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1年目 スフラル編
4. 神への祈り
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兵士の詰所みたいなところに案内され、馬車を下りてついて行くと、小さな部屋に通された。
「この度は我が国の者が大変失礼いたしました。厳重に対処いたしますので、なにとぞお許しくださいませ」
『キャン』
この騎士たちは、ギルドからの報告でオレたちがこの国に入ったと知った王様の命令で、オレたちが困ってないかこっそり遠くから見る予定で来たらしい。だけど、この街のギルドからオレたちがトラブルに巻き込まれていると聞いて、予定を変え身分を明かして接触してきたんだって。
王様の代わりにと土下座しそうな勢いで謝られたんだけど、あの代官が欲しかったのは神獣じゃなくて便利な使役獣だから、オレがどうのじゃなくて他人の使役獣に手を出したってことで罰してもらえればいいよ。それだってウィオが反撃してもおかしくないくらいやっちゃいけないことだからね。
っていうかこの人たちが来てくれるのを知ってたら反撃してもよかったよね。騒動になってギルド長に迷惑かけたくなかっただけだったから。
でも、これ以上あの代官に何かされる恐れはなくなったから、そのことはもう忘れよう。
それよりも、小籠包の美味しいお店を教えてほしいなあ。
「冒険者の使役獣を取り上げようとした、その処罰をお願いいたします。それから、肉まんじゅうの美味しいお店を教えていただけますか?」
「肉まんじゅう……、チョモですか? どのようなものがお好みでしょう」
「薄味で」
そう言ってウィオがオレを見たから、食べるのがオレだと分かったらしい。
騎士の人たちが知ってるかとお互いに聞いている。
「あいにく我々はいつもは王都におりますので」
「王都の情報も欲しいそうです」
オレがキュンキュン言ってるから、騎士の人たちが困惑しながら見てる。
でも現地の人の美味しいお店情報ってすごく大切だよ。教えてほしいなあ。
「王宮にいらっしゃれば、王宮の料理人が腕によりをかけてお作り致しますが」
「私たちは冒険者ですのでご容赦ください」
オレ庶民派だから、王宮より普通のお店がいいんだ。ごめんね。
騎士だとあんまり街中のことは知らないかな。
「この街でしたら、教会の近くに出ている屋台は美味しいと聞いたことがあります。王都でしたら広場の屋台のものは、それぞれ味が異なってどれも人気です」
ジモティー情報が出てきたぞ。教会の近くね。よし、行こう!
『グェッ』
「ルジェ、まだ話は終わってないから待て。屋台は逃げない」
屋台に向かうために椅子から飛び降りようとしたら、ウィオにスカーフを掴まれて首が締まった。
ひどいよ。可愛い狐にあるまじき声が出ちゃったじゃないか。
「あ、あの、大丈夫、ですか……」
「問題ありません。子どもの誘拐の件ですが」
「……。詳細はリンガ領のギルドより聞いております。門でのやり取りは口実ですので、どうぞ屋台でチョモをお楽しみください」
ほら、騎士さんもそう言ってくれているし、小籠包改め、チョモを食べに行こうよ。
聞いたらお腹空いてきちゃったから、さあ行こう。今すぐ行こう。
チョモ、チョモ、チョッモ~♪ と歌いながらご機嫌に歩いていると、道行く人が振り返る。
可愛い狐が可愛く歌ってるからみんな気になっちゃうんだね。
と思ったらウィオに抱き上げられた。
『どうしたの?』
「周りの者がどうしたのかと心配している」
オレがキュンキュン鳴きながら歩いているから、何かを訴えているのかと周りの人たちが気になってるらしい。オレの可愛さに注目されてるんじゃなかった。
ウィオが飼い主失格だと思われてたら申し訳ない。ごめんね。チョモへの期待がちょっとあふれ出ただけだよ。
教会が近づいて来たなと思ったら、人だかりができている屋台を見つけた。きっとあれが美味しいチョモの屋台だな。食べるぞー。
早速並ぶと、ウィオに抱かれたオレに視線が集まる。
「まあ、狐くんもチョモを食べるのかしら」
「はい。ここが人気だと聞いてきました」
「美味しいわよ。タレが何種類かあるのだけど、私のおススメはピリ辛よ」
へえ。タレにつけて食べるのか。さっぱり、甘辛、ピリ辛があるらしい。オレ用にはタレなしでお願い。ウィオはピリ辛だな。
行列ができているのでしばらくかかるだろうなあと、周りを観察しながら待っていたら、遠くからオレたちを見ている人に気付いた。
『ウィオ、教会の人たちがこっちを見てる』
「ルジェはどうしたい?」
『無視』
「分かった」
ここの教会がどういうつもりでオレたちに会いたいのか知らないけど、オレには関係ないからね。
下手にかかわって旅を邪魔されたくないから無視だ。
この食い倒れツアーに出てから、オレたちは一度も教会に寄っていない。
オレがオルデキアに遣わされたそもそもの原因は教会の腐敗だったので、オレは教会に良いイメージがない。
その時の奴らは神罰が下っているけど、オルデキア国内ではいまだに教会への不信感がある。
教会は権威回復にオレを使いたいようで、ウィオのお父さんにオレとの面会を申し込んでいるようだけど、オレは断った。
そんなことがあったからウィオは近寄らないようにしているんだろう。教会がオレを利用する隙を作らないように。
ここはオルデキアの教会ではないけど、どこの教会も神獣様が立ち寄ったとあれば箔がつく。
『ここじゃなくても、教会に行きたい?』
「いや。ルジェと出会えたことに感謝はしているが、教会に行かなくとも神に祈りは届くだろう?」
『ウィオ、大好き!』
オレと会えたことを神様に感謝するくらい喜んでくれてるって分かって嬉しい。思わずウィオの顔をぺろぺろ舐めちゃう。
どこからだって真摯な祈りは届くよ。
オレも祈ろう。この食い倒れツアーがウィオにとって楽しいものになりますように。たくさん美味しいものが食べられますように。
その後に食べた屋台のチョモはとっても美味しかったよ。早速祈りが届いたかな。
「この度は我が国の者が大変失礼いたしました。厳重に対処いたしますので、なにとぞお許しくださいませ」
『キャン』
この騎士たちは、ギルドからの報告でオレたちがこの国に入ったと知った王様の命令で、オレたちが困ってないかこっそり遠くから見る予定で来たらしい。だけど、この街のギルドからオレたちがトラブルに巻き込まれていると聞いて、予定を変え身分を明かして接触してきたんだって。
王様の代わりにと土下座しそうな勢いで謝られたんだけど、あの代官が欲しかったのは神獣じゃなくて便利な使役獣だから、オレがどうのじゃなくて他人の使役獣に手を出したってことで罰してもらえればいいよ。それだってウィオが反撃してもおかしくないくらいやっちゃいけないことだからね。
っていうかこの人たちが来てくれるのを知ってたら反撃してもよかったよね。騒動になってギルド長に迷惑かけたくなかっただけだったから。
でも、これ以上あの代官に何かされる恐れはなくなったから、そのことはもう忘れよう。
それよりも、小籠包の美味しいお店を教えてほしいなあ。
「冒険者の使役獣を取り上げようとした、その処罰をお願いいたします。それから、肉まんじゅうの美味しいお店を教えていただけますか?」
「肉まんじゅう……、チョモですか? どのようなものがお好みでしょう」
「薄味で」
そう言ってウィオがオレを見たから、食べるのがオレだと分かったらしい。
騎士の人たちが知ってるかとお互いに聞いている。
「あいにく我々はいつもは王都におりますので」
「王都の情報も欲しいそうです」
オレがキュンキュン言ってるから、騎士の人たちが困惑しながら見てる。
でも現地の人の美味しいお店情報ってすごく大切だよ。教えてほしいなあ。
「王宮にいらっしゃれば、王宮の料理人が腕によりをかけてお作り致しますが」
「私たちは冒険者ですのでご容赦ください」
オレ庶民派だから、王宮より普通のお店がいいんだ。ごめんね。
騎士だとあんまり街中のことは知らないかな。
「この街でしたら、教会の近くに出ている屋台は美味しいと聞いたことがあります。王都でしたら広場の屋台のものは、それぞれ味が異なってどれも人気です」
ジモティー情報が出てきたぞ。教会の近くね。よし、行こう!
『グェッ』
「ルジェ、まだ話は終わってないから待て。屋台は逃げない」
屋台に向かうために椅子から飛び降りようとしたら、ウィオにスカーフを掴まれて首が締まった。
ひどいよ。可愛い狐にあるまじき声が出ちゃったじゃないか。
「あ、あの、大丈夫、ですか……」
「問題ありません。子どもの誘拐の件ですが」
「……。詳細はリンガ領のギルドより聞いております。門でのやり取りは口実ですので、どうぞ屋台でチョモをお楽しみください」
ほら、騎士さんもそう言ってくれているし、小籠包改め、チョモを食べに行こうよ。
聞いたらお腹空いてきちゃったから、さあ行こう。今すぐ行こう。
チョモ、チョモ、チョッモ~♪ と歌いながらご機嫌に歩いていると、道行く人が振り返る。
可愛い狐が可愛く歌ってるからみんな気になっちゃうんだね。
と思ったらウィオに抱き上げられた。
『どうしたの?』
「周りの者がどうしたのかと心配している」
オレがキュンキュン鳴きながら歩いているから、何かを訴えているのかと周りの人たちが気になってるらしい。オレの可愛さに注目されてるんじゃなかった。
ウィオが飼い主失格だと思われてたら申し訳ない。ごめんね。チョモへの期待がちょっとあふれ出ただけだよ。
教会が近づいて来たなと思ったら、人だかりができている屋台を見つけた。きっとあれが美味しいチョモの屋台だな。食べるぞー。
早速並ぶと、ウィオに抱かれたオレに視線が集まる。
「まあ、狐くんもチョモを食べるのかしら」
「はい。ここが人気だと聞いてきました」
「美味しいわよ。タレが何種類かあるのだけど、私のおススメはピリ辛よ」
へえ。タレにつけて食べるのか。さっぱり、甘辛、ピリ辛があるらしい。オレ用にはタレなしでお願い。ウィオはピリ辛だな。
行列ができているのでしばらくかかるだろうなあと、周りを観察しながら待っていたら、遠くからオレたちを見ている人に気付いた。
『ウィオ、教会の人たちがこっちを見てる』
「ルジェはどうしたい?」
『無視』
「分かった」
ここの教会がどういうつもりでオレたちに会いたいのか知らないけど、オレには関係ないからね。
下手にかかわって旅を邪魔されたくないから無視だ。
この食い倒れツアーに出てから、オレたちは一度も教会に寄っていない。
オレがオルデキアに遣わされたそもそもの原因は教会の腐敗だったので、オレは教会に良いイメージがない。
その時の奴らは神罰が下っているけど、オルデキア国内ではいまだに教会への不信感がある。
教会は権威回復にオレを使いたいようで、ウィオのお父さんにオレとの面会を申し込んでいるようだけど、オレは断った。
そんなことがあったからウィオは近寄らないようにしているんだろう。教会がオレを利用する隙を作らないように。
ここはオルデキアの教会ではないけど、どこの教会も神獣様が立ち寄ったとあれば箔がつく。
『ここじゃなくても、教会に行きたい?』
「いや。ルジェと出会えたことに感謝はしているが、教会に行かなくとも神に祈りは届くだろう?」
『ウィオ、大好き!』
オレと会えたことを神様に感謝するくらい喜んでくれてるって分かって嬉しい。思わずウィオの顔をぺろぺろ舐めちゃう。
どこからだって真摯な祈りは届くよ。
オレも祈ろう。この食い倒れツアーがウィオにとって楽しいものになりますように。たくさん美味しいものが食べられますように。
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