新米神様とバイト巫女は、こいねがう

鈴木しぐれ

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後編

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 作業の順としては、まず茉莉花の名前を探す。そして、その時期に同じく神社を訪れている女の子らしき名前を探す、というものだった。膨大な名簿の中から、目当ての茉莉花の名前を探すだけでも、気の遠くなるものだ

「見つからなーい!」

 あれから毎日、応接室に名簿を運び込んで、優月と茉莉花の二人がかりで名前を探しているが、成果はなかった。茉莉花が長い手足を投げ出してそう言うのも分かる。

「気分転換に、少し外に出ようか。せっかくビラも作ったことだし」
「ビラ配り、頑張ります!」

 十年前に木登りをしていた女の子を助けてくれた人を探しています、と書いたビラを作成した。神社の近くで配っていたら、何か手がかりになるかと思ったのだが、こちらも今のところ成果なし。

「おおー、優月ちゃん。こんにちは」
「あ、三丁目のおばあちゃん、こんにちは」

 よく神社に参拝に来ている、三丁目で酒屋をやっているおばあちゃんが声をかけてくれた。散歩の道を曜日ごとに変えていて、神社に来るのは金曜日だ。

「何のチラシを持っているんだい?」
「これは、人を探しているビラです。おばあちゃん、心当たりないですか」
「うーん……」
 おばあちゃんは、ビラに書かれた文字を細目で端から端まで追い、記憶を手繰り寄せるように空を見上げた。

「十年くらい前だと、神社でよく遊んでいた女の子がいたねえ。小学生くらいかな。近頃は子どもが遊んでなくて寂しいなあと思っていてねえ」
「!」
「ほんとに!?」

 有力な手掛かりだ。確かに、小学生の女の子は神社に来ていた。茉莉花の恩人の女の子に違いない。一応、ビラを神社の石段の下の塀に貼っておくことにした。優月が巫女バイトのチラシを見つけた場所だ。目に付く位置ではある。

 社務所に戻ると、叶が疲れた様子で廊下を歩いていた。茉莉花には聞こえないように、叶にそっと声をかけた。

「叶、休んでていいよ。名前探しは私とジャスミンでするから」
「むっ、神が心配されるとはな」
「神様でも疲れることはあるでしょう」
「まあ。そうだな、少し奥で休んでくる。優月も無理はするなよ」

 叶はさらりと優月のことも気遣ってから、社務所の奥にある自室に向かったようだ。叶の自室には優月も入ったことはない。

「お姉さん、どうかしたんですか?」

 茉莉花が応接室からひょこっと顔を出していた。なかなか戻らないから心配をかけてしまったようだ。優月は笑顔で茉莉花の元に戻った。

「ううん、何でもないよ。よし、頑張ろう!」
「おー!」
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