魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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古き時の小波

23話

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「クレアール!3時の方向から4体来てる!」

クレアールと呼ばれた短剣を持った少女が言う。

「了解だ!」

クレアールは技能で脚力を強化し、そのまま4体のA級の竜種を倒す。

「ハッハッハ!呆気ないのう!」

クレアールがそう言って豪快に笑っていると背後から、巨大な斧を持ったS級モンスターの竜種:アックスドラゴニアスが襲いかかっていた。

直後、そのアックスドラゴニアスはその斧を振り下ろす前に倒れる。

そこに「はぁ…」とため息を吐きながら、短くボサボサの銀髪の少女が歩いてくる。

「クレアール、お前はもっと周りを見るべきだ。私が居なければ死んでいたぞ。」

「まあまあ、オリュンがアタシのカバーをしてくれるのはわかってるんだから、良いじゃねぇか!」

「はぁ…先が思いやられるわね…あんた、そんなんじゃギルドなんて立ち上げられないわよ?」

オリュンがクレアールに言う。

クレアールはそんな事など気にしないと言いたげに言う。

「オリュンが居れば、難しい事も無いさ。アタシは力しか取り柄がねぇからな。めいいっぱい頼らせてもらうぜ!」

「あんたねぇ…私から少しは自立しなさいよ…」

「うむ!それは不可能な話だな!ガーッハッハッハー!」

クレアールが自信満々にドヤ顔で言う。

オリュンは心底呆れた様子で大きなため息をついて頭を抱える。



数年経ったある日のことだった。

「オリュン!聞いてくれよ!」

クレアールが騒がしく慌てた様子でオリュンの部屋の扉を開ける。

「あんたねぇ…ノックぐらいしなさいよ…私が着替え中だったら外から丸見えよ?」

オリュンが椅子に座って読んでいた本を持ったまま嫌そうにそう言うとクレアールは「ガハガハ」と笑う。

「悪ぃ悪ぃ!でさ、この間言ってたSS級クエストなんだけどさ!」

「どうせ、あんたの事だから、受けれるように直談判でもしたんでしょ?」

「さっすが、オリュンだぜ!その結果、受けられるようになったんだぜ!それもこのクエストをクリアすれば、ギルドを立てられるオマケ付きだぜ!楽しくなってくるよな!」

クレアールは部屋の中に入って扉を閉めながら、とても嬉しそうに言う。

オリュンは誰がどう見ても険しい顔をしていた。

「そうね…私たちの力が認められたのは喜ばしい事だわ。だけど、私たちには早いのではないかと思えてしまうわね…いくらなんでも、経験値が足りなさ過ぎる。そこをどうカバーするかが鍵になるんじゃないかしら?」

「さあな。でも、アタシのやることはただ一つ!オリュンの作戦通りに動くだけだ!タフさも力もオリュンよりアタシの方があるからな!」

クレアールはドヤ顔で言う。

「悔しいけど、その通りなのよね…その分、魔法を扱うのは私の方が得意だね。」

オリュンは本を片付けながら、少し楽しげに微笑む。

「そうだな。アタシは難しい事はわかんねぇからな!だから、オリュンにはいつも頼ってばっかだな!」

「あんたはほんとに脳筋だものね。ま、そのおかげで私も助かる事はよくあるけど。」

そんな他愛も無い会話をしている時だった。

「コンコン」と小さく扉がノックされる。

オリュンが静かに立ち上がって、扉を開ける。

そこには綺麗な紫色の髪の毛の長い小さな少女が居た。

見たところ、歳は10歳前後だと思われるくらいの少女だ。

「あ、あの…その…」

少女は緊張しているのか、手をモジモジとさせながら言う。

そこにクレアールがやってくる。

「なんだ?ガキじゃねぇか。迷子か?」

「あっ…違っ…その…」

少女が焦った様子で否定する。

「こんな所で立ってても邪魔になるし、とりあえず、部屋の中に入りましょうか。」

「す、すみません…」

オリュンが少女を部屋に入れる。

「あなた、紅茶は飲めるかしら?」

少女は小さく頷く。

オリュンはそのまま手際良く紅茶を入れる。

「お?アタシの分もあるのか?」

クレアールが嬉しそうに言う。

「あんたのもあるわよ。無かったら、駄々こねてめんどくさいし。」

「んなっ!?」

少女の前でそう言われたクレアールは恥ずかしさで顔を赤くしていた。

オリュンはその様子をからかうようないたずらっぽい笑みを浮かべてクレアールに言う。

「あら?あんたでも恥ずかしい事はあるのね?スライムに装備を溶かされて素っ裸で男性もいる他のパーティと共にする事も平気でやるのに…」

「ちょっと待て!それって、3年前くらいのボーッと歩いてて、うっかりスライムに飲み込まれちゃったやつじゃないか!しかも、あの時は代わりの下着すら無かったんだぞ!」

クレアールはさらに顔を赤くしてわちゃわちゃと手を振りながら言う。

「その後、素っ裸のままダンジョン内を彷徨って、下着を探しながら女性冒険者の下着をもらおうとする冒険者が居るって連絡が来た時にはほんとに頭を抱えたわよ?なんでS級になってまでして素っ裸で歩き回る痴女の相方を迎えに行かないと行けないのか3日くらい悩んだんだからね?」

「そんなに悩んでたのかよ!?てか、アタシは痴女じゃねぇよ!あれはスライムのせいだからな!?」

クレアールがさらに顔を赤くしながら勢いよく言う。

そんなオリュン達の様子を見ながら、少女がオロオロとしている様子に気がつく。

クレアールがあまりに面白い反応をするので、ついからかうのに夢中になってしまった。

「放置してごめんなさいね。見てのとおり、クレアールの反応があまりにも面白かったもので…」

オリュンが楽しげに微笑む。

少女は少し申し訳なさげにクレアールを見ていた。

「殺してくれぇ…」

クレアールが顔を隠しながら部屋の隅でボソッと言う。

オリュンはそんなクレアールを横目に見ながら、少女に言う。

「さて。さっそくだが、本題に移らせてもらうわね。」

「は、ひゃいっ!」

勢いよく少女が舌を噛んでいた。

少しだけ痛そうに舌を出して居た。
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