20 / 74
一章 ― 始 ―
一章-12
しおりを挟む5月11日(水)
『clover_fieldさんがライブ配信を開始しました。リアルタイムで視聴しよう!』
待ち望んでいた通知が、スマホの画面に表示されたのを確認し、画面の上の部分にあらわれた通知バーをタップする。
四・七インチのディスプレイでは、彼女が信奉していると言っても良い、ひとつ年上の女子が微笑んでいた。
「はぁ~、ヨツバちゃん、今日も可愛いべな~」
そんな独り言をつぶやくと、画面の中の白草四葉が笑顔で語りだす。
「みんな、おはよう! クローバー・フィールドの白草四葉です。『メイクとヘアで大変身! 隠れた魅力を引き出して、いままでの自分から変身ちゃおう!』が合い言葉!」
「わたしは、人間にとって、いちばん大事なのは、中身だと思う。でも、他人が最初に見るのは、やっぱり外見なのよね(苦笑)」
「昨夜は、美容に大切な八時間睡眠ができなかった……勉強と……放課後に、学校でちょっと刺激的なことがあったから、気持ちが落ち着かなかったんだ」
「だから――――――今朝は、いつもと違うルーティンをしようと思ってるの!……って、スゴイ! もう、こんなにコメントと質問が来ちゃった」
スマートフォンの画面の中には、次々に視聴者からのコメントや質問が表示される。
ribbon_cat1101:おはよう! ヨツバちゃん今日も楽しみにしてるよ。
golden_pudding0416:今日は、どんなルーティンを紹介してくれるの?
chocolat_rollO9:夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて
「それじゃ、さっそく、答えて行くね! まずは――――――chocolat_rollO9さん、うん! カワイイ名前ね! 『夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて』」
「とっても、良い質問ね、chocolat! このバリー・ベノムのリバイバル・アイ・パッチは、目の隈に効果バツグン!」
#バリー・ベノム
#リバイバル・アイ・パッチ
「コーヒーを飲んあとは、お肌が水分不足気味。だから、アノのグロウオイルを塗るの! お肌がツヤツヤになるよ。それから、クリームブラシをちょこっと」
#アノ
#グロウオイル
「つぎは、snow_fieldちゃん! いつも、ありがとう。『明日は、証明写真の撮影があるのに、ニキビができてしまったべ……ヨツバちゃんなら、どうやって対処するか教えてほしいべ』」
「!」
snow_fieldの名前が呼ばれた瞬間、彼女は、スマホを両手で固く握りしめて、つぶやく。
「今日も、わたすのコメントを拾ってくれた……ありがとう、ヨツバちゃん……」
彼女が、両手で握ったスマホを胸のあたりに押し当てながら、感慨にふけっている間にも、画面の中のインフルエンサーは、語り続ける。
「ニキビの対処法ルールその1! 絶対に指で潰すのはダメ! 対処法ルールその2! どうしても、早く治したい場合は、トイレット・ペーパーにハミガキ粉を染み込ませて、ニキビの部分に当ててみて。そのまま、一晩寝たあと、翌朝にぬるま湯で洗い流すとバッチリだよ! ただし、ハミガキ粉は、ホワイトニング成分の入っていないものと白一色のクリーム状のものを選んでね」
自分の質問に答えているヨツバの言葉を聞き漏らすまいと、再びスマホの画面に目を向けた彼女は、食い入るように、自身が、カリスマと崇める相手の姿を見つめる。
画面の向こうの彼女は、ライブ配信の締めに入っている。
「――――――と、いうことで、今朝のライブ配信は、ここまで! 今夜のライブでは、初心者向けのフットネイルを紹介させてもらうね。シールタイプだから、とっても簡単にフィットさせられるし……なにより、女子だけなく、男の子の目も釘付けだった、ってことをわたし自身が体験しちゃったから……今夜の配信も楽しみにしていてね。それじゃ、また、夜に! バイバイ!」
(はぁ~。今日もありがとう、ヨツバちゃん。こんなヒトと同じ学校に通えているなんて奇跡だべ……)
クローバー・フィールドの配信が終わったあとも、余韻にひたりながら、再びスマホを両手で抱きしめて、胸にあてた。
そうして、彼女は決意を固める。
(ヨツバちゃんが関わっている広報部に、わたすも入部するべ……)
『clover_fieldさんがライブ配信を開始しました。リアルタイムで視聴しよう!』
待ち望んでいた通知が、スマホの画面に表示されたのを確認し、画面の上の部分にあらわれた通知バーをタップする。
四・七インチのディスプレイでは、彼女が信奉していると言っても良い、ひとつ年上の女子が微笑んでいた。
「はぁ~、ヨツバちゃん、今日も可愛いべな~」
そんな独り言をつぶやくと、画面の中の白草四葉が笑顔で語りだす。
「みんな、おはよう! クローバー・フィールドの白草四葉です。『メイクとヘアで大変身! 隠れた魅力を引き出して、いままでの自分から変身ちゃおう!』が合い言葉!」
「わたしは、人間にとって、いちばん大事なのは、中身だと思う。でも、他人が最初に見るのは、やっぱり外見なのよね(苦笑)」
「昨夜は、美容に大切な八時間睡眠ができなかった……勉強と……放課後に、学校でちょっと刺激的なことがあったから、気持ちが落ち着かなかったんだ」
「だから――――――今朝は、いつもと違うルーティンをしようと思ってるの!……って、スゴイ! もう、こんなにコメントと質問が来ちゃった」
スマートフォンの画面の中には、次々に視聴者からのコメントや質問が表示される。
ribbon_cat1101:おはよう! ヨツバちゃん今日も楽しみにしてるよ。
golden_pudding0416:今日は、どんなルーティンを紹介してくれるの?
chocolat_rollO9:夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて
「それじゃ、さっそく、答えて行くね! まずは――――――chocolat_rollO9さん、うん! カワイイ名前ね! 『夜ふかしした次の朝のモーニング・ルーティンを教えて』」
「とっても、良い質問ね、chocolat! このバリー・ベノムのリバイバル・アイ・パッチは、目の隈に効果バツグン!」
#バリー・ベノム
#リバイバル・アイ・パッチ
「コーヒーを飲んあとは、お肌が水分不足気味。だから、アノのグロウオイルを塗るの! お肌がツヤツヤになるよ。それから、クリームブラシをちょこっと」
#アノ
#グロウオイル
「つぎは、snow_fieldちゃん! いつも、ありがとう。『明日は、証明写真の撮影があるのに、ニキビができてしまったべ……ヨツバちゃんなら、どうやって対処するか教えてほしいべ』」
「!」
snow_fieldの名前が呼ばれた瞬間、彼女は、スマホを両手で固く握りしめて、つぶやく。
「今日も、わたすのコメントを拾ってくれた……ありがとう、ヨツバちゃん……」
彼女が、両手で握ったスマホを胸のあたりに押し当てながら、感慨にふけっている間にも、画面の中のインフルエンサーは、語り続ける。
「ニキビの対処法ルールその1! 絶対に指で潰すのはダメ! 対処法ルールその2! どうしても、早く治したい場合は、トイレット・ペーパーにハミガキ粉を染み込ませて、ニキビの部分に当ててみて。そのまま、一晩寝たあと、翌朝にぬるま湯で洗い流すとバッチリだよ! ただし、ハミガキ粉は、ホワイトニング成分の入っていないものと白一色のクリーム状のものを選んでね」
自分の質問に答えているヨツバの言葉を聞き漏らすまいと、再びスマホの画面に目を向けた彼女は、食い入るように、自身が、カリスマと崇める相手の姿を見つめる。
画面の向こうの彼女は、ライブ配信の締めに入っている。
「――――――と、いうことで、今朝のライブ配信は、ここまで! 今夜のライブでは、初心者向けのフットネイルを紹介させてもらうね。シールタイプだから、とっても簡単にフィットさせられるし……なにより、女子だけなく、男の子の目も釘付けだった、ってことをわたし自身が体験しちゃったから……今夜の配信も楽しみにしていてね。それじゃ、また、夜に! バイバイ!」
(はぁ~。今日もありがとう、ヨツバちゃん。こんなヒトと同じ学校に通えているなんて奇跡だべ……)
クローバー・フィールドの配信が終わったあとも、余韻にひたりながら、再びスマホを両手で抱きしめて、胸にあてた。
そうして、彼女は決意を固める。
(ヨツバちゃんが関わっている広報部に、わたすも入部するべ……)
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
魔法使いと子猫の京ドーナツ~謎解き風味でめしあがれ~
橘花やよい
キャラ文芸
京都嵐山には、魔法使い(四分の一)と、化け猫の少年が出迎えるドーナツ屋がある。おひとよしな魔法使いの、ほっこりじんわり物語。
☆☆☆
三上快はイギリスと日本のクォーター、かつ、魔法使いと人間のクォーター。ある日、経営するドーナツ屋の前に捨てられていた少年(化け猫)を拾う。妙になつかれてしまった快は少年とともに、客の悩みに触れていく。人とあやかし、一筋縄ではいかないのだが。
☆☆☆
あやかし×お仕事(ドーナツ屋)×ご当地(京都)×ちょっと謎解き×グルメと、よくばりなお話、完結しました!楽しんでいただければ幸いです。
感想は基本的に全体公開にしてあるので、ネタバレ注意です。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
※毎日18時更新予定です。
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました!🌸平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。
ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。
でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。

炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
夜勤の白井さんは妖狐です 〜夜のネットカフェにはあやかしが集結〜
瀬崎由美
キャラ文芸
鮎川千咲は短大卒業後も就職が決まらず、学生時代から勤務していたインターネットカフェ『INARI』でアルバイト中。ずっと日勤だった千咲へ、ある日店長から社員登用を条件に夜勤への移動を言い渡される。夜勤には正社員でイケメンの白井がいるが、彼は顔を合わす度に千咲のことを睨みつけてくるから苦手だった。初めての夜勤、自分のことを怖がって涙ぐんでしまった千咲に、白井は誤解を解くために自分の正体を明かし、人外に憑かれやすい千咲へ稲荷神の護符を手渡す。その護符の力で人ならざるモノが視えるようになってしまった千咲。そして、夜な夜な人外と、ちょっと訳ありな人間が訪れてくるネットカフェのお話です。
★第7回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる