元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ

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現代の常識学

機巧少女、憧れる。

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シェラの背後から飛びつく影に私は驚く。

「シェラ様?!」

思わずぶん殴りに行きそうになったが、シェラの雰囲気的に大丈夫だと判断したのは正解だった。

「カリヤ、ちょっと苦しいよ。」

「シェラさんが急にいなくなるのが悪いです!」

「それは…ごめん…」

カリヤと呼ばれた獣人は瞳を潤ませて言う。

「ブレイブスラッシュ!」

背後から斬り裂かれて背中に激痛が走る。

「いっ…このっ!」
「ディア?!」

私は激痛に意識を奪われそうになりながらも背後の相手をぶん殴る。

「ガッ!?」

青く長い髪の青年が吹っ飛ぶのが見えた。

青年はそのまま着地をすると身構える。

「シェラ様、ここは私に任せて逃げてください!」

私は背中に液体が伝うのを感じる。

「ダメよ!ディア!血が…」

私は背中の液体を触って手についたものを見る。

それは赤黒い液体だった。

「これが…血…生物に宿る魂の流れ…」

私はそこで自分が生物であるとようやく認識した。

そして、私には願いへの希望が見えた。

「そう…私は生きていたのね…」

私は目の前の虚ろな黄色い目をした青年を見る。

「シェラ、回復をお願いします。」

「ディア…無理は禁物よ。あくまで応急処置でしか無いからね!」

「もちろんです!」

私がそう答えると同時にシェラの魔力が私の身体を包み込む。

「穢れを断て!ファーストエイド!」

私の背中の傷が修復されて血が止まる。

「敵対勢力…否定の獣を排除します。」

青年は殺意を放ちながら、私に迫る。

私は機巧を変化させて、両手に刀を生成する。

「心眼剣居…」

私は迫る殺気に備える。

「排除します!ブレイブスラッ」「斬!」

私の右の刀の一撃が青年の剣を吹き飛ばす。

「一の太刀!一閃!」

さらに刃を逆にした左の刀の追撃で青年の腹を叩き、一瞬の隙ができたところに首筋に右の刀で峰打ちして気絶させる。

青年が倒れて動かなくなったのを確認する。

「ふぅ…なんとかなりました。」

私がそう言って青年を見ているとオルトティアーデが私の目の前に歩いて来て頭を下げる。

「ごめんなさい…私の力のせいで、彼の勇者の力が暴走してしまったみたいです…」

勇者の力は神による選定があって初めて成り立つもの。

それ故に神であるオルトティアーデの目の前で勇者である青年が神の力の影響を受けて暴走状態になるのも必然なのだと言う。

これに関しては青年が未熟だからでは無いとは思うとオルトティアーデは言っていた。

「シェラに怪我がなかったので、私は大丈夫です。今の私にとってはそれだけで十分です。」

カリヤとは別の獣人が龍人を抱えてやって来る。

「シェラちゃん、この子、私のうちで飼っても良いかしら?」

獣人は鼻血を垂らしながら興奮気味にそう言う。

「いや、それ私が非常食として飼う予定ですけど…」

シェラが言うと獣人は何かを閃いた様子で言う。

「ハッ!これは百合百合しぃ展開では?!ここで私が出来る事はこの百合を大切に育てる事だけ…ぐへ…ぐへへ…」

獣人は鼻血をドバドバ流しながら、気味の悪い表情をする。

『はぁ…この変態は…まあ、シェラ様に変態の視線が来ないだけマシですが…』

私はシェラに言う。

「シェラ、この方は…?」

「この人はメイリーンさんだよ。一応、今の私と同じランクの冒険者で私たちのパーティの一員よ。」

シェラは苦笑しながら言う。

『そして、あのメス犬は頭がおかしい変態です。なので、絶対に私の事は言わないでくださいね。言ったら、末代まで呪いますよ。』

ティアラは凄くメイリーンの事がとても苦手みたいだ。

まあ、聞かなくても数秒後には私もその理由を知る事になるが…

「ウッヒョー!ここは可愛い女の子が沢山いて脳汁止まんねぇなぁ…!ハァ…ハァ…テンション上がり過ぎて倒れそう…」

メイリーンは鼻息荒く、言葉通りに大興奮して言う。

「シェラ様…」

「それ以上は何も言わないで」

「…御意。」

私は隠れる事が出来るティアラの事をとても羨ましく思った。

これほど、自分が魔族でない事を呪った事は無いだろう。

『ディアさん…心中お察しします…』

あぁ…消えたい…と言うか、姿を消せるアイテムとか無いですかねぇ…

「あげましょうか?」

オルトティアーデが耳元で急にそんな事を言う。

「ヒョワ?!び、びっくりしました…」

音も無く近づくのはやめてほしいなぁ…

「それはすみません…」

オルトティアーデが謝る。

「…ん?心読んでません?」

「神ですので…」

「えぇ…」

私はオルトティアーデの発言に「なんでもありじゃないか」なんて思いながら、オルトティアーデから小さなブローチを受け取る。

「それにはがあります。有効活用出来ると思いますわよ。例えば…アレとかどうです?」

オルトティアーデは私に内緒話をするように機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナだと思われる巨大な機巧少女を見て言う。

「…なるほど。で試してみてと言うわけですね。」

私は巨大な機巧少女を意識してブローチに魔術回路を接続する。

すると突然強力な吸引力が働き、巨大な機巧少女を一瞬で収納する。

オルトティアーデは「うんうん」と首を縦に振りながら言う。

「今のは大き過ぎたので、あの様になりましたが、効能は完璧ですね。」

私はオルトティアーデから、イヤリングを受け取る。

「それには出る時用の魔術を仕込んでます。試されますか?」

私は光の速さで頷いてブローチを使う。

白い光が視界をぬりつぶす。



妙な浮遊感を感じて目を開ける。

暗い空間に自分が居るのを感じる。

私は目の前に巨大な機巧少女が居るのを見つける。

(これは…私が先程、収納したものですね。)

私は前に進もうと意識すると身体が前に進んだ。

(なるほど…ならば…)

私はこの性質を利用して、機巧少女の身体をあらゆる角度から見てみる。

(ふむふむ…やはり、接続用のアタッチメント機巧はありましたね。)

私は接続用のアタッチメント機巧のある部分を見る。

(場所はもっとどうにかならなかったのかと思いますけど…)

その場所はヒトで言う鼠径部と呼ばれる部位に近いところだった。

私は興味本位からアタッチメント機巧に入って、自身を機巧少女と同期出来るか試してみる。

『外部リンク完了…インストール開始…個体名ディア。ID検証…正常。ディア=オリジン、起動します。』

その音声が聞こえたと同時に私の身体がディア=オリジンになった感覚を得る。

基本動作は問題無く普段の私と同じだった。

感覚機能も同じだ。

強いて言うなら、胸が重いのと身体が大きい事による感覚や視点の違いくらいなものだろう。

私は動作チェックを終えて内部から出る。

ディア=オリジンは私が出たと同時に動かなくなった。

(しかし、傍から見るとかなり際どい姿ですね…大事な場所は隠れているとはいえ、谷間は完全に見えていますし、その下もほぼ全裸に近い姿です…ネイアード様から教わったもので言えば、ハイレグ水着と言った所でしょうか…ほとんど布(?)面積がないですね…これで外は歩けませんね。さすがに恥ずかし過ぎます。)

私はいつかこの機巧少女に見合う服を見繕おうと決めた。

(さて、そろそろ戻ってみましょうか)

私はイヤリングに魔術回路を接続する。



白い光が視界から消えると同時に目を開けると先程と同じ場所、同じ形で出たのを確認する。

「その様子だと上手く行ったみたいですね。」

オルトティアーデは嬉しそうに言う。

「なんか今、凄い光があったけど大丈夫?」

シェラが心配して私を見る。

「はい。問題ありません。」

私は笑顔で答える。

「それなら良いんだけど…」

シェラは心配そうに言いながらも帰還の用意を始める。

「あ、そうだ。ディアさん、先程のお詫びにこのスキルを差し上げます。」

オルトティアーデがそう言ってくれたのはのスキルだ。

「それにはさっきのアイテムに対応した能力を組み込んでいます。詳しくは…貴方なら、説明しなくてもすぐにわかりますわね。」

オルトティアーデはそう言うと優しく微笑む。

「あ、ずるーい!私も可愛い女神様の加護がほしいです~!」

メイリーンに見つかってしまった。

「アハハ!貴方にはもう既にでしょう?」

オルトティアーデが笑って言うとメイリーンはガックリと膝を着いて言う。

「あんなおっさんの加護より可愛い女の子の加護の方が良いよぉ…」

『はぁ…あんたもそのおっさんみたいな思考回路のくせによく言いますわ。』

ティアラはめちゃくちゃ辛辣な言葉を放っていたが、当然メイリーンに聞こえる事はなかった。

「そうだ…!」

私は憧れた夢の話をシェラにする。

「シェラ様、私、学校と言うものに行ってみたいです!たくさんの事を学べる場所だと聞いてますし、もっと見聞を広めてシェラ様のお役に立ちたいです!」

シェラは驚いた様に目を見開いていたが、すぐに優しげな表情になって言う。

「そうだね。これからの目的も無いし、順番が逆だけど、学校に行ってみようか!」

「シェラが行くなら、ボクも行く!」

『ディアさん、ナイスです!おかげであの変態から逃れる事が出来ます!』

しかし、ティアラはこの時知らなかった。

逃れる術は無いと言う事を…
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