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1年目 スフラル編
7. お城の水路掃除
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「ここの水路に水が入らないように止めてくれ」
「銀の、できるか?」
枝分かれしている水路の一つの流れを止めるということなので、ウィオがその枝の根元のところで水を凍らせた。
これで、上流から来た水は他のほうへ全て流れていく。
「この氷はいつまでもつんだ?」
「私が融かすまでもちます」
おお、と感嘆の声が上がるけど、多分今までは水魔法の人で順番にここをせき止めていたんだろうね。
水路はあちこちで合流しているので、今日掃除するところに流れ込む支流を全て止める必要がある。それを順番に凍らせていって、無事掃除をするところに流れ込む水がなくなった。
ということで、やることがなくなった。
ウィオの応援をしようと思ったんだけど、ウィオも水路の入り口を凍らせた後はただ作業を眺めているだけだ。
ゴミを集めたり、繁殖しちゃった藻を刈ったりしているのは、他の班の人たちだ。ウィオのお陰でやることがなくなった水魔法の人たちも、ゴミ拾いに参加している。最後にたまった泥を流したりするから、そこは水魔法が活躍するらしい。
暇だなーと、水が流れている水路をのぞき込んで、魚にちょいちょいと手を出してみたりしても、そんなに時間は潰せない。
「ルジェ、落ちるなよ」
『キャン!』
あんまりふらふらしていると騎士に斬られちゃうから、ウィオたちのそばをうろうろしてたけど、それも飽きちゃった。
監視のために同じところにずっと立っている騎士の足元でくつろいでいたら、いつの間にか寝てしまった。
――泳いでも、泳いでも、岸にぶつかったりしない。
――こんな広いところで思いっきり泳ぎたいというその願いが聞き届けられた。嬉しい。
ああ、これは夢だと分かる。確かそういうのって明晰夢って言うんだよね。
オレは今、カメになっている。
ひれで水をかくとスイスイ進む。気持ちいい。広い湖、最高! どこまでも泳いでいくよ。
「この狐はどうしたんだ」
「はっ。冒険者の使役獣です。途中からここで寝ています」
「……そうか」
オレのことを話してるみたいだけど、何かあったのかな。
目を開けると、監視の騎士のそばにいる別の騎士がオレをのぞき込んでいた。
あれ、オレ結構な時間寝てた?
『キュン』
「起きたのか。ずいぶんと緊張感のない使役獣だな」
暇すぎて本格的に寝ちゃったみたいだ。
いつもはちゃんとウィオのお手伝いする賢い狐だよ。
お座りしてアピールしてみるけど、遅かったみたいだ。
「私の使役獣が何かしましたか?」
「お前の狐か。呑気に寝ていたな」
『クーン』
急いでウィオの肩に乗って、仕事している雰囲気を出してみたんだけど、やっぱり誤魔化されてくれないみたいだ。
しかもオレが寝ている間に掃除が終わっていて、もう引き上げるだけだった。オレ、何にもしてないや。ウィオの応援もしてないし。
仕方ない。今日はお休みの日ってことで。
退城のために門まで送ってくれる騎士に尻尾を振ったら、にっこり笑って手を振ってくれた。
オレのせいで怒られたりしませんように。
「銀の、これからギルドに報告に行ってから飲むが、一緒にどうだ?」
「ルジェ、どうする?」
『楽しそうだから行こうよ』
「使役獣の入れるところで頼む。できれば薄味のチョモがあると嬉しい」
オレのためにウィオが頼んでくれたんだけど、冒険者がお前チョモが好きなのかと笑顔で首の下をこちょこちょしてくれる。地元の食べ物を好きって言われると嬉しいよね。
でもその前に、まずはギルドに抗議だな、と言っている。どうやらオレたちの代わりにあの受付の横暴に抗議してくれるみたいだ。
みんなでギルドへ移動することになったけど、騒動の予感にワクワクしちゃう。
「なあ、今日ギルド長いるか?」
「いますが、お城の掃除で何かありましたか?」
「リールがこの銀のに何も説明せずに強引に依頼を受けさせた」
依頼を終えて帰ってきている冒険者もいるので、なんだなんだと人が集まってきている。事が大きくなりそうな状況に、受付の人が急いでギルド長を呼びに行った。
ここのギルドの常連たちが、リールがまたやらかしたのか、みたいな話をしているので、強引なことをよくやってるみたいだ。
「ここを拠点にしている奴らは取り合わないから、あんたみたいな新顔にやるんだよ」
「このギルドの評判が落ちるんじゃないか?」
「定住しそうなやつにはやらないんだよ」
へえ。そういうのは考えてるんだ。オレたちの探していた宿が高級だから定住する気がないと思ったのかな。
悪知恵が働くから、クビを切るほどでもなかったわけね。まあでも今回まででしょ。
呼ばれて出てきたギルド長が、ウィオを見て驚いた顔をした。
「強引に受けさせられたというのは、まさか、氷の騎士か?」
「騎士?」
「ああ。オルデキア王国の元騎士だ。だから断ったんだが、気づいたら依頼を受けたことになっていた」
「ってことは、あんた貴族か?」
「籍を抜いて、今は平民だ」
ギルド内にこれはまずいぞ、という雰囲気が漂い始めた。
だよねー、オレの正体知らなくても、元とはいえ貴族にお掃除の依頼を押し付けちゃった上にお城に入れたんだから、やっぱりこの対応はまずいよね。
問題の受付もみんなからの視線を受けてさすがにヤバいって顔をしてる。周りもアイツ終わったなって感じで距離を置いている。
次は多分ないけど、反省してよね。
「すまない。リールのことはちゃんと処罰するので許してほしい」
「依頼受理の手続きを強引にしたことだけ、きちんと処罰してくれ」
ギルド長が頭を下げたので、一緒に依頼を受けた冒険者たちも、たまたま居合わせてお祭り騒ぎに乗っちゃおうかなとなっていた周りの冒険者たちも、引き下がった。
ウィオがオレたちの身分については気にしなくていいって言ったんだけど、それは元貴族って意味じゃなくて、神獣と契約者って言う意味だというのが通じているといいなあ。
オレに予知能力はないけど、いずれオレの正体も知らされちゃってギルド長が真っ青になる未来がはっきりと見えちゃうよ。
ギルド長、面白がってごめんね。お前が言うなって言われそうだけど、強く生きてね。
さて、騒動も楽しんだので、飲み会に行こう!
「銀の、できるか?」
枝分かれしている水路の一つの流れを止めるということなので、ウィオがその枝の根元のところで水を凍らせた。
これで、上流から来た水は他のほうへ全て流れていく。
「この氷はいつまでもつんだ?」
「私が融かすまでもちます」
おお、と感嘆の声が上がるけど、多分今までは水魔法の人で順番にここをせき止めていたんだろうね。
水路はあちこちで合流しているので、今日掃除するところに流れ込む支流を全て止める必要がある。それを順番に凍らせていって、無事掃除をするところに流れ込む水がなくなった。
ということで、やることがなくなった。
ウィオの応援をしようと思ったんだけど、ウィオも水路の入り口を凍らせた後はただ作業を眺めているだけだ。
ゴミを集めたり、繁殖しちゃった藻を刈ったりしているのは、他の班の人たちだ。ウィオのお陰でやることがなくなった水魔法の人たちも、ゴミ拾いに参加している。最後にたまった泥を流したりするから、そこは水魔法が活躍するらしい。
暇だなーと、水が流れている水路をのぞき込んで、魚にちょいちょいと手を出してみたりしても、そんなに時間は潰せない。
「ルジェ、落ちるなよ」
『キャン!』
あんまりふらふらしていると騎士に斬られちゃうから、ウィオたちのそばをうろうろしてたけど、それも飽きちゃった。
監視のために同じところにずっと立っている騎士の足元でくつろいでいたら、いつの間にか寝てしまった。
――泳いでも、泳いでも、岸にぶつかったりしない。
――こんな広いところで思いっきり泳ぎたいというその願いが聞き届けられた。嬉しい。
ああ、これは夢だと分かる。確かそういうのって明晰夢って言うんだよね。
オレは今、カメになっている。
ひれで水をかくとスイスイ進む。気持ちいい。広い湖、最高! どこまでも泳いでいくよ。
「この狐はどうしたんだ」
「はっ。冒険者の使役獣です。途中からここで寝ています」
「……そうか」
オレのことを話してるみたいだけど、何かあったのかな。
目を開けると、監視の騎士のそばにいる別の騎士がオレをのぞき込んでいた。
あれ、オレ結構な時間寝てた?
『キュン』
「起きたのか。ずいぶんと緊張感のない使役獣だな」
暇すぎて本格的に寝ちゃったみたいだ。
いつもはちゃんとウィオのお手伝いする賢い狐だよ。
お座りしてアピールしてみるけど、遅かったみたいだ。
「私の使役獣が何かしましたか?」
「お前の狐か。呑気に寝ていたな」
『クーン』
急いでウィオの肩に乗って、仕事している雰囲気を出してみたんだけど、やっぱり誤魔化されてくれないみたいだ。
しかもオレが寝ている間に掃除が終わっていて、もう引き上げるだけだった。オレ、何にもしてないや。ウィオの応援もしてないし。
仕方ない。今日はお休みの日ってことで。
退城のために門まで送ってくれる騎士に尻尾を振ったら、にっこり笑って手を振ってくれた。
オレのせいで怒られたりしませんように。
「銀の、これからギルドに報告に行ってから飲むが、一緒にどうだ?」
「ルジェ、どうする?」
『楽しそうだから行こうよ』
「使役獣の入れるところで頼む。できれば薄味のチョモがあると嬉しい」
オレのためにウィオが頼んでくれたんだけど、冒険者がお前チョモが好きなのかと笑顔で首の下をこちょこちょしてくれる。地元の食べ物を好きって言われると嬉しいよね。
でもその前に、まずはギルドに抗議だな、と言っている。どうやらオレたちの代わりにあの受付の横暴に抗議してくれるみたいだ。
みんなでギルドへ移動することになったけど、騒動の予感にワクワクしちゃう。
「なあ、今日ギルド長いるか?」
「いますが、お城の掃除で何かありましたか?」
「リールがこの銀のに何も説明せずに強引に依頼を受けさせた」
依頼を終えて帰ってきている冒険者もいるので、なんだなんだと人が集まってきている。事が大きくなりそうな状況に、受付の人が急いでギルド長を呼びに行った。
ここのギルドの常連たちが、リールがまたやらかしたのか、みたいな話をしているので、強引なことをよくやってるみたいだ。
「ここを拠点にしている奴らは取り合わないから、あんたみたいな新顔にやるんだよ」
「このギルドの評判が落ちるんじゃないか?」
「定住しそうなやつにはやらないんだよ」
へえ。そういうのは考えてるんだ。オレたちの探していた宿が高級だから定住する気がないと思ったのかな。
悪知恵が働くから、クビを切るほどでもなかったわけね。まあでも今回まででしょ。
呼ばれて出てきたギルド長が、ウィオを見て驚いた顔をした。
「強引に受けさせられたというのは、まさか、氷の騎士か?」
「騎士?」
「ああ。オルデキア王国の元騎士だ。だから断ったんだが、気づいたら依頼を受けたことになっていた」
「ってことは、あんた貴族か?」
「籍を抜いて、今は平民だ」
ギルド内にこれはまずいぞ、という雰囲気が漂い始めた。
だよねー、オレの正体知らなくても、元とはいえ貴族にお掃除の依頼を押し付けちゃった上にお城に入れたんだから、やっぱりこの対応はまずいよね。
問題の受付もみんなからの視線を受けてさすがにヤバいって顔をしてる。周りもアイツ終わったなって感じで距離を置いている。
次は多分ないけど、反省してよね。
「すまない。リールのことはちゃんと処罰するので許してほしい」
「依頼受理の手続きを強引にしたことだけ、きちんと処罰してくれ」
ギルド長が頭を下げたので、一緒に依頼を受けた冒険者たちも、たまたま居合わせてお祭り騒ぎに乗っちゃおうかなとなっていた周りの冒険者たちも、引き下がった。
ウィオがオレたちの身分については気にしなくていいって言ったんだけど、それは元貴族って意味じゃなくて、神獣と契約者って言う意味だというのが通じているといいなあ。
オレに予知能力はないけど、いずれオレの正体も知らされちゃってギルド長が真っ青になる未来がはっきりと見えちゃうよ。
ギルド長、面白がってごめんね。お前が言うなって言われそうだけど、強く生きてね。
さて、騒動も楽しんだので、飲み会に行こう!
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