魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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大罪覚醒

メイドと嫉妬の名を持つ者

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「はぁ…はぁ…」

兎族の少女、パリスは肩で息をしながら周囲を警戒する。

「スパイラルネット!」

何処からともなく蜘蛛の糸が飛んでくる。

「炎よ!ブレイズ!」

パリスは蜘蛛の糸を焼き消すと走り出す。

「止まってたら狙われてしまいますね…」


最も鬱蒼と生い茂る森の中で彼女から逃れる事は難しいだろう。


そして…

「あっ…」

パリスがそう言うと同時に足をなにかに引っ掛けて転んでしまう。

「隙ありぃ~!スパイラルネット!」

パリスはそのまま避ける事も出来ないまま蜘蛛の糸に絡め取られてしまう。

「あう…捕まってしまいました…」

パリスがそう言うと同時に少し遠くの茂みから女性が歩いて来る。

「や~…パリスさんは私が思っていたよりも動けるんですねぇ~」

「でも、アネラーゼさんは戦いになってましたが、パリスは防戦一方でしたから…」

アネラーゼと呼ばれた女性はメガネをクイッと上げながら言う。

「当然ですよぉ!元々私たち蜘蛛女族はここのような森の中で狩りをして生きている種族ですからねぇ。」

アネラーゼはそのままパリスに巻きついた蜘蛛の糸を解いていき、擦り傷等の小さな傷を治す。

「ありがとうございます」

「どういたしましてぇ~」

2人がそんなやり取りをしていると…

「…?誰かがこの森に入って来たようですねぇ」

アネラーゼが警戒する様に言う。

「パリスの感知にはまだかかってないみたいです。」

「森の中は私の庭の様なものですからねぇ。それよりも今入って来た人は私たちを探してるみたいですねぇ」

パリスもそれを聞いて警戒体制をとる。

しばらく周囲を見ていると…

「パリスさん、隠れますよぉ」

アネラーゼにそう言われてパリスも一緒に近くの木の上に隠れる。

「…あれ?この辺のはずなんだけど…」

黒いタイツのフードを被った女性が先程までパリス達がいた所でキョロキョロとパッと見には隙だらけの様子で辺りを見回す。

アネラーゼがパリスに目配せをする。

パリスは静かに頷いてアネラーゼとともにこの場から離れようとするが…

「見つけた。」

突然2人の背後に女性が現れて、そのまま2人を地面に引き摺り下ろそうとすると同時に金属同士がぶつかる音と同時にパリスが落ちる。

「いたた…」

パリスは体勢を整える間もなくおしりを打ってしまう。

「パリスさん、大丈夫ですかぁ?」

アネラーゼがパリスを守るように女性との間に立つ。

「あ、そっちがパリスなのね。」

女性はそう言うとフードを脱ぐ。

長く美しい蒼い髪色の銀色の眼をした綺麗な顔が露になる。

「私はウェン。アルフェノーツのよ。」

女性はそう名乗ると眠そうに欠伸をする。

「アルフェノーツ…アリスさんと同じ名前ですね。」

パリスがそう言うとウェンは眠そうな雰囲気を出したまま言う。

「そうだね。私もアリス様に仕えてたよ。」

ウェンは眠そうにアネラーゼを見る。

「貴方は…確か、龍魔王アスティア様のところの秘書さんだったっけ?でも、私が知ってる姿はもっと蜘蛛女族らしい見た目だったと思うんだけど…」

アネラーゼはまだ少し警戒した様子で言う。

「その秘書であってますよぉ。私が魔王秘書のアネラーゼですぅ。」

「アネラーゼさんね。さっき、パリスに名乗ったばかりだけど、私はウェンよ。アリス様の仲間と敵対するつもりは無いから、安心してくれていいわよ。」

「…左様ですかぁ」

アネラーゼが警戒を解くとウェンは眠そうな雰囲気になる。

「ふわぁ…これでやっと落ち着いて話せるね。」

ウェンは「よっこらせ」と言いながら手頃な大きさの切り株に座って目を瞑る。

パリスは立ったまま、アネラーゼはその辺の落ちてる木と糸で即席の椅子を作って座る。

「それで…話とはなんなのでしょうか?」

アネラーゼがそう問いかけるが…

「…」

ウェンの反応が無い。

「あ、あの…ウェンさん?」

パリスが不安そうな表情で言う。

「…ぐぅ…」

ウェンが何かを言ったような気がしたアネラーゼがウェンの口元を見る。

「アリス様ぁ…もう食べれないよ…」

「…」

アネラーゼが椅子から立ってウェンの目の前に立つ。

「パリスさん、耳を塞いでてくださ~い。」

パリスが耳を塞ぐとアネラーゼが「すぅ…」と息を吸う。

「起きろー!」

アネラーゼは思いっきりウェンの耳元で大声出す。

「うぇあああああああああああ!?」

アネラーゼの大声に負けず劣らずの大声を出して驚いてウェンが飛び起きる。

「お、おはようございます…」

パリスは心配そうな表情をしながら、ウェンの顔を覗き込む。

「だ、大丈夫だけど…びっくりしたわよ…」

ウェンが恨めしそうな声で言う。

「こほん。」とアネラーゼが軽く咳払いをするとウェンは真面目な顔になる。

「単刀直入に言うよ。アリス様の状況が良くない。」

「…ッ!」

パリスが驚いた表情をしながら、ビクッと身体を震わせる。

「落ち着いて。時間は少ないけど、まだ猶予はあるわ。ただ状況としてはかなり危ない状況にいる事は確かね。」

ウェンは淡々と言う。

「そんな…パリスはどうすれば…」

パリスが頭を抱えて悩んでる傍でアネラーゼが顎に手を置いて言う。

「それならば、何故貴方はアリスさんを助けに行かないのですか?」

ウェンはそれを聞くと怒ったように…と言うか、とても怒ってアネラーゼに掴みかかりながら言う。

「助けに行かない?そんなわけないだろう!ウェンだって、助けに行けれるなら、とっくに行ってる!それが出来ないから、パリスを頼りに来たんだよ!パリスの力ならアリス様を助けられるんだ!」

肩で息をしながらウェンはアネラーゼを掴んでいた手を下ろし、呼吸を整える。

「でも、私ではダメなの…確かに純粋な戦闘能力だけなら、私の方が上だし、私一人でも制圧出来る規模なんだけど…」

ウェンは再び切り株に座ると拳を震わせながら言う。

「でも、私にはが無い…だから、助けに行けれないの…」

ウェンが悔しそうに下を向いて涙を落としながら言う。

「能力…ですかぁ…」

アネラーゼがポツリと呟く。

「ウェンさん…」

パリスが呼ぶとウェンは顔を上げてパリスを見る。

「パリスにその能力の使い方を教えてください。貴方ならわかりますよね?」

パリスがそう言うとウェンは元気よく立ち上がって言う。

「もちろんだとも!その為に私は貴方を探していたのだから!」

ウェンはそう言うと何処からともなく一冊の本を取り出す。

「これは私たちの母、オリオン・エクの残した核操作能力…について書かれた書物よ…」

「おや、エク一族の方がメイド以外の事をしてたなんて驚きですぅ。」

アネラーゼが驚いた表情をしながら、頭に?を浮かべていそうなパリスに説明をする。


ウェンが属するエク一族はこの世界では知らない人は居ないと言われるほどの優秀なメイドばかりが揃っている一族であり、ありとあらゆるところでメイドとして活躍しており、エクの名を聞けば優秀なメイドだと誰もが口を揃えて言うほどだ。

ただし、アネラーゼが言ったようにエク一族は基本的にはメイドの仕事をする事しか考えてないと言われるほど、メイドの功績以外が公になっていない一族なのだ。

極秘で国の依頼を受けてるとか噂はあれど、どれも信憑性に欠けるような話ばかりだ。

ちなみにエク一族は女性はもちろん、男性もメイドとしての訓練を受け、メイドとして活躍するのだ。
依頼主によっては男性は執事になる事もあるが、本質的な仕事は変わらないのだそう。


「な、なるほど…そんな凄いメイドの一族なんですね。」

パリスはウェンから本を受け取りながら言う。

「私は興味があったから、修行と称して冒険者をやったんだけどね。姉さんが冒険者だったからさ。」

ウェンはそう言うと一瞬何か思い詰めたような表情をするが、すぐに元の笑顔になる。

「ま、そんなわけだから、2人ともまとめてシバきあげるから覚悟してよね!」

ウェンは元気よくそう言うと2人に向けてピースを突きだす。

「それは楽しみですぅ!」

アネラーゼは心底楽しそうに笑っていた。

「お、お手柔らかにお願いしますね…」

パリスは少し腰が引き気味になっているが、前向きな気持ちが表情に出ていた。

「おっしゃー!そうと決まれば、早速ご飯の用意をするわよ!腹が減っては戦ができぬって言うしね!」

ウェンはそう言うととても楽しそうに手際良くあっという間に火を使わない料理を完成させる。

火を使うものはパリスとアネラーゼで分担して作る。

アネラーゼもパリスの4倍ほど速かったが、ウェンはそのさらに上の速さで次々に料理を完成させて即席食卓に広げる。

「す、凄い速いですね…」

パリスは目を丸くしながら二人に言う。

「私の場合は手が多いのもありますが、ウェンさんの手際の良さに火加減の完璧さには敵いませんねぇ…」

アネラーゼがウェンを褒めるとウェンは当然だと言いたげに…

「当然だよ!自分で言うのもアレだけど、私は一族の中でも歴代トップクラスの仕事をするテクがあるし、そもそも場数が違うからね!」

むしろ当然だと言いきって、どこか誇らしげに言うのであった。
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