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1年目 マトゥオーソ編
6. 騙された!
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魔物の素材の買取をしてもらうために、ギルドに来ている。
朝はゆっくりして、宿の美味しい朝ご飯を食べてから、そろそろギルドが空いたかなという時間を狙った。
カウンターに魔物の素材を出していく。
この世界、ファンタジーの定番のマジックバッグがない。時空に干渉する魔法が使えるのは一部の神だけだからだ。オレは神に連なるけど使えない。
魔物の素材を運ぶためには、バッグに入れる必要があって、一人で運べる重さには限界がある。だからウィオも嵩張らなくて高く買い取ってもらえそうな素材しか持ってきていない。
「これを買い取ってほしい。それからこの羽根は、質の良いもの以外を買い取ってほしい」
「こちらは買い取りますが、この羽根は現在買い取りはしていません。無料でよければ引き取ります」
え、どういうこと? あのグループはサイもどきの代わりにこの羽根をくれたのに。
と思ったら、後ろからはやし立てる声が聞こえた。
「アハハ。お前、騙されたんだよ。キルハンの奴が言ってたぜ。馬鹿が羽根と引き換えに手伝ってくれたってな」
つまり、あのグループは買い取ってもらえないと分かっていて、ウィオを騙したのか。許せない。
オレの毛が怒りに逆立つ。
「ルジェ、やめろ」
『あいつら嘘をついた!』
「ルジェ、落ち着け」
ウィオがオレのことを抱き上げて、問題ないから怒るなって宥めてるけど、あいつらウィオに嘘をついて騙したんだ。許せるわけない。
オレから魔力が大量に放出されて、周りの人たちに圧をかけている。
「何事だ!」
「その魔物が原因だ!」
「私の使役獣です。魔物ではありません」
騒動にギルド長が出てきたけど、お前もグルなのか?
「ルジェ、大丈夫だ。これは母上と義姉上への贈り物だ」
『え?』
オレが我に返ったことで魔力の圧から解放された冒険者たちが、そそくさとギルドから出ていくのが見える。面倒ごとに巻き込まれたくないんだろう。
「何があったんだ。誰か説明してくれ」
「ラースレナの討伐を手伝う代わりに他の魔物の素材を渡すという約束で、渡されたのがテーフォールの羽根だった。だが買取はしていないと言われて、騙されたと私の使役獣が怒った。それだけです」
オレたちが騙されたと言った冒険者はとっくに逃げてるし受付の人も震えてて話せないので、ウィオが説明した。
「それは、ギルドを通した約束か?」
「違います」
「ならばギルドは介入しない。それよりもその使役獣のほうが問題だ」
「何が問題ですか? 誰も傷つけていませんが?」
うん。確かに魔力を放出したから圧はかけちゃったけど、誰も攻撃してないよ?
お澄まししてちょっと首をかしげてギルド長を見る。ギルド長もオレを品定めするようにじっと見ている。
オレ、悪いことしてないよ? 無害な可愛い狐だよ?
「この羽根をオルデキアのフォロン侯爵家に届ける依頼を出したい。良いものだけを送るつもりだったが、オルデキアで鑑定してもらう」
「あ、え……」
オレとギルド長の間の無言のやり取りなど全く無視して、ウィオがカウンターの向こうの受付の人にお願いしているけど、さっきまでの騒動で魂が抜けたみたいになってるから、反応してくれない。
でも、ウィオの「オルデキア」「侯爵家」という単語にギルド長が反応した。
「オルデキアの氷の騎士か」
「今は平民です」
ウィオは、ギルド長には敬語で話すんだよね。冒険者としてギルド長は上司にあたるって判断なのかな。
ギルド長に依頼の受付は別のカウンターだと言われて、ウィオは羽根をもって移動した。他の素材はカウンターの上に置きっぱなしなんだけど、あの人いつ仕事再開できるかな。
冒険者ギルドは配達の依頼も受けている。街道は魔物に襲われる可能性もあるから、確実に届けたいなら実力のある冒険者を雇う必要があって、それを専門にしている通称配達人と呼ばれる冒険者もいる。彼らへの依頼料金はちょっと高いけど、信用第一の商売だからネコババの心配もないらしい。
「秋までに届けばいいので、信用できる配達人に頼みたい。高くても構わない」
「貴族相手に信用できない奴を行かせたりしないから安心しろ」
横からギルド長が口を出してきて、あの配達人にしろと受付の人に指示を出している。
そういえばこのギルド長、なんでまだオレたちのそばにいるんだろう。オレの可愛さにやられちゃったかな? でも今日はご機嫌斜めだから触らせてはあげないよ。
この羽根は冬のドレスの装飾として使われるもので、お母さんとお義姉さんにあげるつもりだったんだって。
オレたちが帰るのは冬の予定だからその時に持って帰ってもドレスを仕立てるのに間に合わないので、送ることにした。
今買取していないのは季節じゃないからで、冬前になると買取してくれるんだって。
『騙されたんじゃなかったんだね。早とちりしてごめんね』
「いや、質のよくないものは買い取ってもらおうと思っていたから騙された。でも実害はない。今後はギルドを通さない約束はしないことにしよう」
やっぱり騙されてた! あいつら許せん。
朝はゆっくりして、宿の美味しい朝ご飯を食べてから、そろそろギルドが空いたかなという時間を狙った。
カウンターに魔物の素材を出していく。
この世界、ファンタジーの定番のマジックバッグがない。時空に干渉する魔法が使えるのは一部の神だけだからだ。オレは神に連なるけど使えない。
魔物の素材を運ぶためには、バッグに入れる必要があって、一人で運べる重さには限界がある。だからウィオも嵩張らなくて高く買い取ってもらえそうな素材しか持ってきていない。
「これを買い取ってほしい。それからこの羽根は、質の良いもの以外を買い取ってほしい」
「こちらは買い取りますが、この羽根は現在買い取りはしていません。無料でよければ引き取ります」
え、どういうこと? あのグループはサイもどきの代わりにこの羽根をくれたのに。
と思ったら、後ろからはやし立てる声が聞こえた。
「アハハ。お前、騙されたんだよ。キルハンの奴が言ってたぜ。馬鹿が羽根と引き換えに手伝ってくれたってな」
つまり、あのグループは買い取ってもらえないと分かっていて、ウィオを騙したのか。許せない。
オレの毛が怒りに逆立つ。
「ルジェ、やめろ」
『あいつら嘘をついた!』
「ルジェ、落ち着け」
ウィオがオレのことを抱き上げて、問題ないから怒るなって宥めてるけど、あいつらウィオに嘘をついて騙したんだ。許せるわけない。
オレから魔力が大量に放出されて、周りの人たちに圧をかけている。
「何事だ!」
「その魔物が原因だ!」
「私の使役獣です。魔物ではありません」
騒動にギルド長が出てきたけど、お前もグルなのか?
「ルジェ、大丈夫だ。これは母上と義姉上への贈り物だ」
『え?』
オレが我に返ったことで魔力の圧から解放された冒険者たちが、そそくさとギルドから出ていくのが見える。面倒ごとに巻き込まれたくないんだろう。
「何があったんだ。誰か説明してくれ」
「ラースレナの討伐を手伝う代わりに他の魔物の素材を渡すという約束で、渡されたのがテーフォールの羽根だった。だが買取はしていないと言われて、騙されたと私の使役獣が怒った。それだけです」
オレたちが騙されたと言った冒険者はとっくに逃げてるし受付の人も震えてて話せないので、ウィオが説明した。
「それは、ギルドを通した約束か?」
「違います」
「ならばギルドは介入しない。それよりもその使役獣のほうが問題だ」
「何が問題ですか? 誰も傷つけていませんが?」
うん。確かに魔力を放出したから圧はかけちゃったけど、誰も攻撃してないよ?
お澄まししてちょっと首をかしげてギルド長を見る。ギルド長もオレを品定めするようにじっと見ている。
オレ、悪いことしてないよ? 無害な可愛い狐だよ?
「この羽根をオルデキアのフォロン侯爵家に届ける依頼を出したい。良いものだけを送るつもりだったが、オルデキアで鑑定してもらう」
「あ、え……」
オレとギルド長の間の無言のやり取りなど全く無視して、ウィオがカウンターの向こうの受付の人にお願いしているけど、さっきまでの騒動で魂が抜けたみたいになってるから、反応してくれない。
でも、ウィオの「オルデキア」「侯爵家」という単語にギルド長が反応した。
「オルデキアの氷の騎士か」
「今は平民です」
ウィオは、ギルド長には敬語で話すんだよね。冒険者としてギルド長は上司にあたるって判断なのかな。
ギルド長に依頼の受付は別のカウンターだと言われて、ウィオは羽根をもって移動した。他の素材はカウンターの上に置きっぱなしなんだけど、あの人いつ仕事再開できるかな。
冒険者ギルドは配達の依頼も受けている。街道は魔物に襲われる可能性もあるから、確実に届けたいなら実力のある冒険者を雇う必要があって、それを専門にしている通称配達人と呼ばれる冒険者もいる。彼らへの依頼料金はちょっと高いけど、信用第一の商売だからネコババの心配もないらしい。
「秋までに届けばいいので、信用できる配達人に頼みたい。高くても構わない」
「貴族相手に信用できない奴を行かせたりしないから安心しろ」
横からギルド長が口を出してきて、あの配達人にしろと受付の人に指示を出している。
そういえばこのギルド長、なんでまだオレたちのそばにいるんだろう。オレの可愛さにやられちゃったかな? でも今日はご機嫌斜めだから触らせてはあげないよ。
この羽根は冬のドレスの装飾として使われるもので、お母さんとお義姉さんにあげるつもりだったんだって。
オレたちが帰るのは冬の予定だからその時に持って帰ってもドレスを仕立てるのに間に合わないので、送ることにした。
今買取していないのは季節じゃないからで、冬前になると買取してくれるんだって。
『騙されたんじゃなかったんだね。早とちりしてごめんね』
「いや、質のよくないものは買い取ってもらおうと思っていたから騙された。でも実害はない。今後はギルドを通さない約束はしないことにしよう」
やっぱり騙されてた! あいつら許せん。
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