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天の宮
57話
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翌日早朝…
私は屋敷の門で待っていた。
「ふわぁ…」
私が呑気に欠伸していると…
「アリスさん、おはようございます!」
珍しくひっついてなかったパリスが1番初めに来た。
パリスは冒険者バッグに空間魔法を付与して拡張されたものを持っていた。
右肩から斜めに横切る黄色がかった茶色の紐がパリスの胸を服越しに強調する。
あっ…髪の毛爆発したままだ…
「パリスちゃん、おはよう。朝早くから元気だね。」
「はいっ!今日は初めての旅ですから、ワクワクしちゃって…」
「あはは!パリスちゃんらしいや。」
私がパリスの髪をクシでときながら待っていると…
「眠い…」
リリアが眠そうにやってくる。
「おはようリリア」
「アリス…おはよう…んっふぁ~…」
リリアは眠そうに身体を伸ばしながら欠伸をする。
リリアは私が魔道具の空間魔法をかけたトパーズで作ったイヤリングをしていた。
トパーズから漏れる黄金色の光が少しだけリリアを大人っぽく彩る。
「ふわぁ~…眠いのじゃ…」
最後に少し遅れてクレアが来る。
クレアは特にいつもと変わった様子はなかった。
「クレア…遅い…」
リリアが少し怒った様子で言う。
「普段はこの時間は寝てるのじゃから、しょうがないじゃろ…」
クレアは寝起きで機嫌が悪いのか、かなり不満そうに言う。
「そう言えば、アリスさん、何処へ向かうかは聞いてなかったと思うのですが、何処に行くんですか?あ、えっと…邪神教団の祭壇の場所って言うのは聞いてるんですけど…」
パリスが少し不安そうに言う。
「まずは北の森の向こう側にある魔族領の祭壇かな。そこがまだ使われていたら、一気に叩けるから良いんだけど…」
「あ~…確かにそうですね…」
心做しかパリスは少し安心した様子だった。
「じゃあ、手分けして探した方が良くないか?」
「大丈夫…レティンシア…頑張ってる…」
クレアの発言にリリアが言う。
「そういうこと!だから、私たちはまずは北へ向かうよ。何か手がかりくらいはあるはずだからね。」
…
「そこの者、止まれ!こちら側は悪魔の森へ続く道がある。冒険者や商人であれば証明書を提示せよ!」
北の門の門番が腰の剣に手をかけながら言う。
「私たちは冒険者よ。冒険者カードもあるわ。」
私たち全員の冒険者カードを見せる。
門番が私のカードを見て目を丸くする。
「貴方があの大英雄様でしたか!これはとんだご無礼を致しました!」
門番は先程の態度とは一転して敬礼する。
「良いのよ。貴方も仕事でやってる事でしょう?」
私がそう言うと門番は頭を掻きながら言う。
「ハハッ…アリス様には敵いませんな…」
門番に見送られながら、門の外へ出るとすぐ目の前に悪魔の森と呼ばれている森が現れる。
悪魔の森は最低でもA級以上のモンスターがゴロゴロといる様な危険度の高い森なのだ。
加えて常に薄暗く、場合によっては天然の自然の罠にかかり、身動きが取れなくなる可能性さえある為、依頼も受けられないほど、お金に困ってるとかでも無い限りはまず立ち入る事はしないだろうと言われている森だ。
危険度はX2ランクである。
このランクはダンジョンランクと呼ばれており、その場所の危険度の指標として用いられている。
冒険者と同じく通常はF、E、Dと続いてSSランクまであるが、特例として、その先にX0から順に数字が大きくなるにつれて難易度が大きく跳ね上がる。
基本的には同ランク帯であれば、ソロ攻略も行えると言われているレベルだ。
ただし、X0ともなるとその場所には入口に管理者が着くようになり、S級未満の冒険者は入口の立ち入りすら拒否される事も多いそうだ。
ちなみにX0では全員がSS級冒険者の2人パーティーがギリギリ突破可能なくらいの場所でX1になるとSS級冒険者が4人いて、ようやく突破可能となるレベルであるが、X2になるとSS級冒険者が10人はいないと突破不可能なレベルに跳ね上がる。
現存する最高ランクはX5なのだが、こちらは世界中に10000人いるとされているSS級冒険者が全員集まって、完璧な連携を取ったとしても突破率は0.0001%にも満たないと言われているほどの超危険な場所なんだそう。
悪魔の森は自生する植物ですら、S級モンスタークラスの危険度を持つ種類が多く、大自然のトラップによって、簡単に壊滅状態に陥る可能性があり、奥に行けば行くほど、一気に危険度も上がるんだそう。
そうして、数々の屈強な先人たちを葬ってきた、この森はまさに悪魔の森と言えるだろう。
これがこの森の危険度と名前の由来となっている。
ただし、北の門付近の危険度の低い限りなく限定されたエリアであれば、Aランクほどの危険度に下がるが、それでも危険度の高いモンスターや植物が数多くいる為、かなり危険度は高いと言える場所だ。
リリアが小さな声で言う。
「リリア…この国…来た…道…ある…」
「リリアさんって、外国の方だったんですか?」
パリスが興味ありげに言う。
「う~ん…あの辺は領土内…じゃないかな…?」
リリアが思い出すように顎に拳をつけて空を見る。
「あの辺…ですか…?」
パリスが分からないと言いたげにしかめっ面になりながら首を傾げる。
「うん」
私は以前にリリアの出自を聞いた事があるので、王都の生まれで無いことは知っていた。
双子の妹であるマリアは辺境の地にある小さな村で生まれてから、冒険者になる為に王都に出るまではほとんどの時間を家の外で過ごし、積極的に村の外に出たり、大人たちに混じって狩りをしたり、村の男の子たちと一緒に走り回ったりして、かなりやんちゃをしていたみたいだ。
逆に双子の姉であるリリアはマリアと王都で冒険者になるまでは家にいる事が多く、あまり人と関わらなかったり、積極的に村の外に出ずに畑の手伝いをしたり、村の労働力の牛や馬の世話をしたりしていたみたいだ。
そんな双子が冒険者になる事になった事には村の状態が良くないとかは全くなく、むしろ出て行く理由がわからないほどに潤ってはいたそうだが、好奇心旺盛なマリアが冒険者の話を聞いて冒険者になりたがっただけなんだそう。
マリアは好奇心から全てのダンジョンを制覇すると言う夢の為、リリアはマリアが無茶をしない様に歯止めをかける役割と言う、それぞれの理由で冒険者になったのだ。
今ではマリアは世界一の剣術使いになる為にリリアは私と共にいる為に冒険者として活動している。
「それじゃ、行こっか!」
「うん。」
「はいっ!」
「うい」
それぞれの返事と共に悪魔の森に入る。
…
しばらく進んでいくとパッと見では人工物だとわからないくらいボロボロになった看板が現れる。
「えっと…"ここから先、危険区域!すぐに引き返せ!"と書いてあるのじゃ!」
クレアが言った通り、ここから先は危険度が一気に跳ね上がる場所だ。
ここから先は悪魔の森の真の姿が見られると言っても過言ではないだろう。
「皆、目的地はこの森の先にあるから、気を引き締めていくよ!」
私の掛け声と共に皆でさらに奥へと進んでいく。
少し歩くと明らかに意図的につけられたと思われる傷がついた樹木が多くなる。
「この傷は…災害級モンスター、ブラッディアームの爪の形と一致します!」
ブラッディアームは小さなサイズでも体長5m近い大きさであり、その名の通りに腕が返り血に染まったかのように赤黒いクマ型のモンスターであり、並大抵の武器では傷すらつかない硬い毛皮に覆われており、その爪の一撃が掠っただけでも致命傷になりかねないほどの剛腕を奮って戦うモンスターだ。
特別な魔法も状態異常攻撃も使わないのに災害級モンスターとして君臨するその強さはまさに死を具現化したモンスターと言って差し支えないだろう。
クレアが嫌そうな顔をして言う。
「通りでケモノ臭いと思ったわけじゃ…出来ることなら、バッタリと出くわしたりしたくないものじゃが…」
リリアが皆に魔法をかける。
「自動回復…念の為…」
何が出てもとりあえず戦える環境は整ったので、急いで移動を開始する。
…
「止まって」
私が小声でそう言うと全員の足が止まる。
「グルル…」
私たちの目の前には外壁が破壊された巨大な蜂の巣とハチミツに夢中なブラッディアームがいた。
「困ったわね…」
私は思わずそう呟く。
安全な経路で行くにはブラッディアームがいる道を通らなければならず、ハチミツの生産者の蜂はグランベリーと言う紫色の蜂型の災害級モンスターだ。
グランベリーは単体ではそれほど強くはないが、集団で現れると手がつけられなくなる。
グランベリーは昆虫モンスターにしては小さな部類だが、50cmくらいの体長があり、口から放たれる強い酸性毒とお尻の毒針による強力な神経毒によって獲物の動きを封じる事で生きたまま幼虫の餌にする習性があり、時にはブラッディアームの様な天敵でさえも餌として捕食する事もあるそうだ。
ブラッディアームの硬い皮膚でも酸性毒によって簡単に溶けて柔らかくなるほどなので、私たちのような人族なら一瞬で骨まで溶ける可能性すらある。
私は彼らの毒を固有能力で無効化出来るが、他の3人はそうとはいかない。
一度でも酸性毒を受けたり、毒針を刺されれば、まず命は助からないだろう。
パリスが魔力を放出しながら言う。
「少し道は逸れますが、今の段階では安全なルートがありますけど…獣人族の村があるのでかなり賭けにはなりそうです。言葉が通じない場合や排他的な村である場合、戦闘は避けられないでしょう。」
クレアは目の前のグランベリーの巣とブラッディアームを見ながら言う。
「グランベリーが戻ってこない可能性に賭けて彼奴を葬って通れ無いのか?」
「今の段階ではグランベリーは居ないと思うけど、ブラッディアームと戦ってる間に戻ってこない可能性は限りなく低いし、かなり危険度は高いわね…私以外は誰もグランベリーの毒を無効化出来ないし、リリアの魔法があったとしても、そのリリアや貴方たちが酸性毒で溶かされれば意味が無いわ。」
リリアが扱う回復魔法もそうだが、基本的に回復魔法は回復部位が無ければ成立しない魔法なのだ。
それ以上は禁術とされる蘇生魔法になり、かなりリスクもある危険な魔法になる。
それを酸性毒を受ける度に使っていたのではキリが無いし、危険過ぎるリスクを背負ってまでして連発する事は絶対に避けたい事だ。
だが、獣人族の村ルートでも、そこの住民と意思疎通が出来ない場合や排他的な村の場合、戦闘は避けられないだろうから、その場合もかなり危険な戦いになるのは目に見えている。
ただでさえ、人族に比べると身体能力も高い種族であるにも関わらず、変身能力による身体強化もあると考えるとかなりの強敵になるのは目に見えていると言っても過言ではない。
「じゃあ、獣人族の村を通らせて貰うしかないようじゃな。」
「アリス…パリス…獣人…二人…大丈夫…?」
「それはわからないわね。でも、行くしかないと思うわ。」
私たちは言葉が通じる事を祈って、獣人族の村の方へと向かう。
…
「止まれ!」
目の前に銀色に輝く長いボサボサの髪の狼族の少女が現れる。
余所者の私たちに対して向けられた赤い眼からは警戒心が惜しげも無く溢れていた。
私は目の前の少女に言う。
「貴方たちの村に入れてもらえないかしら?代わりと言ってはなんだけど、貴方たちの村で困っている事の手伝いをするわ。グランベリー…と言って通じるかわからないけど、彼らの巣が邪魔で別の道が無いから、貴方たちの村を通るしかないの。」
私がそう言うと少女の後ろに「ホーホッホッホー」と笑いながら、短い黒髪の黒い目のフクロウの獣人族の梟族の男性が現れる。
「お嬢さん方、見たところ相当腕のたつ冒険者では無いですかな?その実力があればグランベリー如きに遅れを取るとは思えませぬが…」
「グランベリーが1匹2匹の様な少数であれば簡単に倒せますが、問題は奴らが吐き出す酸性毒ですね。私はスキルがあるので効きませんが他の者はそうはいきませんので、私一人で相手をするには分が悪いと判断し、この様な提案をさせていただいています。」
「ホッホッホー!それならば、私が村の長に頼んであげましょう!さあ、私についてきてください。」
少女が男性に言う。
「おいジジイ!番人の俺の許可無しに余所者を入れようとするな!」
「ホッホッホー!ウルカよ。偉そうな言葉使いは私に一度でも勝ってからにするのですな。」
「テメェ…」
ウルカと呼ばれた少女は凄く嫌そうな目をしていた。
「ホッホッホー!自己紹介がまだでしたな。私は梟族のアークですな。そこの狼族の娘はウルカと言いましてな。ご覧の通りまだまだ未熟者であります故、敵意の有無の区別もつかないのですな。」
「テメェ!勝手に俺の名を教えるな!」
ウルカが明らかに怒りを全面に押し出した表情で言う。
「私はアリス・アルフェノーツともうします。」
「リリア…」
「わ、私はパリスです!」
「我はクレアなのじゃ!」
それぞれの簡単な自己紹介を終わらせる。
私たちは前にアーク、後ろに不機嫌なウルカの状態で獣人族の村に入村する。
そして、アークが村長の家と思われる家屋の前で言う。
「ホッホッホー!ここがこの村の長の家ですな。長に話をつけてくるので少々お待ちくだされ。」
周りの獣人族は私たちを珍しいものを見るように見ていた。
クレアがニヤリと笑うと子供たちの目が輝く。
「ホッホッホー!長、この方たちが私の話してた者ですな!」
アークが金色の毛で覆われた狼族の老人を連れて出てくる。
「ようこそおいでなすった。ワシがこの村の長のファルトですじゃ。アークの目に適うお客人様は久しいのぅ…」
私たちは自己紹介をする。
「ウルフフフ…外の若いのは礼儀正しくて良いのぅ!ウルカも見習うと良いぞ。」
ファルトは楽しそうに笑いながら、ウルカに言う。
「余計なお世話だ!」
ウルカは怒りを全面に押し出した声…と言うか、表情にも怒りが惜しげも無く溢れていた。
「怒った顔じゃなければ可愛いのに…」
リリアがそばに居た私以外には聞こえないくらいの小さな声でボソッと言う。
「は、はぁ?!オメェ、馬鹿じゃねぇの!?」
ウルカはあまり言われなれてない言葉だったのか、顔を真っ赤にしながら言う。
あ、尻尾めっちゃブンブン振ってる…
嬉しいのかな?
ウルカも口ではああ言ってても女の子だもんね。
可愛いから黙っとこ。
クレアがウルカを見てニヤッと笑いながら、わざとらしく尻尾を軽く振ってみせる。
ウルカはその意図が分からずに変な目でクレアを見ていたが、ウルカ以外の全員が微笑ましい光景にニコニコとしていた。
「ウルフフフ…若いもんが増えると年寄りの楽しみが増えてええのぅ…」
「ホッホッホー!子供たちに良い刺激となってくれる事は間違いないですな。」
アークが私の前に立つ。
「ホッホッホー!皆様、お疲れでしょうから、ウルカに村の宿への案内をさせますぞ。」
「はぁ?なんで俺が案内しなきゃなんねぇんだよ!ジジイがやれば良いじゃねぇか。」
ウルカは嫌そうに顔をしかめながら言う。
「ホッホッホー!ウルカよ。余所者だからと言って、邪険に扱うのはお主の悪い癖ですな。私の目に狂いは無いから、安心して大丈夫ですぞ。ウルカも彼女たちと共に過ごしてみると良いですな。ウルカにとって良い経験となるはずですぞ。」
「チッ…」
ウルカは嫌そうに舌打ちして歩き始める。
「置いて行かれたくなかったら、さっさとついてこい!」
クレアが楽しそうに尻尾を振ってついていく。
私たちもついて行こうとするとファルトに呼び止められる。
「ウルカはとても優しい娘じゃ。どうか、仲良くしてやってくれると助かる…」
私は笑顔でファルトに向き直って言う。
「ご安心ください。私のパーティーも人を見る目はありますので…」
「ホッホッホー!これは一本取られましたな!」
アークが楽しそうに笑って、突然真剣な顔になる。
「アリスさん、後でまたここに来てくださりますかな?」
「良いですよ。私もちょうどお話しておきたい事がありましたので…」
「ホッホッホー!では、よろしくお願いしますな。」
遠くでクレアが私たちを呼んでいる。
その少し先でウルカが早くしろと言わんがばかりにこちらを見ていた。
私はアークたちに軽くお辞儀をして早足で追いかける。
「アークや。」
「何ですかな?」
後に残った二人はニコニコと笑いながらもどこか威圧されてしまいそうなオーラを感じる。
「あのアリスとやらは神託の子で良いのか?」
「間違いないでしょうな。」
「そうか…」
ファルトはどことなく寂しそうな顔をする。
「ファルトにとっては娘の様な存在も旅立ちの時が近い様ですな。」
アークは表情を変えずに言う。
「ウルフフフ…そうじゃな。ウルカもそろそろ外の世界を知らねばならぬ…神託の通りなら、今がその時じゃのぅ。」
ファルトの毛に覆われた顔から覗く瞳は何処か優しげな目だった。
「ホッホッホー!後はウルカ次第ですな。あの娘を導くのは彼女の運命ですからな。」
黒いフクロウはそう言うと何処かへと飛び去る。
~作者からのお詫び(と言う名のおふざけ)~
は~い!皆さん…こーんb…いや、朝日出てるぅ!
はい。最近、予定が立て込んでたり、5年くらい前から流行りの新型のアレになったりと忙しくくたばってた胴体ドスファンゴの観察者さんでーす!
いやぁ…マジで遅れてごめんなさいね。
本当はもうちょい早く出せる予定だったんですけど、予定が終わってから6日後に突然39度から熱出ちゃいましてね。
発熱のせいで腰と膝が激痛のバーゲンセールだし、意識は朦朧とするしで危なかったんすよねぇw
私の場合は咳はあまり酷くないのですが、喉の痛みがヤバくてですね、ガチの生き地獄でしたよw
まあ、今はほとんど治って元気一杯ぱわー!な私です。
いやぁ…マスクと消毒と手洗いはちゃんとしてたんですけど、やっぱりうがいも大事っすね。
勉強になったっす。(白目)
この小説を見てくれてる読者の皆さんはどこぞの胴体ドスファンゴさんみたいにならないようにしっかりとマスクとうがいと手洗いとうがいとアルコール消毒とうがいを忘れないようにしてくださいね。
胴体ドスファンゴの化け物さんも聞いてますか?
肌荒れが酷くなるくらい消毒してもうがいも喉が潰れるくらいやらないと意味が無いんですよ!
あ、もちろん、こまめに消毒するのも大事ですけど、私みたいに肌が弱い方は消毒後に保湿をする事も忘れないようにしてくださいね。
まあ、私はめんどくさがってやらなかったんで、よく手がボロボロになってましたけど(説得力、戻って来い!)
そんなわけで、ここまで読んでくれた仏の心を持った読者様にちょっとした物語をご用意してますので、読んでくださると助かります。
PS.ウルカちゃんの登場ですけど、本当は次の回の予定だったんですよね。
では、チャオ!
~おま(ぬ)け~
《~ifウルカちゃんのキラ☆キラ☆お姫様生活?~》
「ウルカさん、ごきげんよう。」
綺麗なドレスを着た美しい女性が礼儀正しく俺…じゃなくて、私に挨拶する。
人は見かけによらねぇなぁ…
じゃなくて…
人は見かけによりませんわ?
…って、心の中くらい好きに喋ってもいいだろ!
「ご、ごきげんよう…アリス…さん…」
俺…じゃなくて、私は慣れないドレスの裾を持ち上げてぎこちなく礼をする。
「あら?ウルカさん、緊張なさっておられますの?」
「ま、まあ…そんなところ…ですわ。」
そこに凄まじい勢いでドラゴン娘がやってくる。
「アリス!ごきげんようなのじゃ!」
ドラゴン娘は「ニッ」と人懐っこい笑みを浮かべる。
服は何処かに引っ掛けたのか、ところどころ解れていて少しみすぼらしく見える。
髪はボサボサで手入れ不足感が否めなかった。
「あら、クレアさん、ごきげんよう!今日もお元気そうですわね♪」
そう言いながら、アリスはクレアの髪をサラッと撫でて綺麗にし、一瞬で服のほつれも直す。
「ワハハハ!くすぐったいのじゃ!」
クレアは嬉しそうに笑いながら尻尾を振っていた。
アリスのその所業はまるで面倒見の良い姉であるかの様だった。
「って、そうじゃなーい!」
俺は勢いよく叫ぶとアリスとクレアが驚いた様にこちらを見る。
「どうかなさいましたの?」
アリスがそう言うとクレアも便乗して「どうしたのじゃ?」と首を傾げていた。
「どうしたもこうしたもねぇ!なんでこんなところでお嬢様ごっこしなきゃなんねぇんだ!お嬢様はもっと平和なところで暮らしてるはずだろうが!」
俺は我慢の限界だった。
それを聞いたアリスが苦笑しながら言う。
「私は本当にお嬢様なんだけどね…」
「…は?」
いやいや、アリスがお嬢様だと?
確かに礼儀や作法に一切の乱れは無かったが、それだけじゃお嬢様とは言えないだろ。
それにもし本当なら、なんでこんな少数でこの村に来てんだよ…
護衛が少な過ぎるだろ…
冒険者なら納得は出来るが、お嬢様にそれが務まるとは思えないのだが…
なんて俺は必死に否定する。
アリスの後ろに隠れてたリリアが言う。
「アリス…ウソ…言わない…」
メイクに失敗してピエロみたいになったパリスがアリスに助けを求める。
「アリスさん、助けてください…」
「アッハッハッ!道化の様な面白い顔になっているのじゃ!」
クレアは目に涙を浮かべながら、大爆笑している。
「酷いです…ぐすん…」
パリスが泣いてしまった。
「こらっ!クレア!パリスちゃんは真剣に悩んでいるのよ?それを笑うだなんて酷いわよ。謝りなさい!」
アリスがそう叱るとクレアは非常に申し訳なさそうな顔をして、頭を下げる。
「ごめんなのじゃ…」
リリアが俺の耳元で囁く。
『これは後でパーティー全員に高級スイーツを死ぬほど買ってあげる必要があるな…』
俺はリリアが何を考えているのかがわかった気がする。
「あーあ…こりゃ、俺たち全員に最高級スイーツを死ぬほど食わせねぇと割に合わねぇな!」
「んな?!パリスに買うのはわかるのじゃが、なんでウルカも含まれておるのじゃ?!」
ま、そりゃそうだろ。
リリアがとても残念そうに言う。
「パリスの悲しみは皆の悲しみ…だから、皆の喜びがパリスの喜びに繋がる…賢くて優しいクレアなら、言わなくてもわかってくれると思うのだけど…」
「なんかすり替えられてる気がするのじゃが…リリアがそこまで言うなら、どっか大きな町に着いたらたらふく美味いもん奢ってやるのじゃ!ウルカもちゃんと着いてくるが良いぞ!」
「チョロいな」と思わず声に出そうになって、主人であるアリスを見るとそのアリスも呆れた様子で肩を竦めていた。
こうして何故か俺も巻き込まれる形となって、次の冒険が始まる事となるのであった。
私は屋敷の門で待っていた。
「ふわぁ…」
私が呑気に欠伸していると…
「アリスさん、おはようございます!」
珍しくひっついてなかったパリスが1番初めに来た。
パリスは冒険者バッグに空間魔法を付与して拡張されたものを持っていた。
右肩から斜めに横切る黄色がかった茶色の紐がパリスの胸を服越しに強調する。
あっ…髪の毛爆発したままだ…
「パリスちゃん、おはよう。朝早くから元気だね。」
「はいっ!今日は初めての旅ですから、ワクワクしちゃって…」
「あはは!パリスちゃんらしいや。」
私がパリスの髪をクシでときながら待っていると…
「眠い…」
リリアが眠そうにやってくる。
「おはようリリア」
「アリス…おはよう…んっふぁ~…」
リリアは眠そうに身体を伸ばしながら欠伸をする。
リリアは私が魔道具の空間魔法をかけたトパーズで作ったイヤリングをしていた。
トパーズから漏れる黄金色の光が少しだけリリアを大人っぽく彩る。
「ふわぁ~…眠いのじゃ…」
最後に少し遅れてクレアが来る。
クレアは特にいつもと変わった様子はなかった。
「クレア…遅い…」
リリアが少し怒った様子で言う。
「普段はこの時間は寝てるのじゃから、しょうがないじゃろ…」
クレアは寝起きで機嫌が悪いのか、かなり不満そうに言う。
「そう言えば、アリスさん、何処へ向かうかは聞いてなかったと思うのですが、何処に行くんですか?あ、えっと…邪神教団の祭壇の場所って言うのは聞いてるんですけど…」
パリスが少し不安そうに言う。
「まずは北の森の向こう側にある魔族領の祭壇かな。そこがまだ使われていたら、一気に叩けるから良いんだけど…」
「あ~…確かにそうですね…」
心做しかパリスは少し安心した様子だった。
「じゃあ、手分けして探した方が良くないか?」
「大丈夫…レティンシア…頑張ってる…」
クレアの発言にリリアが言う。
「そういうこと!だから、私たちはまずは北へ向かうよ。何か手がかりくらいはあるはずだからね。」
…
「そこの者、止まれ!こちら側は悪魔の森へ続く道がある。冒険者や商人であれば証明書を提示せよ!」
北の門の門番が腰の剣に手をかけながら言う。
「私たちは冒険者よ。冒険者カードもあるわ。」
私たち全員の冒険者カードを見せる。
門番が私のカードを見て目を丸くする。
「貴方があの大英雄様でしたか!これはとんだご無礼を致しました!」
門番は先程の態度とは一転して敬礼する。
「良いのよ。貴方も仕事でやってる事でしょう?」
私がそう言うと門番は頭を掻きながら言う。
「ハハッ…アリス様には敵いませんな…」
門番に見送られながら、門の外へ出るとすぐ目の前に悪魔の森と呼ばれている森が現れる。
悪魔の森は最低でもA級以上のモンスターがゴロゴロといる様な危険度の高い森なのだ。
加えて常に薄暗く、場合によっては天然の自然の罠にかかり、身動きが取れなくなる可能性さえある為、依頼も受けられないほど、お金に困ってるとかでも無い限りはまず立ち入る事はしないだろうと言われている森だ。
危険度はX2ランクである。
このランクはダンジョンランクと呼ばれており、その場所の危険度の指標として用いられている。
冒険者と同じく通常はF、E、Dと続いてSSランクまであるが、特例として、その先にX0から順に数字が大きくなるにつれて難易度が大きく跳ね上がる。
基本的には同ランク帯であれば、ソロ攻略も行えると言われているレベルだ。
ただし、X0ともなるとその場所には入口に管理者が着くようになり、S級未満の冒険者は入口の立ち入りすら拒否される事も多いそうだ。
ちなみにX0では全員がSS級冒険者の2人パーティーがギリギリ突破可能なくらいの場所でX1になるとSS級冒険者が4人いて、ようやく突破可能となるレベルであるが、X2になるとSS級冒険者が10人はいないと突破不可能なレベルに跳ね上がる。
現存する最高ランクはX5なのだが、こちらは世界中に10000人いるとされているSS級冒険者が全員集まって、完璧な連携を取ったとしても突破率は0.0001%にも満たないと言われているほどの超危険な場所なんだそう。
悪魔の森は自生する植物ですら、S級モンスタークラスの危険度を持つ種類が多く、大自然のトラップによって、簡単に壊滅状態に陥る可能性があり、奥に行けば行くほど、一気に危険度も上がるんだそう。
そうして、数々の屈強な先人たちを葬ってきた、この森はまさに悪魔の森と言えるだろう。
これがこの森の危険度と名前の由来となっている。
ただし、北の門付近の危険度の低い限りなく限定されたエリアであれば、Aランクほどの危険度に下がるが、それでも危険度の高いモンスターや植物が数多くいる為、かなり危険度は高いと言える場所だ。
リリアが小さな声で言う。
「リリア…この国…来た…道…ある…」
「リリアさんって、外国の方だったんですか?」
パリスが興味ありげに言う。
「う~ん…あの辺は領土内…じゃないかな…?」
リリアが思い出すように顎に拳をつけて空を見る。
「あの辺…ですか…?」
パリスが分からないと言いたげにしかめっ面になりながら首を傾げる。
「うん」
私は以前にリリアの出自を聞いた事があるので、王都の生まれで無いことは知っていた。
双子の妹であるマリアは辺境の地にある小さな村で生まれてから、冒険者になる為に王都に出るまではほとんどの時間を家の外で過ごし、積極的に村の外に出たり、大人たちに混じって狩りをしたり、村の男の子たちと一緒に走り回ったりして、かなりやんちゃをしていたみたいだ。
逆に双子の姉であるリリアはマリアと王都で冒険者になるまでは家にいる事が多く、あまり人と関わらなかったり、積極的に村の外に出ずに畑の手伝いをしたり、村の労働力の牛や馬の世話をしたりしていたみたいだ。
そんな双子が冒険者になる事になった事には村の状態が良くないとかは全くなく、むしろ出て行く理由がわからないほどに潤ってはいたそうだが、好奇心旺盛なマリアが冒険者の話を聞いて冒険者になりたがっただけなんだそう。
マリアは好奇心から全てのダンジョンを制覇すると言う夢の為、リリアはマリアが無茶をしない様に歯止めをかける役割と言う、それぞれの理由で冒険者になったのだ。
今ではマリアは世界一の剣術使いになる為にリリアは私と共にいる為に冒険者として活動している。
「それじゃ、行こっか!」
「うん。」
「はいっ!」
「うい」
それぞれの返事と共に悪魔の森に入る。
…
しばらく進んでいくとパッと見では人工物だとわからないくらいボロボロになった看板が現れる。
「えっと…"ここから先、危険区域!すぐに引き返せ!"と書いてあるのじゃ!」
クレアが言った通り、ここから先は危険度が一気に跳ね上がる場所だ。
ここから先は悪魔の森の真の姿が見られると言っても過言ではないだろう。
「皆、目的地はこの森の先にあるから、気を引き締めていくよ!」
私の掛け声と共に皆でさらに奥へと進んでいく。
少し歩くと明らかに意図的につけられたと思われる傷がついた樹木が多くなる。
「この傷は…災害級モンスター、ブラッディアームの爪の形と一致します!」
ブラッディアームは小さなサイズでも体長5m近い大きさであり、その名の通りに腕が返り血に染まったかのように赤黒いクマ型のモンスターであり、並大抵の武器では傷すらつかない硬い毛皮に覆われており、その爪の一撃が掠っただけでも致命傷になりかねないほどの剛腕を奮って戦うモンスターだ。
特別な魔法も状態異常攻撃も使わないのに災害級モンスターとして君臨するその強さはまさに死を具現化したモンスターと言って差し支えないだろう。
クレアが嫌そうな顔をして言う。
「通りでケモノ臭いと思ったわけじゃ…出来ることなら、バッタリと出くわしたりしたくないものじゃが…」
リリアが皆に魔法をかける。
「自動回復…念の為…」
何が出てもとりあえず戦える環境は整ったので、急いで移動を開始する。
…
「止まって」
私が小声でそう言うと全員の足が止まる。
「グルル…」
私たちの目の前には外壁が破壊された巨大な蜂の巣とハチミツに夢中なブラッディアームがいた。
「困ったわね…」
私は思わずそう呟く。
安全な経路で行くにはブラッディアームがいる道を通らなければならず、ハチミツの生産者の蜂はグランベリーと言う紫色の蜂型の災害級モンスターだ。
グランベリーは単体ではそれほど強くはないが、集団で現れると手がつけられなくなる。
グランベリーは昆虫モンスターにしては小さな部類だが、50cmくらいの体長があり、口から放たれる強い酸性毒とお尻の毒針による強力な神経毒によって獲物の動きを封じる事で生きたまま幼虫の餌にする習性があり、時にはブラッディアームの様な天敵でさえも餌として捕食する事もあるそうだ。
ブラッディアームの硬い皮膚でも酸性毒によって簡単に溶けて柔らかくなるほどなので、私たちのような人族なら一瞬で骨まで溶ける可能性すらある。
私は彼らの毒を固有能力で無効化出来るが、他の3人はそうとはいかない。
一度でも酸性毒を受けたり、毒針を刺されれば、まず命は助からないだろう。
パリスが魔力を放出しながら言う。
「少し道は逸れますが、今の段階では安全なルートがありますけど…獣人族の村があるのでかなり賭けにはなりそうです。言葉が通じない場合や排他的な村である場合、戦闘は避けられないでしょう。」
クレアは目の前のグランベリーの巣とブラッディアームを見ながら言う。
「グランベリーが戻ってこない可能性に賭けて彼奴を葬って通れ無いのか?」
「今の段階ではグランベリーは居ないと思うけど、ブラッディアームと戦ってる間に戻ってこない可能性は限りなく低いし、かなり危険度は高いわね…私以外は誰もグランベリーの毒を無効化出来ないし、リリアの魔法があったとしても、そのリリアや貴方たちが酸性毒で溶かされれば意味が無いわ。」
リリアが扱う回復魔法もそうだが、基本的に回復魔法は回復部位が無ければ成立しない魔法なのだ。
それ以上は禁術とされる蘇生魔法になり、かなりリスクもある危険な魔法になる。
それを酸性毒を受ける度に使っていたのではキリが無いし、危険過ぎるリスクを背負ってまでして連発する事は絶対に避けたい事だ。
だが、獣人族の村ルートでも、そこの住民と意思疎通が出来ない場合や排他的な村の場合、戦闘は避けられないだろうから、その場合もかなり危険な戦いになるのは目に見えている。
ただでさえ、人族に比べると身体能力も高い種族であるにも関わらず、変身能力による身体強化もあると考えるとかなりの強敵になるのは目に見えていると言っても過言ではない。
「じゃあ、獣人族の村を通らせて貰うしかないようじゃな。」
「アリス…パリス…獣人…二人…大丈夫…?」
「それはわからないわね。でも、行くしかないと思うわ。」
私たちは言葉が通じる事を祈って、獣人族の村の方へと向かう。
…
「止まれ!」
目の前に銀色に輝く長いボサボサの髪の狼族の少女が現れる。
余所者の私たちに対して向けられた赤い眼からは警戒心が惜しげも無く溢れていた。
私は目の前の少女に言う。
「貴方たちの村に入れてもらえないかしら?代わりと言ってはなんだけど、貴方たちの村で困っている事の手伝いをするわ。グランベリー…と言って通じるかわからないけど、彼らの巣が邪魔で別の道が無いから、貴方たちの村を通るしかないの。」
私がそう言うと少女の後ろに「ホーホッホッホー」と笑いながら、短い黒髪の黒い目のフクロウの獣人族の梟族の男性が現れる。
「お嬢さん方、見たところ相当腕のたつ冒険者では無いですかな?その実力があればグランベリー如きに遅れを取るとは思えませぬが…」
「グランベリーが1匹2匹の様な少数であれば簡単に倒せますが、問題は奴らが吐き出す酸性毒ですね。私はスキルがあるので効きませんが他の者はそうはいきませんので、私一人で相手をするには分が悪いと判断し、この様な提案をさせていただいています。」
「ホッホッホー!それならば、私が村の長に頼んであげましょう!さあ、私についてきてください。」
少女が男性に言う。
「おいジジイ!番人の俺の許可無しに余所者を入れようとするな!」
「ホッホッホー!ウルカよ。偉そうな言葉使いは私に一度でも勝ってからにするのですな。」
「テメェ…」
ウルカと呼ばれた少女は凄く嫌そうな目をしていた。
「ホッホッホー!自己紹介がまだでしたな。私は梟族のアークですな。そこの狼族の娘はウルカと言いましてな。ご覧の通りまだまだ未熟者であります故、敵意の有無の区別もつかないのですな。」
「テメェ!勝手に俺の名を教えるな!」
ウルカが明らかに怒りを全面に押し出した表情で言う。
「私はアリス・アルフェノーツともうします。」
「リリア…」
「わ、私はパリスです!」
「我はクレアなのじゃ!」
それぞれの簡単な自己紹介を終わらせる。
私たちは前にアーク、後ろに不機嫌なウルカの状態で獣人族の村に入村する。
そして、アークが村長の家と思われる家屋の前で言う。
「ホッホッホー!ここがこの村の長の家ですな。長に話をつけてくるので少々お待ちくだされ。」
周りの獣人族は私たちを珍しいものを見るように見ていた。
クレアがニヤリと笑うと子供たちの目が輝く。
「ホッホッホー!長、この方たちが私の話してた者ですな!」
アークが金色の毛で覆われた狼族の老人を連れて出てくる。
「ようこそおいでなすった。ワシがこの村の長のファルトですじゃ。アークの目に適うお客人様は久しいのぅ…」
私たちは自己紹介をする。
「ウルフフフ…外の若いのは礼儀正しくて良いのぅ!ウルカも見習うと良いぞ。」
ファルトは楽しそうに笑いながら、ウルカに言う。
「余計なお世話だ!」
ウルカは怒りを全面に押し出した声…と言うか、表情にも怒りが惜しげも無く溢れていた。
「怒った顔じゃなければ可愛いのに…」
リリアがそばに居た私以外には聞こえないくらいの小さな声でボソッと言う。
「は、はぁ?!オメェ、馬鹿じゃねぇの!?」
ウルカはあまり言われなれてない言葉だったのか、顔を真っ赤にしながら言う。
あ、尻尾めっちゃブンブン振ってる…
嬉しいのかな?
ウルカも口ではああ言ってても女の子だもんね。
可愛いから黙っとこ。
クレアがウルカを見てニヤッと笑いながら、わざとらしく尻尾を軽く振ってみせる。
ウルカはその意図が分からずに変な目でクレアを見ていたが、ウルカ以外の全員が微笑ましい光景にニコニコとしていた。
「ウルフフフ…若いもんが増えると年寄りの楽しみが増えてええのぅ…」
「ホッホッホー!子供たちに良い刺激となってくれる事は間違いないですな。」
アークが私の前に立つ。
「ホッホッホー!皆様、お疲れでしょうから、ウルカに村の宿への案内をさせますぞ。」
「はぁ?なんで俺が案内しなきゃなんねぇんだよ!ジジイがやれば良いじゃねぇか。」
ウルカは嫌そうに顔をしかめながら言う。
「ホッホッホー!ウルカよ。余所者だからと言って、邪険に扱うのはお主の悪い癖ですな。私の目に狂いは無いから、安心して大丈夫ですぞ。ウルカも彼女たちと共に過ごしてみると良いですな。ウルカにとって良い経験となるはずですぞ。」
「チッ…」
ウルカは嫌そうに舌打ちして歩き始める。
「置いて行かれたくなかったら、さっさとついてこい!」
クレアが楽しそうに尻尾を振ってついていく。
私たちもついて行こうとするとファルトに呼び止められる。
「ウルカはとても優しい娘じゃ。どうか、仲良くしてやってくれると助かる…」
私は笑顔でファルトに向き直って言う。
「ご安心ください。私のパーティーも人を見る目はありますので…」
「ホッホッホー!これは一本取られましたな!」
アークが楽しそうに笑って、突然真剣な顔になる。
「アリスさん、後でまたここに来てくださりますかな?」
「良いですよ。私もちょうどお話しておきたい事がありましたので…」
「ホッホッホー!では、よろしくお願いしますな。」
遠くでクレアが私たちを呼んでいる。
その少し先でウルカが早くしろと言わんがばかりにこちらを見ていた。
私はアークたちに軽くお辞儀をして早足で追いかける。
「アークや。」
「何ですかな?」
後に残った二人はニコニコと笑いながらもどこか威圧されてしまいそうなオーラを感じる。
「あのアリスとやらは神託の子で良いのか?」
「間違いないでしょうな。」
「そうか…」
ファルトはどことなく寂しそうな顔をする。
「ファルトにとっては娘の様な存在も旅立ちの時が近い様ですな。」
アークは表情を変えずに言う。
「ウルフフフ…そうじゃな。ウルカもそろそろ外の世界を知らねばならぬ…神託の通りなら、今がその時じゃのぅ。」
ファルトの毛に覆われた顔から覗く瞳は何処か優しげな目だった。
「ホッホッホー!後はウルカ次第ですな。あの娘を導くのは彼女の運命ですからな。」
黒いフクロウはそう言うと何処かへと飛び去る。
~作者からのお詫び(と言う名のおふざけ)~
は~い!皆さん…こーんb…いや、朝日出てるぅ!
はい。最近、予定が立て込んでたり、5年くらい前から流行りの新型のアレになったりと忙しくくたばってた胴体ドスファンゴの観察者さんでーす!
いやぁ…マジで遅れてごめんなさいね。
本当はもうちょい早く出せる予定だったんですけど、予定が終わってから6日後に突然39度から熱出ちゃいましてね。
発熱のせいで腰と膝が激痛のバーゲンセールだし、意識は朦朧とするしで危なかったんすよねぇw
私の場合は咳はあまり酷くないのですが、喉の痛みがヤバくてですね、ガチの生き地獄でしたよw
まあ、今はほとんど治って元気一杯ぱわー!な私です。
いやぁ…マスクと消毒と手洗いはちゃんとしてたんですけど、やっぱりうがいも大事っすね。
勉強になったっす。(白目)
この小説を見てくれてる読者の皆さんはどこぞの胴体ドスファンゴさんみたいにならないようにしっかりとマスクとうがいと手洗いとうがいとアルコール消毒とうがいを忘れないようにしてくださいね。
胴体ドスファンゴの化け物さんも聞いてますか?
肌荒れが酷くなるくらい消毒してもうがいも喉が潰れるくらいやらないと意味が無いんですよ!
あ、もちろん、こまめに消毒するのも大事ですけど、私みたいに肌が弱い方は消毒後に保湿をする事も忘れないようにしてくださいね。
まあ、私はめんどくさがってやらなかったんで、よく手がボロボロになってましたけど(説得力、戻って来い!)
そんなわけで、ここまで読んでくれた仏の心を持った読者様にちょっとした物語をご用意してますので、読んでくださると助かります。
PS.ウルカちゃんの登場ですけど、本当は次の回の予定だったんですよね。
では、チャオ!
~おま(ぬ)け~
《~ifウルカちゃんのキラ☆キラ☆お姫様生活?~》
「ウルカさん、ごきげんよう。」
綺麗なドレスを着た美しい女性が礼儀正しく俺…じゃなくて、私に挨拶する。
人は見かけによらねぇなぁ…
じゃなくて…
人は見かけによりませんわ?
…って、心の中くらい好きに喋ってもいいだろ!
「ご、ごきげんよう…アリス…さん…」
俺…じゃなくて、私は慣れないドレスの裾を持ち上げてぎこちなく礼をする。
「あら?ウルカさん、緊張なさっておられますの?」
「ま、まあ…そんなところ…ですわ。」
そこに凄まじい勢いでドラゴン娘がやってくる。
「アリス!ごきげんようなのじゃ!」
ドラゴン娘は「ニッ」と人懐っこい笑みを浮かべる。
服は何処かに引っ掛けたのか、ところどころ解れていて少しみすぼらしく見える。
髪はボサボサで手入れ不足感が否めなかった。
「あら、クレアさん、ごきげんよう!今日もお元気そうですわね♪」
そう言いながら、アリスはクレアの髪をサラッと撫でて綺麗にし、一瞬で服のほつれも直す。
「ワハハハ!くすぐったいのじゃ!」
クレアは嬉しそうに笑いながら尻尾を振っていた。
アリスのその所業はまるで面倒見の良い姉であるかの様だった。
「って、そうじゃなーい!」
俺は勢いよく叫ぶとアリスとクレアが驚いた様にこちらを見る。
「どうかなさいましたの?」
アリスがそう言うとクレアも便乗して「どうしたのじゃ?」と首を傾げていた。
「どうしたもこうしたもねぇ!なんでこんなところでお嬢様ごっこしなきゃなんねぇんだ!お嬢様はもっと平和なところで暮らしてるはずだろうが!」
俺は我慢の限界だった。
それを聞いたアリスが苦笑しながら言う。
「私は本当にお嬢様なんだけどね…」
「…は?」
いやいや、アリスがお嬢様だと?
確かに礼儀や作法に一切の乱れは無かったが、それだけじゃお嬢様とは言えないだろ。
それにもし本当なら、なんでこんな少数でこの村に来てんだよ…
護衛が少な過ぎるだろ…
冒険者なら納得は出来るが、お嬢様にそれが務まるとは思えないのだが…
なんて俺は必死に否定する。
アリスの後ろに隠れてたリリアが言う。
「アリス…ウソ…言わない…」
メイクに失敗してピエロみたいになったパリスがアリスに助けを求める。
「アリスさん、助けてください…」
「アッハッハッ!道化の様な面白い顔になっているのじゃ!」
クレアは目に涙を浮かべながら、大爆笑している。
「酷いです…ぐすん…」
パリスが泣いてしまった。
「こらっ!クレア!パリスちゃんは真剣に悩んでいるのよ?それを笑うだなんて酷いわよ。謝りなさい!」
アリスがそう叱るとクレアは非常に申し訳なさそうな顔をして、頭を下げる。
「ごめんなのじゃ…」
リリアが俺の耳元で囁く。
『これは後でパーティー全員に高級スイーツを死ぬほど買ってあげる必要があるな…』
俺はリリアが何を考えているのかがわかった気がする。
「あーあ…こりゃ、俺たち全員に最高級スイーツを死ぬほど食わせねぇと割に合わねぇな!」
「んな?!パリスに買うのはわかるのじゃが、なんでウルカも含まれておるのじゃ?!」
ま、そりゃそうだろ。
リリアがとても残念そうに言う。
「パリスの悲しみは皆の悲しみ…だから、皆の喜びがパリスの喜びに繋がる…賢くて優しいクレアなら、言わなくてもわかってくれると思うのだけど…」
「なんかすり替えられてる気がするのじゃが…リリアがそこまで言うなら、どっか大きな町に着いたらたらふく美味いもん奢ってやるのじゃ!ウルカもちゃんと着いてくるが良いぞ!」
「チョロいな」と思わず声に出そうになって、主人であるアリスを見るとそのアリスも呆れた様子で肩を竦めていた。
こうして何故か俺も巻き込まれる形となって、次の冒険が始まる事となるのであった。
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