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記憶の断片

獣耳、試験を受ける。

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~お知らせ~

前回、エール発言にミスがありました。

現在は修正済みですが、なかなかヤバいミスをしてしまったので、マジでごめんなさい…

お詫びにシャタルアちゃんに服をパージしてもらいます。

「なんでじゃ!ってうわああああ!」

とても良い破裂音が聞こえましたね。

しかし、どうしてでしょう。

私の服も吹き飛んだのですが…

「下着は無事じゃったな…まあ、人を呪わば穴二つってことじゃ。しっかり反省するんじゃな。」

…そうですね。今後、ミスが無いように気をつけないとです。

「我の新しい服も買うのじゃ。」

高くつきましたね…







「シェラさん、行ってきます!」

「気をつけて行っといで~」

あの後、ボクはシェラさんに初級の魔法と技能をいくつか習ったんだ。

あ、後ね、服と武器も買ったよ!

ボクはシェラさんと同じような服と鉄の剣を買ってもらったんだけど、鉄の剣は勢いよく振ったら粉々になったんだ。

シェラさんが「カリヤちゃん、すっごい!まさに空を斬る一撃だよ!」とか言って大興奮って感じだったのを記憶してる。

シャタルアさんは「あれ?これヤバいやつじゃ…」みたいな事を呟いてた。

「くあ~…面倒じゃのう…」

隣で大きなあくびをしているのはシャタルアさん。

シャタルアさんはボクのテイムしたモンスター扱いになってるらしい。

シェラさんが言うには魔族もヒトではあるんだけど、ヒトの国では魔族はモンスター扱いなんだそう。

ギルドも同様で魔族はヒトと認められていないため、しばしば奴隷のような扱いを受ける魔族がいるんだとか…

エールさんは奴隷扱いに関しては「俺は厳しく取り締まってるぜ。」って言ってたっけ?

奴隷扱いなんて許せないけど、今のヒトの国はそうなってるからどうしようもないんだって…

「お~い、カリヤ~」

気がつくとシャタルアが結構先で手を振っていた。

「はーい!」

ボクは考え事はやめて目の前の試験に合格する事を考えていた。

そして、目的のダンジョンがある洞窟の前に着くと2人のヒトがいた。

「ん?お嬢ちゃん、こんなところで何をしてるんだい?」

とても綺麗な黒髪黒目の長い髪の女性が話しかけてくる。

珍しいなぁ…じゃなくて!

「えっと…ボク、試験を受けに来てて…」

ボクがそう言うと顔が犬のゴールデンの毛色のムッキムキの獣人がやってくる。

「あん?試験を受けに来たって…オメェ、ガキンチョじゃねぇか…知らねぇとは思うけど、冒険者ってのはな、14歳で学校に行って、早くても16歳からなれるってもんなんだぜ?オメェ、見た感じ10歳前後だし、試験を受けるにはまだはえぇだろうよい。」

声からして男性の獣人が呆れた様子で言う。

「そうなの?シェラさんも冒険者になるには実力だけで良いって言ってたんだけど…」

ボクがそう言うと獣人の男性は驚いた様子で言う。

「オメェ、あのやべぇのと知り合いなのか?」

ボクが首を傾げているとダンジョンの前に着くまでにボクのしていたシャタルアが言う。

『多分、シェラの事じゃろうな。』

「ああ、シェラさんのことか…」

シャタルアさんがボクの身体の中に収納されているのには、わけがあって、シャタルアさんがいると魔王を連れているのがバレて大騒ぎになる可能性があるんだって。

シャタルアさんの様な魔王と呼ばれる魔族はとても恐れられている存在だから、外ではこうした方が良いってシェラさんも言ってたんだ。

ボクがギルドに行った時はシェラさんの認識阻害魔法でシャタルアさんを隠していたから良かったらしい。

エールさんには通用しなかったのは、とても驚いたとシェラさんも言ってたっけ?

ボクにはよくわからないけど、今の状態でもシャタルアさんはボクの身体の中から魔法を使えるし、全方位を見れるから安全なんだって。

それとボクの視界を通じて外の世界を見れるから、その点においても退屈しないように出来てるみたい。

魔族って不思議だね。

ちなみに今のシャタルアさんの声はボクとシェラさん以外には聞こえないんだ。

「ま、アレの知り合いなら常識知らずでも無理はねぇか。」

男性はそう言うとダンジョンの入口を開ける。

なんかすっごい悪口を言われた気がしたけど、ボクは気にしないでおく。

いや、ちょっとムカッとしたから、コケる魔法を…って、使えないんだった。

『カリヤでも、ムカつく事はあるんじゃな。』

シャタルアさんにもすんごい失礼なこと言われたんだけど…

ボクだって、ヒトなんだから、当たり前だよね?

女性とともにダンジョンの中に入ると男性が「荷物」と言う。

その瞬間、男性の中から銀髪の長い髪の紅い目の魔族の少女が飛び出してきて男性と女性に剣を渡す。

『テイムしてるにしては、あやつの目に違和感があるな…』

シャタルアが不穏な言葉を吐くが、とりあえずは気にしないようにする。

そして、目的のウルフを見つける。

「先手必勝!閃光連撃せんこうれんげき!」

ボクは一瞬すらも遅く感じるほどの速さでウルフの目の前に移動し、一瞬怯んだ隙にインファイトによる連撃を仕掛ける。

何をされたのかわからないままウルフは倒れて霧散する。

「お、やるねぇ!」

女性は嬉しそうに言うが、男性の方は「くわぁ~」と大きな欠伸をしていた。

そして、魔石を回収して次へ向かい、見つけたら倒す。

これを繰り返して最後の一体を仕留めた後だった。

「ようやく終わったか?」

銀髪の少女を椅子にして座っている男性が言う。

ボクは一瞬少女と目が合う。

その目は憎しみと深い絶望の中に見つけた一筋の光を見てるような目だった。

『カリヤ、少し暴れても良いか?』

シャタルアが怒りの声を上げる。

(確かにダンジョンの中ならモンスターも多いし、殺るなら今しか無いけど…)

『わかっておる。余計な殺生はしない。殺すのはあの男だけじゃ。アイツがやってるのはテイムと言う名の奴隷化じゃ。我が殺せばカリヤが殺った証拠は無くなるからな。』

(それなら、殺しちゃおう。シャタルアさん、行って!)

『任せろ!』

シャタルアはボクから離れたところから現れる。

「愚かなるヒトよ…その魔族の娘を解放しろ…さもなくば…」

二人が気づいて驚いた様子で振り返る。

「死ぬが良い!」

女性の方は武器を手に取る間もなく一瞬で意識を奪われ、気絶させられて倒れた。

男性の方は魔法の糸で体を拘束されていた。

ボクの目にはその動きが見えた。

猫の目にはそれはとてもよく見える。

その全てが恐ろしく手際が良かった。

女性の方は寸分の狂いもなく、魔力を纏った手刀で一撃で気絶させ、男性の方は魔法で糸を作りながら、それを縄にして身動きが完全に出来ないように縛られていた。

「問おう。貴様はなんの権限があってあの扱いをしている。」

シャタルアが怒りの声で言う。

「うるせぇ!魔族はヒトじゃねぇんだ!自分のモノをどう扱おうが俺の勝手だろ!」

男性はそう言って大騒ぎする。

「そうか。」

シャタルアはそう言うと右手に魔力を纏わせて男性の心臓から何かを取り出す。

「なんだその鎖…いや、まさか!」

シャタルアはニヤリと笑う。

「娘よ。自由になりたいか?」

シャタルアが言うと少女は感情の無い声で「はい。」と言う。

「よろしい。ならば、この契約は無かったことにしよう。」

シャタルアは鎖を引きちぎる。

「んな?!テメッ!何を…」

引きちぎった鎖は消滅した。

「契約が解消された。代償は支払われなければならない…」

シャタルアが少女に言う。

「汝に問う。汝の命とやつの命、どちらを差し出す?」

「テメェ…!」

男性が少女を睨むが少女は突きつけるように指をさして憎しみを込めた声で言う。

「これの命を出します。」

「よい。」

消滅した鎖が再びシャタルアの右手に現れる。

「テメェ!主である俺に楯突いて生きて帰れると思うなよっ!」

シャタルアが鎖を男性の心臓に容れて言う。

「魔族との契約は信頼関係あってのものじゃ。貴様のような恐怖で支配するような関係は契約とは言わぬ。それは貴様らにテイムと呼ばれる契約においても同様。契約を違えたものは代償を払わねばならない。」

シャタルアが男性の中から手を抜くと男性が苦しみ始める。

「あが…が…あがががががが…タ…スケ…」

ボクの視界と聴覚はシャタルアさんの魔法によって閉じられた。

『すまんな。カリヤにはちときつかろうと思うてな…』

少しして、何かが弾けたような感覚を感じると同時に視界と聴覚が元に戻る。

周囲にはが飛び散っていた。

「終わったのじゃ。」

少女がシャタルアに言う。

「お姉様、ありがとうございます。貴方様のおかげでわたくしは憎きあの男から解放されました。貴方様になら、我が命を捧げられます。どうか、私めと契約してくださいませんか?」

少女が丁寧にお辞儀をしながら言う。

「そうしてやりたいのは山々じゃが、我はカリヤ…そこの獣人と契約しておるのじゃ。」

シャタルアがそう言うとそれまで無表情だった少女は「ガーン!」と音が聞こえそうな表情をする。

「そ…んな…」

シャタルアはガックリと膝をつく少女に言う。

「じゃが、お主にピッタリな相手なら我も知っておるぞ。お主もそやつを見ればわかるはずじゃ。」

少女は不思議そうに首を傾げながらシャタルアを見る。

「さってと…久々に権限を使ったから疲れたのじゃ…脱出デジョンは我の魔力で出来るから、適当に自分たちで戻ってくるのじゃぞ。」

シャタルアはそう言うとボクの中に帰る。

「帰っちゃったね…」

「そうですね。」

しばらくの沈黙が訪れる。

「…ボクたちも帰ろうか。」

カリヤの言葉に少女も頷いて気を失っている女性と共にダンジョンの入口まで脱出する。

そして、女性が気がついてギルドに帰る頃にはシャタルアも元気になったようで、ボクの頭の中で男性が死んだ理由とボクたちだけが帰ってこれた理由を話す。

若干無理矢理なところもあったが、受付の男性が納得してくれたので良かった。

その後、ボクはDのギルドカードとパーティ加入申請書を渡されて使い方とか見方の説明、ランク制度の説明などを聞いた。

Cランク以上の階級は各ギルド長のギルド会議によって決める必要があるため、時間がかかって良くないからと受付経由でエールさんが言っていたらしい。

ただし、ランクアップ試験の時は合格の場合は試験終了後にランクアップ手続きをすれば大丈夫なんだそう。

諸々の説明を聞いて帰ってきた頃にはすっかり夜だった。

「ただいま~」

「ただいまなのじゃ!」

ボクが扉を開けた瞬間にシャタルアも出て来て帰りの挨拶をする。

「おかえり~!」

シェラがエプロン姿で出迎える。

シェラさんにとっても似合ってて可愛い…

シェラが少女に気がつく。

「あれ?見ない子だ~!魔族の子かな?」

シェラがそう言うと少女がほんの一瞬ビクッとする。

「アレイアちゃん、後で説明よろ。」

シェラは何かを察した様子で言う。

「うむ。我も話さないといけないと思っていたところじゃ。」

そして、シェラは自分の分を少女にあげて言う。

「さ、お食べ。私の事は気にしないでいいよ。」

「あの…ありがとうございます!」

少女が頭を下げる。

「あはは!どういたしまして!たくさん食べてうんと大きくなってね!」

シェラがそう言うとシャタルアが勢いよくツッコむ。

「アンタはオカンかっ!」

「失礼な!お姉さんとお呼び!」

「無茶苦茶じゃろ…」

「くふふ…」

2人のやり取りに少女が思わず笑う。

「す、すみません…お二人があまりに面白いやり取りをされていたのでつい…」

「あはは!君もここが自分の家みたいに思ってくれていいからね!」

シェラは「キラッ☆」と音が聞こえるドヤ顔をする。

「そして、こやつの事はオカン、我の事はお姉様だと思うのじゃぞ。」

「いや、逆でしょ…」

シェラが呆れた様子で言う。

「中身は?」

「天才万能大賢者とポンコツチビッ子魔王ですね。」

「おい!昔の我基準で言うんじゃない!今はポンコツなんかじゃないぞ!多分…」

「床のシミ…」

「ああああああああぁぁぁ!聞こえない聞こえない何も聞こえなーい!」

そんな感じで賑やかに夕食が終わる。

シェラさんとボクで片付けた後で椅子に座る。

「うっし。じゃあ、その子について簡単に説明よろしく!」

シェラがシャタルアに言う。

「カリヤの担当の試験管が契約していた。契約者に奴隷にされていたのを助けた。シェラと契約させたい。以上。」

「ほんとに簡単だね…まあ、わかったから良いけどさ。」

シェラはそれだけ言うと少女を見る。

「君はどうしたい?」

少女はほんの少しの迷いも見せずに言う。

「私はシェラ様と契約したいです。シャタルア様がそう仰られたからと言うのもありますが、お二人のやり取りを見てて、シェラ様は優しいお方だと認識しました。先程、シャタルア様が仰られたように劣悪な扱いを受けてましたので…」

少女は後半は少し声が小さかったが、シェラが理解するには十分だった。

「わかった。それじゃ、で契約を結ぼうか。」

ティアラと名づけられた少女は嬉しそうに声を上ずらせながら言う。

「はい…よろしくお願いします。シェラ様、私…貴方様のために精一杯頑張りますわ!」

「あはは!そんなかしこまらなくても良いよ!これからは私の仲間としてよろしくするんだからさ。」

「シェラ様は本当にお優しい方です…」

シェラが笑うと少女…もとい、ティアラも嬉しそうに微笑んだ。
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