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メガネスーツ女子と死後?の世界
頁30:再訪と異変とはⅡ 2
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我々の再会記念パーティー(仮)は夕方から行われる事になった。時間の概念がまだ定着していない為、正確な開始時間は人それぞれで場所はひろしさんの家。広さもある家だから問題は無さそうだ。
時間の概念が無いのに一年の概念はあるのが甚だ疑問ではあったが、そのちぐはぐさを正していくのが我々の使命なのだろう。ちなみに前世の地球のカレンダーそのまんまだった。きっと神々廻さんの仕業だ。
村の人達とまだワイワイやっている彼は残しておいて私とひろしさんは一先ずひろしさん宅に移動する事に。
どういう訳か認識的に一年の差がある為、何を話したらいい物か悩んだ。
「…あら?」
「うん? どうした?」
改めて前を歩くひろしさんを眺めると、体のあちこちに怪我の治療跡と見られる痣らしき物が。治療といっても正しい処置かと問われたら微妙そうにも見えるが。
「怪我…してるんですか?」
「あん? ああこれか! しまったな、恥ずかしいモン見せちまった。うははは!」
豪快に笑いながら腕の痣の一つをバシンと叩き『いてっ』と顔を歪ませる。
「大丈夫なんですか?」
ふぅ、と溜め息を吐きながらひろしさんは参った様に切り出した。
「大丈夫だと言いたいのは山々なんだけどよ…何ヶ月か前から飛ぶ眼の変種が現れる様になってな。コイツがまためっぽう強くてなァ…一対一なら最近は何とか出来るんだが、複数で来られるとこの通りだ」
先程危惧した事態がやはり的中してしまった。この村の戦闘職がひろしさん一人である以上、出現する敵対生物が強くなればそれだけ負担が倍増する。
…いや、ちょっと待った。本当に一年の時間が経過しているのであればなぜ一人のままなのか。
村には大人は沢山いる。ひろしさん以上に戦士に向いてそうな男性だっているし、寧ろ女性だって13歳以上であれば戦闘職にはなれる筈だ。それなのにどうしてひろしさん一人に押し付けているのか?
いや、村の人達のあの感じだと押し付けているという表現からは程遠い様に思える。何だろう…この違和感は。風景が止まったまま時間だけが先に進んでしまったみたいな───
「…!?」
止まったまま?
その言葉に引っかかる物を感じ、私にとっては記憶に新しい先日の村の風景を思い出してみた。記憶力には自信がある。
「お? どうした?」
ひろしさんの服装、立っている場所、周囲のちぐはぐな建物、その辺のまだ名前を付けていない植物───
何も変わっていない。下手したら建物の風化や汚れ具合も、植物の成長すらも、だ。全身が例え様の無い悪寒に包まれた。
一年間に何一つ変化が無いって、そんな事が……。
「おいおい…顔色が悪いぞ? もしや具合でも悪いのか?」
つい考え込んでしまった私をひろしさんの優しい顔が覗き込む。自分だって沢山怪我しているというのに。
───いや待て。変わっている物があるじゃないか。人間だ。だけどそれはつまり…。
急速に顔から血の気が引いていくのが分かった。
「ひろしさん…」
「な、なんだどうした」
私がこれを聞いても本当にいいのだろうか。
違う、その答えを聞いた自分が耐えられるのだろうか、だ。瞬間的に保身を考えてしまった自分に嫌悪する。
「あの…、その……さっき集まった人達で村人全員ですか?」
遠回し過ぎただろうか。しかし今の私にはオブラートに包んだもっといい聞き方が思いつかなかったのだ。
ひろしさんは驚いた表情で私の目を見つめると、何かを悟った様に背を向けた。
「……こっちだ」
そう一言だけ呟くと、自宅とは違う方向へ向かって静かに歩き出した。
(次頁/31-1へ続く)
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