魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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黒の少女

30話

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~現在~

「そうだったのですね。茉莉は大切な人を失う様な経験はした事がありませんが、とても辛い事があったのですね。」

茉莉はまるで自分の事のように言う。

「今でも力を求めるのはそれが影響してるのかも知らないね…私は今もまだ自分を弱いと思っている。」

私がそう言った瞬間だった。

「…!今のは!」

私は全力で追いかける。

「アリス?!」

リリアが急いで追いかける。

私は目の前の逃げる女性を追いかけながら言う。

「待って!」

女性は止まる様子を見せない。

「あっ…」

私は小さな段差に躓いて、身体が宙に浮く。

「…!アリス様っ!」

女性は瞬時に方向転換をして、私の身体を抱き抱える。

後からリリアと茉莉が追いつく。

私は女性の身体をギュッと抱きしめて言う。

「オリュン!オリュンでしょ!アリスよ!」

女性は諦めの表情で言う。

「昔の癖が抜けてなかったみたいですね…」

あの時からほとんど変わらない容姿だった為、すぐに誰だかわかった。

「オリュン…アリス…アリスっ…!」

胸の奥底からぐちゃぐちゃになった感情が溢れて、言葉が出ない。

気がつくと私はオリュンを抱きしめたまま泣いていた。

「アリス様…」

オリュンは申し訳なさそうに私を見ていた。



しばらくして、気持ちの整理がついたところで今までの事を話す。

「アリス、オリュンが死んでしまったとばかり思ってたわ。でも、オリュンが生きててほんとに良かった!」

アリスは自分があの頃の様に自分を名前で呼んでいる事に気がつかないほど、喜びに満ちた表情をしていた。

「アリス様、黙っていて本当に申し訳ありませんでした…」

オリュンが申し訳なさそうに謝るが、私にとってはそんな些細な事はどうでもよかった。

「オリュンが生きていた、それだけでアリス・アルフェノーツは救われたわ!だから、気にしないで!それにオリュンの事だから、私の事を考えて黙っていたのでしょう?」

「そうですね…アリス様のおっしゃる通りです。オリュンもアリス様がこんなにも立派に成られた事を知れて、本当に嬉しい限りです。」

オリュンはとても優しく私の頭を撫でる。

「ところでそちらの方々はアリス様のお友達の方ですか?」

オリュンがリリアと茉莉を見て言う。

「そうだよ!こっちのおっきい方がリリアでこっちのちっちゃい方が茉莉なの!今の私は昔のオリュンと同じ冒険者をやってるの!」

「左様でしたか…」

オリュンは被っていた帽子を取ってお辞儀する。

「申し遅れました。私はオリュンと申します。以前、アリス様にお仕えしておりましたメイドにございます。」

リリアは恥ずかしそうに指をイジイジさせて言う。

「リリアです…」

茉莉は丁寧にお辞儀をする。

「私は姓を本間、名を茉莉と申します。よろしくお願いしますね。」

茉莉が握手を求めて右手を出すとオリュンも右手を出して握手をする。

「ねぇねぇ!オリュンは今何してるの?」

「今は何でも屋として活動してます。冒険者の手伝いからゴミ処理までなんでもやってますよ。」

オリュンは淡々と言う。

「…そっか。オリュンも自分の道を歩いてるんだね。」

「そうですね…私はアリス様も立派に自分の道を歩んでいらっしゃると思いますよ。」

「あはは!オリュンの優しさはずっと変わらないね!」

私が笑っているとオリュンが言う。

「…ウェンは元気にしてますか?」

「今でも屋敷で元気にしてるって、手紙でおばあ様が教えてくれたよ。って言っても、2年くらい前の話だけどね。」

「なら、良かったです。」

オリュンはそれを聞くと少し嬉しそうにしていた。

私はオリュンの顔を見る。

「あのね…オリュン、お願いがあるんだけど良いかな?」

「はい。なんなりとオリュンにお申し付けください。」

私は軽く深呼吸をする。

「オリュンさえ良ければ、私のパーティに来てほしいなって思ってさ…どうかな?」

オリュンは驚いた様子で目を見開いて言う。

「アリス様?!」

私は続ける。

「オリュンと一緒なら、私は誰にも負けないと思うの。それにもうあんな寂しい気持ちはごめんだもの…だから…」

オリュンは少しだけ考える様に首を傾げていう。

「申し訳ございませんが、それは出来ません…アリス様のお気持ちは嬉しいですが、本来オリュンはこうしてアリス様と話す事さえ許されない立場なのです。」

「じゃあ、おじい様に言ってオリュンを私のメイドにしてもらう!そうすれば…」

私はオリュンの顔を見て言葉を止めた。

「…オリュンも初めはそう言いました。しかし、オリュンがアリス様の事を想うほどにオリュンはアリス様とは一緒にいてはいけない事を痛感させられてしまうのです。」

オリュンは小さな声で言う。

「オリュンは一度死んでます。確実にあの世への道を渡りました。」

私はわけがわからなかった。

「それじゃ…ここにいる貴方は誰なの?」

「間違いなくアリス様のメイドをしていたオリュンです。アリス様が寝る時も起きてる時も如何なる時もお傍でお仕えさせて頂いていたオリュンです。それに…」

オリュンはそこまで言うとかなり言いづらそうに言葉を濁そうとする。

「…いえ、今のアリス様なら大丈夫でしょう…アリス様は死転転生オルフェアリクスと言う禁忌を知っていますか?」

「おるふぇありくす…?」

どこかで聞いた事があるような…

「太古の古代精霊術…」

リリアがぼそっと言う。

茉莉は驚いた様子で目を見開く。

「その通りです。リリアさんは博識ですね。」

リリアは少しだけ恥ずかしそうに目を逸らしながら言う。

「リリアは精霊学の心得があるだけだから…」

「そう言えば…」

私はとある夢の話を思い出した。

「小さい頃の夢だと思うけど、大きな木の中に居る白い人が力を与える代わりに何かをやれって言ってたような…」

「何かをやれ…ですか…」

「うん…」

それを聞いたリリアが小さく手を上げながら言う。

「あの…考えすぎかもしれないけど…それってではないかな…って…」

「そう言えば」と茉莉も続ける。

「私の知人から、の伝承を記したとされる遺跡があると聞いた事があります。なんでも世界を護る木を破壊する邪悪なるモノを倒す伝承だとか…」

私の中で何かが組み合わさったかのように思い出される。

「それだよ!茉莉、その伝承だよ!」
(ゴーンゴーン!)

私がそう言った瞬間に時間を告げる鐘が鳴る。

「…今って何時だっけ?」

時刻は5時50分を示していた。

「ヤバッ!皆、急ぐよ!」

茉莉とリリアに先に行かせる。

「オリュン、私ね…」

私は首を振る。

「ううん。オリュンなら、もうわかってるよね!またね!」

私は勢いよくその場を後にする。

オリュンは振り返らずに背後に立つものに話しかける。

「ウェン、見ていたのですね。」

「それが私の役目だもの…」

まるで視界が揺らぐような気配を感じさせて、ピッチリとした黒いスーツの少女が現れる。

「ウェン、オリュンはアルフェノーツ当主様との約束を破ってしまいました。」

オリュンがそう言うとウェンと呼ばれた少女が言う。

「そうね。」

オリュンが後ろを向いてウェンと向き合う。

「オリュンを殺しますか?」

ウェンは表情を変えずに言う。

「アリス様の為には生かしておくべきだと思うよ。」

オリュンはそれを聞くと下を向いて言う。

「ウェンはそれで良いのですか?」

雨が降り始める。

「そんなの…アンタが一番わかってるくせに…」

雨がさらに強まり、お互いの顔が見えなくなる。

「そうですね…意地悪をしてしまいました。」

ウェンは深くフードを被って言う。

「覚悟はいい?」

オリュンは静かに目を閉じて言う。

「当然ですわ」

二人の姿が消え、どこかで金属同士がぶつかる音が鳴り響く。



「遅いなぁ…」

カレンが部隊と共に後1人を待つ。

「どうしたんだろ?」

リリアが小さな声で言う。

「もしかして、突然の雨で力が出なくなってたり…」

リリアが茉莉の尻尾を見ながら、ポツリと言う。

「私の様な尻尾の大きい種族だと尻尾が水を吸って重くなり上手く歩けない時はありますね。私の場合は特殊な呪符で尻尾を護っていますが…」

茉莉がそう言っていると遠くから獣人族の少女が現れる。

「みんな~!待たせてごめーん!」

そんな事を叫びながら、アリスがやって来る。


「はぁ…はぁ…やっとついたぁ…」

私は肩で息をしながら、集合場所の門に駆け込む。

「遅いぞ。どこをほっつき歩いてたんだ?」

カレンが怒った表情で言う。

「いやぁ…屋根伝いで急いでたんだけど、雨が降ってきたせいで途中で足を滑らせて落ちちゃって…」

服を絞りながらそんな事を言うとカレンが呆れた様子で言う。

「はぁ…リリアと茉莉は時間通り来たと言うのに…全く…それとここには男も居るんだから、服を絞るならせめて前を隠しなさい。」

「…?別に見られて困るもんでもないし、よくない?」

「あのなぁ…」

私はそのまま下着も絞る。

カレンが側に居たリリアに視線を送るが、リリアも濡れた服を絞り、「パァン!」と勢いよく服を振ってシワを伸ばしていた。

「はぁ…」

茉莉はニコニコ微笑みながら、ひっそりと尻尾でこの場にいる男性陣からアリスとリリアを隠して見えなくしていた。

「よーし!これで乾いたし、動きやすくなったぞー!」

私がそう言うとカレンは大きなため息をついた。

茉莉はアリスとリリアが服を着たのを見計らって、尻尾を元に戻して男性陣の視界を解放する。

「なぁ…茉莉、お前のところのパーティーはいつもこうなのか?」

カレンがボソッと茉莉に聞く。

「私はまだパーティーに入って日が浅いので、こんな一面があるのは初めて知りましたわ。」

茉莉は淡々とそう言う。

「…お前は絞らないのか?」

「普通はそんな事しませんわね。私の場合は特殊な術式で対処してますが…」

「…だよな」

茉莉とカレンが呆れた様子で話しているとアリスとリリアが言う。

「リリア、どっちが強いモンスターを多く倒せるか勝負だ!」

「ふふっ…リリア…頑張る…」

私とリリアはほぼ同時に門から飛び出す。

「あ、おい!…お前ら、行くぞ!」

カレンの号令とともに全員がアリスとリリアを追いかける。

「おりゃあ!S級モンスター、ドラゴンサーペントいっちょあがりぃ!」

かなり距離はあるが、カレンたちの進路上に赤色の龍のような鱗を持った蛇のドラゴンサーペントが放り投げられる。

「はぁ!アックスバースト!」

その奥からはA級モンスターの刀のような鋭い爪が特徴的なクマのグリムが三体かち上げられて、ドラゴンサーペントの上に落ちる。

「連携もへったくれもねぇじゃねぇか!」

カレンがブチギレながら、ドラゴンサーペントを解体する。

「せやぁ!」
「でぇい!」
「「おらぁ!」」

次々にS級やA級モンスターの遺体が放り投げられてくる。

茉莉や部隊総出でモンスターの山を解体していると奥から二人が戻ってくる。

「はぁ~…今回はほぼ同じくらいだったな!」

私がそう言うとリリアも頷いて言う。

「この辺り…少ないね…」

カレンが大声で怒鳴りながら言う。

「おめぇら、やり過ぎだ!誰がこんなバカみてぇにやれって言ったよ!さっさと片づけるの手伝いやがれ!」

私とリリアはそれぞれで山の半分を処理しきる。

「これなら、当分の食料には困らなさそうだよね!」

私がそう言うとリリアは首を傾げる。

「足りるかなぁ…」

「あー…この人数だもんね。もういっちょいっとく?」

私がそう言うとカレンがキレ気味に言う。

「お前らなぁ!いい加減にしろ!少しはこいつらにも実践させんかい!」

茉莉も淡々と言う。

「カレンさんの言う通りです。今は彼らの指導役に撤するのが私たちの役目です。アリスさんとリリアさんの二人で終わりじゃ無いんですよ?」

リリアが首を傾げていう。

「この先…凄い居たよ?」

私も探知を使って言う。

「あ、ほんとだ。めっちゃ強そうなの居るね。災害級クラスのモンスターも2体ほど居るし、他にもS級モンスターが5.6体居るから油断は出来ないね。」

私がそう言うと部隊が一瞬凍りついたような雰囲気を出していた。

「リリア、もし出てきた時はそっちをよろしく!」

私はリリアに簡単に指示を出す。

「大丈夫?」

リリアが心配そうに言う。

「ん~…まあ、何とかなるんじゃないかな?」

数日前より私たちは格段に力がついた。

だから、大丈夫だと思う。

「それに…」

私は茉莉に言う。

「茉莉って言う頼りになる仲間も居るし、部隊の安全も確保されてるから、思う存分戦えるからね!」

茉莉はやれやれと言いたげにため息をついて言う。

「まあ、仕方が無いですね。。」

カレンが気合を入れた様子で言う。

「部隊の護りは任せろ!」

私はリリアと目を合わせて、それぞれ2体の災害級クラスモンスターの方へ走る。
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