知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく

文字の大きさ
上 下
23 / 114
メガネスーツ女子と未知との遭遇

頁12:異世界探索初心者事情とは 2

しおりを挟む
     






「冗談はさておき、集落を探しましょう」
「え、今の冗談なの…??」
出口ゲートの座標、集落から見てどの方角にしました?」

 周囲を見回しても人の痕跡こんせきが見当たらないから少し移動しようと思った。

「集落から見て? えっと、確か分かりやすいようにってに設定したから…」
「真下!? あの出口よりも町があるって事ですか!?」

 まさかそんな…空飛ぶ町…!?

「…キミ、マジでゲームとか分からないんだね…」
「え? えっ??」

 神々廻ししばさんがプッと笑う。
 なんで笑われてるんだろうか? 分からない…悔しい…。

「あー、笑っちゃイカンよね。オレだってさっきzって分からなかったし。ちょっとこれ見て」

 自分の本を開き『たいりく』大陸地図のページを私に見せる。

「オレとかゲームやってる奴なら多分ほとんどがそうだと思うんだけどサ、こういう地図とかミニマップがゲーム画面に表示された時、東西南北を上下左右で言うんだよね。分かりやすさというか…それが普通になっちゃってる感じ?」
「成程、じゃあつまり『真下』という事は『真南』という意味ですね?」
「ピンポ~ン大正解☆ さっすがみさドン、頭の回転が違うね♪」
「みさドンっていうな」

 現在位置が集落の真南に当たるという事はつまりは真北へ向かって進めばいいという事なのだろうが、じゃあその真北はどうやって判断すればいい?
 星の位置…だめだ、まだ全然空が明るいし季節が分からないしそもそもこの平行世界の星の位置が元の地球と同じとは限らない。
 太陽を利用する方法は元の地球の知識では使い物にならない。木の年輪でも分かると言うけれども生憎どこを見ても切り株はひとつも無い。

「なら流石さすが地磁気ちじきは同じはず…。磁石があれば…って、そんな物どこにあるの!」

 自分で自分を叱責しっせきした。

「な~んだ、何を考え込んでるのかと思ったら方位磁針コンパス欲しかったの? あるよそんなの」

 私の痴態ちたい(?)を眺めていた彼があっけらかんと答える。
 そうか、箱ティッシュ(しっとり触感)を出現させた方法で───

「方角表示」

 先程と同じページを開いたまま彼がそう言うと、大陸地図の見開きの左上に赤い針が揺れる方位磁針コンパスの画像が表示される。

「本を持ったままこうやって…くるっと一回転しても、ちゃんと北を指してるでしょ?」
「本当だ……」
「ちなみに地図上にちっちゃく赤い点が見えると思うんだけど、この点がオレ達の現在地ね。この点から矢印がチョロっと伸びてるの見える?」

 彼の本に表示された地図をじっと見つめる。確かに赤い点から伸びる黄色い矢印が。

「この矢印が向いてる方角が『今自分が向いている方角』ね。本を開いたまま一回転してみ? コンパスと同じように連動して動くでしょ?」
「確かに…これは非常に便利ですね…。でもこの星に降下するのは初めてのはずなのにどうしてこんな機能があるって知っていたのですか?」
「アッチの空間で色々試してた。疑似マップ設定してひとり探検ごっことかやって」
「ぅ ゎ ぁ …」
「ドン引き!?」

 シュールな一人遊びですこと…。
 機能についてはどういう仕組みか?とか理屈が…とかがハッキリしなくてちょっとモヤモヤするけど、考えた所で『何でもアリだから』で済まされてしまうのだろう。
 とにかくこれで方角の問題は解決した。

「…そうだ、このままだと不便だから…と」
「何をしてるんです?」
「これで、OK」

 と彼が何かを完了させると同時に私の本が勝手に私の手の内に召喚され、意志を得たかの様に勝手にページをめくる。白紙であったはずのそこに現れたのは彼の本に表示されていたはずの『たいりく』大陸地図だった。それだけじゃない、彼の本で見た他のページも恐らく全て表示されている。

「これは…!」
「いちいち本開いて渡したりするのメンドーでしょ? だから本同士で表示内容を同期させたのヨ。でもミッション1のクラフトに関する操作とかはイジれないけどね」

 試しに空白の名称をタップしてみると、先程の実験でも目にした《 警告:設定を行う権限がありません。》という表示が。
 なるほど、本同士を同期させる事が出来るならば一人だけで地上に降下しても本を介したやり取りは可能かもしれない。例えば私が現地で辞典の【提案】をし、あの空間で神々廻ししばさんが【承諾】をする、みたいな。
 …絶対にそうはさせないけど。

「じゃあ気を取り直して町へ行こ~!」

 着地失敗を無かった事にして彼が歩き始める。

「そう言えば…」
「あん?」
「例の【敵対生物】って───」

 言いかけたその時、我々の頭上から木々のさざめきを切り裂くカン高い鳴き声が響き渡った。





   (次頁/13-1へ続く)











          
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...