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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁23:対複数戦闘とは 2
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……任されたものの、緊張で全身から汗が噴き出してる。 観沙稀ちゃんは武道の心得があるからこそあんな真似が出来るんだろう。それをオレにもやれって? 冗談でしょ?
───なら俺が変わろうか。攻略法は大体分かった。
ここンところ表に出ようとしてなかったアイツがここぞとばかりにシャシャってきた。
───うるさいな、ちょっと愚痴っただけだっつーの! 背中を任された以上はやってやるさ!
───何だお前、惚れてるのか? 何度も磨り潰した挙句反撃されて殺された相手だって言うのに。
───ちょ、おま、バッ、何言っちゃってんの!? おおおおオレはべべべべ別に…
───敵さん、突っ込んで来るぞ。
おわっ!? 避け───いやダメだ、避けたら後ろに行っちまう!! ここは全力でガードだ!
体勢を低く気持ち前のめりで、押し返す心算で両腕を立てて眼前に並べる。(心算って文字使えるようになったヨ!)
どむっ!!
重たい衝撃が全身に掛かる。けれど思ったよりも軽い! いいとこバスケのボールってくらいか?
───これなら別にクリーンヒットしたって死にやしねぇ!
───だろうな。俺達はもっと悲惨な目に逢って来た。どうと言う事は無い。
───ああ、やってやろう。この程度、だもんな!
ガードで跳ね返った飛ぶ目は一旦距離を取り間合いを測っているようだ。でも間違い無い、あの動きならすぐにまた来る……ほら来た!
よく見る、よく見ろ、よく見るんだ。FPSなら何度も眼精疲労で寝込む程にプレイしてきた。突っ込んでくる相手プレーヤーの動きも狙われてる気配も全て読んでかわして返り討ちにして来ただろ! 言ってたじゃないか、『真っ直ぐ飛んでくるボールをただ弾き飛ばしただけ』って。それを素直に真似すりゃいいんだ!
両足でしっかりと地面を踏みしめ、馬鹿正直に真っ直ぐ飛んで来る敵の軌道上に拳を置くだけ。余計な事は考えるな。どうせ失敗するだけだ。
拳が、飛来する物体に深くめり込んだ。衝突した拳から肘、そして肩を経由し腹まで衝撃が駆け抜ける。ブッ飛んでいく飛ぶ目の姿。けどオレの姿勢は崩れてない。つまりは俺が押し勝ったって事だ…!
「やった……」
───やるじゃないか兄弟。
───へへ、たまにはオレだってな!
───じゃあ戦勝記念に追加といこうか。
「…へ…?」
網膜に表示されたミニマップに新たに表示される敵マーク。しかも2つ。
───ウソだろぉぉぉぉぉぉ!?
───お、交代か?
───うっさいわ! もう慣れた! やってやんよ!!
───ハハ、精々頑張れ。
───クソったれめ! 見てろよ、ここからオレちゃんの伝説の始まりだぜぇ!
ビビったけど結局は飛来する球体が二つに増えただけだ。どちらの攻撃も致命傷にはならないしこちらには再生能力がある。なら一匹ずつ確実に仕留めるのがセオリー!
一緒に突っ込んでくれば片方は食らってしまうだろうに、単純生命体はわざわざ順番に攻撃してくれるようだった。ありがとよォッ!
一匹、そして二匹。攻略法さえ分かってしまえばなんて事は無い。ゲームと同じだ。
背後で観沙稀ちゃんの気配が時に大きく、時に微かに動いているのを感じる。きっとその度に確実に敵を仕留めているんだろう。
すげぇよな、カッコいいよな。どういう生き方をしたら女の子があんなに強くなれるんだろうな。
───お前…大分重症みたいだな。
───ほっとけよ。
再びマップに表示される敵対生物二体。懲りないな。
同じパターンで飛来するのをこちらもまた同じ動作でまず一匹、そして……
───三匹目。
───え?
網膜のマップの範囲外、視界の奥から猛烈な速度で突っ込んでくる飛ぶ目。しかしその軌道の先は…!
「危ないっ!!」
二匹目を弾き飛ばし、彼女との間に体を滑り込ませる。パンチは間に合わない。
…そうだ、忘れてた。オレには【力】があったじゃないか!
───『爆ぜろ』!!!
創造者に許された力。因果をひん曲げて無を有に、そして有を無にするデタラメな力が脆弱な存在を爆散させる。
……ハズだった。
「…あれ?」
なんで?? と呆けた直後、強烈な衝撃がオレの顔面に真正面からブチ当たり、意識ごと後頭部へと突き抜けて行った。
(次頁/24ー1へ続く)
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