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3年目 トゥレボル編
6. お米の敵退治
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「水田にいるヒーディという小さな魔物がいるのですが、人の血を吸うのです」
それって、ヒル? ナメクジの親戚みたいなやつだよね? ウィオは全くぴんと来ていないようだけど、オルデキアの沼地にはいないのかな。
「捕まえるのは簡単なのですが、斬ると爆発するので、始末が厄介なのです」
「爆発?」
ギルド職員の説明によると、ヒルを捕まえるのは簡単なんだけど、斬ったり踏みつぶしたりすると、爆発するらしい。毎年水田で間違って踏んで足を怪我する事故があるそうだ。
それでヒルが増える夏になる前に、一帯の水田からヒルを集めてわざと爆発させるんだけど、まあまあ危険なので氷の神子であるウィオに参加してほしいそうだ。氷魔法が使えるウィオがいれば、爆発の規模が大きくなっても抑え込める。
まずはヒルをみてみようということで、ギルド職員と一緒に現地調査だ。
近くの水田に出向いて、爆発させずに処理できないかを確認する。
ギルド職員が田んぼで作業していた人に声をかけると、しばらく田んぼの中を探していた人が、両手に何かを乗せて近づいてきた。
「これでいいか?」
「ありがとう。神子様、これがヒーディです。衝撃を与えると爆発しますので、お気を付けください」
え、ヒルって、ナメクジくらいの大きさだよね? このヒル、オレの尻尾と同じくらいの大きさなんだけど。この大きさに血を吸われたら、貧血になりそうだよ。口があるところに触らなければ大丈夫ってことだけど、素手で触るなんてすごいな。
それに、これを間違って踏むってどういう状況?
「予想よりも大きいな」
「ええ。間違って踏んでしまうのは小さいものです。さすがにこのサイズになると気づきますので」
それでも、まれに水と土で見えなくて踏むこともあるらしい。田んぼにこんな危険物がいるなんて、これはお米の敵として根こそぎ退治しなければ。
まずはどうやって処理しているのかを見せてもらおう。いつもは、道にヒルを置いて、遠くから石を投げて衝撃で爆発させるそうだ。どれくらいの威力か分からないから、オレたちの周りに結界を張って、万が一に備える。
「行きます」
パーン!
爆竹みたいな音がして、ヒルが爆発した。地面はえぐれていないから、そこまでの威力はないように見えるけど、水風船が破裂した感じなんだろうか。でも足を怪我するってことはそれなりに破壊力はあるってことだよねえ。
これを集めて爆発させるのは、たしかに危険がありそうな気もするから、他に処理方法はないかな。ナメクジなら塩をかけて退治できるけど、この大きさを集めて処理するとなると、塩が馬車一台じゃ足りない気がする。
『凍らせて粉々にするのは?』
「そうだな。試してみるか」
農夫さんにお願いしてさらに一匹捕まえてもらって、凍らせたヒルを剣で斬ると、真っ二つに割れた。それが溶けても爆発しないか慎重に見守っていたけど、溶けても爆発しなかったし、溶けたものに衝撃を与えても問題なかった。ウィオがいるなら、この方法が正解のようだ。
「一斉駆除のときは、ヒーディを凍らせてもらえますか? それを集めてたたき割るのは、別の冒険者に依頼します」
「分かりました」
衝撃を与えると爆発するから、今までは一か所に集めることはしていなかったけど、凍らせれば爆発しないことが分かったので、集めて効率よく処理していく作戦だ。
『ねえ、それって一日がかりの作業?』
「だろうな」
『だったら、パラパラチャーハンをお弁当にしてもらおう!』
「言うと思った。宿に頼んでおこう」
えへへ。ウィオがオレのお米愛を正しく理解してくれている。うれしいなあ。
一斉討伐当日。氷の神子様が参加するといううわさが広がって、街の人ほぼ総出で、水田へと駆除に出ている。街の外なので、ヒルだけじゃなくて、普通の魔物に襲われる可能性もあるので、護衛として冒険者もいる。
ちょっとしたお祭りっぽい雰囲気に、子どもたちも行きたいと、門の前で駄々をこねていたけど、大人たちに止められていた。
オレたちはお馬さんに乗って、水田の間をうろうろして、道に置かれているヒルを凍らせてまわる係だ。
道端で大きなナメクジみたいなのがうねうねしているのは、あまり見たい風景じゃない。しかもやつらは憎きお米の敵だ。ウィオ、芯まで凍らせちゃって。
「神子様ー、こっちもお願いしまーす」
「今行く」
長い時間道に置いておくと逃げ出してしまうので、あちこちから呼ばれている。ウィオだけでは手が回らないので、これはオレの雪チートも使う場面だね。お米のためなら頑張っちゃうよ。
呼んでいる人のところへたたたっと走って近寄ると、オレがヒルに近寄らないようにブロックされた。遊びに来たと思われたかな。
「狐、近づくな。血を吸われるぞ」
『キャン』
お気づかいありがとう。でも大丈夫だよ。オレはお利口な使役獣だってところを見てて。ピュー。
雪をたくさん吹き出して、ヒルを雪に埋めた。本当はそんなことしなくても凍らせることはできるんだけど、雪に埋もれて凍ったというふうに見せかける。見た目は塩を振りかけられたナメクジみたいだけど。
「狐、お前も氷魔法が使えるのか。すごいな」
『キャン』
すごいでしょ。氷魔法じゃないんだけど、だいたい正解ってことで。
よしよし、と頭をなでられそうになったので、急いで逃げた。なでるのはいいけど、泥だらけの手はちょっと勘弁。
オレに逃げられてぼう然とした農夫さんは、我に返って自分の手を見てから謝ってくれたので、尻尾を振って返事をしておいた。なでるのは手を洗ってからにしてね。
それって、ヒル? ナメクジの親戚みたいなやつだよね? ウィオは全くぴんと来ていないようだけど、オルデキアの沼地にはいないのかな。
「捕まえるのは簡単なのですが、斬ると爆発するので、始末が厄介なのです」
「爆発?」
ギルド職員の説明によると、ヒルを捕まえるのは簡単なんだけど、斬ったり踏みつぶしたりすると、爆発するらしい。毎年水田で間違って踏んで足を怪我する事故があるそうだ。
それでヒルが増える夏になる前に、一帯の水田からヒルを集めてわざと爆発させるんだけど、まあまあ危険なので氷の神子であるウィオに参加してほしいそうだ。氷魔法が使えるウィオがいれば、爆発の規模が大きくなっても抑え込める。
まずはヒルをみてみようということで、ギルド職員と一緒に現地調査だ。
近くの水田に出向いて、爆発させずに処理できないかを確認する。
ギルド職員が田んぼで作業していた人に声をかけると、しばらく田んぼの中を探していた人が、両手に何かを乗せて近づいてきた。
「これでいいか?」
「ありがとう。神子様、これがヒーディです。衝撃を与えると爆発しますので、お気を付けください」
え、ヒルって、ナメクジくらいの大きさだよね? このヒル、オレの尻尾と同じくらいの大きさなんだけど。この大きさに血を吸われたら、貧血になりそうだよ。口があるところに触らなければ大丈夫ってことだけど、素手で触るなんてすごいな。
それに、これを間違って踏むってどういう状況?
「予想よりも大きいな」
「ええ。間違って踏んでしまうのは小さいものです。さすがにこのサイズになると気づきますので」
それでも、まれに水と土で見えなくて踏むこともあるらしい。田んぼにこんな危険物がいるなんて、これはお米の敵として根こそぎ退治しなければ。
まずはどうやって処理しているのかを見せてもらおう。いつもは、道にヒルを置いて、遠くから石を投げて衝撃で爆発させるそうだ。どれくらいの威力か分からないから、オレたちの周りに結界を張って、万が一に備える。
「行きます」
パーン!
爆竹みたいな音がして、ヒルが爆発した。地面はえぐれていないから、そこまでの威力はないように見えるけど、水風船が破裂した感じなんだろうか。でも足を怪我するってことはそれなりに破壊力はあるってことだよねえ。
これを集めて爆発させるのは、たしかに危険がありそうな気もするから、他に処理方法はないかな。ナメクジなら塩をかけて退治できるけど、この大きさを集めて処理するとなると、塩が馬車一台じゃ足りない気がする。
『凍らせて粉々にするのは?』
「そうだな。試してみるか」
農夫さんにお願いしてさらに一匹捕まえてもらって、凍らせたヒルを剣で斬ると、真っ二つに割れた。それが溶けても爆発しないか慎重に見守っていたけど、溶けても爆発しなかったし、溶けたものに衝撃を与えても問題なかった。ウィオがいるなら、この方法が正解のようだ。
「一斉駆除のときは、ヒーディを凍らせてもらえますか? それを集めてたたき割るのは、別の冒険者に依頼します」
「分かりました」
衝撃を与えると爆発するから、今までは一か所に集めることはしていなかったけど、凍らせれば爆発しないことが分かったので、集めて効率よく処理していく作戦だ。
『ねえ、それって一日がかりの作業?』
「だろうな」
『だったら、パラパラチャーハンをお弁当にしてもらおう!』
「言うと思った。宿に頼んでおこう」
えへへ。ウィオがオレのお米愛を正しく理解してくれている。うれしいなあ。
一斉討伐当日。氷の神子様が参加するといううわさが広がって、街の人ほぼ総出で、水田へと駆除に出ている。街の外なので、ヒルだけじゃなくて、普通の魔物に襲われる可能性もあるので、護衛として冒険者もいる。
ちょっとしたお祭りっぽい雰囲気に、子どもたちも行きたいと、門の前で駄々をこねていたけど、大人たちに止められていた。
オレたちはお馬さんに乗って、水田の間をうろうろして、道に置かれているヒルを凍らせてまわる係だ。
道端で大きなナメクジみたいなのがうねうねしているのは、あまり見たい風景じゃない。しかもやつらは憎きお米の敵だ。ウィオ、芯まで凍らせちゃって。
「神子様ー、こっちもお願いしまーす」
「今行く」
長い時間道に置いておくと逃げ出してしまうので、あちこちから呼ばれている。ウィオだけでは手が回らないので、これはオレの雪チートも使う場面だね。お米のためなら頑張っちゃうよ。
呼んでいる人のところへたたたっと走って近寄ると、オレがヒルに近寄らないようにブロックされた。遊びに来たと思われたかな。
「狐、近づくな。血を吸われるぞ」
『キャン』
お気づかいありがとう。でも大丈夫だよ。オレはお利口な使役獣だってところを見てて。ピュー。
雪をたくさん吹き出して、ヒルを雪に埋めた。本当はそんなことしなくても凍らせることはできるんだけど、雪に埋もれて凍ったというふうに見せかける。見た目は塩を振りかけられたナメクジみたいだけど。
「狐、お前も氷魔法が使えるのか。すごいな」
『キャン』
すごいでしょ。氷魔法じゃないんだけど、だいたい正解ってことで。
よしよし、と頭をなでられそうになったので、急いで逃げた。なでるのはいいけど、泥だらけの手はちょっと勘弁。
オレに逃げられてぼう然とした農夫さんは、我に返って自分の手を見てから謝ってくれたので、尻尾を振って返事をしておいた。なでるのは手を洗ってからにしてね。
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