転生?いいえ。天声です!

Ryoha

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── 2章 ミニック編 ──

065.ミニックの魔法

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 ミニックに悪魔の契約を持ち掛けてから1分が経過した。

 わたしの「魔法を使えるようにしてあげる」という言葉にミニックは固まったまま動かない。多分当分帰ってこないだろうね。

 だからその間にわたしは自分の予想を確かめることにしよう。ミニックのステータスを再度確認。

────────────────────
 名前:ミニック
 種族:小人族
 技能:全銃技
    天の声
 魔法:無
 恩恵:自由神の勇者の種
────────────────────

 そうそう。魔法欄は「無」になってる。

 この「無」という文字。これって「ない」っていう意味じゃないと思うんだよね。だって、今まで〈天眼〉を使っていて〈恩恵〉がないときって「─」だったから。つまり今までの傾向から言うと「ない」は「─」になるはず。わざわざ「無」なんていう文字を使わないと思う。なので無という字をさらに〈天眼〉で確認する。

────────────────────
 無魔法:ヴォイドサウンド
────────────────────

 やっぱりね。これは無属性の魔法だ。使える魔法一覧にヴォイドサウンドという魔法がある。なのでこれをさらに確認。

────────────────────
 魔法名:ヴォイドサウンド
 対象に触れて発動することで対象の音の影響を無くす。
────────────────────

 うーん? つまり敵に使うことで音を聞こえなくする魔法ってことかな? ちょっと使いにくそう。初期魔法だからこんなものなのかな?

 流石にこの魔法だけで魔物と戦わせようというのはミニックがちょっとかわいそうかもしれない。やっぱりここはあれを使おう。そう。〈天授〉だ。

 さっき確認したところ天声ポイントは100ptに戻っていた。〈天の声〉保持者が変わるとポイントが初期値に戻るらしい。結構ポイント余ってたのにもったいない。だけどないものねだりをしてもしょうがないか。この100ポイントを有効に使わないと。

 今回は魔法を取得したいから今までの傾向から言うと10ptくらいでいいかな?

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。〈精霊術〉を取得しました>

 うん。明らかに魔法じゃないのが手に入った。まあランダムみたいなものだから仕方がない。もういっちょ〈天授〉発動!

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。〈鍛冶〉を取得しました>

 〈鍛冶〉か。面白そうではある。だけど今欲しいのはそういうのじゃない。魔法なんだよね。

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。〈使役〉を取得しました>

 ちょっとイラついてきた。そろそろ魔法が当たってくれないかな?

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。ヴォイドインジュアリーを取得しました>

 やっと魔法らしきものが当たったね。だけどインジュアリー? 怪我? 一応確認してみるかな。

────────────────────
 魔法名:ヴォイドインジュアリー
 対象に触れて発動することで対象の負傷を無かったことにする。
────────────────────

 回復系の魔法みたい? あって損はないけど今は魔物を倒せる魔法が欲しいんだよね。または敵から身を守る魔法。ってことでもういっちょ〈天授〉発動!

<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。ヴォイドイレイサーを取得しました>

 よし! 二連続で魔法を取得できた! 早速確認してみよう。

────────────────────
 魔法名:ヴォイドイレイサー
 対象に触れることで対象を消し去ることができる。消し去る範囲は込めた魔力量に依存する。
────────────────────

 よし!今度こそ攻撃系の魔法だ。これで魔物が出てきてもミニックが遅れを取ることはないよね。

 あとは魔法が使いやすくなるように〈魔力操作〉を〈天与〉で取得してっと。結局天声ポイントは全部使っちゃったけどこれで準備万端だね。

 そろそろミニックは復活したかな? だめだった。まだ上の空だ。

『そろそろ戻ってきなさい!』
「はっ! なのです」
『そこの石を持って魔力を練る!』
「わかりましたなのです!」

 何がなんだかわかっていないだろうミニックに魔力を練るように命令する。
 ミニックが拳大の石を拾って精神集中を始める。よしよし。ちゃんと魔力を練ることができてるみたい。魔力操作のおかげかな? ミニックの周りに魔力が集中していくのがわかる。

『魔法名はヴォイドイレイサー。石に対して発動して!』
「ヴォイドイレイサー、なのです!」

 すると手に持っていた石が一瞬で跡形もなく消え去った。比喩でもなんでもなく本当に塵一つ残さず。かなり強力な魔法なんじゃない!?

「できたのです!? これがぼくの魔法なのです!? ちょっとえげつないのです」

 ミニックは少し引いているみたいだけど魔法であることには変わりない。だからわたしは驚いてたのを隠してミニックに恩を売るのを忘れない。

『わたしが使えるようにしてあげたんだから感謝してよね?』

 ミニックは魔法を持っていないと思い込んでいる。それに本来使えない魔法を使えるようにしてあげたんだから実質わたしが教えたようなものだよね? 元々ミニックに無魔法の素養があったことは勘案してあげないよ?

「……すごいのです。ありがとうございますなのです!」
『それじゃあわたしの言うことを聞いてくれるよね?』
「えっ? だけどぼくはまだ頼んでな──」
『言うことを聞いてくれるよね?』
「……はいなのです」

 はい。言質は取りました。ミニックにはこれから冒険者になってもらいます!

『それじゃ、登録料を稼ぎに街の外に向かおうか』
「……わかったのです」

 そう言いながらも歩き出そうとしないミニックにイラっとするわたし。

『もっとシャキッと歩いて!』
「……ぼくは悪魔と取引をしてしまったかもしれないのです」

 悪魔とはわたしのことかな? またイラっとする。自分で言うのはいいけど人に言われるのはちょっとムカつくよね。
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