魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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黒の少女

32話

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「おりゃあ!」

一つの尻尾を持つ妖狐が自身の突き出した拳から発した真空波で目の前の100体ほどのA級モンスターの群れを討伐する。

「いきます!光よ、集え!セイクリッドランス!」

すぐ側ではスカーレットがB級モンスターのデンゲキトカゲ4体を討伐していた。

「来い!業火の化身…正位置!」

ルミェルが星詠術フォリアーノで炎の化身を召喚して次々とB級モンスターを討伐していく。

「死してなおも生かされる者よ…そなたらに安らかな眠りを…鎮魂舞送ちんこんまいそう

シオンの踊りの効果でA級モンスターに分類される不死の能力を持ったモンスター、不死族アンデッド達が次々に浄化されて成仏していく。

不死族は精霊力、癒し魔法、聖なる力、不死族特攻の武具のどれかが無いと成仏させられないため、永遠に復活し続けるのだが、鎮魂舞送は死してなお動く不死族の魂に捧げる祈りの舞で成仏させる聖なる力に分類される特殊な技能なのである。

「ハーッハッハッ!雑兵如きが我に適うと思うてか!増援が来る前に全部ぶっ殺してやるぞよ!」

狂喜に笑う少女を見てルミェルが言う。

「茉莉さんって、初めてお会いした時のイメージとは違ってなんだかとても戦いが好きな人みたいですね。」

「そうだな。私も世間知らずの箱入り娘みたいな印象を持っていたが、これなら安心して背中を任せられる冒険者も多いだろうな。」

シオンも頷きながら、同意する。

「ですが、私達も負ける訳にはいきませんわ!茉莉さんが全部倒す前にいきますわよ!」

スカーレットはそう言うと近くにいたA級モンスターに突撃する。

「待てよー!私にも活躍させてくれよ!」

シオンがスカーレットの方へと走る。

「やれやれ…皆さん、血の気が多い人達ばかりですねぇ…」

そう言いながら、ルミェルは周囲に残っているB級以下のモンスターの群れの討伐を始める。





灰色の壁、無機質な白い床の迷宮の中、二人の少女が歩いていた。

「あ、あの…えっと…」

「ん?なんだ、茉莉か…どうしたんだ?」

オドオドとしている尻尾が無い妖狐の少女にカレンが言う。

「その…ルフェルシアさん達に任せたB級モンスターの大群に関してなんだけど…」

「お?あいつら、殲滅出来たのか?」

カレンが嬉しそうに言うのとは裏腹に茉莉は少し暗い顔をする。

「やはり、連戦となると消耗が激しいみたいで…あまり状況が芳しくないみたいです…」

カレンは頭を抱えて言う。

「って言われてもなぁ…こっちはこっちで狡猾な悪魔のS級モンスター、の世界に閉じ込められちまったからなぁ…せめて、何か手がかりがあればいいのだが…」

すると突然、暗闇が現れ、そこから如何にも悪魔だと言わんがばかりの姿をしたマモンが飛び出してくる。

「ケケッ!コンナトコロニイタトハナ!オマエガ俺様ノ名ヲ呼ンダオカゲデヤットワカッタゼ!オマエハコッチデ食ッテヤルカラ、安心シロ!」

マモンがそう言うと一瞬でカレンが暗闇に包まれて何処かへと飛ばされる。

「どうしよう…茉莉…1人じゃ何にもできないよ…」

一人になった茉莉を嘲笑うかのようにマモンが言う。

「ケケケッ!オマエ、弱イカラ1人ジャ何モ出来ナイモンナ!弱虫ノクセニ俺様ノ前ニ現レタノガ運ノ尽キダ。大人シクココデ朽チ果テロ!」

マモンは笑いながら、暗闇の中へと消えて行く。

「うぅ…」

茉莉はどうしようもなくただ蹲っていた。

「帰りたい…」

圧倒的な恐怖が茉莉を支配する。

「こんな事なら、私…お留守番してれば良かった…」

茉莉は目頭が熱くなるのを感じる。

そして、大粒の涙が頬を伝う。

「もうやだよ…」

『茉莉や。』

茉莉は懐かしい声が聞こえた気がした。

「じいじ…?」

茉莉の前に半透明なお爺さんが現れる。

『茉莉や。じいじとの約束は覚えておるかの?』

「うん…覚えてる…でも、茉莉じゃ無理だよ…皆みたいに強いわけでもなければ、あの二人みたいな凄い力がある訳でもないもん…」

お爺さんが茉莉の頭を優しく撫でる。

『茉莉や。ワシはいつも言っとるじゃろ?大事なのは力じゃなくて、心じゃと…茉莉の力は心の力なのじゃと。』

「そうだけど…相手はあのおっかないモンスターだもん…茉莉なんかじゃ…」

お爺さんの身体がさらに薄くなる。

『良いか?今の茉莉には無限の力があるのじゃ。ワシが一つだけ良い事を教えよう。』

茉莉は頭の中に流れる情報を瞬時に理解する。

「これは…」

茉莉の身体から綺麗な美しい白色の尻尾が伸びる。

『頑張れ茉莉。お前なら、なんだって出来る。』

お爺さんの身体が小さな光となって完全に消える。

茉莉の中に希望が芽生える。

「じいじ…茉莉、頑張るよ!」

茉莉は地面に尻尾を突き刺す。

「見つけたよ!マモン!」

茉莉はそのまま地面を破壊し、暗闇の中へと落ちる。

「茉莉?!」

カレンが驚いた様子で茉莉を見る。

「ケケケッ!弱虫ガ俺様ヲ見ツケタトコロデ何ガ出来ル?オマエハ何モ出来ズニ死ヌ事シカ出来ナイクセニ?トンダオ笑イダナ!」

茉莉はマモンを見る。

「遺言は終わった?じゃあ…」

茉莉は一瞬でマモンの背後に立ち、いつの間にか取り出していた光輝く刀を振り下ろそうとしていた。

「さよなら」

茉莉が刀を振り下ろすとマモンは綺麗に真っ二つに斬れ、視界が光に包まれ、視界が元に戻ると元の世界に戻ったのがわかった。

「ふぅ…なんとかなりましたね。」

茉莉は目の前のマモンの死体を見ながら言う。

「驚いたぜ…あの短時間の間に何があったかは知らねぇけど、すげぇ雰囲気変わったじゃん!」

カレンが嬉しそうに茉莉に言う。

「そうですね…少し勇気が出たのかもしれませんね。」

茉莉は空を見ながら、じいじのことを思い出す。

(じいじ…ありがとう…)

「そっか」

カレンはそう言うと歩き始める。

茉莉がカレンを見ているとカレンがニカッと笑う。

「茉莉、もう一仕事済ませてこようぜ!」

「はい!」

茉莉たちはまだ戦っている仲間の元へと走り出す。





「フフッ…」

物理攻撃を完全無効化するプルプルとしたS級モンスターのスライム、もっともポピュラーなドラゴンの特徴を持ち全身がダイヤモンドの様に輝く硬い鱗に包まれたS級モンスターの金剛龍モンドロアムドラゴン、風魔法を自在に操り俊敏な動きで獲物を狩り前足に鋭い鎌のあるタヌキの様な見た目のS級モンスターのカマイタチ、そんな三体のS級モンスターを前にして一本の尻尾を持つ妖狐が怪しく微笑む。

「プリア!」

「了解…」

プリアとプレアの二人が周囲の植物を自在に操るS級モンスターのドライアドと交戦している。

「グオオオオオォォォォォォォォ!!!!!」

モンドロアムドラゴンが方向をあげる。

「うるさいですわ!」

妖狐が尻尾を槍のように伸ばして一瞬でモンドロアムドラゴンの部位で最も硬い頭を貫き、元の長さに戻る。

スライムが触手を伸ばして妖狐を捕らえようとする。

妖狐が素早く手で印を結ぶ。

「返り討ちですわ!忍法!獄炎花ごくえんか!」

妖狐の手から太陽に匹敵するほどの熱量の炎が放たれて、スライムを一瞬で蒸発させる花となる。

カマイタチがそれによって発生した風を利用した切り裂き攻撃をしかけようとする。

妖狐は先程とは違う印を結んで言う。

「殲滅しますわ。忍法!電雷でんらい!」

妖狐の身体から発せられた無数の雷がカマイタチを貫き、プリアとプレアが戦っていたドライアドも貫きながら、周囲に居たA級モンスターやB級モンスターの大群を一瞬で殲滅する。

「呆気ないですわ。もっと強くなって出直してくださる?」

妖狐が見下すような眼差しでモンスター達の死体を見る。

その様子を見たプレアが言う。

「プリア、茉莉さんって、ほんとに強いよね。私たちでは苦戦する様な相手も一瞬で倒しちゃうんだもん。」

プリアは黙って「うんうん」と頷いていた。

わたくしが強いのは当然の事ですわ!私と貴方たちでは経験量も格も違いますもの。だから、決して貴方たちが弱いわけではありませんわ。むしろ、S級モンスター相手に怪我をせずに対応出来る事を誇りに思いなさいな。」

茉莉はそう言ってモンスター達の解体を一瞬で終わらせて、素材の整理を始める。

「さすがSS級冒険者だね。あれだけの大群を相手にしても言葉に余裕を感じるよ。」

プレアが茉莉に憧れの眼差しを向ける。

「もっと…強くなる…」

プリアはひっそりと対抗心を燃やしていた。

「…!皆さん、気を引き締めてくださいまし!とんでもないやつが来ますわよ!」

周囲が途端に暗くなり、プレアとプリアが上を見て絶望の表情に変わっていく。

「そんな…」

私は空を見て、その絶望を見つける。

全身が禍々しい黒に輝く鱗に覆われ、赤く脈打つ巨大な黒い翼、頭には角のようになった赤黒い逆鱗が生えており、口からは黒い炎が溢れていた。

「あれは…!大規模災害級グランドバーンモンスターの中でも最強格の龍種モンスター、冥天龍めいてんりゅうヘルグレアですわ!」

ヘルグレアが茉莉の声に反応して、その場に降り立つ。

「…」

ヘルグレアの口から溢れる炎の勢いが増す。

「お二人は早く逃げてください!ここは私が時間を稼ぎます!」

茉莉が初めて大声で出した指示にプリアとプレアの二人は事態の深刻さを理解する。

同時に恐怖で身体が動かなくなる。

ヘルグレアの口から炎が放たれる。

「しまっ…」

茉莉が印を結ぼうとするが遅かった。



※星詠術のルビをフォリアーノに修正しました。※
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