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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁25:安全地帯とは 1
しおりを挟む「あぶにゃい!!!!」
「うわびっくりした」
シュウさんの後に付いて通路の分岐まで戻って来た辺りでようやく神々廻さんの意識が回復した。
「あ…あれ…?」
「おはようございます。もう夜ですが」
「うっそマジで!?」
「嘘です」
「デスヨネー」
寝起きからテンション高いなこの人。ていうか『あぶにゃい』って…。直前まで鉄仮面のシュウさんだったのがいきなり表情豊かになって脳がおかしくなりそう。
「いやそうじゃないでしょ! 敵対生物は!? 大丈夫だったの!? 怪我は!? 鼻にちゃんと穴開いてる!?」
「ちょ、ま、落ち着…」
私の肩を掴んでガクガク揺さぶったりあちこち叩いてみたり撫でたりで話にならないから取り合えず引っ叩いた。
「痛ったァ!?」
「落ち着けって言ってるでしょう。ぶっ飛ばしますよ」
「もうぶっ飛ばしてるからね!?」
あらやだ。
「敵対生物の群れは撃退出来ました。まさか初戦であんなに動けるなんて驚きましたよ。お陰でこうして無事でした。ありがとうございます」
斜め45度で頭を垂れる。
すると戦闘中の記憶が蘇ったのだろうか、なんだか得意げな表情になってきた。イラァッ。
「いやァ…何て言うの? オレちゃんも自分にビックリインド人なんだけどさァ…土壇場で秘めたる才能が覚醒したってヤツ? まあ隠された力があるって分かっちゃいたケd」
止まらなさそうだったので引っ叩いた。さっきの逆側を。
「何で叩くのよォ!?」
「頬っぺたに飛ぶ眼がとまってましたので」
「そんなにちっちゃく無いでしょぉぉぉ!?」
黙らせようと思ったんだけど逆効果だったかしら。
「神々廻さん。確かに予想以上だとは思いましたけど、『何の問題も無い雑魚』なんですよね? つまり勝てて当然の相手という事になります。それなのにまんまと気絶させられて───」
「だーーー! 分かったよ! 調子乗ってましたスンマセン!」
90度に腰を折って謝罪する。妙に慣れた感のあるキレだ。
「では引き続き緊張感を持って進みましょう」
面と向かって褒めすぎると油断しそうだから黙ってはいるけれど、まともな日常からしたらこんな異常とも言えるシーンで、しかも経験も無しにあれだけ立ち回れた事は素直にすごいと思っている。
才能という意味では実際に持っているのではないだろうか。
「え、と…どっちに進む? 右?」
「右ならもう行きましたよ」
「えっ!? なんで? でも、オレ…。───あ」
ハッと何かに気付き、視線を泳がせる彼。
「あの…もしかもしてもしかもすると…」
どういうかもしだろうか。二回目。
「オレが起きるまでの間……その……」
「あなたが話してもいいと思ったら、その時に改めて伺います」
その言葉で何があったのかを何となく察したのだろうか。
「…ごめん」
「謝る事なんですか?」
「いや…、でも、ごめん。何となく」
らしくないな。それともこっちが本当はらしいのか。
どういう関係性なのかはまだ分からないが、ハッキリしているのは『神々廻 志雄』と『神々廻 シュウ』は同一の体を有する完全なる別人格である事。解離性同一性障害と呼ばれる物に分類されるのかもしれない。
しかし確か解離性同一性障害は人格同士での記憶の共有は殆どの場合無いと読んだ気がする。とすると神々廻さんの場合は記憶を完全に共有&人格同士でのコミュニケーションが取れているというレアケースなのか。何だったっけ…多重自己、だったか。違ったかも。
彼の人生においていつぐらいからお互いを認識していたのかは分からないが、前世の地球ならばその特殊性ゆえに生き辛さを抱えていたかもしれない。でもそれをこちらから聞き出すのはプライバシーの侵害だ。それも特上の。
「あなたは謝ってくれるんでしょう? なら私も今はそれを信じます」
「…!」
その言葉で、自分が気絶してる間にシュウさんが私とどの程度の会話をしたのか察した様だ。
「調子が狂うので二人して暗い顔をするのはやめて下さいね」
(次頁/25-2へ続く)
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