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3年目 オルデキア西部・マトゥオーソ編
13. 暇つぶし
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王都に到着してからしばらくは商人さんおススメの宿に泊まっている。万が一に備えて、依頼の終わる予定の日から宿の予約日までに余裕を持たせてあるのだ。
普通の宿は、このあたりに泊まりに行きますって言ってもちゃんとした予約じゃなくて、遅れてもかまわないし、遅れて空いていなかったら泊まれないから他の宿を探してねっていう緩い感じだけど、人気店はそうもいかない。
ずっと商会と一緒に移動してきたので、ウィオとオレだけののんびりした時間を過ごして疲れをとったけど、予約の日までもう少し残っている。
『ウィオ、明日と明後日はなにをする?』
「王都観光でもするか?」
『うーん、それは、後でもできるよね』
「だったら、何か依頼を受けるか?」
あんまり働きたい気分ではないんだけど、何もしないのも暇だよね。
オレはいつも働いてないって? 道中ちゃんと警戒のお仕事してたでしょう。盗賊だって見つけたし、スープも守ったよ。何よりみんなに癒やしを提供するという大切なお仕事を二十四時間してるでしょ。
「レリアの実を探しに行くか?」
『キャン!』
そうだった。今、幻の果物がまさに旬のはずだ。
でも、ギルドに言うとまた同行者をつけてたくさん収穫してって言われちゃうから、こっそり行こう。
『ウィオのその髪の毛を隠せば目立たないよ』
「ルジェで気づかれるだろう」
『オレはウィオのリュックに入ってるよ』
銀色の髪の冒険者が銀色の狐を連れていたら、幻の果物を取りにきたウィオだと見つかって後をつけられそうだから、人目があるところではリュックに入っていよう。
美食の街ガストーまでは一日かからない。お馬さんのちょっと速足で行くと、今日の日が暮れる前に、幻の果物がある森に一番近い村まで行けるはずだ。そこでお馬さんを預けて森の中に入って、今夜は森で過ごすつもりでいる。朝から行くと冒険者が多いので、見つかって騒動になるのは避けたい。
馬車は宿に預かってもらって、お馬さんに乗って身軽に街道を移動中だ。
ウィオは濃い色の布でバンダナのように髪を覆っている。そうすると雰囲気が変わって、氷の騎士とは見られないだろう。これは今後も使えるかも。
オレはまだリュックに入っていない。リュックに入るのは美食の街の近くになってからでいいだろう。
お馬さんがパカパカと快調に早歩きしてくれるので、予定より早く美食の街に着けそうだ。
街には入らずにそのまま森へと向かうんだけど、そろそろオレはリュックに入ろう。
すっぽりとリュックに入ってから頭を出すと、ぴったりだ。
「苦しくないか?」
『平気』
「こうやって見ると、思ったより小さいな」
実はすごく小顔なんだよ。オレの大部分って毛だからね。
ウィオがオレの頭の近くに手を持ってきたので、耳を倒して待っていたら、笑われた。
「なでるのを待ってるのか」
『フェイントしないでよ』
いっぱいなでてよ。頭の上も、首の下も、耳の横も、たくさんなでて。
ウィオとじゃれあっていたら、お馬さんが「ヒヒン」と鳴き声をあげた。
『ウィオ、お馬さんもなでてほしいって』
「トラン、いつもたくさん走ってくれてありがとう。よしよし」
ウィオが馬上から首のあたりをゆっくり何度もなでると、お馬さんがうれしそうに、いなないた。
お天気のいい街道で、なんだかとっても平和なお昼下がりだ。
森の入り口の村について、お馬さんを預けるお願いをしているんだけど、前にも来たウィオだとは気づかれていない。まあたくさん来るから単純に覚えていないだけかもしれないけど。
オレはリュックに頭まですっぽり入って、会話だけ聞いている。
「今から森へ行くのか? 雨も降りそうだし、今日は村に泊まったらどうだ? 小屋なら貸せるぞ」
「ありがたいが、早朝から活動したいんだ」
「そうか。気をつけろよ」
もう日が暮れそうなのに森に入るというので心配してくれている。でもこの村で夜を過ごして朝から森に入ろうと泊まっている冒険者もいるから、ここにいるとバレる確率が上がっちゃう。
二年前にたくさん買取に出したことで、去年はたくさんの冒険者が幻の果実を探すために森に入ったらしいから、今年もいると思ったほうがいいだろう。
お馬さんに美味しい果物を採ってくると約束して、出発だ。
村の中でテントを張っている冒険者からも、夜は危ないぞって注意をもらったけど、夜しか採取できないものもあるので、そういうもの狙いだと思ってくれるだろう。
「ルジェ、つけてきているか?」
『いないよ。でも向かいから、森を出る人たちが来るよ』
冒険者に会わないように、道を選んで、去年果物を見つけたあたりを目掛けて進む。
でも少ししか進まないうちに、あたりが暗闇に包まれた。森の中は暗くなるのが早いね。
今日はここで休んで、明日の早朝から動き出そう。
荷物を減らして、収穫した実をたくさん持つため、今回テントは持ってきていない。一晩だけなので、オレの結界で過ごす。
森の中、テントもなくシュラフで寝ているところを見つかると驚いて心配されちゃうので、周りから見えなくなる結界を張っておこう。雨が降ってもいいように、水も通さないようにして、中の温度も快適にして。
『単独行動のときはテントいらないんじゃない?』
「私が落ち着かない」
じゃあ結界を不透明にしてとかいろいろ考えたけど、一度便利なものに慣れると戻れないからと、ウィオに却下された。団体行動が必要なときに困っちゃうか。
普通の宿は、このあたりに泊まりに行きますって言ってもちゃんとした予約じゃなくて、遅れてもかまわないし、遅れて空いていなかったら泊まれないから他の宿を探してねっていう緩い感じだけど、人気店はそうもいかない。
ずっと商会と一緒に移動してきたので、ウィオとオレだけののんびりした時間を過ごして疲れをとったけど、予約の日までもう少し残っている。
『ウィオ、明日と明後日はなにをする?』
「王都観光でもするか?」
『うーん、それは、後でもできるよね』
「だったら、何か依頼を受けるか?」
あんまり働きたい気分ではないんだけど、何もしないのも暇だよね。
オレはいつも働いてないって? 道中ちゃんと警戒のお仕事してたでしょう。盗賊だって見つけたし、スープも守ったよ。何よりみんなに癒やしを提供するという大切なお仕事を二十四時間してるでしょ。
「レリアの実を探しに行くか?」
『キャン!』
そうだった。今、幻の果物がまさに旬のはずだ。
でも、ギルドに言うとまた同行者をつけてたくさん収穫してって言われちゃうから、こっそり行こう。
『ウィオのその髪の毛を隠せば目立たないよ』
「ルジェで気づかれるだろう」
『オレはウィオのリュックに入ってるよ』
銀色の髪の冒険者が銀色の狐を連れていたら、幻の果物を取りにきたウィオだと見つかって後をつけられそうだから、人目があるところではリュックに入っていよう。
美食の街ガストーまでは一日かからない。お馬さんのちょっと速足で行くと、今日の日が暮れる前に、幻の果物がある森に一番近い村まで行けるはずだ。そこでお馬さんを預けて森の中に入って、今夜は森で過ごすつもりでいる。朝から行くと冒険者が多いので、見つかって騒動になるのは避けたい。
馬車は宿に預かってもらって、お馬さんに乗って身軽に街道を移動中だ。
ウィオは濃い色の布でバンダナのように髪を覆っている。そうすると雰囲気が変わって、氷の騎士とは見られないだろう。これは今後も使えるかも。
オレはまだリュックに入っていない。リュックに入るのは美食の街の近くになってからでいいだろう。
お馬さんがパカパカと快調に早歩きしてくれるので、予定より早く美食の街に着けそうだ。
街には入らずにそのまま森へと向かうんだけど、そろそろオレはリュックに入ろう。
すっぽりとリュックに入ってから頭を出すと、ぴったりだ。
「苦しくないか?」
『平気』
「こうやって見ると、思ったより小さいな」
実はすごく小顔なんだよ。オレの大部分って毛だからね。
ウィオがオレの頭の近くに手を持ってきたので、耳を倒して待っていたら、笑われた。
「なでるのを待ってるのか」
『フェイントしないでよ』
いっぱいなでてよ。頭の上も、首の下も、耳の横も、たくさんなでて。
ウィオとじゃれあっていたら、お馬さんが「ヒヒン」と鳴き声をあげた。
『ウィオ、お馬さんもなでてほしいって』
「トラン、いつもたくさん走ってくれてありがとう。よしよし」
ウィオが馬上から首のあたりをゆっくり何度もなでると、お馬さんがうれしそうに、いなないた。
お天気のいい街道で、なんだかとっても平和なお昼下がりだ。
森の入り口の村について、お馬さんを預けるお願いをしているんだけど、前にも来たウィオだとは気づかれていない。まあたくさん来るから単純に覚えていないだけかもしれないけど。
オレはリュックに頭まですっぽり入って、会話だけ聞いている。
「今から森へ行くのか? 雨も降りそうだし、今日は村に泊まったらどうだ? 小屋なら貸せるぞ」
「ありがたいが、早朝から活動したいんだ」
「そうか。気をつけろよ」
もう日が暮れそうなのに森に入るというので心配してくれている。でもこの村で夜を過ごして朝から森に入ろうと泊まっている冒険者もいるから、ここにいるとバレる確率が上がっちゃう。
二年前にたくさん買取に出したことで、去年はたくさんの冒険者が幻の果実を探すために森に入ったらしいから、今年もいると思ったほうがいいだろう。
お馬さんに美味しい果物を採ってくると約束して、出発だ。
村の中でテントを張っている冒険者からも、夜は危ないぞって注意をもらったけど、夜しか採取できないものもあるので、そういうもの狙いだと思ってくれるだろう。
「ルジェ、つけてきているか?」
『いないよ。でも向かいから、森を出る人たちが来るよ』
冒険者に会わないように、道を選んで、去年果物を見つけたあたりを目掛けて進む。
でも少ししか進まないうちに、あたりが暗闇に包まれた。森の中は暗くなるのが早いね。
今日はここで休んで、明日の早朝から動き出そう。
荷物を減らして、収穫した実をたくさん持つため、今回テントは持ってきていない。一晩だけなので、オレの結界で過ごす。
森の中、テントもなくシュラフで寝ているところを見つかると驚いて心配されちゃうので、周りから見えなくなる結界を張っておこう。雨が降ってもいいように、水も通さないようにして、中の温度も快適にして。
『単独行動のときはテントいらないんじゃない?』
「私が落ち着かない」
じゃあ結界を不透明にしてとかいろいろ考えたけど、一度便利なものに慣れると戻れないからと、ウィオに却下された。団体行動が必要なときに困っちゃうか。
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