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メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
頁44:伝説級とは 2
しおりを挟む「ナニコレ……すげぇ…」
「死者の想いを受け取る樹であり、生まれ変わりのシンボルとなって欲しい。そう願って付けました。しかしまさかこれは…」
ぼやけただけの樹だったそれは、神々しさすら感じる荘厳な佇まいの大樹へとその姿を変貌させた。『その名に恥じぬ』と言うよりも『名は体を表す』だろうか。
名前を与えるだけと言う単純作業だと思っていた物が実は世界規模で影響を与える物だと知り、それが更には人類の盛衰にすら通ずる重大なファクターを持っている、と私の中でどんどん重荷になっていってる気がしていたが…『良く在りたい』と願えばそれに応えてくれるという側面もあったらしい。これはある意味私にとっての希望だ。
同時に、私自身が歪んでしまえば悪意を世界中にばら撒いてしまえるという真逆の証明でもあった。
成程、【承諾システム】によるストッパーの真意はそこだったのか。
「え…なにコレ!? ちょっとシステムメッセージ見て!」
ページを開いたままだった神々廻さんが再びページに目を落とし慌てる。
…なんだろう? 私も自分の【辞典】を見やる。
「えっ?」
《 レジェンドパーツの名称を設定しました。CPにボーナスが加算されます。レジェンドパーツの設置された座標周辺に恩恵が与えられます。》
「どういう事ですか神々廻さん? 『レジェンドパーツ』って?」
「た、多分…この樹の事じゃね!? あ、ホラ、辞典のページに『レジェンド』ってタブが増えてる」
確かに彼の言う通り、辞典ページの種類別タブ『レジェンド』に今しがた登録したばかりの『リバース・ツリー』が画像付きで追加されている。
《 リバース・ツリー/超希少植物:(以下詳細)死者の念を集め浄化する大樹。『 』信仰のシンボルであり、周辺の土地を清め敵対生物を弱体化させる。種も苗も発見出来た者はおらず、通常の栽培方法では絶対に成長しない。異次元の樹とも呼ばれる。》
説明の文字数が多い…!『石』とは偉い差だ。
「異次元の樹…もしかしてさっきの実験のせいですかね?」
「マァ間違いなくそうだろうね。この星に本来存在しない存在を創り出しちゃったのかどこかから召喚しちゃったのか…。でも結果オーライじゃね? この辺を守ってくれるみたいだし」
「それはそうですけど…」
運良くそういう結果に出来ただけであるし、今後は細心の注意を払おう。
「うおっ!? すげぇ!」
本を覗き込みながらまたしても神々廻さんが叫ぶ。今度は何だろうか。
「く…CPのレジェンドボーナス…100万ポイントだった…」
「そんなに!?」
流石に私も驚いた。レジェンドと銘打つだけの事はある。
でも使い道はどうするつもりだろうか? 大量に得られたからと言って無計画に使えばあっという間に底を突くだろう。
神々廻さんはと言うと、開いたページを難しい顔で睨みつけている。予想外の表情だ。
「どうしました?」
「うん…」
はて? 嬉しくないのだろうか。
「何か悩んでいるのであれば言って下さいね。パートナーなんですから」
その言葉に他意は無い。けれど彼が言いたくないのであればその意志は尊重したい。
「あのさ…このポイント、全部使ってもいいかナ」
「はぁ!?」
まさか全部使うと言い出すとは…。
「使い道は? 何か考えがあるんですか?」
「ウン。100万って数字を見た瞬間に思いついちゃったんだよネ」
「あ…」
成程、私にも理解出来た。彼の真意が。
「いいんじゃないですか」
「えっ? まだナンも言ってないヨ!?」
彼が無駄遣いするかも、と真っ先に思ってしまった自分を恥じた。
基準が分からない為100万ポイントという数値がどれ程の意味を持っているのかは測りかねるが、恐らくは決して軽い物では無いだろう。しかし彼にとって自分自身に納得の行く選択に使いたいと言うのであれば、それを否定するだけの理由は私には見つけられない。
「言わなくても分かるのがパートナーですよ。…と言っても、すぐには分かりませんでしたけど。ごめんなさい」
「へへっ、アリガト!」
ホッとしたのか明るい笑顔を見せ、開いたページをめくる。
彼は彼なりにこの世界に触れながら考えたり気付いたりを重ねているのだろう。既に積み重ねてしまった知識で身動きが取りにくい私と違って、彼の方が本当は天地創造に向いているのかもしれない。
そう思うと胸がなんだかモヤモヤした。
「───よし。では…設定、変☆更!」
変更でもやっぱり叫ぶのね。
《 CPを消費し、世界設定の変更を行いました。》
《 世界設定/名称/大陸名4:リ・ファスタ 関連する世界設定の一部が修正されます。》
(次頁:45-1へ続く)
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