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1年目 フェゴ編
7. グルメマップ
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しばらくして、誘拐団が捕まったという噂が街を駆け巡った。無事に拠点を見つけられたみたいだ。
ウィオもその噂を聞いてホッとした顔をしたので、精霊に聞いてよかった。
数日前から領兵や冒険者がバタバタと走り回っている気配がしていたから、珍しい魔物でも出たのかなと呑気に思ってたんだけど、多分この捕り物だったんだろう。
その間オレたちは何をしていたかというと、ちょこっと依頼に出かける以外はチョモを楽しんでいた。
今日は野菜チョモだ。オレには薄味でスープなしだけど、ウィオのためにはスパイスたっぷりのスープにチョモを入れて食べる他の地方の名物チョモも作ってくれた。毎日美味しい美味しいとチョモを食べるオレたちへの感謝だって言われたから、ありがたく食べている。
「きつねさん、はいどうぞ」
『キャン』
オレは近くのテーブルにいた子どもと一緒に食事中だ。
ウィオのスパイスたっぷりのスープでくしゃみが出ないように隣のテーブルでひとりで食べていたら、一緒にどうぞと誘ってくれた。
ふうふうと冷ましてから、オレの口元まで持ってきてくれるサービス付きだ。
子どもはご飯を食べ終わったのに、大人たちがまだ食べているので、食堂にいるのもちょっと飽きていたところにオレを見つけて、世話をしてくれているのだ。
この子は、隣街に住んでいる親戚のところに行く途中らしい。
子どもの誘拐が多発していることは混乱を招くからと伏せられていたので、捕まったという噂でそういう事件が起きたことを知った人が多い。この子の親も他人事じゃないと噂に恐ろしさを感じながらも、胸をなでおろしたそうだ。
そこに王子様たちが入ってきた。やっと事後処理が終わったのかな。
オレがウィオと違うテーブルで食べていることに驚いている。
「あれは、どうしたんだ?」
「スパイスでくしゃみが出るので避難している」
食べるときに匂いを遮断すると、全く味がしなくなる。風邪をひいたときにたまになるやつ、あんな感じ。だから、食べるときは鼻に空気が入ってくるようにしているんだけど、そうするとウィオの料理でくしゃみがでちゃうのだ。
そういえば、と王子様の幼馴染がテーブルの上に紙を出した。
「遅くなりましたが、チョモとスパイス料理がおススメのお店と宿のリストです」
『キャン!』
チョモマップきたー!
王子様が誘拐団の対応で忙しくなったのかこの宿で会わなくなったから、どうなるんだろうとちょっと心配してたんだよ。
「きつねさん、しょくじちゅうは、よそみしちゃダメ」
『キューン』
チョモマップに気をとられていたら、子どもに叱られちゃった。ごめんごめん。
きっとこの子がいつもそう言って親に叱られてるんだろう。お父さんがウィオにすみませんって謝っているけど、食堂中にほのぼのした空気が漂っている。
あーん、と残りのチョモを口元まで運んでくれるから食べよう。もぐもぐ。
可愛い子どもに可愛いオレ。最強コンビだよね。
「おいしい?」
『キャン』
子どもは大人たちの食事が終わるまで、オレの食事の世話をして、オレの食事が終わってからはオレを撫でてくれた。
ありがとね。元気に大きくなるんだよ。
子どもたち家族が引き上げたところで、ウィオのそばに移ると、お店の人が食後のチャイティーを持ってきてくれた。
もうスパイスのスープはなくなったから、くしゃみは出ない。
「そのスパイスは平気なのか」
「ああ。これもお気に入りだ」
「この国のものとして嬉しいな」
チョモもお茶も美味しいし、いい国だよね。
オレたちの夕食が終わったら、王子様が場所を移そうと言って、オレたちの部屋に来た。
扉の外で護衛が恨みがましい目でウィオを見ているけど、王子様は気にせず扉を閉めた。
「後処理が大体終わったので報告しておこうと思って」
「街にも噂が流れた」
「ああ。森の中にいた子どもたちは無事に親元へ返せそうだ。狐くんが気づいてくれたおかげだ」
よかったよかった。ウィオが気にしていたからね。
ただ、裏でこの国の貴族も関わってそうなので、その追及はこれからするらしい。それにすでに売られてしまった子どもたちも探す必要があるが、それにはクラギ王国の協力も必要だ。
王子様だから、いろいろやらないといけないことも多いんだろう。
オレたちにはずっとついていなくても大丈夫そうだと判断したようで、こっそりついてきたりはしないそうだ。もし何かあったら王子様の名前を出してギルドに助けを求めるように言われたので、もしものときは活用させてもらおう。
オレたちは目的のチョモマップももらったことだし、この国の王都へ向けて出発することにした。
その道中でチョモマップのチョモを食べよう。せっかく作ってもらったんだから、全部制覇しないと失礼だ。気合いが入るね。
それを告げると、王子様は部屋を出て行く前に、オレたちに向かって姿勢を正して深々と頭を下げた。
今日は消音の結界を張っていないので言葉はなかったけど、その態度で言いたいことは分かったよ。
この国を助けた訳じゃないけど、結果的にこの国の子どもたちも救うことになった。その感謝は素直に受け取ろう。
ウィオも頭を下げたので、オレも尻尾を振り返した。
チョモマップありがとね。バイバイ。
ウィオもその噂を聞いてホッとした顔をしたので、精霊に聞いてよかった。
数日前から領兵や冒険者がバタバタと走り回っている気配がしていたから、珍しい魔物でも出たのかなと呑気に思ってたんだけど、多分この捕り物だったんだろう。
その間オレたちは何をしていたかというと、ちょこっと依頼に出かける以外はチョモを楽しんでいた。
今日は野菜チョモだ。オレには薄味でスープなしだけど、ウィオのためにはスパイスたっぷりのスープにチョモを入れて食べる他の地方の名物チョモも作ってくれた。毎日美味しい美味しいとチョモを食べるオレたちへの感謝だって言われたから、ありがたく食べている。
「きつねさん、はいどうぞ」
『キャン』
オレは近くのテーブルにいた子どもと一緒に食事中だ。
ウィオのスパイスたっぷりのスープでくしゃみが出ないように隣のテーブルでひとりで食べていたら、一緒にどうぞと誘ってくれた。
ふうふうと冷ましてから、オレの口元まで持ってきてくれるサービス付きだ。
子どもはご飯を食べ終わったのに、大人たちがまだ食べているので、食堂にいるのもちょっと飽きていたところにオレを見つけて、世話をしてくれているのだ。
この子は、隣街に住んでいる親戚のところに行く途中らしい。
子どもの誘拐が多発していることは混乱を招くからと伏せられていたので、捕まったという噂でそういう事件が起きたことを知った人が多い。この子の親も他人事じゃないと噂に恐ろしさを感じながらも、胸をなでおろしたそうだ。
そこに王子様たちが入ってきた。やっと事後処理が終わったのかな。
オレがウィオと違うテーブルで食べていることに驚いている。
「あれは、どうしたんだ?」
「スパイスでくしゃみが出るので避難している」
食べるときに匂いを遮断すると、全く味がしなくなる。風邪をひいたときにたまになるやつ、あんな感じ。だから、食べるときは鼻に空気が入ってくるようにしているんだけど、そうするとウィオの料理でくしゃみがでちゃうのだ。
そういえば、と王子様の幼馴染がテーブルの上に紙を出した。
「遅くなりましたが、チョモとスパイス料理がおススメのお店と宿のリストです」
『キャン!』
チョモマップきたー!
王子様が誘拐団の対応で忙しくなったのかこの宿で会わなくなったから、どうなるんだろうとちょっと心配してたんだよ。
「きつねさん、しょくじちゅうは、よそみしちゃダメ」
『キューン』
チョモマップに気をとられていたら、子どもに叱られちゃった。ごめんごめん。
きっとこの子がいつもそう言って親に叱られてるんだろう。お父さんがウィオにすみませんって謝っているけど、食堂中にほのぼのした空気が漂っている。
あーん、と残りのチョモを口元まで運んでくれるから食べよう。もぐもぐ。
可愛い子どもに可愛いオレ。最強コンビだよね。
「おいしい?」
『キャン』
子どもは大人たちの食事が終わるまで、オレの食事の世話をして、オレの食事が終わってからはオレを撫でてくれた。
ありがとね。元気に大きくなるんだよ。
子どもたち家族が引き上げたところで、ウィオのそばに移ると、お店の人が食後のチャイティーを持ってきてくれた。
もうスパイスのスープはなくなったから、くしゃみは出ない。
「そのスパイスは平気なのか」
「ああ。これもお気に入りだ」
「この国のものとして嬉しいな」
チョモもお茶も美味しいし、いい国だよね。
オレたちの夕食が終わったら、王子様が場所を移そうと言って、オレたちの部屋に来た。
扉の外で護衛が恨みがましい目でウィオを見ているけど、王子様は気にせず扉を閉めた。
「後処理が大体終わったので報告しておこうと思って」
「街にも噂が流れた」
「ああ。森の中にいた子どもたちは無事に親元へ返せそうだ。狐くんが気づいてくれたおかげだ」
よかったよかった。ウィオが気にしていたからね。
ただ、裏でこの国の貴族も関わってそうなので、その追及はこれからするらしい。それにすでに売られてしまった子どもたちも探す必要があるが、それにはクラギ王国の協力も必要だ。
王子様だから、いろいろやらないといけないことも多いんだろう。
オレたちにはずっとついていなくても大丈夫そうだと判断したようで、こっそりついてきたりはしないそうだ。もし何かあったら王子様の名前を出してギルドに助けを求めるように言われたので、もしものときは活用させてもらおう。
オレたちは目的のチョモマップももらったことだし、この国の王都へ向けて出発することにした。
その道中でチョモマップのチョモを食べよう。せっかく作ってもらったんだから、全部制覇しないと失礼だ。気合いが入るね。
それを告げると、王子様は部屋を出て行く前に、オレたちに向かって姿勢を正して深々と頭を下げた。
今日は消音の結界を張っていないので言葉はなかったけど、その態度で言いたいことは分かったよ。
この国を助けた訳じゃないけど、結果的にこの国の子どもたちも救うことになった。その感謝は素直に受け取ろう。
ウィオも頭を下げたので、オレも尻尾を振り返した。
チョモマップありがとね。バイバイ。
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