魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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最強の呪術師:デューク

11話

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「おおー!ここめっちゃ楽しそうだな!」

無邪気な子供のような少年が楽しそうにはしゃぐ。

「危ないよ…モンスターが出るかも…」

落ち着いた雰囲気の少女が言う。

少年はよくある騎士の甲冑で身を固めている、そこら辺の新米騎士のような見かけをしている。
だが、その甲冑にはとてつもなく強力な力があり、魔力でその強度を化物と呼ぶに相応しいほど強化しているように見える。

少女の服は鍛錬者シスターの服と似ていながら、上半身はフードが無いこと以外には特に変わった点はなく、胸部から下がまるで戦士の様に露出が多い姿だ。

胸部は分厚いが華奢な身体つきが際立つような服装だった。

具体的に言えば、上は長袖で露出の少ない服だが、下はお腹は丸出しで、薄いパンツのようなものを履いてるくらいだった。

とてもでは無いが、鍛錬者と呼ぶにはあまりにも戦士的過ぎるその風貌に初めは少し驚いたが、少女からは凄まじいまでの才能を感じた。

この2日間の時間で分かった事だが、どちらも料理の事以外には基本的に正反対な反応を示している。

この二人は面白い事になってくれると直感的に感じていた。

私は二人を見る。

「ふふっ…どう転がるか…楽しみね…」

私たちは今の住居から、それなりに奥に進んで森の中にいた。

ここが楽しそうと言えるあたり、ヴァリアスには探知のスキルは無いか、相当な実力者である可能性が出てきた。

一方で冷静な判断をしているリリアは力こそあれど、実力は未知数な感じだ。
直近の戦闘では一人で小規模ながらもSランク相当の魔物の群れを一人で壊滅させて、残りの残党を私とヴァリアスで倒した。

「グオオオオオオオ!!!!!」

巨大な咆哮と共に地響きが起こる。

「龍…数…7…方角…3…4…勢力…3が2…4が5…距離…300…固有種です!」

少女が正確に情報を伝える。

3時の方向に3体、4時の方角に4体の計7体の龍がいて、距離は300kmだろう。

こんなに離れていても咆哮だけで地響きが起きているのだ。

相当にやばい相手なのは目に見えている。

私は呪言や呪歌を使う為、声が届きにくい環境になるのは非常にまずいのだ。

まあ、声で無理なら、念で呪いを付与するんだけどね。

「ふふっ…久々に…腕がなるわね…」

少年に少女が言う。

「リリア…何すれば…いい…?」

リリアは真っ直ぐに3時の方向を見る。

「デュークさんが後衛だから、僕とリリアでデュークさんのサポートをしながら、戦おう。」

「ん…わかった…」

二人は私の前に出る。

「ふふっ…呪詛…使うわよ…」

私は呪詛で呪力を高める。

呪いの力がオーラの様に身体から溢れる。

「ヴァリアス達は3に行って…私の力…強いから…」

リリアはヴァリアスの顔を見る。

この2日で彼女が誰かと行動する時は相手に任せる事が多いところがあるのを見ていた。

「わかった。デュークさん、くれぐれも無理をしないでね!」

ヴァリアスは眩しい笑顔を振り撒いて、リリアと3時の方向に走る。

リリアは見た目の弱々しさにそぐわず、かなり足が速かったようで、ヴァリアスはすぐに身体強化魔法を使ってリリアにやっと追いつけるほどだった。

私も足早に残りの方へ向かう。

「数が増えてきた…呪言…命ずる、早く進め」

私は呪言の呪力強化で自身の移動速度をかなり上げる。

さすがに300kmともなれば、少し時間がかかる。

「見えた…」

だいたい3km地点で山のような龍の巨体が現れる。

龍は私を見ると私が来るのを待つかのように立ち止まる。

その龍の様子に他の仲間らしき龍もこちらに気がついたように突進してくる。

私は呪力に意識を注ぐ。

「呪言…汝、我に震えよ!」

私の呪言を聞いた龍達が次々と私に対してする。

私はそれを利用して呪言めいれいを出す。

「命ずる…汝、友を喰らえ!」

私の呪言で恐怖した龍たちが次々と自分の仲間を攻撃し始める。

一際大きく、私を待ち構えていた龍はその様子を見て、仲間割れしている龍の首を次々に掴む。

そして、その身体をあっという間に丸呑みしてしまう。

龍は私を見て言う。

『久方ぶりの強き人間だ…お主の様な強敵と戦えるのをずっと楽しみにしていたのだ!我と戦え!』

巨大な龍は特徴的な赤黒い鱗に覆われた翼のない龍…

災害級モンスターの炎龍マグリオールだ。

私は立ち止まる。

「…味方…何故?」

私の短い疑問に龍は愚問だと言いたげな様子で返答する。

『邪魔な奴を片づけただけだ。お主らで言うところの玩具を片づけるようなものだ。お主もなら、我らの事情も理解出来よう?』

龍は楽しげに言う。

「そう…」

私は短く返す。

を少しだけ解放する。

血が巡り、背中に巨大なが生える。

『お主、我を馬鹿にしておるのか?その程度の力で我と戦えると?』

私はニヤリと笑ってみせる。

「ふふっ…当然よ…私…強いから…」

『ふん!すぐに後悔させてやるわ!』

私は翼を広げて空を飛ぶ。

呪龍じゅりゅうの名を持って…貴方を…呪い殺す…」

マグリオールが魔力を高める。

私は自身の大幅に強化された呪力を使って言う。

「呪言…汝、我を恐れよ」

『グヌウウゥゥゥゥ…』

マグリオールはダメージを受けながらも呪力に逆らって力を貯める。

私はさらに追い討ちをかけるために呪力を使う。

「呪詛…我、心を喰らう者なり…」

呪力でマグリオールに精神負荷をかける。

『この程度…我の力があれば…』

「…その根性は認めてあげる…でも…」

私はマグリオールが徐々に恐怖に堕ちそうになるのを見ながら言う。

「貴方のこと…買い被り過ぎたわ…」

マグリオールがそれを聞いた瞬間、目を見開いた。

そして、急速に湧き上がる怒りを感じる。

「私の呪詛が…押し返されてる…」

『貴様…今、我を買い被り過ぎたと言ったな?』

マグリオールは空から見下ろしている私を見る。

『その言葉…』

マグリオールから太陽に匹敵するほどの熱量が発せられる。

私は呪力強化で身体を守っている為、少し熱いなと感じる程度で済んだが、辺り一面が一瞬で蒸発した。

『すぐに取り消させてやる!』

マグリオールは本来無いはずの翼を自身の炎で無理矢理作って空を飛ぶ。

「ちょっと煽り過ぎちゃったわね…」

私の居る高度より遥か上で二つの太陽が煌めく。

そのうちの一つが爆裂し、それぞれが巨大な火球となって大地に降り注ぐ。

私はそれをいくつかは呪詛で弾き飛ばしたが、弾き飛ばした先の湖が一瞬で蒸発して無くなったり、地面が蒸発して無くなったりしていた場所が多かった。

森の木々に火が燃え移ってしまわないか心配だったが、燃え移るよりも先に蒸発する為、森林火災の心配は無さそうだった。

それよりもあいつのせいで全てが蒸発させられてしまうかもしれない事の方が心配になってくる。

「だけど…雑念は呪力を弱める…今だけ…あいつを呪う事だけを考えればいい…」

私は呪力を再び高めて、呪力の球を無限に等しいほど創り出す。

「私は呪い…私は呪われし者…私は呪い…私は他を蝕む者…」

呪龍の尻尾が出てくる。

それによりさらに呪力が強化されて、降り注ぐ火球を呪力の球が破壊し始める。

「どこの場所でもない…私の心象領域…この世とあの世のどちらでもない世界…そこにあるのは永遠の呪いのみ…」

呪力の球が共鳴し合う。

「心象領域…開眼!」

私とあいつを領域が呑み込む。

『ヌウ?!我の身体が…!ナンダコレハ!ウッ…グヌウウゥゥゥゥ?!』

私は第三の目でマグリオールを見る。

「汝ハココデ潰エル運命ゾ!命ズル…汝、ソノ身ヲ滅ボセ!」

マグリオールに呪力がまとわりつく。

『や、やめろ!我はこんなところで死にとうない!』

マグリオールは先程までの勢いはもはや微塵もなかった。

今はただただ恐怖に打ち震えていた。

『やめてくれ!頼む!我はまだ生きて…グオオオオ!!』

マグリオールは体内で何かが暴れるのを感じていた。

『ま、まさか…!』

私は第三の目を閉じる。

「貴方はもう呪われているわ…この罪は重いわよ…」

私はマグリオールに背を向けて領域から出ようとする。

『待ってくれ!頼む!頼むから!なんでもします!どんな事でも聞くから!だから…俺を置いていかないで!』

とてもあの気高き龍種とは思えないような酷い泣きべそをかいて龍は泣いていた…

それほどまでにここは心を殺す負の力が凄まじいのだ。

ここの主である私ですら、1ヶ月も居れば奴と同じ様になるだろう。

私は振り返らずに言う。

「残念…諦めなさい。」

マグリオールは足元から徐々に呪いの中に沈んでいく。

『そんな…俺は…俺は…』

私はマグリオールが完全に呪いに呑まれるのを聞いて、領域の外に出る。

「心象領域…閉眼!」

巨大な黒の心象領域が消えて光の粒となる。

「ふう…久しぶりに力を使い過ぎたわ…」

私はゆっくりと地面に降り立ち、元のデュークとしての姿に戻る。

「なんだか、呪術師って言うより、悪魔みたいな事をしてるわね…私…」

私は遠くで戦っている2人の事を思い出す。

「私の正体を見破る固有種…呪詛とは関係の無い共喰い…固有種とは言え、マグリオールにしては異常な強さ…」

私の脳裏にある考えが過ぎる。

「まさか…ね…」

私の直感はよく当たる。

だが、この時ばかりは外れていてくれと切に願う。

「でも…もしものことがあったら…」

私は脚だけを龍の脚に変化させる。

「急ごう…」

私は龍の呪力と龍の脚で移動速度を極限まで上げて2人の元へ行く。
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