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聖女がガチャに狂うまで
003.聖女、悪魔を召喚する
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「これがガチャの結果です!」
私は手に取ったカードをかざして皆の前に向けました。またもザワザワと観客たちが騒ぎ始めましたが、これまたまたしても「静まれ!」と、殿下がそのざわめきを鎮めます。
「それで、このカードがガチャとやらの結果なのか? 確かにわずかな魔力を感じるが……。メイド魔公爵リリス・ノクティア、エルアール?とはなんだ。それにガチャの効果はカードを出すだけなのか?」
「リリス・ノクティアはこのキャラの名前でLRはレジェンドレアの略です。レアリティですね。いきなりLRを引けるなんてラッキーでした。もちろんカードを出すだけではないですよ。今回で言えばカードからキャラを召喚できるみたいです」
またもいつの間にかインプットされていた知識が炸裂します。殿下はそんな私を見て少し気圧されているようです。いつもはこんなに捲し立てたりしないので驚かれたのかもしれません。
「……ふむ。召喚士みたいなものか」
「まあ、似たようなものかもしれないですね」
それだけではないですけど。
とりあえず殿下が納得したところで私は手元にあるカードを再度見つめました。
メイド魔公爵リリス・ノクティア。それはメイドの姿をした少女型悪魔で、召喚術や闇魔法、そして近接戦闘にも長けたなんでもできてしまう万能キャラです。そのスペックはLRのレアリティに違わなぬもので、器用貧乏ならぬ器用富豪とでも言える強さを誇ります。もちろん特化型のLRキャラに比べたら突出しているわけではありませんが召喚すれば役に立つことは間違いません。
ちなみに私が知っている中でも5本の指に入るお気に入りキャラだそうです。私のことなのに「だそう」とはどういうことかと思われるかもしれないですが、これもいつの間にかの知識によるものなので自分のこととは思えないんですよね……。本当にこの知識はなんなんでしょう? 改めて考えると知らぬ間に知識を植え付けられているってちょっと怖い気がしてきます。
話がそれました。ここで重要かつ問題なのはリリス・ノクティアが悪魔だということです。
なぜなら、これはここエルダリオン王国に限らずのことですが、悪魔は厄災であると捉えられているからですね。
100年ほど前に大国バラキア帝国で悪魔が召喚された時には、支配に失敗して制御不能になり複数の小国が巻き込まれて滅んだとされています。その経験から悪魔は危険視されているということですね。
まあ、だからと言って私がリリス・ノクティアに忌避感を覚えているかといわれるとそうではないのですが、世間一般的に考えると彼女を召喚するのは悪魔を召喚することと同義になってしまうため、少し躊躇われてしまいます。カードからはいつでも呼び出せるようですし今召喚する必要はないかもしれません。
「どうしたんだ。早く召喚してみろ」
「召喚してしまっても良いのでしょうか?」
「召喚できると言ったのはセラフィナ、お前だろう? それともできないというのか?」
「できますけど」
「ならすぐに召喚せよ」
「ですが……」
「くどい。周りものたちも待っている。早く召喚しないとできないことをできると言った罪で虚偽罪に問われるぞ」
まわりを見渡すと殿下のいう通り、召喚を今か今かと待っている観衆たち。ここでやめてしまうのも悪い勘ぐりをされてしまいかねません。それに私はリリスちゃ、いえ、リリス・ノクティアを召喚してあげたいと思っていたので、殿下が許可したのは重畳です。これでもし召喚して辺りが混乱したとしても私には罪はないですよね?
「わかりました。リリス・ノクティア召喚します!」
その声とともにカードが眩い光を放ち空中に浮かび上がりました。その光の中から黒い影が徐々に人の姿に成形されていきます。
姿を現したのは、黒と白のメイド服に身を包んだ小さな幼女でした。その服は繊細な白いフリルが施され、クラシカルな長いスカートの装いを纏っています。背中には蝙蝠のような漆黒の翼が広がり、頭には黒地に白いリボンのカチューシャをつけています。
「魔公爵リリス・ノクティア、主様の呼びかけによりやってきたわ」
綺麗なカテーシーを決めるとそのままニコリと私に向けて怪しい笑みを向けてきました。
私は手に取ったカードをかざして皆の前に向けました。またもザワザワと観客たちが騒ぎ始めましたが、これまたまたしても「静まれ!」と、殿下がそのざわめきを鎮めます。
「それで、このカードがガチャとやらの結果なのか? 確かにわずかな魔力を感じるが……。メイド魔公爵リリス・ノクティア、エルアール?とはなんだ。それにガチャの効果はカードを出すだけなのか?」
「リリス・ノクティアはこのキャラの名前でLRはレジェンドレアの略です。レアリティですね。いきなりLRを引けるなんてラッキーでした。もちろんカードを出すだけではないですよ。今回で言えばカードからキャラを召喚できるみたいです」
またもいつの間にかインプットされていた知識が炸裂します。殿下はそんな私を見て少し気圧されているようです。いつもはこんなに捲し立てたりしないので驚かれたのかもしれません。
「……ふむ。召喚士みたいなものか」
「まあ、似たようなものかもしれないですね」
それだけではないですけど。
とりあえず殿下が納得したところで私は手元にあるカードを再度見つめました。
メイド魔公爵リリス・ノクティア。それはメイドの姿をした少女型悪魔で、召喚術や闇魔法、そして近接戦闘にも長けたなんでもできてしまう万能キャラです。そのスペックはLRのレアリティに違わなぬもので、器用貧乏ならぬ器用富豪とでも言える強さを誇ります。もちろん特化型のLRキャラに比べたら突出しているわけではありませんが召喚すれば役に立つことは間違いません。
ちなみに私が知っている中でも5本の指に入るお気に入りキャラだそうです。私のことなのに「だそう」とはどういうことかと思われるかもしれないですが、これもいつの間にかの知識によるものなので自分のこととは思えないんですよね……。本当にこの知識はなんなんでしょう? 改めて考えると知らぬ間に知識を植え付けられているってちょっと怖い気がしてきます。
話がそれました。ここで重要かつ問題なのはリリス・ノクティアが悪魔だということです。
なぜなら、これはここエルダリオン王国に限らずのことですが、悪魔は厄災であると捉えられているからですね。
100年ほど前に大国バラキア帝国で悪魔が召喚された時には、支配に失敗して制御不能になり複数の小国が巻き込まれて滅んだとされています。その経験から悪魔は危険視されているということですね。
まあ、だからと言って私がリリス・ノクティアに忌避感を覚えているかといわれるとそうではないのですが、世間一般的に考えると彼女を召喚するのは悪魔を召喚することと同義になってしまうため、少し躊躇われてしまいます。カードからはいつでも呼び出せるようですし今召喚する必要はないかもしれません。
「どうしたんだ。早く召喚してみろ」
「召喚してしまっても良いのでしょうか?」
「召喚できると言ったのはセラフィナ、お前だろう? それともできないというのか?」
「できますけど」
「ならすぐに召喚せよ」
「ですが……」
「くどい。周りものたちも待っている。早く召喚しないとできないことをできると言った罪で虚偽罪に問われるぞ」
まわりを見渡すと殿下のいう通り、召喚を今か今かと待っている観衆たち。ここでやめてしまうのも悪い勘ぐりをされてしまいかねません。それに私はリリスちゃ、いえ、リリス・ノクティアを召喚してあげたいと思っていたので、殿下が許可したのは重畳です。これでもし召喚して辺りが混乱したとしても私には罪はないですよね?
「わかりました。リリス・ノクティア召喚します!」
その声とともにカードが眩い光を放ち空中に浮かび上がりました。その光の中から黒い影が徐々に人の姿に成形されていきます。
姿を現したのは、黒と白のメイド服に身を包んだ小さな幼女でした。その服は繊細な白いフリルが施され、クラシカルな長いスカートの装いを纏っています。背中には蝙蝠のような漆黒の翼が広がり、頭には黒地に白いリボンのカチューシャをつけています。
「魔公爵リリス・ノクティア、主様の呼びかけによりやってきたわ」
綺麗なカテーシーを決めるとそのままニコリと私に向けて怪しい笑みを向けてきました。
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