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現代の常識学

少女、倒れる。

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あれから3日間、しっかりと勉強と修行をした私を含めた4人が試験会場の「アーミア国立冒険者学園」に来ていた。

受付で受験番号等が書かれた紙を渡して、控え室の席に着く。

「た、たくさんヒトがいるね…」

カリヤが少し不安そうな声で言う。

チラッと見た限りでも数百人程度は居そうだった。

「私は筆記試験の復習をしときます。」

ティアラはそう言うと要点をまとめたオリジナルの筆記試験対策のノートを見返す。

「カリヤさん、一緒に頑張りましょうね!」

「う、うん!頑張る…!」

ディアの励ましにカリヤが気合を入れる。

「私は力加減に気をつけないとね…」

自分で言うのもなんだが、私はものすごく強い…

いや、チート級に最強だったね。

だから、ほとんど0に近いくらいの魔力に抑えないといけなかった。

『その結果が、私への魔力流入になるとは思いもしませんでしたけどね。まあ、私は力の扱い方についてはシェラ様よりも優れていますので、完璧にコントロールしているわけなのです。シェラ様にはカリヤさんを見習って欲しいものですね。』

ティアラがそんなボヤキを魔力で伝えてくる。

口に出さずに繋がりを利用するとは…なかなかやりおる。

『…ただ単に口で喋るのがめんどくさくてこうしているだけなんですけどね。それに学園生活では、無口なキャラで売り込みたいですし…』

学園デビューってやつですな。

私はいつでも自然体で居るのがラクだし、余計なことを気にしなくて済むから、自然体の方が良いと思うけど…

まあ、魔族のプライドみたいなものがあるのかな?

『強いて言うなら、そのようなものですね。なんとなく魔族としては他人と馴れ馴れしいのは…と考えてしまいます。もちろん、シェラ様やその近辺の方は別ですが、その他の人とはあまり仲良くしたいと思えないんですよね…』

なるほどね。

まあ、本来はティアラは私の中で過ごす予定だったもんね。

『カリヤさんがあのような事を仰られなければ、私もそのつもりでしたが、「ティアラさんも来るよね?」なんて瞳を潤ませながら言われちゃ、ノーとは言えませんよ。自分で言うのもアレですが、私は人間みたいな見た目通りにヒトに近い思考をしていますし、アレを断るなんて…うわっ…!なんかいる…』

ティアラが露骨に嫌がる相手と言えば、メイリーンだ。

メイリーンは普段のだらしなく「ぐへぐへ」言いながら鼻血を垂らしている姿とは真逆のキリッと引き締めた表情は如何にも堅物の真面目な教師に見える。

『実際はド変態犬畜生ですけどね。早くも後悔の念が出て来ましたよ。』

メイリーンに対するティアラの散々な言い方にはもはや笑いがこみ上げてくる。

カリヤは緊張しているのか、深呼吸を繰り返しながら、周りの様子を見ていた。

そして、「キーンコーンカーンコーン!」と学校と言えば、この音だよね!と誰もが共感するだろう音が聞こえると同時にメイリーンが試験室の扉の前に立つ。

「静粛に!」

メイリーンが言うと同時に一瞬で場が静まり、全員がメイリーンの方を向く。

「これより、第158回アーミア国立冒険者学園の入学試験を始める!」

メイリーンの声は歴戦の猛者の風格を感じさせる声だった。

「私は試験監督のメイリーンだ!」

そして、メイリーンは後ろの扉を開ける。

「お前たちにはこれから筆記試験を受けてもらう!ただし、試験会場への入室には条件がある!」

メイリーンはそう言うと周囲にゴーレムを5体召喚する。

「このゴーレムは魔力を検知すると襲いかかってくる仕組みだ。攻撃に当たれば、自動的に特別強化学部の会場からは退出となる為、お前たちはこのゴーレムたちの攻撃を避けて入室をしてもらう!もちろん、攻撃を避けれなかったものも通常の筆記試験は受けれるが、ここで脱落すれば二度と特別強化学部は受けられないので、全力で挑むように!では、中で待っているぞ。」

メイリーンがそう言って、中に入った瞬間、ゴーレムたちが一斉に動き始める。

私はほぼ0に近い魔力と身体強化による高速移動で難なく突破したが、私よりも早く3人の受験生が入室していたのには驚いた。

「ふぅ…なんとか来れました…」

私たちの後に5人入室した後にティアラが入室する。

「あ、危なかった…」

「意外と素早かったですね。」

その後にカリヤ、ディアが入室する。

そして、最後の一人が入室する頃には、あれだけいた受験生も40人ほどまで減っていた。

「それでは、各自、自由に席に着け!」

私たちはそれぞれがへ座る。

「これより筆記試験の説明を始める!」

メイリーンがそう言うと同時に魔法によって試験用紙が配られ、その横に羽根ペンの様な形のものが刺さる。

「ルールは簡単だ。その解答用紙を全て埋める。ただそれだけだ。」

メイリーンが言うと1枚の紙を取り出す。

「魔法を使えるものは魔法を使うことも許可するが…」

メイリーンが魔法で紙を燃やす。

「私がその瞬間を見た場合、解答用紙が焼き消え即失格となることは十分に心得ておくように!」

より一層の緊張感が場を支配する。

「それでは…始めっ!」

メイリーンの合図とともに全員が解答用紙を埋め始める。

「おわっちち!?」「うわー!」「うそ…燃えちゃった?!」

早速、聞こえただけでも3人が脱落したようだ。

用紙を埋めていく度に周りでは脱落者が出る。

そして、全員が解答用紙を埋めた頃には16人まで減っていた。

「そこまでっ!」

メイリーンがそう宣言するとともに振り上げた右手に私たちの解答用紙が吸い寄せられる。

メイリーンはそれを持って左指を「パチン!」と鳴らすとメイリーンの背後の壁の3等分した真ん中の部分だけ崩れる。

「さて…」

メイリーンが崩れた壁から左にズレて道を開ける。

「次は実技試験だ。試験監督も変わるので、私はここまでだ。」

メイリーンが言い終わると同時に私たち以外の全員が先に進む。

私たちも行こうとメイリーンの目の前を通った瞬間、メイリーンが言う。

「頑張ってね。」

その姿は優しく子供を見送る母のようであった。

私たちが実技試験の会場に着くと筋骨隆々の見上げるほどの巨漢が居た。

「マッスルマッスル!力こそ正義!鍛え上げられたこの肉体美が全て!」

気を抜けば吹き飛ばされそうなほどの大声が響く。

「お前たち!よくぞ!ここまで来た!俺の名はシルバ!お前たちの実技試験の試験監督だ!」

シルバの大きな声は発せられるだけでかなりの衝撃を感じるほどだった。

「この試験ではランダムで決められた4人のチームで戦ってもらう!そして、その中で残った者から順に俺と戦い、次に進む事になる!」

シルバは堂々と仁王立ちしながら言う。

「もちろん、お前たちが決着をつける前に俺を倒して進むことも可能だ。」

そして、シルバから白い球体が投げ飛ばされる。

それはまるで射出された砲弾のような威力で音速に近い速さだった。

取り損ねた6人が球体が当たったであろう場所から赤黒い液体を流して気絶していた。

すぐに医療班が、その6人を医務室に運び込む。

「まずは今渡した球体の番号を確認して集まってチームを組んでくれ。」

『渡したにしては、バカみたいな豪速球でしたけど…』

私は1番だった。

私と同じ1番は私を入れて3人だった。

1人はティアラ。

もう1人は少年だった。

「ボクは…2番…」

「私も2番です!」

カリヤとディアは2番で合計4人のチームだ。

3番は1人、4番は2人だったが、シルバの指示によって3番と4番は統合チームになった。

「それでは、実技試験開始!」

シルバがそう宣言すると同時にそれぞれのチームで距離をとる。

私は同じチームの少年を見る。

少年は筆記試験時に私よりも早く入室していた3人の1人だ。

「私はシェラよ。殴り合いも得意よ。」

少年が腰の剣を構えながら言う。

「俺はクレイだ!見ての通り剣士ソルジャーだぜ。」

「私はティアラです。殴り合いなら負けませんよ。」

ティアラは武闘家モンクの構えをする。

2番のチーム…カリヤたちが私たちのチームに近づく。

そして、私たちの目の前に少女がたってお辞儀をしながら言う。

こちらも筆記試験時に私よりも早く入室していた3人の1人だ。

「こちらは2番チーム。私はリーダーのスカーレットだ」

1番チームからはティアラが出る。

「こちらは1番チームです。私はティアラです。」

スカーレットはティアラを見て言う。

「これは…いや、用件だけ伝えよう。」

スカーレットは何かに気がついたような素振りを見せながらも続ける。

「私たち2番チームは君たち1番チームと手を組んで、シルバを倒そうと思うのだが…どうだろうか?」

すると3番チームがやってきて言う。

「おいおい。お前ら、なーに手を組もうとしちゃってんの。俺たちは敵同士でしょ!」

そう言って、スカーレットとティアラをガラの悪そうな真っ赤なモヒカンヘアーの少年が威圧するように睨む。

「シルバさんのルール説明にそのような文言は含まれておりません。よって、敵同士とは言いきれないですよ。」

ティアラは真っ直ぐとモヒカンヘアーの少年の目を見る。

「へっ!面白ぇ!そんなら、お前らをぶっ飛ばして俺たちが勝ち上がってやんよ!」

モヒカンヘアーがそう言って背中の金属の棍棒を構えるとこの世界では珍しい長い黒髪の黒い目の少女が髪の毛に魔力を纏わせ、金色に輝く短い髪の爽やかな雰囲気の少年が剣を構える。

金色に輝く髪の少年は筆記試験時に私よりも早く入室していた3人の1人だ。

ティアラが魔力を拳に纏わせて言う。

「シェラさんとクレイさんはシルバさんの方を頼みます。」

2番チームからカリヤと翡翠色の短めの髪とコバルトブルーの明るい瞳の中性的なボーイッシュな少女が銃のような武器…バレットを構えながらカリヤの後ろに立って3番チームの3人と対峙する。

「カリヤ、ディア、カナデ、そっちは頼んだよ!」

スカーレットが言うとカリヤとディアとコバルトブルーの瞳のカナデが頷く。

「それじゃ、私たちでシルバさんを倒しましょう!」

私がそう言うと同時にスカーレット、クレイの2人が応えて、シルバの前に立つ。

「マッスルマッスル!俺に直接挑もうとは良い心がけだ!だが、俺はそんな簡単にやられるほどヤワじゃないぜ!」

シルバが激しい闘気のオーラを放つ。

私は右手の掌を前に突き出して構える。

「大丈夫です。私は強いので!」

「俺だって死ぬ気でやって来てんだ!簡単に折れねぇよ!」

クレイが剣を構える。

「私も幼い頃からAランクの父とともにダンジョンで鍛えて来たし、負けないわ!」

スカーレットが槍を構える。

シルバの姿が消えたかと思った瞬間、私たち3人の中心に現れ、それぞれの不意を着く形で拳を振るう。

一番近くのクレイは直撃寸前で剣でガードして吹き飛ばされていた。

次に攻撃を受けたスカーレットは紙一重で避けた。

最後の私は右の拳を避けて反撃の右手の発勁をシルバの腹に叩き込むが、シルバの鋼よりも硬い肉の鎧にはあまり効果がないように感じる。

「良い一撃だ。だが、力が入っとらんな。」

ただの試験だと少し油断していた私はガードが間に合わず、シルバの追撃の左の拳をダイレクトに腹に受けてしまう。

私の軽い身体は大きく吹っ飛び、肺の空気が一瞬で外に出され、潰れた内蔵の血が喉を駆け上がり、口から出て行く。

「ガッ!」

そのまま地面に叩きつけられて、肋骨が折れたかのような感覚を感じる。

息を吸おうにもかなり苦しい。

「はぁ…はぁ…」

大量に血を失ったことで意識が朦朧とする。

(こんな…ところで…)

私の視界は黒に染まる。
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