転生?いいえ。天声です!

Ryoha

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── 2章 ミニック編 ──

075.フォーチュンラビットのドロップ

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 ちょうどウサギたちを殲滅したあとミニックが地面に降り立った。降り立った地面には大量の肉と魔石たち。全部を持ち帰ることはできそうにない。激選しないといけないね。

 その中でもこれだけは持ち帰ってほしいものがある。フォーチュンラビットのドロップアイテムだ。そうなのだ。あの群れの中にフォーチュンラビットが混ざってたんだよね。それも4羽も! これは〈天運〉の幸運効果かもしれない。

────────────────────
 種族:フォーチュンラビット
 状態:─
 小型で黄金色のウサギ型魔物。Gランク。素早い動きで逃げるため倒すのが難しい。幸運の月貨、まれに月影の耳飾りをドロップする。
────────────────────

 これがフォーチュンラビットの画面。倒す前に〈天眼〉しておけば倒した後でも画面は残して置けるんだよね。
 画面によると幸運の月貨以外にも月影の耳飾りと言うものがドロップする可能性があるらしい。そして見てしまったんだよね。貨幣っぽいドロップアイテムの他にイヤリング型のアイテムがドロップしたのを。激レア魔物の激レアドロップアイテム! 心が躍るよね。

 わたしはミニックを案内して幸運の月貨3枚と月影の耳飾りをすぐに回収させた。
 周りには他の冒険者たちもいるから横取りされたらたまらないからね。ちなみにフォーチュンラビットの魔石は他のウサギの魔石と同価値らしいから後回し。

 ミニックはドロップを拾ったあとウサギたちの魔石を回収し始める。弱い魔物だから大丈夫だとは思うけど魔物を復活させないのはマナーだからね。

 そして、わたしはミニックが労働をしている間にドロップアイテムを確認してしまうのだ! まずは通常ドロップの幸運の月貨から!

────────────────────
 名称:幸運の月貨
 金運が上昇して、持ち主に幸運をもたらす。運関連の技能スキルを持つ場合その効果がアップする
────────────────────

 前半の説明は聞いていたものと同じだね。だけどその後の運関連の技能の効果アップは聞かされていない効果だ。多分〈鑑定〉だとそこまで解析できないんだろうね。さすが〈天眼〉さんだ! これで〈天運〉の効果をアップすることができるかも? なかなかいい効果を持っているね。

 それでは続いて本命の月影の耳飾りを確認します!

────────────────────
 名称:月影の耳飾り
 フォーチューンラビットが落とす耳飾り。身に着けることで、周囲の微細な音や会話を聞き取り、情報をキャッチする能力が向上する。またステルス機能もあり任意に〈気配遮断〉と同等の効果を発揮することが可能。
────────────────────

 かなり強いんじゃないかな!? 音を聞き取る効果から索敵能力が上がるし、ステルス機能で相手の不意をつくことも可能とか。ノーアの〈気配遮断〉の効果を知っているわたしとしてはかなり期待してしまうね!

 〈天運〉はかなりの効果があるみたいだ。ウサギたちに群がられたときは悪運かと思ったけど差し引きかなりの幸運だったね。

 調べている間にミニックは魔石を拾い集め終わったみたい。大きかった麻袋は肉も合わせてはち切れそうになっている。これ以上の探索は無理そうだ。

『今日はこれで帰ろう』
『なのです! フォーチュンラビットも倒してほくほくなのです』
『その耳飾りはつけておいてね。気配を遮断する効果があるから』
『分かったのです』

 まだ1階層しか進んでないけど今日はこれでいいよね?


 ◇◇◇


 冒険者ギルドに到着した。すぐに見慣れた受付嬢、じゃなかった、ギルドマスターのアイリスがミニックの対応を始める。
 アイリスってギルドマスターなんだよね? こんなところで普通の冒険者の対応をしていていいのかな?

「ミニックさん。ダンジョンに行ってきたのですよね。すごい量になってますね。どれだけ倒したんですか?」
「大量なのです。フォーチュンラビットも倒したのです」
「フォーチュンラビットですか? ドロップはありますか? それとそちらの袋はあちらの方に渡しておいてください」

 アイリスの瞳がきらりと光る。これは幸運の月貨がほしいパターンだね。
 あとアイリスから大量の魔石と肉が入った袋をパスされた可哀想な受付嬢。顔が引き攣っています。あれを仕分けするのは大変そうだね。

『どうするのです?』
『3枚あるし2枚は買取に出してもいいよね?』
『じゃあそうするのです』

 ミニックが2枚の幸運の月貨をトレーに置いた。

「これがフォーチュンラビットのドロップなのです」
「……2枚、ですか?」

 一瞬アイリスがピシリと固まったけどすぐに笑顔に戻る。

「3枚手に入ったので2枚は買取に出してもいいのです」
「ふふふ。やはりミニックさんは面白いですね。いとも簡単に幸運の月貨を手に入れてくるなんて。それに複数枚。ぜひ買い取らせていただきます。こちら20万ニクルです。金貨でよろしいでしょうか?」

 素早い対応でトレーに金貨を20枚置くアイリス。ギルドマスターともなると接客術も一流になるのかなと感心してしまう手際の良さだ。

「あちらの買取には時間がかかりそうですので少々お待ちください」
「分かったのです」
「そういえばその耳飾りは昨日はつけていませんでしたよね。どこかで買われたんですか?」
「これなのです? これもフォーチュンラビットのドロップなのです」
「はい?」

 あー。言わなきゃよかったのに。
 にこりとした顔をむけてくるアイリスギルドマスター。これはちょっとめんどくさいことになりそう。

「そちらを買取に出す予定は?」
『これは売らないよ?』
「これはぼくが使う予定なのです」
「そうですか。では〈鑑定〉だけでもさせていただけませんか?」

 どうやら月影の耳飾りは今まで出たことがないドロップアイテムだったらしい。そのため性能を把握しておきたいようだ。

「〈鑑定〉だけなのです?」
「はい。〈鑑定〉するだけです。鑑定させていただければ1万ニクル支払います」

『まあ〈鑑定〉するだけならいいのかな?』
『なのです。お金ももらえるのです。いいことなのです』

「分かったのです。鑑定していいのです」
「ありがとうございます。早速預からせていただきます」

 アイリスが素早く月影の耳飾りを取り外すと鑑定士に渡す。すぐに〈鑑定〉に取り掛かったようで耳飾りの近くでウィンドウが開くのが見える。

「微細な会話の聞き取りにステルス機能だと」
「なんと諜報向きな」
「国宝級なのでは!?」

 なんか色々聞こえてくるけどさすがに国宝級ではないよね?

 アイリスが鑑定終わったを持ってミニックの方に戻ってくる。

「ありがとうございます」
「本当に買取に出さないで大丈夫なのです?」
「ええ。むしろ買取に出さないでいただけて助かりました。あれだけのものになると我がギルド支部の資産では賄いきれません。ミニックさんも盗られないように気をつけてくださいね。こちら謝礼の1万ニクルになります」

 そう言って月影の耳飾りと金貨1枚が渡される。

 それにしても1日で21万ニクルも稼いでしまった。これでそこそこいい防具が買えるんじゃないかな?
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