7 / 114
メガネスーツ女子と無慈悲なる神と終わらない残業
頁04:神とは 2
しおりを挟む「まずアレを見てちょ☆」
「…ちょ?」
彼が濃淡の無い青い空を指差した途端、プロジェクターの様に映し出されたのは……地球? いや、これは…多分違う。陸の形とかが特に。
「まず、オレがこの星を作りました。ホログラムとかじゃなくてガチの地球モドキです」
「…は?」
「この地球モドキには二足歩行の人類が散らばってて一応なんとか生活してます」
「…え?」
「人類を誕生させたオレは立場的にいわゆるカミサマにあたります」
「…はい?」
「キミはオレの代わりにあの地球モドキのいろいろな設定をしてもらう為にオレがここに引っ張り込みましたので全力で頑張って下さい」
「…ええ…?」
「はい説明終わり」
「待って。ちょっと待って。ざっくりし過ぎです。説明ド下手糞ですか」
くたくたのTシャツの襟元を両手で掴んでぐいぐい揺さぶった。
「や、ちょ、やめて! 伸びちゃう! だからさっきから説明苦手って何度も言ってるじゃん! ……うるさいな、だったらお前がしてくれたっていいんだヨ!?」
ちょっと涙目で彼が抗議する。そこまで嫌か。というかさっきから誰に何を言っているのだろうか…?
「それにしたって端折りすぎでしょう。読者がどうとかはよく分かりませんけど、今のが商品の説明書とかだったとしたらクレーム殺到しますよ」
「いい? オレをよく見てよ! 自分で言うのもアレだけどさ、オレみたいな見た目のヤツからそんな細かく丁寧な説明が出てくると本気で思ってる!?」
期待してません。と反射的に言ってしまいそうになった。口は災いの元。
「はぁ…、じゃあ取り敢えず少し分かった事もあるので私から質問させて下さい」
「おけまる」
右手左手それぞれでOKサインをする。
ところで誰の真似だろうそれ。桶丸さん? 知らないけれど。
「まず…改めて確認させて頂きますけれど、今私が見ているこの世界は、本当は夢ではないのですか?」
「夢だって言ったら納得した?」
私は決別のため息を一つ吐き捨てた。
「願わくば夢であって欲しかったです。それから…私は、その…」
「あぁ死んでるよ~間違いなくね。元の世界じゃ火葬されて納骨まで終わってるから」
とんでもない事実だというのに全く意にも介さない口調で断言された。
ハイそうですか、と納得するには理由が足りなさすぎるが、否定するだけの要素も無い。何よりもつい先程体験したばかりの生々しい痛みの記憶が如実に物語っている。
「キミ、サブカル知識が全くないからテンプレって言っても分からないだろうけどさァ、まず平行世界だとか異世界って分かる?」
「分かります」
「おぉ~~意外! それは分かるんだ?」
分かるというよりは可能性の一つとして考えた事があるかどうか、だろう。
自分が生きていた世界が恐ろしく低い確率の積み重ねで出来上がった世界だとしたら?
目に見えない場所か宇宙の果てか、これだけ広大な空間のどこかで同じような奇跡を経て誕生した世界があってもおかしくは無い。ただそこへアクセスする方法が無いだけだと世界が割り切っているに過ぎない。
まさかこんな形で訪れるとは思いもしなかったが。
「で、キミの時代になってから急激に異世界に対する認識が高まったワケよ。その理由としてはラノベの世界設定として描かれる機会が増えたのが大きいのかな? それまでは異世界ってのは単体で存在するファンタジーなモノとされてて、そこに外側の世界から誰かが来るって展開は少数派だったんだけどねェ」
頭が痛くなってきた。
真面目な話をしているのかそれともまだ理解の範囲外の単語で化かされているだけなのか。
「あーゴメンゴメン! やっぱ分かんないよね。つまり、人は死ぬと天国地獄じゃなくて違う世界に飛ばされるって考え方が若者を中心に広がってんのヨ。なぜか一番信じられてるのがトラックに轢かれて死ぬ事なんだけどさ。笑っちゃうよねw 結果として死ぬならわざわざ痛そうな選択しなくてもいいのにww」
ああ。だから最初にトラックがどうのと聞かれたのか。
「そして驚くべき事に『死んだら天国地獄ではなく異世界に飛ばされる』というファンタジーが一部本当になってしまったワケ。オレも初めてこの空間に引っ張り込まれた時はガチでビビったわ。うはwww まじかwwww って具合にね♪」
「どうして違う世界に来たって理解できたんですか」
さも楽しそうに話しているが、私には正直その感覚が理解出来なかった。
「【枠】から外れたって知ったからヨ」
「枠…?」
「そ。ヒトとしての枠。───ああ、わかった、言う通りにやればいいんだろ」
彼は再び胡坐をかいて座る。
「さっきから何を───」
言いかけた私の前で、彼は胡坐のまま…宙に浮いた。安っぽいCGの様に、私の目線よりもどんどんと高く…。
「ぬふふふ……、あっはっはっはっはっは!!!!!」
そして高らかに笑いながら恐ろしい速度で遥か上空へ吸い込まれて───
「……嘘…。…え…、何、あれ…!?」
彼が消えていった空から…とてつもなく巨大な何かが、遠くに───
『『 ベロベロバァ~っ!!!!! 』』
声?を発した『それ』が何なのかを認識するよりも先に、地表に落下した大質量の物体が巻き起こす壊滅的な衝撃波が私を飲み込んだ。
(次頁/05-1へ続く)
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説


冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる