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1年目 マトゥオーソ編
3. 宴会芸は大好評
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お祭り当日、広場にちょっとした舞台が作られているので、オレはおめかしして脇でスタンバイだ。いつもの冒険者の服じゃなくてちょっといい宿に泊る時用の服を着たウィオと、お揃いのスカーフだ。
オレの前の出し物は、料理屋さん共同での野菜の皮むき大会。ジャガイモみたいな野菜の皮をくるくると剥いていくんだけど、時間内で一番多く剥けた人の勝ち、途中で切れたらそれは個数に入れない、というシンプルな競争だ。
家族やお店の常連さんが応援してて、盛り上がっている。
「さあ、あと三十秒。今は四番のフリオさんが八個でトップですが、このまま逃げ切るのか?!」
いけー、頑張れーと声援が飛ぶ。このプレッシャーの中できれいに皮を剥いてるのすごいね。
「五、四、三、二、一、ハイ終了です! ナイフを置いてください」
係の人が、ちゃんと皮が繋がってるか、剥けずに残っている皮がないか確認している。
そして確認の結果、四番さんがそのままトップを守って優勝した。
ちなみに優勝賞品は、参加者全員が剥いた野菜全部だ。この野菜で明日料理を作って格安で提供するのが伝統らしい。
なんとも平和なお祭りだね。
皮の早剥き大会の後片付けが終わればオレの出番だ。
オレの次の出し物は、本日のクライマックス、子どもたちの踊りなので、家族連れがたくさん集まっている。
ここは子どもたちに可愛い狐のアピールをしないとね。
「次は、冒険者ギルドより、上級ランクのウィオラスさんと、使役獣の狐ルジェです」
紹介されて出ていくとみんなが拍手をくれるので、ウィオと揃ってお辞儀をするとさらに拍手が大きくなった。賢いねえって声が聞こえる。つかみはばっちりだ。
まずは、お手、おかわり、ハイタッチから始めて、ウィオの肩に乗ったり飛び降りたり、ウィオの指示に従って動くと、歓声が上がった。すごいでしょう。えへん。
さて、次が見せ場だ。
ウィオから離れてスタンバイする。ウィオが手元に氷を出すと投げ、それをオレがキャッチする。フリスビーの変型版、投げるのはディスクじゃなくて、ウィオの氷だ。
オレがジャンプしてパクっとキャッチすると、拍手と歓声が上がった。
「すごーいっ!」
オレは壇上から飛び降りて、最初にすごいと言ってくれた子どものところへ向かい、その子の手に氷を乗せた。
「わあ、剣だ!」
『キャン!』
万が一にも怪我をしないようにもろくしてあるし、氷だから融けちゃうし、角もないおもちゃみたいな剣だけど。
小さな勇者くん、君に聖剣を授けよう。
子どもが喜んでくれたのを確認してから、タタタっと壇上に戻って、またスタンバイだ。
次の氷をキャッチしたら、ちょうだい、と声を上げる子どもにプレゼント。今度は弓だね。細いから力を入れると割れちゃうから気を付けて。
五回配ったところで、ウィオが客席に向かって直接、小さい氷の花をふわっと飛ばした。本気で飛ばすとお巡りさんが来て規制線が張られる現場になっちゃうから、オレも風の精霊にお願いして、人の手に届く直前に威力をぎりぎりまで弱めてもらった。もしだれか怪我をしたらこっそり治そうと思ってたけど、大丈夫だったみたい。
たくさん飛ばしたから、ほとんどの人に行き渡ったんじゃないかな。あちこちから「取ったー!」という子どもの元気な歓声が聞こえる。
最後にウィオと並んでお辞儀をしておしまい。
すごく盛り上がったよ。いえーい!
「氷の魔術師ウィオラスさんと、とっても賢い相棒のルジェくんでした。盛大な拍手をー!」
すごいでしょ。可愛いだけじゃなくて、賢いでしょ。みんなもっと褒めてー。
歓声に応えて上手側、下手側、中央に順番に尻尾を振っていたら、ウィオに抱き上げられて強制退場になった。
オレのファンに最後まで挨拶させてくれてもいいじゃない。カーテンコールにも出るつもりだったのに。
「こちらが依頼料です。とても好評でしたね。ルジェくん、ありがとう」
『キャン!』
ギルドの受付の人が見にきてくれていて、その場で依頼料をくれた。ありがとね。
出番も終えたことだし、本日のメインイベントである子どもたちの踊りを見てから、お祭りの屋台巡りだ。
依頼料の分だけ屋台の物を食べようと思っていたんだけど、どこの屋台もタダでプレゼントしてくれた。その上、薄味しか食べられないっていうと、わざわざ作り直してくれた。
芸は身を助くってこういうことを言うのかな。
その後、街を出るまで、オレは大人気だった。
行く先々で、特に子どもに声をかけられたので、特別に撫でさせてあげた。もふるがよい。
この街でやることは終わったので、隣の街へ移動しよう。
でも冬に戻ってきて、美味しいという根菜のシチューを食べたいな。
「冬は移動が大変になるから、冬の間はオルデキアに戻っているか」
『じゃあ、冬前にここを通る?』
「シチューを食べに寄ろう」
やったー! ウィオ、大好き!
ここで美味しい根菜を買ってお屋敷に持って帰ったら、料理長が美味しいもの作ってくれそうだ。
食い倒れツアー、最初の街から幸先がいいね!
これも日頃のオレの行いがいいからだね、きっと。
オレの前の出し物は、料理屋さん共同での野菜の皮むき大会。ジャガイモみたいな野菜の皮をくるくると剥いていくんだけど、時間内で一番多く剥けた人の勝ち、途中で切れたらそれは個数に入れない、というシンプルな競争だ。
家族やお店の常連さんが応援してて、盛り上がっている。
「さあ、あと三十秒。今は四番のフリオさんが八個でトップですが、このまま逃げ切るのか?!」
いけー、頑張れーと声援が飛ぶ。このプレッシャーの中できれいに皮を剥いてるのすごいね。
「五、四、三、二、一、ハイ終了です! ナイフを置いてください」
係の人が、ちゃんと皮が繋がってるか、剥けずに残っている皮がないか確認している。
そして確認の結果、四番さんがそのままトップを守って優勝した。
ちなみに優勝賞品は、参加者全員が剥いた野菜全部だ。この野菜で明日料理を作って格安で提供するのが伝統らしい。
なんとも平和なお祭りだね。
皮の早剥き大会の後片付けが終わればオレの出番だ。
オレの次の出し物は、本日のクライマックス、子どもたちの踊りなので、家族連れがたくさん集まっている。
ここは子どもたちに可愛い狐のアピールをしないとね。
「次は、冒険者ギルドより、上級ランクのウィオラスさんと、使役獣の狐ルジェです」
紹介されて出ていくとみんなが拍手をくれるので、ウィオと揃ってお辞儀をするとさらに拍手が大きくなった。賢いねえって声が聞こえる。つかみはばっちりだ。
まずは、お手、おかわり、ハイタッチから始めて、ウィオの肩に乗ったり飛び降りたり、ウィオの指示に従って動くと、歓声が上がった。すごいでしょう。えへん。
さて、次が見せ場だ。
ウィオから離れてスタンバイする。ウィオが手元に氷を出すと投げ、それをオレがキャッチする。フリスビーの変型版、投げるのはディスクじゃなくて、ウィオの氷だ。
オレがジャンプしてパクっとキャッチすると、拍手と歓声が上がった。
「すごーいっ!」
オレは壇上から飛び降りて、最初にすごいと言ってくれた子どものところへ向かい、その子の手に氷を乗せた。
「わあ、剣だ!」
『キャン!』
万が一にも怪我をしないようにもろくしてあるし、氷だから融けちゃうし、角もないおもちゃみたいな剣だけど。
小さな勇者くん、君に聖剣を授けよう。
子どもが喜んでくれたのを確認してから、タタタっと壇上に戻って、またスタンバイだ。
次の氷をキャッチしたら、ちょうだい、と声を上げる子どもにプレゼント。今度は弓だね。細いから力を入れると割れちゃうから気を付けて。
五回配ったところで、ウィオが客席に向かって直接、小さい氷の花をふわっと飛ばした。本気で飛ばすとお巡りさんが来て規制線が張られる現場になっちゃうから、オレも風の精霊にお願いして、人の手に届く直前に威力をぎりぎりまで弱めてもらった。もしだれか怪我をしたらこっそり治そうと思ってたけど、大丈夫だったみたい。
たくさん飛ばしたから、ほとんどの人に行き渡ったんじゃないかな。あちこちから「取ったー!」という子どもの元気な歓声が聞こえる。
最後にウィオと並んでお辞儀をしておしまい。
すごく盛り上がったよ。いえーい!
「氷の魔術師ウィオラスさんと、とっても賢い相棒のルジェくんでした。盛大な拍手をー!」
すごいでしょ。可愛いだけじゃなくて、賢いでしょ。みんなもっと褒めてー。
歓声に応えて上手側、下手側、中央に順番に尻尾を振っていたら、ウィオに抱き上げられて強制退場になった。
オレのファンに最後まで挨拶させてくれてもいいじゃない。カーテンコールにも出るつもりだったのに。
「こちらが依頼料です。とても好評でしたね。ルジェくん、ありがとう」
『キャン!』
ギルドの受付の人が見にきてくれていて、その場で依頼料をくれた。ありがとね。
出番も終えたことだし、本日のメインイベントである子どもたちの踊りを見てから、お祭りの屋台巡りだ。
依頼料の分だけ屋台の物を食べようと思っていたんだけど、どこの屋台もタダでプレゼントしてくれた。その上、薄味しか食べられないっていうと、わざわざ作り直してくれた。
芸は身を助くってこういうことを言うのかな。
その後、街を出るまで、オレは大人気だった。
行く先々で、特に子どもに声をかけられたので、特別に撫でさせてあげた。もふるがよい。
この街でやることは終わったので、隣の街へ移動しよう。
でも冬に戻ってきて、美味しいという根菜のシチューを食べたいな。
「冬は移動が大変になるから、冬の間はオルデキアに戻っているか」
『じゃあ、冬前にここを通る?』
「シチューを食べに寄ろう」
やったー! ウィオ、大好き!
ここで美味しい根菜を買ってお屋敷に持って帰ったら、料理長が美味しいもの作ってくれそうだ。
食い倒れツアー、最初の街から幸先がいいね!
これも日頃のオレの行いがいいからだね、きっと。
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