25 / 114
メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁13:リアル戦闘とは 2
しおりを挟む「大丈夫かお二人さん? 俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
「あ、あなたは…」
「俺か? 俺は人呼んで…『たいりく大陸イチの|猛
者《もさ》☆ひろし』だ!!」
アクション映画とかならここで集中線や爆発みたいな演出が入りそうな気がするが、自称『たいりく大陸イチの猛者☆ひろし』さんとやらは控えめに言っても成人病を疑う毎日を送っていそうなその辺の中年男性と変わりない人物だった。
ていうかひろしって。いやひろしが悪いと言っているのではなくて。ひろしって恐らく日本人の名前でしょう。どうして日本の存在していない世界で日本人名が?
※世界のひろしさん本当に申し訳ございません。
「おいおいおい大丈夫なのかよおっさん!?」
「任せろ若いの。俺を誰だと思ってやがる! ひろしだ!!」
存じ上げません。
「おっさん……かっけぇ……!!」
「正気ですか!?」
相当失礼な事を言われたのも気にせずにひろしさんは背中で笑う。
「戦いは俺の日常よ。なんせ俺は…『 』だからな!」
え? 今何と?
ひろしさんの台詞の途中が突然途切れた。途切れたというか完全な無音だった。
「さあ行くぞ飛ぶ眼め! 俺様の『 』を食らえ!!」
また無音? というか飛ぶ眼って…
浮かんだ疑問を分析するよりも先に、ひろしさんが武器を高らかに構え───うん??
「…なんじゃありゃ?」
「…何でしょうね」
私が率直に感じた事を神々廻さんが代弁した。
「おりゃあああぁぁぁぁ!!」
ひろしさんがソレを敵に向かって振り下ろす。振り下ろせたのかもよく分からないけど。
我々が武器だと一瞬思い込んだそれは、何と言うか…『名状し難きモノ』だった。
何かを持っているのは分かる。分かるけどそれが何なのかが全く分からない。良く見るとひろしさんが持っている物だけではなく『首から下の部位全体を覆っている何か』も同じく良く分からない物だった。
良く分からない物を纏い、良く分からない物を振り回してひろしさんはのっそのっそと奮闘していた。優劣すら予想がつかない。
「…シュールな絵だネ…」
「いやもう全く…。神々廻さん、アレが何なのか分かります?」
「うん、無理。考えようとする事すら出来ないワ」
そうなのだ。
『良く分からない』と表現しているのは『例える物が思いつかない』という意味では無い。例えば『無色透明な何か』だったら『液体のような』という表現が思いつくのだけれど、アレが何なのかと分析しようとすると思考が強制的に停止する。ものすごく気持ちの悪い感覚だ。
「何なんでしょう…。見えてるのに見えない、何かに例えたいのに考えられない…」
「まるでモザイクだねェ…」
モザイク?
私がその発言に対し何かを言おうとしたその時。
「ん??」「えっ?」
二人同時に【本】を召喚した。いや、勝手に出てきたと言うべきか。
その本がひとりでに開き数ページめくられると、そこに書かれていたのは───
「これ、歴史のルート選択した時自動で追加された【職業】の設定ページだね?」
「職業?」
「えーと…職業って言っても元の世界で言う仕事みたいな意味じゃなくて…戦士だとか魔法使いだとかっていう役割? 役職? 肩書? みたいな?」
「あ…見て下さい!」
《『 』の初期装備が設定されました。》
画面に何度か見た事のある表示と同じ雰囲気の文章が。
「初期装備…?」
「ゲームで操作するキャラクターとかを新規で作成した時にもともと装備しているアイテムの事だヨ」
「それがなんで突然……って、これは!?」
「うおっ!?」
《 初期武器:モザイク 》
《 初期防具/胴:モザイク 》
《 初期装備/頭:無し 》
《 初期防具/足:モザイク 》
《 初期防具/腕:モザイク 》
《 初期装備/盾:無し 》
《 初期装備/その他:無し 》
文字の意味を理解し、二人同時にひろしさんの方にバッと振り返ると。
「どわあああああああああ!?」
「ちょっとおおおおぉぉぉ!!」
ひろしさんが、モザイクのかかった物体を振り回してとうとう飛ぶ眼を仕留めた所だった。
…全身にモザイクを纏って。
「ゼェ…ゼェ…見たか、この『モザイク』の威力を…!」
尋常じゃないです! 卑猥です!!
「ふぅ…、おい、大丈夫か二人とも!」
モザイクまみれのひろしさんが、モザイクのかかった何かを握る手を振りこちらにやってくる。もはや完全に放送禁止状態だ。
「ちょ、ま、ひろしさんヤバいですって!?」
「え、どうした?」
そして森に悲鳴がこだましたのであった。
「こっち来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
(次頁/14-1へ続く)
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。


冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる