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2.5章 護衛騎士の理不尽な日々
5. 宿
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「フレイグラン様、あの方は」
「私はただの護衛です。通常の対応をお願いします」
まあそうだろう。護衛騎士としての俺を知っている人は、下町や冒険者にはいないかもしれないが、こういう大手の商会も出入りするようなところなら、当然いるだろう。
俺が護衛についていることから、正体は分からずとも王族の後見を受けている人だと目星をつけたのか、商業ギルドが出してきた物件は、普通なら最後に勿体つけて出してくるような、いいものばかりだ。
マサコさんはそんなやり取りには気付かず、もともと宿として使われていたところ、これから改装すれば使えるところなど出された物件を見ながら、ミュラさんとああでもないこうでもないと話している。
マサコさんはパームの失態の謝罪として受け取った金で、仲良くしているミュラさんと一緒に宿を始めることを決めた。
ミュラさんは本当に普通の庶民だ。夫と息子は植木職人、娘は役場の役人と結婚している、何の裏もない、人より少しおしゃべりなご婦人だ。マサコさんが仲良くしている人は全員、親族まで調査してある。
マサコさんを人質に取られると、聖女様を動かすことができるのだから、我々も慎重になる。
「レイ君、護衛がしやすいのはどこ?」
「建物が道路に面していない、こちらかこちらですね」
「そういうところは貴族も泊まるの?」
「貴族を泊めるためには、護衛も含めて随行が大人数になるため、部屋が足りません」
まあそれ以上に、貴族が泊まるのは、マサコさんが最初に泊まっていたような高級宿だ。
2つの物件から、マサコさんは王都の中心部より遠いほうを選んだ。そちらのほうが庭が広いのが気に入ったらしい。
「レイ君、お金を出して」
渡した袋から、言われた金額を出そうとして、その金貨1枚がいくらなのかが分からずミュラさんに聞いている。
「ねえ、これって1万バーク?10万バーク?」
「見たことないから知らないわよ」
「10万バークです」
ミュラさんが信じられないものを見るような目でマサコさんを見ている。まあそうだろうな。この金貨を庶民が目にすることはない。
対照的に、その場で全額払いカギを受け取ったマサコさんは満足そうだ。
宿の開店に向けてマサコさんは慌ただしく準備をしている。
聖女様が王都に戻られたにもかかわらず、王城へ行かずに準備に専念していると、聖女様の侍女のローズから伝言が届いた。
「マサコさん」
「今忙しいの。後にして」
「……聖女様がお呼びです」
「ちょっと、なんで早くそれを言わないのよ。行くわよ」
マサコさんはちょっと思い込みが激しいと思う。理不尽すぎる。
急いで向かった王城で、聖女様は浄化に行った先の街で来るのが遅いと住民に言われたことにショックを受けられ、部屋に籠っていらっしゃると知った。護衛は何をしていたのだ。
マサコさんはしばらく王城に泊まることをミュラさんに伝えに行くと言うので、護衛として付き添う。
「ねえ、護衛ってただ暴力を振るわれないようにしていればいいの?」
「違います。今回のことは護衛の落ち度です。申し訳ございません」
「後、前から思ってたんだけど、女性の部屋に、寝室には入らないとはいえ、王太子が出入りすることに問題はないの?」
「……」
大いに問題がある。その女性は殿下のお手付きと思われる可能性があるからだ。
ただし、王太子殿下のお手付きになることを望む女性はいても、拒む女性はいない。だから殿下はそれが問題があるとお気付きでない。そして殿下と聖女様の婚姻を望んでいる周りの者は、誰もそれを指摘しない。
答えに詰まった俺に、マサコさんはそれ以上聞いてこなかった。
翌日騎士団長に呼び出され執務室に向かうと、思わぬことを言われた。
その時初めてマサコさんが何を思って城を出たのかを知った。
「マサコ殿が始める宿に聖女様をお泊めすることになった。マサコ殿が始める宿の隣が幸い空いていたので、そこを護衛の待機場所にする」
「団長、幸い空いていたのではありません。空いているところを選んだのです」
「どういうことだ」
「物件を選ぶときに聞かれました。護衛がしやすいのはどれかと。最初から聖女様を泊めるつもりで隣が空いている物件を選んだのでしょう」
あの時、貴族が泊まる場合は、と聞いたのは、おそらく聖女様の護衛のことを想定していたのだ。
マサコさんが王城を出たのは、聖女様を王城から出すためだ。
それだけ陛下と王太子殿下に対して信用がないのだ。
「私はただの護衛です。通常の対応をお願いします」
まあそうだろう。護衛騎士としての俺を知っている人は、下町や冒険者にはいないかもしれないが、こういう大手の商会も出入りするようなところなら、当然いるだろう。
俺が護衛についていることから、正体は分からずとも王族の後見を受けている人だと目星をつけたのか、商業ギルドが出してきた物件は、普通なら最後に勿体つけて出してくるような、いいものばかりだ。
マサコさんはそんなやり取りには気付かず、もともと宿として使われていたところ、これから改装すれば使えるところなど出された物件を見ながら、ミュラさんとああでもないこうでもないと話している。
マサコさんはパームの失態の謝罪として受け取った金で、仲良くしているミュラさんと一緒に宿を始めることを決めた。
ミュラさんは本当に普通の庶民だ。夫と息子は植木職人、娘は役場の役人と結婚している、何の裏もない、人より少しおしゃべりなご婦人だ。マサコさんが仲良くしている人は全員、親族まで調査してある。
マサコさんを人質に取られると、聖女様を動かすことができるのだから、我々も慎重になる。
「レイ君、護衛がしやすいのはどこ?」
「建物が道路に面していない、こちらかこちらですね」
「そういうところは貴族も泊まるの?」
「貴族を泊めるためには、護衛も含めて随行が大人数になるため、部屋が足りません」
まあそれ以上に、貴族が泊まるのは、マサコさんが最初に泊まっていたような高級宿だ。
2つの物件から、マサコさんは王都の中心部より遠いほうを選んだ。そちらのほうが庭が広いのが気に入ったらしい。
「レイ君、お金を出して」
渡した袋から、言われた金額を出そうとして、その金貨1枚がいくらなのかが分からずミュラさんに聞いている。
「ねえ、これって1万バーク?10万バーク?」
「見たことないから知らないわよ」
「10万バークです」
ミュラさんが信じられないものを見るような目でマサコさんを見ている。まあそうだろうな。この金貨を庶民が目にすることはない。
対照的に、その場で全額払いカギを受け取ったマサコさんは満足そうだ。
宿の開店に向けてマサコさんは慌ただしく準備をしている。
聖女様が王都に戻られたにもかかわらず、王城へ行かずに準備に専念していると、聖女様の侍女のローズから伝言が届いた。
「マサコさん」
「今忙しいの。後にして」
「……聖女様がお呼びです」
「ちょっと、なんで早くそれを言わないのよ。行くわよ」
マサコさんはちょっと思い込みが激しいと思う。理不尽すぎる。
急いで向かった王城で、聖女様は浄化に行った先の街で来るのが遅いと住民に言われたことにショックを受けられ、部屋に籠っていらっしゃると知った。護衛は何をしていたのだ。
マサコさんはしばらく王城に泊まることをミュラさんに伝えに行くと言うので、護衛として付き添う。
「ねえ、護衛ってただ暴力を振るわれないようにしていればいいの?」
「違います。今回のことは護衛の落ち度です。申し訳ございません」
「後、前から思ってたんだけど、女性の部屋に、寝室には入らないとはいえ、王太子が出入りすることに問題はないの?」
「……」
大いに問題がある。その女性は殿下のお手付きと思われる可能性があるからだ。
ただし、王太子殿下のお手付きになることを望む女性はいても、拒む女性はいない。だから殿下はそれが問題があるとお気付きでない。そして殿下と聖女様の婚姻を望んでいる周りの者は、誰もそれを指摘しない。
答えに詰まった俺に、マサコさんはそれ以上聞いてこなかった。
翌日騎士団長に呼び出され執務室に向かうと、思わぬことを言われた。
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「どういうことだ」
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