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メガネスーツ女子と死後?の世界
頁36:追悼の儀とは 1
しおりを挟むまだ明るさが僅かに残る宵の口。
神々廻さんによって掘られた?大穴に、村の男性陣により五つの棺が横たえられた。
「私達の魂はいつまでもあなた達の傍にいるよ。安らかに眠っておくれ。そして、いつかまた逢いましょう…」
よしこさんが村人を代表して追悼の辞を述べる。
神々廻さんを含め男性陣によって土を被せられていく棺を見送る人々の目には再び涙が溢れていた。土を盛っている男性陣も同じだった。
神々廻さんが半分近く吹き飛ばしてしまったせいで土が足りずに周囲の地面を削る必要があったけれど、何とか大穴を埋める事が出来た。盛りたての柔らかい土をみんなで軽く手で押し固め、途中で中断してしまった花摘みを改めてみんなでやって、集まった大量の花で死者の眠る聖地を飾った。
墓標は立ってはいない。恐らくはそれがこの星に根付いた埋葬の基本なのだろう。作法が分岐していくとしたらそれはこの星の人達が考えていく事だ。
「それはどういう意味があるんだい?」
「えっ?」
よしこさんに問われて、私と神々廻さんが無意識に手を合わせていた事に気が付く。ええと、合掌の意味は…
「こうやって手を合わせていると、なんか気持ちが入るんスよ。祈りよ届け!って」
神々廻さんが代わりに答える。
「そうかい…。それはいいねぇ。私も真似してもいいかい?」
「モチのロン!」
すると、それを見た他の人達も同じ様に合掌して瞳を閉じる。
そうだ、所作の意味なんて重要じゃない。大事なのは心なんだ。そう、またしても彼に教えられた気がした。
「……」
四季の無い空に、響きを持たない祈りの言葉が高らかに響いた。
◇◆◇◆◇◆
「み、皆さん…タフっスね……」
「どうしたんだいそんな疲れた顔して?」
疲労困憊な表情の神々廻さんに対して全く消耗していない元気な村の人々。
顔には出していないが流石に私も少し疲れていた。
陽はどっぷりと暮れ切っていた。
(次頁/36-1へ続く)
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