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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁25:安全地帯とは 2
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分岐を左へと進んだ先。途中で何度か飛ぶ眼と遭遇したが、流石に慣れて来たのか神々廻さんも落ち着いて対処が出来る様になっていた。戦闘後に現れる品を見てはしゃぐ姿は何となくシュウさんと同じ匂いを感じた。
「なんだか…ここは様子が違いますね。妙にぽっかりしていて居心地が良いと言うか…」
人工的な洞窟風ダンジョンだというフィルターを通してもこの部屋は更に整えられた間取りをしている。
休憩でもして下さいと言わんばかりに座るのにちょうど良さそうな石や焚火に使えそうな薪が適量転がっている。洞窟の中だと言うのに薪って…。そして極めつけには奥へ続くであろう大仰な観音開きの扉。明らかに存在が不自然だった。
「いよいよか…!」
神々廻さんが緊張した面持ちで呟いた。
「いよいよとは?」
「え? 『とうとう…』とか『ついに…』って意m」
「分かってます。そうではなくて『何がいよいよ』なんですか?」
『いよいよの意味』が分からないと思われたのだろうか私は。屈辱だ。
「…ここは恐らく【安全地帯】なのヨ…。敵対生物も多分入ってこれないハズ。あ、ほら、飛ぶ眼が手前でUターンしてったっしょ?」
確かに。明らかにこちらを視認していた様に見えたのに不自然に引き返していった。
「こういう場所が設置されているとしたらダンジョンの中間地点、もしくは…」
「最終目的地の手前、という事ですか? でもなぜわざわざ自分達の拠点に敵の為の寛ぎスペースを? 意味も意義も分からないのですが」
「それ以上いけない」
突然真顔で遮られた。気のせいか一瞬眼鏡を掛けていたような…? 深く考えるのはやめよう。
「この世界で『なぜ?』なんてタブン掃いて捨てる程あるヨ。それについて深く考えるより『よっしゃラッキー☆』って割り切った方がトクじゃね?」
「むぅ…」
それは確かにそうだとは思うけれど…。と、いけない。さっき宝箱の件でもシュウさんに同じ事を指摘されたばかりじゃないか。
本によって支配されてるこの星では私の常識が通用する部分と通用しない部分がある。その通用しない部分を元の世界と同じ形に矯正しようとするのは私個人のエゴだ。
「初級のダンジョンだとそこまで深さはないハズだから、恐らくはこの先がボスの部屋で間違いないヨ」
ボス…。討伐目標である以上は雑魚敵と見なされている飛ぶ眼達を従える程度の力を持った『新たな敵』だろう。どの様な姿形なのかも分からずに挑まなければならないのは非常に不利ではあるが、シュウさんに言わせればきっとそれこそがRPGなのだろう。詳細は戦いの中で知れ、と言う訳だ。
私にはまだこの目に見えている世界をゲームの様に同一視する事は出来ないが、少なくとも理解する努力はするつもりだ。
「どうするみさティヴ? 一休みする?」
「私は大丈夫です。変に休んでしまうと逆に体が動かしにくくなるので。でももし神々廻さんが休みたいならしっかり休みましょう。部屋を出る前にアップすればいいだけの話ですしみさティヴって誰」
「や、オレもダイジョーブ。なんせ暫く気絶してたので! アヒャヒャヒャ!!」
自虐で爆笑出来るなんて器用だな。気絶は厳密には休息にはならないのだけれど…本人が不要と言うならば問題無いのだろうか。
神々廻さんは妙に整地された部屋を真っ直ぐに突っ切り奥へと進むと、無駄に重厚なデザインの扉に手を添えた。
「さ~て…鬼が出るか蛇が出るか、ってネ…!」
蛇はちょっと怖いけど頑張ればどうにか出来るかもしれない。鬼は…どうでしょうね…。
「ほんじゃ、行くヨ! ……よっこい……しょういちィ!!」
見た目以上に重いのか錆び付いているのか、扉はゆっくりと、低く軋む不快音を轟かせながら開いて行った。
…で、誰の名前ですかそれ…?
(次頁/26-1へ続く)
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