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現代の常識学

少女、妖狐と会う。

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「シェラちゃん!」

私は聞き覚えのある声に振り返ると大きな妖狐が走ってくるのが見えた。

「メイ…え?妖狐ようこ?!」

私は一瞬身構えたが、妖狐の上にメイリーンが乗っていることに気がついて、身構えるのをやめる。

妖狐はメイリーンの指示で私の目の前で止まる。

メイリーンが腕にヒトの姿をした左腕の黒い妖狐族を抱えて妖狐から降りる。

妖狐は力を使い果たしたのか、巨大な妖狐の姿から白いビキニの様なものを着た幼い少女のような姿になる。


綺麗な銀色の毛が全身を包んでいることから、獣に近い獣人種であることがわかる。

メイリーンと同じく、マズルのある顔立ちは獣っぽさを感じさせるが、メイリーンは顔から下は犬の尻尾があること以外は人間と同じ手足に肉球の無い皮膚の露出した姿なのに対し、幼い少女の姿は二足歩行のキツネのようであり、手足に肉球があり、皮膚が銀色の毛で覆われていた。

見た目が二足歩行の獣のような姿の種は「族」をつけない呼び方、逆にメイリーンのように身体がヒトのような姿の種は「族」をつけて呼ばれる。

種族によっては、この際に呼び方が大きく変わる種族もいるが、今は割愛させていただこう。

どちらの種族も獣に変身する能力、獣化じゅうかがある。

しかし、族がつかない方は完全な獣の姿になれるのに対し、族がつく方は一部だけしか変化させることが出来ず、また個体ごとに変化出来る部位が固定となっていることが多い。

ちなみにメイリーンの種族は巨犬族きょけんぞくとなっており、犬族いぬぞくの中でも特に大きな身体になりやすい種族なのだ。

しかし、メイリーンは巨犬族の中では身長も胸囲も最小クラスなんだそう。

それでも、人間からすると規格外レベルの大きさである事には違いない。

特に胸部が…


「シェラちゃん、この子の腕を治せますか?」

メイリーンが妖狐族の少女がつけている白い包帯を取ると反対側と比べて3倍ほどに太く黒い左腕を見せながら言う。

こちらの妖狐族の少女はメイリーンと同じく顔は獣っぽさを感じる顔だが、耳が垂れて皮膚が露出しており、尻尾がなければ獣人だと気がつくのは難しい姿だった。

どこかの魔族ちゃんのようなストーンな体型はメイリーンの大好物だろうなと思える。

『…シェラ様?』

とても圧を感じる声が聞こえた気がしたが、気の所為だと言うことにしておこう。

『見てろよ…私は大器晩成型だから、絶対シェラ様よりでっかい女になってやるからな…』


私は妖狐族の少女の左腕を診る。

「これは…寄生型のモンスター…?でも、この種はヒトに寄生する事はないはず…」

私は異空間からナイフを取り出す。

「これから君の腕を切るから痛いけど、我慢しておくれよ。こいつを取り出さなければ、いくら治療しても無駄だからね。」

私がそういうと少女はギュッと目を瞑って顔を背ける。

私がナイフを突き立てて切り開くと中から赤黒くドロッとした液体が流れる。

おそらくは血液とこの寄生モンスターの唾液が混ざったものなのだろう。

「あ…ぐっ…」

少女が痛みに顔を歪める。

「すぐ終わるからね。」

私は少女の腕から今にも破裂しそうな大きさの黒いモンスターを取り出す。

「こいつはCランクの蜘蛛型モンスターのポイズンパラサイトだね。強力な神経毒があって、通常ならヒトには寄生せず、神経毒で麻痺をさせて身体の大きなモンスターに寄生し、魔素と栄養を奪っているのだけれど…」

私は寄生していたポイズンパラサイトが摘出されて元の大きさに戻った少女の腕を縫い、治療魔法をかける。

万が一でまた人に寄生することを防止する為に摘出したポイズンパラサイトは討伐して魔石に変えておく。

少女の腕はみるみるうちに治っていき、黒くなっていた肌の色も元の白い肌の色に戻っていった。

「お疲れさま!治療完了だよ!」

少女は治った左腕を動かす。

「凄い…本当に治っちゃった…」

妖狐の少女が感嘆の声を出すと妖狐族の少女がビシッと姿勢を整えると頭を下げて言う。

「治療していただき、ありがとうございます!お姉様のおかげで、助かりました!なんとお礼をすれば良いか…」

「無事だったなら何よりだよ。でも、まだ毒が残ってたりするかもしれないから、たまに顔を出しに来てくれると嬉しいかな?」

「はい!毎日片時もお姉様のお傍を離れませんわ!」

少女はそう言うとギュッと私の腕を抱きしめて幸せそうな顔をしていた。

控えめな胸の感触はそれはそれは硬かった。

あんま言ってるとティアラに怒られちゃうから、これ以上は言わないけど…

『…シェラ様愛好家が増えましたね。』

ティアラがため息をつきながら呆れた様子で言う。

「強敵だ…」

カリヤは謎の緊張感のある声を出す。

「あの…」

妖狐の少女が恥ずかしそうに目を逸らしながら言う。

「ハラミ…えっと、ユキの友達の銀狐族ですけど…ハラミを助けてくれて…その…あの…あ、あありがとうございます!」

「グッフフッ…」

まるで愛の告白でもするかのような雰囲気だったため、思わずカリヤが吹き出してしまった。

その様子を見た妖狐の少女がさらに顔を赤くする。

私も内心笑いそうになったが、グッと堪えて言う。

「うむ。私も役に立ったみたいで良かったよ!」

私は無意識に妖狐の少女の頭を撫でると少女は嬉しそうに微笑んでいた。

「シェラちゃん、ちょっと良い?」

メイリーンが真剣な表情で言う。

ただし、鼻血は垂れ流し状態だが…

「どうしたの?」

私が首を傾げながら聞くとメイリーンは一瞬だらしない顔で「かわいすぎる…」と呟いていたが、すぐに真剣な顔に戻る。

「ユキちゃんとハラミちゃんのことなんだけど、うちの学園に入学させたいなって思うの。それとユキちゃんもハラミちゃんもシェラちゃんの所で暮らせたらいいなって思うんだけど…どうかな?」

私は二人の少女を見る。

「私はお姉様のお傍に居られるなら、何処へだって行きますわよ!ユキちゃんもそうでしょ?」

ハラミが元気良くユキを見る。

「あの…えっと…シェラさんが嫌じゃなければ…ユキは大丈夫ですけど…」

ユキが上目遣いで潤んだ瞳で言う。

「うちに住むのは良いけど、ユキさんが学校に通うのは無理じゃない?だって、ユキさんはまだ子供でしょ?」

私がそう言うとユキは目に涙を浮かべながら怒ったように頬を膨らませる。

「こ、子供じゃありませんっ!これでも16歳の立派なお姉さんなのですっ!確かにいろいろと小さいけど、ちゃんと成人年齢にはなってます!」

途中で一瞬胸の辺りを見ながらユキは怒ったように言う。

「ウソォ?!それはごめんなさい!めちゃくちゃ失礼な勘違いしてた…」

私が頭を下げて謝るとハラミが何事も無かったかのように言う。

「私はまだ未成年の13歳ですね。その学園?が何歳から通うことが出来るのかは存じませんけど、成績優秀者として名を馳せること間違いないですわよ!」


この世界では15歳からは成人年齢であり、お酒が飲めるようになるのも15歳からなのだ。

成人すれば、冒険者でなくても、大人と同じように夜12時以降も外出が可能であり、完全に扱いは大人と同様だ。

ちなみに就学自体は10歳から可能なので、現在10歳のシェラも就学可能年齢なのだ。

おいそこ。ご都合主義とか言わない。


「二人とも、私より年上だったんだ…」


ちなみにシェラは知らないが、カリヤも15歳で年上であり、ディアは製造日からすると100歳くらい年が離れている事になる。

ただし、ディアの場合はシェラと会う直前まで眠っていたような状態なので、身体の成長は11歳くらいで停止していた状態だったらしいと本人が言っていた。

『私は今は13歳ですね。』

ティアラは本来なら少なくとも1500年以上生きている計算になるが、ティアラの種族の場合は成人する際に「死成長しせいちょう」が発生し、転生をするそうだが、記憶は引き継げないため、別の手段で記憶のバックアップを取る場合があるそうだ。

ティアラは記憶のバックアップを取ることを忘れていたせいで、根源の力の扱い方や制御のやり方を忘れてしまったようで、力を封印するための能力が備わっていたが、大賢者の記憶から力の制御方法を学んだおかげでとして覚醒したんだ。

ティアラの種族については謎が多く、大賢者の頭脳でもわからない事が多いんだ。

ちなみにティアラの種族の名称は転魔族アンカーネイトと呼ばれているが、正式な名称ではないため、俗称と言う扱いになっている。


私は気を取り直して言う。

「まあ、これからよろしくね!」

ハラミは笑顔で堂々と胸を張って言う。

「はーい!よろしくお願いします!」

少し遅れてユキが一瞬だけ目を丸くして言う。

「は、はい!よろしくお願いします!」

こうして、ユキとハラミと言う新しい家族が増えることとなったのである。
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