14 / 171
1年目 マトゥオーソ編
14. 花粉症かな
しおりを挟む
幻の果物を売った収入で、美食の街ガストーの高級宿滞在を十日間満喫した。ちょっと太ったかも、っていうくらい食べたよ。
次はウィオのお好みのフェゴ料理を食べるために、フェゴ王国へ向かう。
フェゴ王国はマトゥオーソの南、ガストーの街からだと、マトゥオーソの王都を通って南下していくのが一番の近道だ。
けれど、オレたちは幻の果物で目立っちゃったから、王都で余計なトラブルに巻き込まれないように、王都を迂回することを決めた。
ガストーの街から、カリスタの森とは反対側へ進んで南下する。
フェゴ王国に近くなるにつれ、屋台で売っているものの中で、スパイスが使われている割合が増えていく。
そうすると何が起きるかというと。
『クシュン、クシュン』
「ルジェ、大丈夫か?」
『だいじょ、ブシュッ』
大丈夫じゃないみたい。
鼻がムズムズするし、胡椒を嗅いだ時みたいにくしゃみが止まらない。オレにはスパイスがきつすぎるらしい。
「フェゴに行くのは止めるか」
『行くよ。クシュッ』
ウィオはフェゴの料理が好みのはずなんだから、そこに行かないっていう選択肢はないよ。
ただ、屋台に行くときはオレを置いて行って。
屋台に行かなければ何とかなると思っていたけど、次の街でウィオがフェゴ行きを取りやめると決めた。
「いらっしゃいませ。おひとりですか?」
「ギルドの紹介で、使役獣と泊まりたい」
『クシュン』
「何泊でしょう」
『クシュン、クシュン』
料理の美味しい宿って紹介されてきたんだけど、美味しそうなスパイスの匂いがしてるから、オレのくしゃみが止まらない。
花粉症みたいになっている。
「すまない、無理そうだ」
「ここはスパイスを使った料理が自慢の宿なので、旅のお客さんが連れている動物だとよくおきますよ」
『クシュン』
「この街に住んでいる動物は平気なのか」
「慣れでしょう」
ええ、これって慣れるの?
欲張って美味しいものを食べようとしなければいいのかなあ。でもそれじゃこの旅の意味がなくなっちゃうし。
ウィオが交渉して、一泊だけ馬車の中で寝させてもらうことになった。今から街の外に行って野営しようにも門は閉まってるし、料理を出さない宿を探すにも時間が遅すぎる。
余裕を持たずに夕方ぎりぎりに駆け込んだオレたちがいけないんだけど。
「庭に食事を用意しましょうか? それなら狐くんも平気でしょう」
『ギルドが美味しいって言うご飯を……クシュン、ウィオは食べてよ』
「頼む。普通に一泊の料金を払う」
「料理と馬車の預かり代金だけでいいですよ。狐くん、悪いねえ」
こっちこそごめんね。
宿の建物から出るとくしゃみは止まった。オレの鼻、敏感過ぎない?
オンオフできないのかな。
『ウィオごめんね』
「気にするな。目的がある旅じゃないし、フェゴの料理ならオルデキアでまたあの料理人に作ってもらえばいい」
『鼻に布詰めたら行けると思うんだけど』
「ルジェ、そこまでしなくていい。また来年考えよう」
そういえば前世の日本は、いろんな国の料理のレストランがある国だったんだよね。
神獣様の権力で、オルデキアに料理人呼んじゃう?
我に料理を献上せよって言ったら、来てくれる人たくさんいそう。
そんなことを考えていたら、ご飯の用意が出来たと女将さんが呼びに来てくれた。
お庭にテーブルが出してあるので、オレは風上で遊んでいよう。
「ルジェ、庭は掘るなよ」
やだなあ。言われなくても掘らないよ、多分。
ウィオはスパイスたっぷりの食事を楽しんだみたいだ。よかったよかった。
ソーセージみたいな肉の詰め物にスパイスが入ったのが美味しかったらしい。
遠くからだとピリッとしたスパイスの香りも美味しそうに思えるんだけどねえ。
オレはいじけて庭をゴロゴロ転がって鬱憤を晴らした。
翌朝も、庭に朝食を用意してくれた。
ウィオはスパイスの入ったスープは体が温まるなと食事を楽しんでいたので、オレも庭を走り回って身体を温めた。
途中で走り回っているオレを他の宿泊客が見てるのは気付いたけど、気にせず走り回っていたら、いつの間にウィオはその人と話をしていた。
美味しいご飯って単語が聞こえたので走るのをやめて近寄ったら、ウィオの膝の上に抱き上げられた。もう食べ終わってるから、くしゃみは出ない。
いろんな国に行っている商人に、美味しいものを聞いていたらしい。
「スフラル王国はフェゴほどスパイスも使いませんので食べやすく、おススメですよ」
「水の都アーグワのある国というくらいしか知らなかったので、助かります」
「スフラルは小さな肉まんじゅうが有名です。地方によって味が違いますので、旅の楽しみにもなります」
『キャン!』
それって、オルデキアで食べた時に気に入った小籠包みたいな料理だよね。その時に南のほうの国で食べられてるって聞いてたね。
よし、スフラルに行こう!
オレたちはマトゥオーソの国内をフェゴ王国に向けて南下するのに、王都を迂回するために西側寄りの街道を移動していた。
スフラル王国はマトゥオーソから見れば南西にある国なので、南への移動をやめて西へと進めばスフラル王国だ。
行き当たりばったりで行き先を変えるのも、のんびり旅の醍醐味だよね。
でもその前に、ウィオが飲んでいるチャイティーみたいなお茶が美味しそう。
スパイスは入ってるんだけど、これは平気そう。くしゃみが出ちゃうのは一部のスパイスなのかなあ。
カップをふんふんしていたら、商人さんがわざわざオレ用に新しいのをもらってきてくれた。
尻尾を振って感謝を伝えたけど、商人さん、鼻の下が伸びてるよ。オレの可愛さにやられちゃったんだね。
「触らせてもらってもいいですか?」
『キャン』
「いいと言っています」
美味しいものを教えてくれただけじゃなくお茶も貰ってきてくれたから、たくさんもふっていいよ。
次はウィオのお好みのフェゴ料理を食べるために、フェゴ王国へ向かう。
フェゴ王国はマトゥオーソの南、ガストーの街からだと、マトゥオーソの王都を通って南下していくのが一番の近道だ。
けれど、オレたちは幻の果物で目立っちゃったから、王都で余計なトラブルに巻き込まれないように、王都を迂回することを決めた。
ガストーの街から、カリスタの森とは反対側へ進んで南下する。
フェゴ王国に近くなるにつれ、屋台で売っているものの中で、スパイスが使われている割合が増えていく。
そうすると何が起きるかというと。
『クシュン、クシュン』
「ルジェ、大丈夫か?」
『だいじょ、ブシュッ』
大丈夫じゃないみたい。
鼻がムズムズするし、胡椒を嗅いだ時みたいにくしゃみが止まらない。オレにはスパイスがきつすぎるらしい。
「フェゴに行くのは止めるか」
『行くよ。クシュッ』
ウィオはフェゴの料理が好みのはずなんだから、そこに行かないっていう選択肢はないよ。
ただ、屋台に行くときはオレを置いて行って。
屋台に行かなければ何とかなると思っていたけど、次の街でウィオがフェゴ行きを取りやめると決めた。
「いらっしゃいませ。おひとりですか?」
「ギルドの紹介で、使役獣と泊まりたい」
『クシュン』
「何泊でしょう」
『クシュン、クシュン』
料理の美味しい宿って紹介されてきたんだけど、美味しそうなスパイスの匂いがしてるから、オレのくしゃみが止まらない。
花粉症みたいになっている。
「すまない、無理そうだ」
「ここはスパイスを使った料理が自慢の宿なので、旅のお客さんが連れている動物だとよくおきますよ」
『クシュン』
「この街に住んでいる動物は平気なのか」
「慣れでしょう」
ええ、これって慣れるの?
欲張って美味しいものを食べようとしなければいいのかなあ。でもそれじゃこの旅の意味がなくなっちゃうし。
ウィオが交渉して、一泊だけ馬車の中で寝させてもらうことになった。今から街の外に行って野営しようにも門は閉まってるし、料理を出さない宿を探すにも時間が遅すぎる。
余裕を持たずに夕方ぎりぎりに駆け込んだオレたちがいけないんだけど。
「庭に食事を用意しましょうか? それなら狐くんも平気でしょう」
『ギルドが美味しいって言うご飯を……クシュン、ウィオは食べてよ』
「頼む。普通に一泊の料金を払う」
「料理と馬車の預かり代金だけでいいですよ。狐くん、悪いねえ」
こっちこそごめんね。
宿の建物から出るとくしゃみは止まった。オレの鼻、敏感過ぎない?
オンオフできないのかな。
『ウィオごめんね』
「気にするな。目的がある旅じゃないし、フェゴの料理ならオルデキアでまたあの料理人に作ってもらえばいい」
『鼻に布詰めたら行けると思うんだけど』
「ルジェ、そこまでしなくていい。また来年考えよう」
そういえば前世の日本は、いろんな国の料理のレストランがある国だったんだよね。
神獣様の権力で、オルデキアに料理人呼んじゃう?
我に料理を献上せよって言ったら、来てくれる人たくさんいそう。
そんなことを考えていたら、ご飯の用意が出来たと女将さんが呼びに来てくれた。
お庭にテーブルが出してあるので、オレは風上で遊んでいよう。
「ルジェ、庭は掘るなよ」
やだなあ。言われなくても掘らないよ、多分。
ウィオはスパイスたっぷりの食事を楽しんだみたいだ。よかったよかった。
ソーセージみたいな肉の詰め物にスパイスが入ったのが美味しかったらしい。
遠くからだとピリッとしたスパイスの香りも美味しそうに思えるんだけどねえ。
オレはいじけて庭をゴロゴロ転がって鬱憤を晴らした。
翌朝も、庭に朝食を用意してくれた。
ウィオはスパイスの入ったスープは体が温まるなと食事を楽しんでいたので、オレも庭を走り回って身体を温めた。
途中で走り回っているオレを他の宿泊客が見てるのは気付いたけど、気にせず走り回っていたら、いつの間にウィオはその人と話をしていた。
美味しいご飯って単語が聞こえたので走るのをやめて近寄ったら、ウィオの膝の上に抱き上げられた。もう食べ終わってるから、くしゃみは出ない。
いろんな国に行っている商人に、美味しいものを聞いていたらしい。
「スフラル王国はフェゴほどスパイスも使いませんので食べやすく、おススメですよ」
「水の都アーグワのある国というくらいしか知らなかったので、助かります」
「スフラルは小さな肉まんじゅうが有名です。地方によって味が違いますので、旅の楽しみにもなります」
『キャン!』
それって、オルデキアで食べた時に気に入った小籠包みたいな料理だよね。その時に南のほうの国で食べられてるって聞いてたね。
よし、スフラルに行こう!
オレたちはマトゥオーソの国内をフェゴ王国に向けて南下するのに、王都を迂回するために西側寄りの街道を移動していた。
スフラル王国はマトゥオーソから見れば南西にある国なので、南への移動をやめて西へと進めばスフラル王国だ。
行き当たりばったりで行き先を変えるのも、のんびり旅の醍醐味だよね。
でもその前に、ウィオが飲んでいるチャイティーみたいなお茶が美味しそう。
スパイスは入ってるんだけど、これは平気そう。くしゃみが出ちゃうのは一部のスパイスなのかなあ。
カップをふんふんしていたら、商人さんがわざわざオレ用に新しいのをもらってきてくれた。
尻尾を振って感謝を伝えたけど、商人さん、鼻の下が伸びてるよ。オレの可愛さにやられちゃったんだね。
「触らせてもらってもいいですか?」
『キャン』
「いいと言っています」
美味しいものを教えてくれただけじゃなくお茶も貰ってきてくれたから、たくさんもふっていいよ。
応援ありがとうございます!
307
お気に入りに追加
2,791
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる