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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁11:チャラ釣りとは 2
しおりを挟む「で、どこに降りるの?」
「ざっくりとでいいので世界の人口分布とか分かりますか?」
「ちょっと待ってね、どっかで見た気がする」
空欄だらけのページをめくり、タブレットを操作する要領で紙の上を指であちこちタップする。
暫くして…
「あ、これかな?」
少し強めにトン!と指で叩くと、目の前の空間上に本の画面が表示される。ついさっき見たアレだった。
《 》/○○○○○人
《 》/○○○○○人
《 》/○○○○○人
《 たいりく》/○○○○○人
《 》/○○○○○人 …以下同内容
一つだけ齧られたみたいに歪な『たいりく』がその名称ゆえに逆に存在感を増していた。チラッと彼を盗み見る。目を閉じている。…見ろよ現実。
というか『たいりく』以外はどの名称がどの地域に当たるのかさっぱり分からない。星の名前と大陸名くらいは早急に決めさせよう。
「見た限りですと全体的に大きな差は無いみたいですね。力のある文明が生まれていないからでしょうか。世界中のどの場所でも同じような水準で人々が生活しているのかもしれません。でも今後敵対生物による大きな被害などが頻発すれば、恐らくこの数字も大きく崩れるでしょう」
偶然にも『たいりく』の人口が一番少なかった。
それなりの人口がある地域ならば少なくとも敵対生物への防衛力は高いはずだ。ならばまずは過疎気味の場所から調査を開始したい。
「一番人口の少ないこの『たいりく』ってどの部分ですか?」
「嫌がらせ?」
「考えすぎです」
彼が本をタップすると『たいりく』が画面上で点滅し、もう一度タップすると他の大陸図を画面外へ押し出して『たいりく』が拡大表示される。
すると今度は拡大された『たいりく』の地図のあちこちに『町: 』という予想通りの空欄が。
「ウソ…町の名前までオレが決めるのォォ!!??」
「頑張ってくださいね」
「え、手伝ってくれない系?」
「人並みに頑張ってから物を言って下さい」
ぬぐぅ…と彼は口を噤んだ。
改めてじっくりと『たいりく』大陸図を見る。感覚的にはオーストラリアみたいに見えない事も無いが、知り得る限り地形が全く違う。この面積の陸地で似た形は元の地球では恐らくは無い。本当に違う星なんだな、と思い知らされた。
「東側は比較的起伏の少ない平野部ですね。そのせいか集落の数も多く、集落同士の距離も近い。対して西側は険しいという程ではないにしろ山間のわずかな土地に小さい集落がいくつかあるのみ…。そうですね、最初に降りるのはこの辺りにしましょう」
「なーるほど…」
あれ、『なんで山の中なんて大変な所に!!』って駄々をこねるかと思ったのに。
「確かに、勇者だとか運命の子だとかは山奥とか辺境の町から旅が始まるもんな…。敵も弱いし…」
どうして山奥や辺境の方が敵が弱いのだろうか。普通は人里から遠ざかる程に野生動物の危険度は増すのに。…ゲームって良く分からない。
「では、この西端の集落の付近に降下しましょう。いきなり町の中に部外者が出現したら騒ぎになると思いますので」
「よっしゃ、オレちゃんの勇者への冒険が今始まるぜぇ!!」
あなたカミサマでしょ。始まらないし始めないで下さい。
と言ってやろうかと思ったけど、せっかくやる気になってるし否定すると面倒くさくなるから黙っておこう。
「座標確認! どこでもド……ゲート、オープン!」
お願いだからやめろ。
本を手にかなり危ない名を彼が唱えると、我々の目の前に開かれたドアの様な大きな空間の裂け目が出現する。
前世なら超常現象だったろうに……私も短時間で随分馴染んでしまった物だ。
「では…行きましょう」
「おう!」
二人、ほぼ同時に歩き出す。
胸に抱える想いは全く違えども、背負う使命は同じ。
どうなるか? なんて分かる訳が無い。それでも───
私は、私の正しさを貫いてみせるんだ。例え何度誤っても。
(次頁/12-1へ続く)
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