7 / 35
聖女がガチャに狂うまで
007.聖女、護衛を断れない
しおりを挟む
リリスが明らかにオーバーキルな方法でエルダウルフを消滅させました。エルダウルフが立っていた場所には大きなクレーターができ、草木も残らない状況です。
後ろを見れば王女様の騎士たちが恐れ慄いた様子でリリスのことを警戒しています。ただのメイドかと思ったら特大の召喚魔法を発動したのだからそれも納得ですが。
ちなみにリリスの羽ですが今は幻覚魔法で見えないようにしてもらってます。羽があるだけで悪魔とばれてしまいますからね。悪魔でなくても目立ってしまってはいますが、悪魔だとばれるよりはマシでしょう。多分。
「エルダウルフは倒しましたよ?」
「あ、ああ、ありがたいですが、あの少女は?」
「私の付き人?になったリリスです。凄腕の魔法使いなんです」
「凄腕? いや確かに凄腕ではあるが」
いまだにリリスが行った所業を現実視できない様子の騎士たちでしたが、流石に彼らもプロ。テキパキと姫様の安否を確認していきます。
「すごいですわ! リリス様とおっしゃるの? さっきの魔法はなんなんですの?」
またも馬車から飛び出してきたアメリア王女が今度はリリスに飛びつきます。
「主様! この女を離して!」
「王女様。リリスを離してあげてください」
「アメリア、と呼んでくださいまし」
「はあ。わかりました。アメリア。リリスを離して」
「わかりましたわ」
この人もこの人で扱いが難しい、いえ、見方によっては簡単なのでしょうがめんどくさい方ですね。
リリスが私の後ろに隠れてしまっています。王女様もさっきのリリスの所業を見てこの態度なのですから肝が据わっているというかなんというか。
「ですがこれで安心ですわね」
「何がですか?」
「セラフィナ様とリリス様がいれば安全に帰れますでしょう? もちろん護衛をしてくれますわよね」
「えっ。いやですけど」
「えっ」
断られるとは思ってなかった様子の王女様。目を白黒させた後、泣きそうな顔で私に縋り付いてきます。
「嫌ですわ! セラフィナ様と一緒に帰るんですわ!」
そうは言われても私は第一王子に追われてる身。今から王都に向かうのは悪手中の悪手。飛んで火にいる夏の虫というやつです。
それに今はアメリア王女も友好的な態度?をとっていますがリリスが悪魔だと知ったら手のひらを返すに違いありません。
まあ、さっきのリリスの虐殺を見るに滅びるのは王都になる可能性の方が高そうですが、私はそれを望んでいないのでやっぱり私たちが王都に行くのはあり得ないでしょう。
さらに言えば、アメリア王女と過ごすことはリリスも反対のはず……。
「面倒を見るなら最後まで、じゃなかったかしら?」
「リリスはどっちの味方ですか!?」
王女様から隠れながらもボソリとそう呟いたリリス。思わず声をもらす私。
「そうです! 助けるなら最後まで面倒をみるべきですわ! リリス様はいいことを言いますわ! リリス様とも仲良くなりたいですわ!」
「それは断る」
「つ、つれないですわ」
「ちょっと主様とお話してくるから近づかないでくれるかしら」
「仲間はずれですわ」
リリスが王女様を遠ざけたあとこそこそと私に確認してきます。
「ウインドウは見てみたかしら?」
「ウインドウ? ポイントのことですか? みてないですけど」
「みた方がいいと思うわよ」
「わかりました。ガチャ・オープン」
見ると〈善行ポイント〉が0ポイント……。
えっ。なんでですか? 流石に今回は純粋な善い行いだったと思うんですが……。
「やっぱりね。ここから察せられる可能性は2つ。一つは善行がポイントの獲得に関係ない可能性。だけどその可能性はとても低いと思う。だからもう一つの可能性だけど、善行がまだ完了していない可能性ね」
なるほど。フォレストウルフやエルダウルフから救うまでが一つの善行じゃなくて、王女様を安全な場所まで届けることが一つの善行にカウントされているということでしょうか。だとすると確かにここで護衛を断るのはもったいないかもしれません。
「もちろんわたくしは主様に従うけど、主様の欲を考えると護衛依頼を受けた方がいいと思うわ。あのバカ王子もまだ王都の門までは追っ手を放ってはいないと思うしね。王女も王都の入り口まで送れば文句は言わないでしょ?」
欲、と言うほどにまだガチャに取り憑かれてはいないと思いますが確かに一理あります。門の入り口までであれば危険度は低いかもしれません。それに何よりポイントが全くつかないのももったいないです。
あとは、王女様の護衛となると話し相手にされる可能性があることですが、まあ、ちょっと面倒ですが許容範囲内でしょうか。
「王女様」
「アメリア」
やっぱりかなりめんどくさいです。
「アメリア。護衛を受けることにしました」
「本当ですの!? これで道中のお話相手ができましたの。嬉しいですわ!」
「ただし、王都の門までです。そこから先は安全ですから護衛はいらないですよね」
「仕方ないですわね。では道中までお願いしますわね。セラフィナ様。リリス様」
こうして私は王女一向を王都まで護衛することになったのでした。
後ろを見れば王女様の騎士たちが恐れ慄いた様子でリリスのことを警戒しています。ただのメイドかと思ったら特大の召喚魔法を発動したのだからそれも納得ですが。
ちなみにリリスの羽ですが今は幻覚魔法で見えないようにしてもらってます。羽があるだけで悪魔とばれてしまいますからね。悪魔でなくても目立ってしまってはいますが、悪魔だとばれるよりはマシでしょう。多分。
「エルダウルフは倒しましたよ?」
「あ、ああ、ありがたいですが、あの少女は?」
「私の付き人?になったリリスです。凄腕の魔法使いなんです」
「凄腕? いや確かに凄腕ではあるが」
いまだにリリスが行った所業を現実視できない様子の騎士たちでしたが、流石に彼らもプロ。テキパキと姫様の安否を確認していきます。
「すごいですわ! リリス様とおっしゃるの? さっきの魔法はなんなんですの?」
またも馬車から飛び出してきたアメリア王女が今度はリリスに飛びつきます。
「主様! この女を離して!」
「王女様。リリスを離してあげてください」
「アメリア、と呼んでくださいまし」
「はあ。わかりました。アメリア。リリスを離して」
「わかりましたわ」
この人もこの人で扱いが難しい、いえ、見方によっては簡単なのでしょうがめんどくさい方ですね。
リリスが私の後ろに隠れてしまっています。王女様もさっきのリリスの所業を見てこの態度なのですから肝が据わっているというかなんというか。
「ですがこれで安心ですわね」
「何がですか?」
「セラフィナ様とリリス様がいれば安全に帰れますでしょう? もちろん護衛をしてくれますわよね」
「えっ。いやですけど」
「えっ」
断られるとは思ってなかった様子の王女様。目を白黒させた後、泣きそうな顔で私に縋り付いてきます。
「嫌ですわ! セラフィナ様と一緒に帰るんですわ!」
そうは言われても私は第一王子に追われてる身。今から王都に向かうのは悪手中の悪手。飛んで火にいる夏の虫というやつです。
それに今はアメリア王女も友好的な態度?をとっていますがリリスが悪魔だと知ったら手のひらを返すに違いありません。
まあ、さっきのリリスの虐殺を見るに滅びるのは王都になる可能性の方が高そうですが、私はそれを望んでいないのでやっぱり私たちが王都に行くのはあり得ないでしょう。
さらに言えば、アメリア王女と過ごすことはリリスも反対のはず……。
「面倒を見るなら最後まで、じゃなかったかしら?」
「リリスはどっちの味方ですか!?」
王女様から隠れながらもボソリとそう呟いたリリス。思わず声をもらす私。
「そうです! 助けるなら最後まで面倒をみるべきですわ! リリス様はいいことを言いますわ! リリス様とも仲良くなりたいですわ!」
「それは断る」
「つ、つれないですわ」
「ちょっと主様とお話してくるから近づかないでくれるかしら」
「仲間はずれですわ」
リリスが王女様を遠ざけたあとこそこそと私に確認してきます。
「ウインドウは見てみたかしら?」
「ウインドウ? ポイントのことですか? みてないですけど」
「みた方がいいと思うわよ」
「わかりました。ガチャ・オープン」
見ると〈善行ポイント〉が0ポイント……。
えっ。なんでですか? 流石に今回は純粋な善い行いだったと思うんですが……。
「やっぱりね。ここから察せられる可能性は2つ。一つは善行がポイントの獲得に関係ない可能性。だけどその可能性はとても低いと思う。だからもう一つの可能性だけど、善行がまだ完了していない可能性ね」
なるほど。フォレストウルフやエルダウルフから救うまでが一つの善行じゃなくて、王女様を安全な場所まで届けることが一つの善行にカウントされているということでしょうか。だとすると確かにここで護衛を断るのはもったいないかもしれません。
「もちろんわたくしは主様に従うけど、主様の欲を考えると護衛依頼を受けた方がいいと思うわ。あのバカ王子もまだ王都の門までは追っ手を放ってはいないと思うしね。王女も王都の入り口まで送れば文句は言わないでしょ?」
欲、と言うほどにまだガチャに取り憑かれてはいないと思いますが確かに一理あります。門の入り口までであれば危険度は低いかもしれません。それに何よりポイントが全くつかないのももったいないです。
あとは、王女様の護衛となると話し相手にされる可能性があることですが、まあ、ちょっと面倒ですが許容範囲内でしょうか。
「王女様」
「アメリア」
やっぱりかなりめんどくさいです。
「アメリア。護衛を受けることにしました」
「本当ですの!? これで道中のお話相手ができましたの。嬉しいですわ!」
「ただし、王都の門までです。そこから先は安全ですから護衛はいらないですよね」
「仕方ないですわね。では道中までお願いしますわね。セラフィナ様。リリス様」
こうして私は王女一向を王都まで護衛することになったのでした。
21
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

とりかえばや聖女は成功しない
猫乃真鶴
ファンタジー
キステナス王国のサレバントーレ侯爵家に生まれたエクレールは、ミルクティー色の髪を持つという以外には、特別これといった特徴を持たない平凡な少女だ。
ごく普通の貴族の娘として育ったが、五歳の時、女神から神託があった事でそれが一変してしまう。
『亜麻色の乙女が、聖なる力でこの国に繁栄をもたらすでしょう』
その色を持つのは、国内ではエクレールだけ。神託にある乙女とはエクレールの事だろうと、慣れ親しんだ家を離れ、神殿での生活を強制される。
エクレールは言われるがまま厳しい教育と修行を始めるが、十六歳の成人を迎えてもエクレールに聖なる力は発現しなかった。
それどころか成人の祝いの場でエクレールと同じ特徴を持つ少女が現れる。しかもエクレールと同じエクレール・サレバントーレと名乗った少女は、聖なる力を自在に操れると言うのだ。
それを知った周囲は、その少女こそを〝エクレール〟として扱うようになり——。
※小説家になろう様にも投稿しています

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

異種族ちゃんねる
kurobusi
ファンタジー
ありとあらゆる種族が混在する異世界 そんな世界にやっとのことで定められた法律
【異種族交流法】
この法に守られたり振り回されたりする異種族さん達が
少し変わった形で仲間と愚痴を言い合ったり駄弁ったり自慢話を押し付け合ったり
そんな場面を切り取った作品です

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~
岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。
順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。
そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。
仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。
その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。
勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。
ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。
魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。
そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。
事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。
その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。
追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。
これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる