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第3章「海と大地の箱庭」
54話 再会
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騒ぎが起きた方向から、人がなだれるように逃げていく。街がみるみる恐怖に染まっていっているのを感じた。
何が起きているのかわからない。私たちは手当たり次第に人を捕まえ、事情を聞いた。
「急に街の入り口から変な化け物が押し寄せてきたんだよ! あんたたちも早く逃げた方がいい。餌食にされるぞ!」
どうやら、この街の人々にとって魔物は未知の存在であるようだ。
私とメアは、人々とは逆に、彼らをかき分けて進んでいく。騒ぎの現場からは既に大半の人間が逃げていて、数人残っている程度だった。
「ユキア、気をつけろ!」
街の入り口の方から、黒い異形がいくつも迫ってくる。街の建物や街灯などを破壊しては、逃げ遅れた人たちへと襲いかかる。
その中で、小さな少女に魔物が一匹飛びかかるのが見えた。
「危ないっ!」
走りながら剣を召喚し、襲いかかる魔物を斬り刻む。腰を抜かした少女へと手を差し伸べ、立ち上がらせる。
「あ、ありがとう……!」
「メア、この子や他の人たちを安全なところに!」
「わかった! シオンたちを呼んでくる!」
少女や他の逃げ遅れた人たちはメアに任せ、私は魔物たちへ対峙する。
それにしても、なぜ急に魔物が街に押し寄せてきたのだろう。昨日は魔物の気配なんて微塵も感じられなかったし、魔物の目撃情報すらなかったというのに。
「グアァァ!!」
「っ、〈ルクス・ブラストレイズ〉!」
飛びかかってきた魔物へ向け光線を放ち、貫く。
幸い、魔物が再生したり復活したりするような様子は見受けられない。このまま確実に数を減らせば危機は脱するだろう。
「〈ルクス・ブラストブレイク〉!」
光を炸裂させ、街を跋扈する異形を一気に破壊する。こうして広範囲で爆撃すれば、早めに片づけられそうだ。
シオンたちが騒ぎを聞きつけて駆けつければ、もっと早く殲滅できる。人々を逃がしたあとにメアが連れてきてくれるだろうし、それまで耐えれば────
「うっ!?」
背後から鋭い爪で斬りつけられ、痛みが走る。背後を取られただけでなく、うつ伏せに倒され押さえつけられた。
血が流れだし、異形たちが私に群がる。魔物は、生命の血肉を欲して喰らい、自らの養分にする。一人で戦い続けていたのが仇となった。
背中が痛くて熱い。けれど……!
「邪魔、しないで!! 〈ルクス・イラプション〉!!」
魔力を炸裂させ、魔物たちの目を潰す。怯んだ隙に脱出し、立ち上がって飛び上がる。
このまま剣ですべて斬り裂いてやる。それでも潰しきれないが、多少は……!
「────〈イグニス・ブラストブレイク〉!!」
突如、私が斬りかかるのと逆の方向から炎の渦が飛んできた。火花をまといながら大爆発を起こし、周囲にいた魔物はすべて消し飛んだ。
今のは系統魔法によるものだ。一体誰が……。
「ユキ! 大丈夫なのだ!?」
「レノ……!」
魔法で私を助けてくれたのは、刀を携えたレノだった。
街の入り口の方から走り寄ってきたから、ちょうどここに来たばかりなのだろう。
「助けてくれてありがとう。えっと……もう大丈夫なの?」
「何がなのだー?」
「え、だって前の箱庭で────」
「レノー! ちょっと待つのですー!!」
ようやくレノと合流できたと思ったら、今度は別の声が聞こえてきた。
レノと同じく、街の入り口から走ってきた少女だ。ピンクゴールドの髪に金色の瞳、そして左肩のみに生える白い翼が特徴的である。
特徴からして言わずもがな、私と同じ神の一人だ。
「セル、ユキを見つけたのだ!」
「えっ。もしかしてその子が……?」
「は、初めまして。ユキアです」
「あ、どうもです。ぼくはセルジュと申します。レノがお世話になってます」
お互いに自己紹介をして礼をする。少しおどおどしているように見えるが、悪い人には見えない。
先程の攻撃のおかげで、この辺り一帯の魔物は倒せた。レノとも無事に合流できたし、少し気が緩んだところで、背中の傷の痛みを思い出した。
「痛い……」
「どうしたのです? その怪我……! 魔物にやられたのですか!?」
「大丈夫、回復魔法使うから。〈ルクス・ヒーリング〉」
魔法で背中の傷を塞ぐと、痛みが引いていく。これで誰かの手を煩わせる必要はなくなった。
痛みが引ききったところで、今度は「おーい!」と聞き慣れた声が聞こえてきた。この声はアスタだ。
「ユキア! 大丈夫か!?」
「おい、何があった! って、チビ女二号!?」
「メアなのだー! それにシオとソルもー!」
両手を上げ、大きく振って反応を返していた。メアを先頭に、シオンたちとアスタも一緒に駆け寄ってくる。
今まで探していたレノを見て、メアも安心したようだ。シオンとソルもそれは同じだった、セルジュさんの方を見て一瞬固まった。
「セルジュ? どうしてここに?」
「あーっ! ソルにシオン! よかったのです! てっきり死んでしまったのではないかと……」
「勝手に殺すな!! ピンピンしとるわ!!」
どうやら、シオンたちとセルジュさんは知り合いのようだ。私やメアは初対面だったのだが……。
「とりあえず場所を移しますよ。ここにいては面倒なことになるです」
セルジュさんは踵を返し、街の入り口の方へ走っていく。私たちも後を追った。
何が起きているのかわからない。私たちは手当たり次第に人を捕まえ、事情を聞いた。
「急に街の入り口から変な化け物が押し寄せてきたんだよ! あんたたちも早く逃げた方がいい。餌食にされるぞ!」
どうやら、この街の人々にとって魔物は未知の存在であるようだ。
私とメアは、人々とは逆に、彼らをかき分けて進んでいく。騒ぎの現場からは既に大半の人間が逃げていて、数人残っている程度だった。
「ユキア、気をつけろ!」
街の入り口の方から、黒い異形がいくつも迫ってくる。街の建物や街灯などを破壊しては、逃げ遅れた人たちへと襲いかかる。
その中で、小さな少女に魔物が一匹飛びかかるのが見えた。
「危ないっ!」
走りながら剣を召喚し、襲いかかる魔物を斬り刻む。腰を抜かした少女へと手を差し伸べ、立ち上がらせる。
「あ、ありがとう……!」
「メア、この子や他の人たちを安全なところに!」
「わかった! シオンたちを呼んでくる!」
少女や他の逃げ遅れた人たちはメアに任せ、私は魔物たちへ対峙する。
それにしても、なぜ急に魔物が街に押し寄せてきたのだろう。昨日は魔物の気配なんて微塵も感じられなかったし、魔物の目撃情報すらなかったというのに。
「グアァァ!!」
「っ、〈ルクス・ブラストレイズ〉!」
飛びかかってきた魔物へ向け光線を放ち、貫く。
幸い、魔物が再生したり復活したりするような様子は見受けられない。このまま確実に数を減らせば危機は脱するだろう。
「〈ルクス・ブラストブレイク〉!」
光を炸裂させ、街を跋扈する異形を一気に破壊する。こうして広範囲で爆撃すれば、早めに片づけられそうだ。
シオンたちが騒ぎを聞きつけて駆けつければ、もっと早く殲滅できる。人々を逃がしたあとにメアが連れてきてくれるだろうし、それまで耐えれば────
「うっ!?」
背後から鋭い爪で斬りつけられ、痛みが走る。背後を取られただけでなく、うつ伏せに倒され押さえつけられた。
血が流れだし、異形たちが私に群がる。魔物は、生命の血肉を欲して喰らい、自らの養分にする。一人で戦い続けていたのが仇となった。
背中が痛くて熱い。けれど……!
「邪魔、しないで!! 〈ルクス・イラプション〉!!」
魔力を炸裂させ、魔物たちの目を潰す。怯んだ隙に脱出し、立ち上がって飛び上がる。
このまま剣ですべて斬り裂いてやる。それでも潰しきれないが、多少は……!
「────〈イグニス・ブラストブレイク〉!!」
突如、私が斬りかかるのと逆の方向から炎の渦が飛んできた。火花をまといながら大爆発を起こし、周囲にいた魔物はすべて消し飛んだ。
今のは系統魔法によるものだ。一体誰が……。
「ユキ! 大丈夫なのだ!?」
「レノ……!」
魔法で私を助けてくれたのは、刀を携えたレノだった。
街の入り口の方から走り寄ってきたから、ちょうどここに来たばかりなのだろう。
「助けてくれてありがとう。えっと……もう大丈夫なの?」
「何がなのだー?」
「え、だって前の箱庭で────」
「レノー! ちょっと待つのですー!!」
ようやくレノと合流できたと思ったら、今度は別の声が聞こえてきた。
レノと同じく、街の入り口から走ってきた少女だ。ピンクゴールドの髪に金色の瞳、そして左肩のみに生える白い翼が特徴的である。
特徴からして言わずもがな、私と同じ神の一人だ。
「セル、ユキを見つけたのだ!」
「えっ。もしかしてその子が……?」
「は、初めまして。ユキアです」
「あ、どうもです。ぼくはセルジュと申します。レノがお世話になってます」
お互いに自己紹介をして礼をする。少しおどおどしているように見えるが、悪い人には見えない。
先程の攻撃のおかげで、この辺り一帯の魔物は倒せた。レノとも無事に合流できたし、少し気が緩んだところで、背中の傷の痛みを思い出した。
「痛い……」
「どうしたのです? その怪我……! 魔物にやられたのですか!?」
「大丈夫、回復魔法使うから。〈ルクス・ヒーリング〉」
魔法で背中の傷を塞ぐと、痛みが引いていく。これで誰かの手を煩わせる必要はなくなった。
痛みが引ききったところで、今度は「おーい!」と聞き慣れた声が聞こえてきた。この声はアスタだ。
「ユキア! 大丈夫か!?」
「おい、何があった! って、チビ女二号!?」
「メアなのだー! それにシオとソルもー!」
両手を上げ、大きく振って反応を返していた。メアを先頭に、シオンたちとアスタも一緒に駆け寄ってくる。
今まで探していたレノを見て、メアも安心したようだ。シオンとソルもそれは同じだった、セルジュさんの方を見て一瞬固まった。
「セルジュ? どうしてここに?」
「あーっ! ソルにシオン! よかったのです! てっきり死んでしまったのではないかと……」
「勝手に殺すな!! ピンピンしとるわ!!」
どうやら、シオンたちとセルジュさんは知り合いのようだ。私やメアは初対面だったのだが……。
「とりあえず場所を移しますよ。ここにいては面倒なことになるです」
セルジュさんは踵を返し、街の入り口の方へ走っていく。私たちも後を追った。
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