90 / 114
メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
頁43:隠蔽とは 1
しおりを挟むさて、この物体達をどうやって始末しようか…。穴の深さは想像もつかないが、警戒色の池は幸いにも小さく浅そうだった。樹は…もうどうしようもないな…。
取り敢えず池と穴を溝で繋いでダークカラフルな液体だけでも流し込んでしまおうか。
私は虚空物置から三角スコップを二つ召喚すると、一つを神々廻さんに手渡す。
「…え?」
「とりあえず池の水を穴に流す溝を掘りましょう。いつまでも腰を抜かしてる場合じゃありませんよ」
「あ、はい…」
今しがた目にした光景にショックを受けていたカミサマを無理矢理立たせる。
「どういう成分の液体か分からないのでなるべく触れない様に気を付けて下さい」
「了解…」
神々廻さんが指示通りにノロノロとスコップを振るい始めた。
私は…建物の物陰に小さな穴を掘る。
「そんなトコに穴掘ってどうすんの??」
「決まってるでしょう」
十分なサイズの穴が掘れた事を確認すると、わたしは『それ』の元へ歩みより、そっと両手で包む様に持ち上げる。
存在確率の暴走により生み出されてしまった、小さく、短く閉じた命の亡骸を。
「ちょ…! 素手で触って大丈夫なのそれ!?」
「もし駄目だったら貴方が看病してくれるのでしょう?」
「ハイ喜んで! …ってそんな事言ってる場合じゃあ…」
まだ何か言いたげな彼に背を向けると、掘った穴に静かに横たえ土を被せた。
土のついた手で申し訳ないと謝りつつ、手を合わせる。
「ごめんなさい…」
「……」
創り出してしまった誤った命の形かもしれないが、でも確かに動いていた。感情も意図も分からないけれど鳴き声を発した。それだけでもこの子は生きていたんだと断ずるに値する。その最期を看取ったのであれば始末をつける責任が我々にはある。
「…さて、申し訳ありません、私もそちらを手伝いますね」
手をパンパンと叩き、スコップを手に立ち上がる。導水溝堀りは案の定あまり進んでいない。
「あ、あのサ」
「何でしょう?」
神々廻さんが何か思いつめた顔をしていた。
「もし…、もしキミが倒れたりしたら、その時はオレ、徹夜で看病するから!」
「え?」
何を言い出したか一瞬分からなかったが───
「その時は宜しくお願いしますね。私も貴方がダウンしたら同じく看病します。パートナーですから」
「へへっ、アザーす」
当然の事を言ったまでなのに過度に嬉しそうだった。
「あ、でも徹夜はしませんけど」
「あれェーー!?」
「冗談言ってないで片付けましょう」
「冗談じゃないんだケドなぁ…」
分かってます。この人は本当に徹夜でも何でもするだろうって。
だからこそそうさせない様に私も気を付けなければ。
「そう言えばさっき言ってた『存在確率の暴走』だっけ? アレってどういう事?」
(次頁/43-2へ続く)
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説


冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる