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3年目 オルデキア西部・マトゥオーソ編
7. 新作お披露目
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次の日、美味しい豆スープを朝ご飯に食べて、先の街へ出発だ。
盗賊たちは、一つの馬車にぎゅうぎゅうに押し込まれて運ばれている。その馬車に入っていた荷物は、オレたちの馬車の空いていた部分に詰め込んだ。それでも乗らない荷物は、盗賊が置いていったお馬さんに背負ってもらっている。
「狐は何を背負ってるんだ?」
「昼食だ」
ここで、お母さんに作ってもらったリュックの出番だよ。じゃじゃーん。
いいでしょう、オレ専用の高性能リュック。身体に沿って安定するように、お腹のところでも止める登山用のリュックのような作りだ。布も色も柄も各種そろっていて、防水のリュックもあるので、ご飯を入れるため、薬草を入れるためと用途に合わせて使い分けもできるよ。
オレたちの馬車の荷台はスカスカだったから、オレのための干し肉はいつでも取り出せたんだけど、今は他の馬車の荷物が詰め込まれているからそうもいかない。
荷物の詰め替えのときに、オレの干し肉の入っている箱を手前においてほしいとウィオにお願いしたんだけど、それは聞き届けられなかった代わりに、リュックを背負わせてそこに全種類の干し肉を詰めてくれた。これなら食べたいものがいつでも取り出せる。
リュックには今年から登場した干し魚も入っている。干し魚は、オルデキアの南部のお魚を取り寄せて作ってくれたものだ。去年お屋敷に大量に送ったことで、いいお魚を大量に手に入れる伝手ができたらしい。冬に帰ったときにはすでに干し魚の試作品がたくさんできていた。
「氷の騎士様、これはどちらの品ですか?」
「侯爵家の針子が作った」
商人さんがオレのリュックに興味を持ったけど、これはオレ専属のお針子さんが作ってくれたものだから非売品だ。
商品開発には、とことん付き合った。たくさんの試作品を試着して、この形になったのだ。特に前足の付け根周りが自由に動くように、それはもう何度も何度も、何度も何度も……。
ウィオは、オレが欲しいと言ったんだからって、最後まで助けてくれなかった。途中からは、オレの首周りの毛がきれいに見えるには、どの角度の切込みがいいかって、機能性とは関係ない話になってたのに。
だけど、おかげでとってもいいものができたから、お針子さんとお母さんには感謝してる。
「軍用犬にも使えるのではないでしょうか」
「侯爵家と話してくれ」
商機を嗅ぎつけたみたいだけど、軍用犬はオレみたいにお遊びじゃないから、邪魔になるんじゃないかなあ。
実際に使用してみたのは、お屋敷のお庭だけだから、走り回ったといっても本気じゃない。それに森の中を走り回って引っかかっちゃったときの安全性も分からない。お母さんたちはオレの正体を知っているから、作るときに考慮してないだろうし。
お城の犬たちの世話係たちのほうが注文が厳しいかもしれない。
ま、そのあたりは商人さんが考えるでしょう。
オレの新装備はさておき、出発だ。
先頭を進むお馬さんに乗って、魔物の接近を知らせるのがオレのお仕事だ。
『集団で出てくるよ』
「集団が来る。本隊はこのまま先に進め」
ウィオの掛け声で、馬に乗っている護衛が馬車から離れて、森から出てくる魔物を迎え撃つ。オレがいると奇襲される可能性が低いから、今のところ馬車まで到達した魔物はいない。
今回も危なげなく倒して、各自持ち場へと帰っていく動きには無駄がない。さすが大手商会の護衛だけあって、慣れているので、すごくやりやすい。
昼食は、街道の脇に馬車を停めて、簡単に済ませよう。危険地帯はさっさと通り過ぎてしまいたいので、今日は休憩はなしだ。
オレはウィオにリュックから干し魚を出してもらって、はむはむしている。今日はなんとなくお魚の気分なのだ。
でも、スープがあるのに慣れちゃったから、なんとなく物足りない。美味しいって、ときには罪作りなんだね。
「ルジェ、もう少し食べるか?」
『もういいよ。ウィオのご飯が終わったら、お馬さんの様子を見にいこう』
ご飯を簡単に済ませたら、お馬さんたちの回診だ。ずらっと長い行列だから、オレもお馬さんに乗ったまま進む。足が痛いお馬さんはお知らせしてねー。
『ウィオ、この子がのどが渇いたって』
「そうか」
うなずいたウィオが、お馬さんの目の前に、ウォーターボールを出した。もしかして、そこから飲めってこと?
御者の護衛も目を丸くしている。
「えっと、これは……?」
「のどが渇いたらしい」
突然目の前に現れたものに最初は戸惑っていたお馬さんも、鼻を突っ込んでみて安全だと納得できたようで飲み始めた。
ウィオ、もしかして、今までもそうやってお水あげてたの? お馬さんもびっくりだよね。部隊長さんなら、小さな球を作ってお馬さんの口に入れてくれそうだけど、細かい調節が苦手なウィオには無理なんだろう。
それからも、のどが渇いたというお馬さんの目の前に水を出して、護衛や商人が慌てて桶を出してきていた。先に桶はあるかって聞いてあげないあたりがウィオだ。
お昼休憩後、だいぶ街に近づいたところで、向かいから走ってくる馬の足音に気が付いた。
『馬が何頭か走ってくる』
「盗賊か?」
『統制が取れてるから兵士じゃないかな』
「昨夜の照明弾か」
去年もこのパターンで来てくれたのは兵士だったから、今回もそうじゃないかな。
照明弾は暗闇に紛れている盗賊を驚かすのが目的だったけど、この先の街から見えたのかもしれない。
盗賊たちは、一つの馬車にぎゅうぎゅうに押し込まれて運ばれている。その馬車に入っていた荷物は、オレたちの馬車の空いていた部分に詰め込んだ。それでも乗らない荷物は、盗賊が置いていったお馬さんに背負ってもらっている。
「狐は何を背負ってるんだ?」
「昼食だ」
ここで、お母さんに作ってもらったリュックの出番だよ。じゃじゃーん。
いいでしょう、オレ専用の高性能リュック。身体に沿って安定するように、お腹のところでも止める登山用のリュックのような作りだ。布も色も柄も各種そろっていて、防水のリュックもあるので、ご飯を入れるため、薬草を入れるためと用途に合わせて使い分けもできるよ。
オレたちの馬車の荷台はスカスカだったから、オレのための干し肉はいつでも取り出せたんだけど、今は他の馬車の荷物が詰め込まれているからそうもいかない。
荷物の詰め替えのときに、オレの干し肉の入っている箱を手前においてほしいとウィオにお願いしたんだけど、それは聞き届けられなかった代わりに、リュックを背負わせてそこに全種類の干し肉を詰めてくれた。これなら食べたいものがいつでも取り出せる。
リュックには今年から登場した干し魚も入っている。干し魚は、オルデキアの南部のお魚を取り寄せて作ってくれたものだ。去年お屋敷に大量に送ったことで、いいお魚を大量に手に入れる伝手ができたらしい。冬に帰ったときにはすでに干し魚の試作品がたくさんできていた。
「氷の騎士様、これはどちらの品ですか?」
「侯爵家の針子が作った」
商人さんがオレのリュックに興味を持ったけど、これはオレ専属のお針子さんが作ってくれたものだから非売品だ。
商品開発には、とことん付き合った。たくさんの試作品を試着して、この形になったのだ。特に前足の付け根周りが自由に動くように、それはもう何度も何度も、何度も何度も……。
ウィオは、オレが欲しいと言ったんだからって、最後まで助けてくれなかった。途中からは、オレの首周りの毛がきれいに見えるには、どの角度の切込みがいいかって、機能性とは関係ない話になってたのに。
だけど、おかげでとってもいいものができたから、お針子さんとお母さんには感謝してる。
「軍用犬にも使えるのではないでしょうか」
「侯爵家と話してくれ」
商機を嗅ぎつけたみたいだけど、軍用犬はオレみたいにお遊びじゃないから、邪魔になるんじゃないかなあ。
実際に使用してみたのは、お屋敷のお庭だけだから、走り回ったといっても本気じゃない。それに森の中を走り回って引っかかっちゃったときの安全性も分からない。お母さんたちはオレの正体を知っているから、作るときに考慮してないだろうし。
お城の犬たちの世話係たちのほうが注文が厳しいかもしれない。
ま、そのあたりは商人さんが考えるでしょう。
オレの新装備はさておき、出発だ。
先頭を進むお馬さんに乗って、魔物の接近を知らせるのがオレのお仕事だ。
『集団で出てくるよ』
「集団が来る。本隊はこのまま先に進め」
ウィオの掛け声で、馬に乗っている護衛が馬車から離れて、森から出てくる魔物を迎え撃つ。オレがいると奇襲される可能性が低いから、今のところ馬車まで到達した魔物はいない。
今回も危なげなく倒して、各自持ち場へと帰っていく動きには無駄がない。さすが大手商会の護衛だけあって、慣れているので、すごくやりやすい。
昼食は、街道の脇に馬車を停めて、簡単に済ませよう。危険地帯はさっさと通り過ぎてしまいたいので、今日は休憩はなしだ。
オレはウィオにリュックから干し魚を出してもらって、はむはむしている。今日はなんとなくお魚の気分なのだ。
でも、スープがあるのに慣れちゃったから、なんとなく物足りない。美味しいって、ときには罪作りなんだね。
「ルジェ、もう少し食べるか?」
『もういいよ。ウィオのご飯が終わったら、お馬さんの様子を見にいこう』
ご飯を簡単に済ませたら、お馬さんたちの回診だ。ずらっと長い行列だから、オレもお馬さんに乗ったまま進む。足が痛いお馬さんはお知らせしてねー。
『ウィオ、この子がのどが渇いたって』
「そうか」
うなずいたウィオが、お馬さんの目の前に、ウォーターボールを出した。もしかして、そこから飲めってこと?
御者の護衛も目を丸くしている。
「えっと、これは……?」
「のどが渇いたらしい」
突然目の前に現れたものに最初は戸惑っていたお馬さんも、鼻を突っ込んでみて安全だと納得できたようで飲み始めた。
ウィオ、もしかして、今までもそうやってお水あげてたの? お馬さんもびっくりだよね。部隊長さんなら、小さな球を作ってお馬さんの口に入れてくれそうだけど、細かい調節が苦手なウィオには無理なんだろう。
それからも、のどが渇いたというお馬さんの目の前に水を出して、護衛や商人が慌てて桶を出してきていた。先に桶はあるかって聞いてあげないあたりがウィオだ。
お昼休憩後、だいぶ街に近づいたところで、向かいから走ってくる馬の足音に気が付いた。
『馬が何頭か走ってくる』
「盗賊か?」
『統制が取れてるから兵士じゃないかな』
「昨夜の照明弾か」
去年もこのパターンで来てくれたのは兵士だったから、今回もそうじゃないかな。
照明弾は暗闇に紛れている盗賊を驚かすのが目的だったけど、この先の街から見えたのかもしれない。
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