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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁24:想定外の助っ人とは 4
しおりを挟む「お約束?」
また耳にしたその単語。どういう意味なのだろうか。『彼』改めシュウさんが歩み寄った先にある物を見てその意味が何となく分かった。
「…初級のダンジョンで罠は無いだろうな」
彼が注意深く調べている物───それはまさに『THE・宝箱』と外見で絶叫している箱型の物体だった。
「これがその、お宝って言っていた物ですか!?」
「ああ」
太い木の様な素材で外枠が組み立てられ、要所要所革らしき皮膜を鋲で補強装飾された蓋付きの派手な箱。大きさは140サイズの段ボールくらいだろうか。蓋の部分には同じく『THE・鍵穴』と絶叫する穴が。いくらファンタジーに疎い私でもこれだけ絶叫されれば何だかは分かる。だがしかし───
「あの! それの中身、持って行ってしまうんですか!?」
「当たり前だろう。RPGを何だと思っているんだ?」
「で、でもそれは───」
「誰かの所有物かもしれない、そう言いたいんだろう? さっき聞いた。じゃあ聞くが…そうじゃない可能性は?」
「え…?」
そうじゃない、可能性?
ここに人工物が置かれている以上、誰かが置いたという意味では…
「よく考えてみろ。このダンジョンはそもそもあの村の名称を決めた事で出現した。それまでは無かったんだ、この世界に」
無かった…?
「あんたも感じていただろうが、こんな平坦な洞窟が現実にあるか? どう見ても初心者用に創られた人工洞窟だ。なら誰が創ったのか。頭のいいあんたならすぐ分かるだろう」
この世界でそんな真似が出来るのは…
「…私達の、本」
「御名答。つまりコレはコレを見つけた奴への創造主からのプレゼント、という訳だ」
「そんな…」
いや、何が『そんな…』だと言うのだろうか。
誰かが必死に隠した訳でもなく、誰の不利益にもならない。完璧な贈り物じゃないか。
私が懸念した事が外れたならば寧ろ喜ぶべきだろう。なのにどうしてスッキリしないのか…。
分かっている。これは私のエゴだ。
正しくないと思った事が、正しい形で否定された故の。口喧嘩で言い負かされた悔しさ程度の陳腐な感情だ。
これしきの事で何を意固地になっているんだろう私は。
なんか情けなくて泣きそうだった。神々廻さんは気絶してるし丁度いいから泣いてしまおうかしら。
「…」
悶悶としている私をチラッと見て、シュウさんは箱を開けた。そして中を覗き込んだかと思ったら…そのまま閉めた。…あれ?
「無かった」
「え?」
「何も入ってなかった。そういう事もある」
そう呟いて立ち上がり、宝箱に背を向けるとまたすたすた歩き出す。
「え? え??」
宝箱とシュウさん、それぞれをキョロキョロと見て、慌てて彼の後を追った。
「誰の得にも損にもならなかった。つまりプラマイ0だ。良かったな」
───!! この人は…。
「(ごめんなさい…。ありがとうございます)」
喉元まで出かかっていたのだから、素直に言えばよかった。
また一つ、小さな後悔が積もった。
(次頁/25ー1へ続く)
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