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十九話 町のお掃除

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 実力確認が不発に終わり、意気消沈気味に城に帰ってきた俺は、朝食までまだしばらく時間があることを知り、また別の場所に移動した。

 やってきた場所は、ある民家の前。

 今からやることは、ただの掃除。それ以上でもそれ以下でもない、本当にただの掃除だ。

「あっ? んだ、てめえ……っててめえわ!?」

 そんなことを考えていると、掃除の対象となっている男が民家から出てきた。

 こいつは屑に頼んで、ラティアのことを犯した領民の一人。

 名は……別に覚える必要も無いのでいいだろう。

 ゴミAとして処理するだけだ。

「ゴミ掃除に来た、ゆくぞ?」

「はっ、な何を言って……」

「『睡眠スリープ』」

 俺は一言告げると、すぐに第三位階魔術を発動して、ゴミAを眠らせる。
 そして『転移テレポート』を使い草原に移動すると、ゴミの両手両足を炎龍王の剣で斬り落とし、死なないように血だけを止めてやる。

「ウギァアアァアッ!? な、なんだ? あれ、腕が……足がない?」

 両手両足を斬り落とした時に一瞬物凄い激痛を感じて飛び起きたゴミAは、自分の手足がないことに気づき戸惑っている様子だ。
 ただ、俺はそんなゴミに構っている時間はないので、すぐに次の工程に移行する。

幻惑ミラージュ

 続いて俺は、第四位階魔術の、対象を他者から別の存在に見えるようにする『幻惑ミラージュ』を発動する。
 これで、ゴミAは、傍から見れば少し歳をとった女にしか見えなくなった。
 ただ、それは他者から見た時だけの話で、ゴミAからすれば自分の見た目は変わっていないように見える。

 まあ、そこはどうでもいい。まだこいつ同様に沢山掃除の対象者はいるので、ここであまり時間を取るわけにもいかない。

「おい、なぜこんな状況になっているかわかるか?」

「おいてめぇ! 俺の手足を無くしたのはてめえだろう! 治しやがれクソ野郎!!」

 ……どうやら俺は気が動転していたらしい。

 ゴミと意思の疎通が可能なはずないのに、俺はゴミと会話をしようとしたのだ。

 数秒前の時分が恥ずかしい。


「お前がこれから掃除される理由はただ一つ。ラティアに地獄を味あわせて苦しめたからだ。
 お前も同様に地獄のような日々を味わって、そして最後には死ね」

 俺はゴミにそう言い捨てると、『上位転移ハイテレポート』を使用して近くの森に移動する。
 そして、ゴブリンの集っている場所目がけてゴミAを放り投げた。

「せいぜい、ゴブリンに女と間違われて死ぬまで終わることのない苗床地獄を味わえ」

「なっ、おい、まて! まってく……」

 最後に何かゴミAが喚いていたが、俺はゴミの言葉が理解できないので、何を言っているのかわからず、『転移テレポート』でその場から離れた。

 さて、まだまだゴミは残っている。


「はっ!? お前いつの間に……」
「『睡眠スリープ』」

「ん? あんたは確か、大魔王だとか……」
「『睡眠スリープ』」

「けっ、あの大魔王とかいう野郎、調子に乗りやが……」
「『睡眠スリープ』」

 俺はこうして、かなりの速度で街中を駆け回っては『睡眠 スリープ』をかけてゴミを回収し、ゴミAとは別のゴブリンの集落にゴミを棄てに回った。

 もちろん、裸の女にしか見えないように処理されているので、当然のように毎日ゴミ達はゴブリンの性欲処理用の肉便器になるだろう。

 毎日孕むこともないのに孕むまで犯される地獄の日々を生き続け、精一杯ラティアを苦しめた罪を償わせてから死んでもらおう。

 俺の手で直接殺してやれないのは非常に残念だが、これでゴミ掃除がすんで、ラティアの笑顔を見ることができると考えれば、それも大して気にすることでもないかと思える。

 結構時間も潰せたし、そろそろリターナーも行動復帰して、朝食を取れる状態になっているはずだろう。

 朝から割と動き回って腹も減ったし、早く城に帰ろう。
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