは2人とも祐也よりも年上で、ロニアは既に孫がいる。この世界は結婚が早いので、必然的に同年代でも子どもの年齢が変わってくる。
私も日本にいれば今頃孫をこの手に抱いていたのだろうか。
「お母さん、大丈夫?」
「理沙……」
久しぶりに祐也のことを思い出して少し気分が沈んでしまったのを、理沙に感づかれた。理沙は私をこの世界に連れてきてしまったことに負い目を感じている。
「大丈夫よ。理沙、この世界に来て、いろんなことに挑戦できて、私は楽しんでるわ」
「お母さん……」
理沙をぎゅっと抱きしめて、背中をゆっくり撫でる。父親に会いたいと泣く小さな祐也をこうしてなだめていた。
今、祐也には美弥さんがいる。私には理沙がいる。だから、大丈夫。
しんみりしてしまった車内で、ターシャちゃんとロニアは微動だにしない。こういう時に壁の一部になりきってしまえるのは、侍女に必要な能力なのかもしれない。
「ねえ理沙、私たち、通訳の仕事ができると思わない?」
「突然なに?」
「だって、ロニアはベイロール語が話せるから選ばれたんでしょう。私たちはどこの言葉だって分かるんだから、通訳できるじゃない」
空気を変えるように、さっきロニアの話を聞いて思いついたことを言ってみたら、理沙がちょっと不機嫌だ。唐突だったとは思うけど、そんなに眉間にしわを寄せなくても。
「言語チートだもんね。この国の文字も書けるようになったから、通訳も翻訳もどっちもいけるよ」
「私は翻訳は無理よ」
寄る年波には勝てないのよ。争うだけ無駄だわ。
理沙の眉間のしわを伸ばしながら、理沙は優秀ねと褒めていると、機嫌を直してくれた。よかったよかった。
そんな私たちをみて、ロニアがとても不思議そうに聞いてきた。
「なぜ聖女様とマサコ様はお仕事をされるおつもりなのですか?」
何もしなくてもトルゴードのお城で暮らしていけるのに、どうして仕事をしようとしているのか。
そう言われてみればそうだ。浄化をする代わりに一生面倒を見てもらうというのは、浄化の報酬を年金としてもらうようなものだと考えればいい。きっとこの国は私たちの一生を保障してくれる。
けれど、いつどこで国の方針が変わるか分からないから、そんな不確かなものに身を任せるのが怖い。
もう面倒は見ないと放り出された時に、収入を得るための手段が全くないという状況に陥るのが怖いのだ。その時になって働こうと思っても、常識も何もかもが違うこの世界ですぐに生計を立てていける気がしない。
と小難しく考えていたのだけど、理沙の答えはもっとシンプルだった。
「学校を卒業したら自分で稼ぐものだから」
そうね。日本だとそれが一般的よね。不労所得がある人なんて、ごく一握りだし。
貴族はそのごく一握りに入っているから、こういう質問が出てくるのだろう。聖女など特権階級のトップだ。働く必要なんてない。
でも理沙にとって、聖女は身分ではなく仕事なのだ。しかも期間限定。だからその後の仕事を探している。
私もずっと仕事をしてきたから、やることが何もなくなったらボケてしまうかもしれない。
予防には脳に刺激を与えることがいいらしいけど、異世界なんてすごい刺激よね。そう考えると、私は当分平気でしょう。
今回は同行者が増えている。なんと私の世話係、いわゆる侍女だ。
クインスでは私は理沙の乳母ということになっていたので、ローズと私が理沙の世話係という立場だった。
トルゴードでは私は理沙の母親としてもてなしをされる予定だったけれど、それは私が断ったので私の専属の世話係はつけられず、理沙のおまけでいろいろしてもらっている感じだ。
それが今回ベイロールに行くに当たって、私の専属の世話係が付けられた。そこには国の立場もあるだろうから受け入れたのだけど、出来れば年齢の近い人がいいという希望は出しておいた。
そこでつけられたのが、ロニアだ。ロニアは男爵家の女性で、ターシャちゃんの公爵家とは別の派閥に属している。ターシャちゃんと私たちの繋がりが強いので、バランスを取るために別の派閥からの選出らしい。宮廷ドラマだわ。
お城では少し話しただけで出発準備に追われていたので、移動中にゆっくり話をしようと同じ馬車に乗ってもらっている。
今まではターシャちゃんと3人だった馬車の車内が、今は4人だ。
ロニアによると、私の世話係になりたい人は多かったそうだ。
「やはり聖女様とお近づきになれるのは魅力的ですよね。マサコ様に気に入っていただければ、親族を聖女様に紹介することも可能になるでしょうし」
ぶっちゃけすぎだと思うのだけど、ロニアのこの裏表のなさそうなところが私は気に入っている。貴族だからもちろん裏表を使い分けてはいるんだろうけど、得体の知れない感じはしない。
お城の侍女に募集がかけられて、ロニアが選ばれた。競争率の高いポジションを勝ち取れたのは、ロニアのお母さんがベイロールの人で、ロニアがベイロールの言葉を話せるからだ。他にも話せる人はいたそうなので、それに加えて年齢と派閥、それに旅に耐えられる体力が決め手になったのだろう。
「ロニアのお子さんは何をしているの?2人いるって聞いたけど」
「どちらも官吏として王城で働いています」
「優秀なのねえ」
聞くと子どもは2人とも祐也よりも年上で、ロニアは既に孫がいる。この世界は結婚が早いので、必然的に同年代でも子どもの年齢が変わってくる。
私も日本にいれば今頃孫をこの手に抱いていたのだろうか。
「お母さん、大丈夫?」
「理沙……」
久しぶりに祐也のことを思い出して少し気分が沈んでしまったのを、理沙に感づかれた。理沙は私をこの世界に連れてきてしまったことに負い目を感じている。
「大丈夫よ。理沙、この世界に来て、いろんなことに挑戦できて、私は楽しんでるわ」
「お母さん……」
理沙をぎゅっと抱きしめて、背中をゆっくり撫でる。父親に会いたいと泣く小さな祐也をこうしてなだめていた。
今、祐也には美弥さんがいる。私には理沙がいる。だから、大丈夫。
しんみりしてしまった車内で、ターシャちゃんとロニアは微動だにしない。こういう時に壁の一部になりきってしまえるのは、侍女に必要な能力なのかもしれない。
「ねえ理沙、私たち、通訳の仕事ができると思わない?」
「突然なに?」
「だって、ロニアはベイロール語が話せるから選ばれたんでしょう。私たちはどこの言葉だって分かるんだから、通訳できるじゃない」
空気を変えるように、さっきロニアの話を聞いて思いついたことを言ってみたら、理沙がちょっと不機嫌だ。唐突だったとは思うけど、そんなに眉間にしわを寄せなくても。
「言語チートだもんね。この国の文字も書けるようになったから、通訳も翻訳もどっちもいけるよ」
「私は翻訳は無理よ」
寄る年波には勝てないのよ。争うだけ無駄だわ。
理沙の眉間のしわを伸ばしながら、理沙は優秀ねと褒めていると、機嫌を直してくれた。よかったよかった。
そんな私たちをみて、ロニアがとても不思議そうに聞いてきた。
「なぜ聖女様とマサコ様はお仕事をされるおつもりなのですか?」
何もしなくてもトルゴードのお城で暮らしていけるのに、どうして仕事をしようとしているのか。
そう言われてみればそうだ。浄化をする代わりに一生面倒を見てもらうというのは、浄化の報酬を年金としてもらうようなものだと考えればいい。きっとこの国は私たちの一生を保障してくれる。
けれど、いつどこで国の方針が変わるか分からないから、そんな不確かなものに身を任せるのが怖い。
もう面倒は見ないと放り出された時に、収入を得るための手段が全くないという状況に陥るのが怖いのだ。その時になって働こうと思っても、常識も何もかもが違うこの世界ですぐに生計を立てていける気がしない。
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