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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁17:言葉とは 1
しおりを挟むこの『たいりく大陸』以外は全て空欄状態なのでどの大陸を指しているのかが全く予想出来ない。
神々廻さんのミッション1の【世界設定】で取り合えず決めておきたい事がある。
それはひろしさんとの会話の中で欠けていた部分だ。と言っても我々が渡って来たと思われている大陸については、
かと言って全部決めさせると彼がパンクするかもしれないから後回しに。
なので【職業の総称】と【ひろしさんの職業名】【敵対生物の総称】、後はお世話になっている訳だからこの村の名前も可能であれば付けたい。
これだけでも会話の虫食いはかなり減らせる筈だ。
しかしその前に、どうしても確認しておかなければ気が済まない点があった。
「あの、言語ってどう設定されてるんですか?」
「ゲンゴ?」
ひろしさんとも普通に会話してしまっているが、我々は当然日本語をベースとして話している。しかしこの星には日本は無い。日本どころか英語圏も存在していない。元の地球のあらゆる言語が本来は一切存在していない筈なのだ。でも村の人達はみんな日本語を話している。神々廻さんが設定した名称だからかもしれないが飛ぶ眼という英単語も使われている。予想ではあるが彼の性格からして大陸ごとに違う言語を設定しているとは思えない。
しかしいくらなんでも節操が無さすぎる気がして聞かずにはいられなかった。
「全世界共通でオレらの時代くらいまでに使用されてた日本語を設定してるけど?」
という事は、やはり日常的に使用されているような英語や和製英語なども一緒くたに取り込まれていると思うべきか。予想だが日本をベースにしたから玄関で靴を脱ぐ文化になったのだろうか。
「先程の話に絡めてしまう形になりますが、言葉という物はその国その国で培われてきた歴史そのものです。古典は時代の記録でもあったり、更には知らない言語の土地との交流の為に我々の祖先が心を砕き相手を理解する努力を重ねてきた背景も知れます。この星は地球では無いからその理屈は通用しないと言われるかもしれませんが、相手を知ろうとする手段や努力は必要ではないですか?」
神々廻さんは腕を組んでムムムと何か考えている。言わんとしている事は伝わっているのだろうか…。
「…言葉が通じないのがイイコトだとは思えないケド、相手を知る努力ってのは確かに大事だよネ…」
良かった、伝わってはいたみたいだ。
「ゲームに例えてばかりでゴメンなんだけどさ、『言葉が通じない』って障害はゲームのストーリーだとそこまで重要な扱いはされないんだよネ。結局は魔法やらご都合アイテムでサクッと解決されちゃってさ。でも主人公達はそれでも最終的にはお互いを知り尽くしてる」
「…どうやって?」
組んだ腕の片方の手で顎をトントンと叩く。
「そりゃまあシナリオライターが用意した友情イベントやらメインストーリーやらがツゴウもバランスも良く配置されてるからだけどサ」
「誰かに用意された物じゃないですか」
「オレらから見たらね」
…? どういう意味だろう。
「───この星にはバベルの塔は存在しなかった。人々は神の元へ近付こうなどという野心を持ってはいなかった。だから神は塔を折って人々の言語を砕こうとは思わなかった」
まただ…この感覚。同一人物とは思えない『彼』が発する言葉の中に突然妙な波長が含まれる。
まさか【力】を使って私の精神を操ろうとしているのだろうか? でもそれならなぜ今?
状況がハッキリとしない以上、とにかく引っ張られないように気持ちを強く持つ。
「その代わりに、災厄の使いを世界に放った。課題として」
(次頁/17-2へ続く)
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