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記憶の断片
少女、勧誘される。
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エールは倒れているブァレスにギョッとしながら、大興奮しているメイリーンと抱きしめられている私の元に来る。
その後からカリヤとシャタルアが私の傍に来る。
「お、シェラじゃねぇか!ちょうど良かった!お前さんのランクの件についてだがな…とその前にあれはなんだ?」
エールが倒れているブァレスを見て言う。
「いつものやつをシェラさんが止めてくれたんです!シェラさん、強化魔法以外何も使わないで倒しちゃったんですよ!もうほんっとに強くて!ギルド長、私、冒険者復帰します!そして、この子のパーティになります!」
大興奮のメイリーンにエールが言う。
「待て待て。急展開過ぎるぞ。んで、まずはあれはシェラがやって、メイリーンは冒険者の復帰とシェラをパーティに入れたいと?」
「だいたいそんな感じですね。私はカリヤ…この獣人の子ですね。この子の適性検査を受けに来たんですよ。」
私がメイリーンに抱きしめられたまま言うとエールが「なるほどな」とカリヤを見る。
カリヤは一瞬ビクッと体を震わせていた。
「まずははじめましてだな。俺はこのギルドのギルド長のエールだ。よろしくな。」
エールが人懐っこい笑みを浮かべながら右手を出すと緊張している様子のカリヤは一瞬私を見て安心した表情をして言う。
「ボクはカリヤ…よ、よろしく!」
エールは続けてシャタルアの方を見る。
「あんたは…?」
エールの雰囲気がほんの僅かに変わった事でエールがシャタルアを人間では無いと認識したと感じる。
「我…じゃなくて、私はまお…シェラのお供のシャタルア…じゃなくて、シャルじゃよ。」
シャタルアは偽名を名乗っているが、バレバレだった。
エールはニヤリと笑って言う。
「そうか。シャタルアって言うのか。」
「んな?!」
シャタルアが驚いた表情をしていた。
「どうしよう…我の本名バレてしまったのじゃ。このままじゃ、我が魔王だって知られちゃう…い、いや、まだ…同性同名って事に…」
「同性同名作戦を練るのは良いが、全部言っちゃダメだろうよ。」
エールが呆れた様子で言うとシャタルアは一瞬変身魔法が解けかけながら驚いた表情で言う。
「え?なんでバレておるのじゃ?!」
「全部言ってるぞ。」
エールが言うとシャタルアが私を見る。
「何もやってないよ。」
シャタルアは驚いた表情で震えていた。
「ま、そう身構えんな。俺はシェラのお供なら、歓迎するぜ。ついでにタッパのデカい女は好きだからな。」
シャタルアはエールの言葉と視線に顔を赤くしながらも自慢げに胸を張る。
私へのアピールだなアレは…
あ、こら!チラッと私の胸を見るな!
前世よりはあるだろ!
エールはその様子を見て笑いながらカリヤに言う。
「さて、無駄話はこれくらいにしてついてきな。」
カリヤが私の顔を見るので頷くとカリヤは尻尾をピンと立てて一瞬嬉しそうに笑ってエールについて行く。
少ししてガックリと肩を落としたカリヤと共にエールが戻ってくる。
「カリヤ?」
私が言うとカリヤはしょんぼりしたまま言う。
「魔力…無かった…魔法…使えない…うぅ…」
そんなカリヤの様子を見ながら、少しだけ言いづらそうにエールが言う。
「カリヤの適性は武術家だな。こっちは魔闘士と違い、マジで己の肉体だけが頼りになる職業だ。シェラも本来は魔法とは縁のない盾騎士が適性だし、そう気を落とす事は無いと思うぜ。」
エールが最後に励ましの言葉を言うとカリヤはほんの少しだけ元気を取り戻した様子だった。
「ま、私が居るから、カリヤも中級魔法くらいなら、軽く使えるようになるよ!無理なら、新しい魔法を開発すればいいしね。」
私が笑ってカリヤにそう言うとエールは頭を抑えながら言う。
「サラッと新しい魔法を開発しようとしないでくれよ…まあ、出来たら報告はしてくれよな。」
「当然ですわっ!私、こう言った魔法開発とか研究が大好きなんで、バンバン開発しちゃいますからね!」
私が胸を張って言うとシャタルアが勢いよく反応する。
「いや、ほどほどにせんかいっ!」
ビシッと音が聞こえそうな見事なツッコミにエールが思わず吹き出していた。
カリヤは何故かすっごい引いた目でエールを見ていた。
「あ、そうそう。シェラのクラスの件だが、満場一致でAランクだったぞ。」
エールはあっさりとそんな事を言う。
「…ん?聞き間違えたかな…今、Aランクって聞こえたような…」
「聞き間違えでも無ければ、言い間違えでもないぞ。満場一致でAランクだ。Sランクにはさすがにならなかったが、実績が出来ればSランクも目の前だな。」
「よ~し!シェラちゃん、これから私たち4人で頑張りましょうね!」
いつの間にか防具を取りに行ってたメイリーンが戻ってくる。
「待て待て!お前には受付嬢の仕事があるだろ!」
エールが食い気味に反応するとメイリーンの目つきと声音が変わる。
「よし!エール、私と決闘しろ!豪傑の女鬼の力見せてやるぜ!」
「エールさんとメイリーンさんの決闘だなんて面白そうな事になりましたね!よっ!ギルド長、その実力見せてくださいませ!」
私がわざと大声で言うと周りの野次馬たちも「ここで逃げたら、冒険者の名が廃るぜ!」とか言って煽っていた。
「わかった!わかったから!決闘場で戦うから!」
少しして武装したエールとメイリーンが決闘場の舞台に上がる。
「私が勝てばシェラちゃんとパーティ組みますからね!」
メイリーンが声高らかに宣言する。
「じゃあ、負けたら受付嬢で良いな?」
「もちろん、私は負けないので、それで大丈夫です!」
メイリーンは食い気味にエールに言う。
審判が審判台に上がって言う。
「それでは、ただいまより豪傑の女鬼:メイリーン・アリアンティールと開進の狂戦士:エール・グライド=グランディーテの試合を始めます!両者とも所定の位置に着いてください。」
二人は所定の位置に立つ。
「それでは…試合開始ぃぃぃぃぃぃぃ!」
戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、一瞬でエールの前まで移動したメイリーンの左の拳をエールが大斧の柄で受け流して、反撃の横薙ぎをメイリーンがバックステップで避ける。
『うおおおおお!!!』
開始早々から繰り広げられる戦いに観客たちは大盛り上がりだ。
「はぁぁぁああああ!ウォークライ!」
メイリーンの身体強化技能でメイリーンの力強さが増す。
「うおおおおお!!!ウォークライ!」
エールも同様に身体強化技能で力強さに拍車がかかる。
「行くぞ!絶空斬!」
エールが振り上げた大斧から風の刃が無数に発生し、メイリーンに向かって侵攻する。
「アースクエイク!」
メイリーンが勢いよく地面に拳を叩きつけるとメイリーンの目の前の大地が盛り上がって風の刃を弾き飛ばす。
「ショット!」
メイリーンの拳が盛り上がった大地に叩きつけられると同時に粉砕した大地の瓦礫が凄まじい勢いでエールに向かって無数に飛んで行く。
「うがっ!グッ!このっ!」
エールはギリギリのところで全ての瓦礫を叩き斬るが細かな破片がエールの肉を割いていた。
「だいぶボロボロになっちまったな…」
エールが特に傷の多い右腕を見る。
「あはは!でも、良いウォーミングアップにはなったんじゃありません?」
鬼神のような笑みを浮かべながらメイリーンが言う。
「そうだな…ここからが本番だ!」
そう言うと二人はとてつもない速さで飛び上がると凄まじい空中戦を繰り広げ始め、メイリーンがエールに叩き落とされると同時にエールの追撃がメイリーンに襲いかかるがメイリーンはそれを紙一重で避けて反撃の拳をエールの腹にぶちこむ。
「ガッ!負けるかよぉ!」
エールは腹に拳をぶちこまれて全身の傷跡から血を流しながらも大斧の刃を縦にして、そのまま勢いよく鈍器のように横に振ってメイリーンを叩き飛ばす。
「グッ…さすがギルド長…やるわね…」
叩き飛ばされた先で左腕が力なく垂れたメイリーンが言う。
おそらく、肩の骨が折れて腕に力が入らないのだろう。
顔以外全身が血まみれで肩で息をしているエールが言う。
「メイリーンも良くやるじゃねぇか。とても前線から身を引いてた身とは思えないくらいだ。」
「あはは…これでも豪傑の女鬼と呼ばれた身ですからね。」
メイリーンが構えると同時にエールも構える。
「じゃ、これで決めましょうか!」
「叩き落としてやるぜ!」
二人が同時に地を蹴って、先にメイリーンの拳がエールの鳩尾を突き、エールを直撃寸前だった大斧ごと吹き飛ばす。
エールが片膝をついて手を上げると同時に審判の「勝負あり!」の声が響く。
「勝者!豪傑の女鬼:メイリーン・アリアンティール!」
それまで静かだった会場が大盛り上がりになる。
「シェラちゃーん!やりましたよ~!愛の力の勝利で~す!」
メイリーンが観客席の私に投げキッスをしながら言う。
その熱烈な視線には周囲の男たちも勘違い出来なかった。
「…あれ、ヤバい目をしてないか?」
シャタルアがボソッと引いた目で言う。
「かっこいい…」
カリヤはカリヤでなんかめっちゃ感動していた。
こうして、無事(?)にメイリーンはパーティに参加する事となったのである。
舞台の上で二人が握手をする。
「メイリーン、冒険者の復帰おめでとう!これから頑張れよ!」
エールはニカッと笑う。
「エールさん、ありがとうございます!今まで受付嬢として共に仕事出来て楽しかったです!」
「だっはは!ギルド長としては優秀な受付嬢のお前さんが居なくなるのはつれぇけど、今度は冒険者としてやっていけるからな!今後は冒険者としてよろしくな!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
メイリーンとエールが舞台から降りると閉幕の義をして、皆が決闘場から出て行く。
私たちも出て、ギルドの中で待っていると着ているものの消耗具合を見なければ、先程まで戦っていたとは思えないくらい綺麗に傷跡の治った二人がやってくる。
「シェラちゃん、これから一緒にたっくさん、冒険しようね!」
メイリーンが嬉しそうに尻尾を振って言う。
「そうですね。これからは仲間としてよろしくお願いします!」
「はーい!こちらこそよろしくね!」
カリヤとシャタルアも同じようによろしくと挨拶をし終えるとエールが言う。
「そいじゃ、お前らのパーティ加入を…とその前にカリヤは先に試練を受けてからパーティ加入の書類を書けるようになるから、まずはシェラとメイリーンの申請書を提出してくれ。詳しくはメイリーンが知っているはずだから、メイリーンの指示でやってくれ。」
シャタルアの目の前で内緒話をするようにエールが小声で言う。
「一応、お前さんは魔族だから、書類上はテイムされたものとして登録するぜ。」
「まあ、それが妥当じゃろうな。契約者については言った方が良いかの?」
「そうだな…出来ればで良いぜ。」
「それなら、我は後でカリヤと共に来るでな。」
シャタルアは少しボカシたように言う。
「カリヤと共に…だな。わかったぜ。」
エールはそう言うとメイリーンとカリヤに書類を渡す。
「えっと…ボクは冒険者にはなるつもりないんだけど…」
「そうなのか?それだとこの国から出る時にめちゃくちゃ面倒な手続きしないといけなくなるぞ?最悪、シェラと離れ離れになる可能性もあるから、冒険者になった方がいいと思うが…」
「…やっぱり、ボクも冒険者になる。」
メイリーンは書類を見ながら言う。
「エール、この書類間違ってますよ。私たちはエールのパーティの風来坊に加入するわけでは無いのだけれど…」
「ん?間違ってないぞ?冒険者としてよろしくって言っただろ?」
エールは当然の事のように言う。
「え、普通に嫌ですけど。ね?シェラちゃんもそう思うでしょ?」
メイリーンはとても嫌そうにしていた。
「私はシェテラエンデ様の家に行けるなら、なんでもいいです。」
私がそう言うとエールはニヤリと笑う。
「うっし、決まりだな。それにこうした方が俺の指示で行ける様になるからな。手続きも楽勝で一石二鳥、俺たちは新たな仲間に戦力アップでウィン・ウィンの関係ってわけだ。」
メイリーンは「はぁ…」とため息をついていた。
「えっと…ウルフ4体の討伐が目的…なんだよね?」
「そのようじゃな。我がおるから心配無用じゃよ。」
「よーし…ボクも頑張るぞー!」
カリヤはシャタルアと一緒に試験内容を見て気合を入れていた。
※修正点があったので、修正しました。※
その後からカリヤとシャタルアが私の傍に来る。
「お、シェラじゃねぇか!ちょうど良かった!お前さんのランクの件についてだがな…とその前にあれはなんだ?」
エールが倒れているブァレスを見て言う。
「いつものやつをシェラさんが止めてくれたんです!シェラさん、強化魔法以外何も使わないで倒しちゃったんですよ!もうほんっとに強くて!ギルド長、私、冒険者復帰します!そして、この子のパーティになります!」
大興奮のメイリーンにエールが言う。
「待て待て。急展開過ぎるぞ。んで、まずはあれはシェラがやって、メイリーンは冒険者の復帰とシェラをパーティに入れたいと?」
「だいたいそんな感じですね。私はカリヤ…この獣人の子ですね。この子の適性検査を受けに来たんですよ。」
私がメイリーンに抱きしめられたまま言うとエールが「なるほどな」とカリヤを見る。
カリヤは一瞬ビクッと体を震わせていた。
「まずははじめましてだな。俺はこのギルドのギルド長のエールだ。よろしくな。」
エールが人懐っこい笑みを浮かべながら右手を出すと緊張している様子のカリヤは一瞬私を見て安心した表情をして言う。
「ボクはカリヤ…よ、よろしく!」
エールは続けてシャタルアの方を見る。
「あんたは…?」
エールの雰囲気がほんの僅かに変わった事でエールがシャタルアを人間では無いと認識したと感じる。
「我…じゃなくて、私はまお…シェラのお供のシャタルア…じゃなくて、シャルじゃよ。」
シャタルアは偽名を名乗っているが、バレバレだった。
エールはニヤリと笑って言う。
「そうか。シャタルアって言うのか。」
「んな?!」
シャタルアが驚いた表情をしていた。
「どうしよう…我の本名バレてしまったのじゃ。このままじゃ、我が魔王だって知られちゃう…い、いや、まだ…同性同名って事に…」
「同性同名作戦を練るのは良いが、全部言っちゃダメだろうよ。」
エールが呆れた様子で言うとシャタルアは一瞬変身魔法が解けかけながら驚いた表情で言う。
「え?なんでバレておるのじゃ?!」
「全部言ってるぞ。」
エールが言うとシャタルアが私を見る。
「何もやってないよ。」
シャタルアは驚いた表情で震えていた。
「ま、そう身構えんな。俺はシェラのお供なら、歓迎するぜ。ついでにタッパのデカい女は好きだからな。」
シャタルアはエールの言葉と視線に顔を赤くしながらも自慢げに胸を張る。
私へのアピールだなアレは…
あ、こら!チラッと私の胸を見るな!
前世よりはあるだろ!
エールはその様子を見て笑いながらカリヤに言う。
「さて、無駄話はこれくらいにしてついてきな。」
カリヤが私の顔を見るので頷くとカリヤは尻尾をピンと立てて一瞬嬉しそうに笑ってエールについて行く。
少ししてガックリと肩を落としたカリヤと共にエールが戻ってくる。
「カリヤ?」
私が言うとカリヤはしょんぼりしたまま言う。
「魔力…無かった…魔法…使えない…うぅ…」
そんなカリヤの様子を見ながら、少しだけ言いづらそうにエールが言う。
「カリヤの適性は武術家だな。こっちは魔闘士と違い、マジで己の肉体だけが頼りになる職業だ。シェラも本来は魔法とは縁のない盾騎士が適性だし、そう気を落とす事は無いと思うぜ。」
エールが最後に励ましの言葉を言うとカリヤはほんの少しだけ元気を取り戻した様子だった。
「ま、私が居るから、カリヤも中級魔法くらいなら、軽く使えるようになるよ!無理なら、新しい魔法を開発すればいいしね。」
私が笑ってカリヤにそう言うとエールは頭を抑えながら言う。
「サラッと新しい魔法を開発しようとしないでくれよ…まあ、出来たら報告はしてくれよな。」
「当然ですわっ!私、こう言った魔法開発とか研究が大好きなんで、バンバン開発しちゃいますからね!」
私が胸を張って言うとシャタルアが勢いよく反応する。
「いや、ほどほどにせんかいっ!」
ビシッと音が聞こえそうな見事なツッコミにエールが思わず吹き出していた。
カリヤは何故かすっごい引いた目でエールを見ていた。
「あ、そうそう。シェラのクラスの件だが、満場一致でAランクだったぞ。」
エールはあっさりとそんな事を言う。
「…ん?聞き間違えたかな…今、Aランクって聞こえたような…」
「聞き間違えでも無ければ、言い間違えでもないぞ。満場一致でAランクだ。Sランクにはさすがにならなかったが、実績が出来ればSランクも目の前だな。」
「よ~し!シェラちゃん、これから私たち4人で頑張りましょうね!」
いつの間にか防具を取りに行ってたメイリーンが戻ってくる。
「待て待て!お前には受付嬢の仕事があるだろ!」
エールが食い気味に反応するとメイリーンの目つきと声音が変わる。
「よし!エール、私と決闘しろ!豪傑の女鬼の力見せてやるぜ!」
「エールさんとメイリーンさんの決闘だなんて面白そうな事になりましたね!よっ!ギルド長、その実力見せてくださいませ!」
私がわざと大声で言うと周りの野次馬たちも「ここで逃げたら、冒険者の名が廃るぜ!」とか言って煽っていた。
「わかった!わかったから!決闘場で戦うから!」
少しして武装したエールとメイリーンが決闘場の舞台に上がる。
「私が勝てばシェラちゃんとパーティ組みますからね!」
メイリーンが声高らかに宣言する。
「じゃあ、負けたら受付嬢で良いな?」
「もちろん、私は負けないので、それで大丈夫です!」
メイリーンは食い気味にエールに言う。
審判が審判台に上がって言う。
「それでは、ただいまより豪傑の女鬼:メイリーン・アリアンティールと開進の狂戦士:エール・グライド=グランディーテの試合を始めます!両者とも所定の位置に着いてください。」
二人は所定の位置に立つ。
「それでは…試合開始ぃぃぃぃぃぃぃ!」
戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、一瞬でエールの前まで移動したメイリーンの左の拳をエールが大斧の柄で受け流して、反撃の横薙ぎをメイリーンがバックステップで避ける。
『うおおおおお!!!』
開始早々から繰り広げられる戦いに観客たちは大盛り上がりだ。
「はぁぁぁああああ!ウォークライ!」
メイリーンの身体強化技能でメイリーンの力強さが増す。
「うおおおおお!!!ウォークライ!」
エールも同様に身体強化技能で力強さに拍車がかかる。
「行くぞ!絶空斬!」
エールが振り上げた大斧から風の刃が無数に発生し、メイリーンに向かって侵攻する。
「アースクエイク!」
メイリーンが勢いよく地面に拳を叩きつけるとメイリーンの目の前の大地が盛り上がって風の刃を弾き飛ばす。
「ショット!」
メイリーンの拳が盛り上がった大地に叩きつけられると同時に粉砕した大地の瓦礫が凄まじい勢いでエールに向かって無数に飛んで行く。
「うがっ!グッ!このっ!」
エールはギリギリのところで全ての瓦礫を叩き斬るが細かな破片がエールの肉を割いていた。
「だいぶボロボロになっちまったな…」
エールが特に傷の多い右腕を見る。
「あはは!でも、良いウォーミングアップにはなったんじゃありません?」
鬼神のような笑みを浮かべながらメイリーンが言う。
「そうだな…ここからが本番だ!」
そう言うと二人はとてつもない速さで飛び上がると凄まじい空中戦を繰り広げ始め、メイリーンがエールに叩き落とされると同時にエールの追撃がメイリーンに襲いかかるがメイリーンはそれを紙一重で避けて反撃の拳をエールの腹にぶちこむ。
「ガッ!負けるかよぉ!」
エールは腹に拳をぶちこまれて全身の傷跡から血を流しながらも大斧の刃を縦にして、そのまま勢いよく鈍器のように横に振ってメイリーンを叩き飛ばす。
「グッ…さすがギルド長…やるわね…」
叩き飛ばされた先で左腕が力なく垂れたメイリーンが言う。
おそらく、肩の骨が折れて腕に力が入らないのだろう。
顔以外全身が血まみれで肩で息をしているエールが言う。
「メイリーンも良くやるじゃねぇか。とても前線から身を引いてた身とは思えないくらいだ。」
「あはは…これでも豪傑の女鬼と呼ばれた身ですからね。」
メイリーンが構えると同時にエールも構える。
「じゃ、これで決めましょうか!」
「叩き落としてやるぜ!」
二人が同時に地を蹴って、先にメイリーンの拳がエールの鳩尾を突き、エールを直撃寸前だった大斧ごと吹き飛ばす。
エールが片膝をついて手を上げると同時に審判の「勝負あり!」の声が響く。
「勝者!豪傑の女鬼:メイリーン・アリアンティール!」
それまで静かだった会場が大盛り上がりになる。
「シェラちゃーん!やりましたよ~!愛の力の勝利で~す!」
メイリーンが観客席の私に投げキッスをしながら言う。
その熱烈な視線には周囲の男たちも勘違い出来なかった。
「…あれ、ヤバい目をしてないか?」
シャタルアがボソッと引いた目で言う。
「かっこいい…」
カリヤはカリヤでなんかめっちゃ感動していた。
こうして、無事(?)にメイリーンはパーティに参加する事となったのである。
舞台の上で二人が握手をする。
「メイリーン、冒険者の復帰おめでとう!これから頑張れよ!」
エールはニカッと笑う。
「エールさん、ありがとうございます!今まで受付嬢として共に仕事出来て楽しかったです!」
「だっはは!ギルド長としては優秀な受付嬢のお前さんが居なくなるのはつれぇけど、今度は冒険者としてやっていけるからな!今後は冒険者としてよろしくな!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
メイリーンとエールが舞台から降りると閉幕の義をして、皆が決闘場から出て行く。
私たちも出て、ギルドの中で待っていると着ているものの消耗具合を見なければ、先程まで戦っていたとは思えないくらい綺麗に傷跡の治った二人がやってくる。
「シェラちゃん、これから一緒にたっくさん、冒険しようね!」
メイリーンが嬉しそうに尻尾を振って言う。
「そうですね。これからは仲間としてよろしくお願いします!」
「はーい!こちらこそよろしくね!」
カリヤとシャタルアも同じようによろしくと挨拶をし終えるとエールが言う。
「そいじゃ、お前らのパーティ加入を…とその前にカリヤは先に試練を受けてからパーティ加入の書類を書けるようになるから、まずはシェラとメイリーンの申請書を提出してくれ。詳しくはメイリーンが知っているはずだから、メイリーンの指示でやってくれ。」
シャタルアの目の前で内緒話をするようにエールが小声で言う。
「一応、お前さんは魔族だから、書類上はテイムされたものとして登録するぜ。」
「まあ、それが妥当じゃろうな。契約者については言った方が良いかの?」
「そうだな…出来ればで良いぜ。」
「それなら、我は後でカリヤと共に来るでな。」
シャタルアは少しボカシたように言う。
「カリヤと共に…だな。わかったぜ。」
エールはそう言うとメイリーンとカリヤに書類を渡す。
「えっと…ボクは冒険者にはなるつもりないんだけど…」
「そうなのか?それだとこの国から出る時にめちゃくちゃ面倒な手続きしないといけなくなるぞ?最悪、シェラと離れ離れになる可能性もあるから、冒険者になった方がいいと思うが…」
「…やっぱり、ボクも冒険者になる。」
メイリーンは書類を見ながら言う。
「エール、この書類間違ってますよ。私たちはエールのパーティの風来坊に加入するわけでは無いのだけれど…」
「ん?間違ってないぞ?冒険者としてよろしくって言っただろ?」
エールは当然の事のように言う。
「え、普通に嫌ですけど。ね?シェラちゃんもそう思うでしょ?」
メイリーンはとても嫌そうにしていた。
「私はシェテラエンデ様の家に行けるなら、なんでもいいです。」
私がそう言うとエールはニヤリと笑う。
「うっし、決まりだな。それにこうした方が俺の指示で行ける様になるからな。手続きも楽勝で一石二鳥、俺たちは新たな仲間に戦力アップでウィン・ウィンの関係ってわけだ。」
メイリーンは「はぁ…」とため息をついていた。
「えっと…ウルフ4体の討伐が目的…なんだよね?」
「そのようじゃな。我がおるから心配無用じゃよ。」
「よーし…ボクも頑張るぞー!」
カリヤはシャタルアと一緒に試験内容を見て気合を入れていた。
※修正点があったので、修正しました。※
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