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メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
頁49:祭壇とは 3
しおりを挟む雪之進君の矢が放たれない様に射線の間に立ち、小さな老人とコンタクトを試みる。試みると言うより既にガンガン話しかけられているけれど。
「あ、あの、すいませんが…あなたは本当に敵対生物ではないのですか?」
今し方本人がそれを否定したばかりだが、そもそも敵対生物の定義を私は知らない。喋らない物だと思い込んでいたけれど本当にそうなのかも不確かなのだ。
『なんじゃお前さんもか! どうしたら儂の様なプリチーな存在をあんな醜悪な輩と混同出来るんじゃ!』
プリチーだと思えなくて本当にごめんなさい。
「なになに…誰と話してんのヨ……って…!? うおおおおおおお!?」
漸く回復したらしき神々廻さんがよろよろとやって来るなり驚きの声を上げた。
「ちょ、ちょ、ちょ、ま、マジで!? ちっさ!? じーさんちっさ!! もしかしてアレでしょ!? ホビットとかコロポックルとかノームとか小さいおっさんとかの特別な存在系のアレ!!」
『お? お? おお??』
神々廻さんの怒涛の勢いに小さいお爺さんが押されていた。最後の『小さいおっさん』って特別な存在なんですかそれ…。
「シシバ、そいつが何なのか知ってるの?」
「いや全然。でもサイズの小さいおっさんとかじーさんってのは特別な存在だってのがセオリーだからな!」
どこの世界のセオリーなんでしょうか。…元の地球のか。
しかし神々廻さんの雑なヨイショに気を良くしたのかお爺さんが相好を崩す。
『ンホホホ…なんじゃ小僧、分かっとるじゃないか。おんしが言った輩どもが何なのかは知らんが、確かに儂は特別な存在じゃな』
「え…? まさか、オレちゃんすら知らない新たなレアじーさんなん…!?」
どういうレアだろう。
ていうか本当にこの人は天然の人たらしなんだな。いやお爺さん人類じゃないですけど。(多分)
『ふふん、知っておったぞ。おんしらの目的地は』
「ほえ?」
立っていた石の上にドカッと胡坐をかいて座るとお爺さんはニヤニヤと我々を見る。
『スタ・アトの祭壇に行きたいんじゃろう?』
「じーさん場所知ってんの!?」
「…スタ・アトの祭壇って?」
雪之進君が首をかしげる。かわいい…。いやそうじゃないだろ私。
「戦闘職になる為の『星の赦し』という物をもらう場所です」
「ふーん…。で、あんたはそれを知ってるんだ」
構えた弓は下げてくれたものの、いつでも撃ち込みそうな警戒色を隠さずに問う。
『んほほほほ…その通り』
「言え」
瞬時に弓を構え脅迫する雪之進君。
いつでも撃ち込みそうとは思ったけれどちょっと早すぎません!?
『全くせっかちじゃのう、愚か者め。何故儂がおんしらを知っておったのか、分からんか?』
「…?」
ハッとした。そうか、つまり───
『愚かなる小童よ、凶刃を向けた相手に何を赦されようと言うのか。おんしが眼前に有りし存在は地球が意志の一つ、【スタ・アトの祭壇】なるぞ』
祭壇だからと言って祭壇の形とは限らない。
散々見せられてきた先入観のズレにまたしても先手を取られてしまった。
(次頁/50-1へ続く)
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