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メガネスーツ女子と死後?の世界
頁29:再訪と異変とは 2
しおりを挟むものすごい既視感に襲われた。
「座標は───」
「え?」
転移が即座に行われ、ほんの少しの浮遊感の後───予想通り落下。またしても樹木の上だったのかバキベキと派手な音を立てて枝葉が犠牲になっていく。木の上に落ちたからって無事とは限らないのですが。
「ちょっと……」
「ナハハ……ゴメンナサイ…」
どうしてまた頭から落ちてるんだろうこの人。死なないけどお願いだから死なないで欲しい。
え? 詳細不明のペナルティーが怖いからですが何か?(キリッ)
「…大丈夫ですか」
無事に着地出来ていた私は彼に手を差し伸べる。
「え…ウソ…掴んでいいの? この手? 後で怒ったりしない?」
「私を何だと思ってるんですか!」
まあ第二印象的に無理も無いかもしれないけど。
変な体勢のまま彼がおずおずと私の手を取ると───想像以上の力で引っ張って来た。私も流石の事に反応が遅れて前屈みに姿勢を崩す。
「危ない!!」
「え?」
直前まで私の頭があった場所を貫いていく砲弾。いや、あれは───
その物体は進行上に乱立している杉の木の幹を掠っては削りながら通り過ぎ、一定の間隔を取ると再び羽を広げてこちらに向き直った。
「飛ぶ眼…しかも回転型!?」
「コイツ、ダンジョンの外にも登場するようになったのか!?」
前回の戦いの記憶が蘇り、無意識に体が震えた。武者震いと言えば格好はつくだろうが。
それよりもまずいのは、通常の個体ですらあれだけ苦戦していたひろしさんなのに、回転型と戦う事になったら敵う訳がない。ひろしさんには申し訳ありませんけど。
「速やかに排除して村に急ぎましょう」
カウンターの蹴りを叩き込む為に構えを取る。次は打ち負けはしない。
こちらの意図など知る由も無い敵対生物が再び回転を纏い突っ込んで来る。
「みザリー、そこどいて!」
「え?」
構えた私の前に神々廻さんが割り込んで来る。無茶な!
あの二人の記憶が脳裏を過る。
「ちょっと、何考えてるんですか!」
「だから考えたのヨ」
「!?」
顔半分だけこちらに振り返り、ニカっと歯を見せる彼。よく見るとその手にはへし折れた杉のやや太めの枝。折れた先端は鋭く尖っている。
「前回は何も道具が無かったケド…攻略法を研究すれば強敵だってぇぇぇぇ!!」
相変わらず真っ直ぐに突っ込んで来る物体のど真ん中に手にした得物を突き立てた。
粘液の詰まった袋が弾けたみたいな音が響き、狙い通りに串刺しにされた回転型は何が起きたのかを理解する暇も無く即死した様だ。単体だったのかすぐにポンと消える。
「すごい…」
「は…はは……やった……」
硬直しているのは残身なのかと思っていた彼がぺたんと尻餅をつく。単に緊張が解けなかっただけっぽい。
「大丈夫ですか!?」
「う、ウン。手がちょっとビリビリしたけど…」
まだ枝を握りしめたままでいる両の手は小刻みに痙攣していた。一瞬で力を入れ過ぎたからだろうか。
私は彼の前にしゃがむとその手を取り、強張った指一本一本を丁寧に伸ばしていく。
「ちょ、あの…」
「難しいかもしれませんが力を抜いて下さい。筋が硬直してますので」
「あ…ハイ…」
まず全ての指を伸ばすと、片手ずつ手の平のマッサージ。血流を戻し固まった筋肉を解す。それを両手に念入りに施した。
「どうですか?」
「めっちゃ気持ちよかったっス……。この通りちゃんと動くヨ。ありがとうゴザイマシタ」
座位のまま深々と首を垂れる神々廻さん。
「こちらこそ…最初に引っ張って貰わなかったら危ない所でした。ありがとうございます」
ノーガードの後頭部にあの攻撃を食らっていたらと想像すると背筋がヒヤッとした。
咄嗟の判断といい回転体への攻撃方法といい、彼は私が思うよりもずっと学んで成長してるのかもしれない。
「や、それはその…お互い様ってコトで! アヒャヒャ!」
また聞いたその言葉。前はシュウさんに言われたけれど…。
「さ、急いで村に行きますか!」
「ええ」
同時に立ち上がると本を召喚し、方角を確認しつつ行動を開始した。
(次頁/30-2へ続く)
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